東方日々綴   作:春日霧

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その十四

 月 日 ( )

 

 えっこらえっこらとパッチワーク一号を引っ張り、今や人里でも大人気(というといささか過言かもしれないが)な香霖堂出張販売in人里である。

 今日の商品は気合を入れて、ほぼまともな商品ばかりである。イロモノ枠は「道路標識(落石注意)」だけ……だが、何に使えって言うんだこれは。

 

 しかし驚いたことにその標識すらも売れ、久々に完売と相成った。

 標識を買って行った男性に話を聞いてみたが、どうやら部屋に飾るらしい。見覚えがあると思ったらたまにイロモノを買っていく珍妙なセンスを持ったコレクターだった。

 他にも何人かそういうコレクターの常連がいるのが人里の面白い所だ。

 

 思いの外早い内にパッチワーク一号がすっからかんになったので、意気揚々とパッチワーク一号を適当な所に停めてお昼代わりのおやつとしていつもとは違うお団子屋さんに入った。

 老夫婦と営む団子屋さんで普通に美味しかった。今後もたまに来よう。

 

 団子屋を出た時で既に夕方だったが、折角なのでそのまま霧雨店へも立ち寄り、かき氷機を探してみた。かき氷機が幻想郷の時代背景に沿うものかどうかは俺も分らないが、ここに無ければ森近君が拾ってくるのを待つしかないだろうと判断し、血眼になって探した。いや、そこまで必死でもなかったかな?

 まぁ、どちらにせよかき氷機は無かったのだが。

 

 仕方ない。でかい氷を調達してから鉋で削るか。

 そういう結論に至ったので霧雨店では鉋を買って行った。意外と高くて驚いた。

 

 

 

 

 

 月 日 ( ) 雨

 

 いやーしくじった。

 昨日が、三日置きの博麗神社での宴会の日だった。どうやら、かき氷とかその辺に気を取られてすっかり忘れていたようだ。酒も買っていないし。

 よもや自室の戸棚の奥でこっそりと作っている果汁酒を持っていこうとしたわけでもあるまい。

 完全に忘れていたようだ。

 

 いつも通り香霖堂へ行き、いつも通り掃除をさらっと済ませてカウンターでだらーっとしてるところに水を滴らせながらやってきた魔理沙ちゃんに宴会の事を聞いたのだが。

 あと店内で濡れた物を乾かそうとしないでほしい。商品が濡れる。

 

 どうやら昨日も特に進展は無かったようだ。

 ただいつもより咲夜ちゃんがレミリア嬢に構っていたというか付きっきりだったそうで、なんだか付き合いが悪かったなぁとぼやいていた。構ってもらえないで拗ねる辺り、魔理沙ちゃんも結構かわいいとこあるよなぁというのが俺の感想。勿論口には出してないけど。

 

 もうすぐ夏も本番になってくるんだけど、いつまで宴会続くんだろうか。もしかして新しい幻想郷の常識にでもなってしまったのだろうか。年がら年中、博麗神社では三日置きに宴会を開催中!みたいな。

 

 もうそれ神社ちゃうやん。宴会場やん。

 

 そうなる前に霊夢ちゃんが解決してくれるんじゃないかなーとかなり期待してるんですけどねぇ。というか魔理沙ちゃんとか咲夜ちゃんにも頑張ってといつもエールを送ってます。心の中で。

 いや、他力本願すぎるのもどうかとは思うんだけどね。

 

 幻想郷ってのは妖怪とかの巣窟だし、妖怪とかって利己的なの多いからあまり他力本願だと痛い目を見そうだ。その辺しっかり覚えておかないといけない。

 

 というか魔理沙ちゃんマジでたまには買い物して行ってくれないかなぁ。

 魔女が喜びそうなマジックアイテムも森近君持ってると思うよ。魔理沙ちゃんや霊夢ちゃんがお金払わないから隠してるだけで。

 

 

 

 

 

 月 日 ( )

 

 休日。

 ひとまず貸本屋に行って本を返し借りて、小鈴ちゃんとちょっと談笑してから上白沢さんの所にお邪魔したりして時間をつぶし、気分を変えていつもとは違う定食屋で昼を食べた。

 

 その後、予定通り強くなった日差しの下、砂糖水の入った小瓶と砂糖の入った小瓶。それから鉋と皿とスプーンを幾つかとを布に包んだりして自宅から持ち出し、昨日あらかじめ香霖堂から連れて帰ってきたパッチワーク一号に丁寧に載せた。

 夏満喫計画かき氷である。

 

 予定では、霧の湖にいる氷精チルノを宥め賺して仲間に引き込み、湖の水を凍らせてその氷でかき氷を作る。湖の水はちょっぴり汚いかもしれないが、そこはまぁ幸運使ってでも無害で綺麗な水を選出して。

 んで確かかき氷は逆さにした鉋の上で氷をスライドさせればそれっぽくできたと記憶していたので、これまた昨日香霖堂から手に入れてきた工具で木材を適当にくっつけて、鉋から出た氷が皿に落ちるような台座を作って、かき氷を楽しむという算段だ。

 

 実際はチルノを宥め賺すのに少々手間取り、砂糖水と砂糖が少ないけどチルノとその愉快な仲間達にもかき氷をふるまう羽目になった。チルノの集団の人数が少ない時に話しかければよかったと今になって思う。

 あと台座を作るのに手間取ったり、騒ぎを聞きつけてやってきたわかさぎちゃんや紅魔館の門番の美鈴さんにもあげたり、相変わらず予定通りにはいかなかったがかき氷は美味しかった。

 夏満喫計画は成功だ。これからの本番の夏にも実行していこう。

 

 いやまぁ。砂糖を使いきってしまったので、また買わないといけないのだが。

 結構高かったんだけどなぁ。

 

 しかもその後、門番職務に戻った美鈴さんと湖から眺めているわかさぎちゃんを除いた、すなわちチルノと愉快な仲間たちの五人と一緒に遊ぶ羽目になり、妖精二人に妖怪三人相手に缶蹴り……は缶が無くてできないので、ベース踏みを教えて一緒にやったり、かくれんぼをやったり純粋に鬼ごっこをしたりした。

 久々に全力で走ったし声も出した気がする。

 

 遊んでいる内に気が付けば彼女らの事を呼び捨てにしていたので、なんだか物凄く久しぶりに友達ができた気がする。それに子供の頃を思い出していい気分である。

 

 あとリグルが去り際に「これから夏本番だから虫もいっぱい出てくるけど、なるべく殺さないであげてね」と言ってきたので、極力殺さないであげようと思った。極力。

 

 

 

 

 

 月 日 ( )

 

 休日二日目だし昨日やたらめったら動き回ったから今日はだらける。

 朝帰りの蛮奇さんと一緒に適当な朝ごはんを食べてから寝る。

 

 ……と思ったんだけどたまには自分で昼ご飯作った方がいいよなぁと、なんの根拠もなしに突然思い至り、久々に人里へ食材を買いに行った。

 人里って和食用の食材ばっかりだからあまりバリエーションが無いんだよなぁ。

 紅魔館にお邪魔したら洋食食べられるかなぁ。

 

 んなこと考えつつ適当に安い食材を買いあさった後、一周回って達観したかのような様子の酒屋に寄り、おそらく明日の夜にあるであろう宴会用の酒を買ってきた。

 

 そうそう。

 この頃、幸運を使うだけじゃなく使わなかった幸運がちょっとずつ溜まっていくようになった。ざっと日に四葉のクローバーが一つずつくらいの幸運。

 んなもん茶柱立たせたりするだけで消費される程度の幸運だけれど、溜めてから使えば凄いことになると思う。感覚的に上限は二十葉のクローバーくらいだけど。

 

 なんでその話をしたのかというと、酒屋で溜まってた幸運を使えばお酒を一本おまけしてくれるんじゃないかというがめつい欲を抱いてしまったので、ちょっとばかし幸運を使ってみたのだ。いや、たまにはそんな欲をかくのもいいじゃないか。人間なんだもの。

 その結果、「お前さんもよくうちで買って行ってくれるよなぁ。そうだ、今俺がはまってる酒のつまみをやるよ」と、酒ではなく酒のつまみに結構良いらしい、炒った豆を貰った。

 

 なるほど。面白い。

 なんか今更だけど、幸運がどういう形で反映されるかってのが分からない使い方の方が楽しい。

 

 炒った豆は明日の宴会に持っていこう。買った酒もそこで飲む予定だし。

 

 

 

 

 

 月 日 ( )

 

 いやー今回の騒動も長かったなぁ。

 でもようやく、ようやく霊夢ちゃんがなんとかしてくれたようだ。

 今回の怒涛の連続宴会、気になる犯人はなんと、平穏な地上に別れを告げ地上では忘れ去られた存在である、あの鬼であるらしい。

 宴会にも来ていたので普通に会うことができたのだが、まぁ、やっぱり女の子だった。

 

 童女と言ってもおかしくはない可愛らしいとまで言える外見だが、頭の左右に立派な角が生えており、常に酩酊状態で酒の匂いを漂わせていて、その口調こそどこか幼いが言っている事は傲岸不遜極まりない。

 まさしく鬼らしい鬼だった。

 いや、鬼に会った経験があったってわけじゃないけど、まぁイメージ通りの鬼で安心した。

 

 ただ、鎖をじゃらじゃらとぶら下げ、丸と三角と四角の分銅を先に取り付けている姿はかなり異様だった。何か意味でもあるのだろうか。非常時に武器になるとか?何かの暗喩だろうか。

 

 姿をまじまじと観察しているうちに、ふと昨日のことを思い出して、そしてすぐさま納得した。

 

 昨日使った幸運はここで生きるのかと、懐から酒屋の店主に貰った炒った豆を取り出し、その萃香嬢に話しかけてみたら大層驚かれた。

 「よもや鬼の弱点を覚えている奴が地上にいたとは」とのことで。

 え、そこまで鬼って忘れられてるの?と俺も俺で驚いた。

 

 鬼に金棒とか天邪鬼とか鬼瓦とか、普段使いそうな言葉とか名称にも結構鬼っているし、童話や文学作品に鬼が出てくることも少なくないと思うのだが。

 相変わらず幻想郷は不思議な土地である。文化人類学者とかが発狂して踊り出しそうなくらい。

 

 まぁそんな反応が得られた後、流石に失礼だろうと炒った豆を適当に口へ放り込み、残りは懐に戻して萃香嬢と話をした。ついでに握手もしてもらった。

 いや、鬼って言ったらかなりの有名妖怪だし、やっぱり強いんじゃないかなぁ。そういう存在と酒が飲めるなら飲んでおくべきだし、握手できるならしておくべきだろう。うん。

 

 言うこと言うこと皮肉げでキツい感じの鬼だったが、やっぱりその方が妖怪らしくていいとも思った。まぁ、聞けば今は少々気が立っているらしいので、また後日会う機会があればもうちょっと大人しい物言いだろうと、なぜか八雲さんが教えてくれた。知り合いのなのだろうか。

 八雲さんも底が知れないな。

 

 しかし、伊吹萃香か。

 確か、酒吞童子の別名だか一説だかに伊吹山の伊吹童子ってのがあった気がするが。

 さすがに……そこまで有名な鬼がこんな所にいるはずも無いよな?いたとしても、話では源のなんとかに退治されたはずだし。今際の言葉で有名なのが「鬼に横道なきものを」だっけか。

 よく覚えてないなぁ。鈴奈庵にそういう本あるかな。

 

 本当に幻想郷にはいろんな奴がいるんだなぁ。退屈しないってのが素晴らしい。

 

 

 

 

 

 月 日 ( )

 

 パッチワーク一号を携え人里に行く前に、昨晩鬼の萃香に会ったことを森近君に自慢してきた。森近君ならこう言う話題食いつくかなぁと。

 案の定食いついていくらか鬼という言葉、文字について語られた。(あつめる)という字にも鬼が入っていてこれは(あかね)とも読むらしい。色々言ってたけどそれくらいしか覚えてない。

 でも蒐と言えば、萃香の萃の字も確かあつめると読むんじゃなかったか。抜粋の粋も萃と書いたりしたような。そこまでして集めるという意を強調する意味も分からないけど。

 

 いやぁ、なかなかインテリだなあの鬼。長く生きてるとああなるものなのかな。

 

 森近君の蘊蓄も聞いてて結構面白いのだが、生憎人里へ売りに行かないといけないので、切りが良いところで話を区切り、足早に香霖堂を後にした。

 いや、本当にあの手の話は聞いてて面白いのだが、やっぱり眠くなるというか朝っぱらからはキツいというか。とりあえず後に用事がある時に森近君に話をさせるのはよそうと思う。

 

 出張販売は今日も順調に売れた。

 ただなぁ、さすがにぽんぽん売りすぎなんだよなぁ。もう値が高い奴とかイロモノしか残ってないんだよ。どうしたもんか。下手すりゃ唯一の収入源が途絶えかねん。

 そうなると当然食いっぱぐれるからなんとかしなければ。

 

 今の内に外食を控えて出費を抑え、金を貯めておくべきだろうか。

 それも悪くないような気がするが、それって結局収入がなくなった時に備える策でしかないので、現状の打破には至ってないのではなかろうか。

 そんなわけで知恵をお借りできませんかねぇと、定食屋の店主さんに話しかけてみた。「俺は道具屋じゃねえから何も思いつかねえなあ」という答えしか返ってこなかった。残念。

 

 

 

 

 

 月 日 ( )

 

 昨晩、蛮奇さんらの飲み会に参加してきたのだが、虫を介して嗅ぎつけたのかリグルもやってきた。この間遊んだから懐かれたのだろうか。懐かれた、と言っても幼いのは見た目だけだと思うのでちょっと違うかもしれない。

 

 チルノと仲がいいらしい姫さんとも顔なじみだったので、少しリグルが姫さんと言葉を交わした後、お酒も少し頂いてから俺にまた今度遊ぼうよと言い残して去って行った。

 蛮奇さんと影狼さんが日暮の人脈も見境ないわよねーだの何だのと言ってきたが、幻想郷っていうのは外の世界じゃ会うことのできない存在がぽんぽんいるんだから、仲良くしといた方が人生お得じゃないか。とほろ酔いで熱弁しておいた。

 

 して、今日は飲み会明けではあるものの普通に香霖堂でお仕事なので、酒臭かったら森近君に悪いかなぁと色々考えた結果、酒臭いのはとりあえずリンゴでも食べて誤魔化しておこう。という結論が出た。酒臭いのにはリンゴが効果的だったはず。

 外の世界でならついでにシャワーでも浴びておく所だが、幻想郷、というより長屋の場合、銭湯まで行かないといけないので正直面倒。時間的に空いてるのかも分からないので尚更面倒。

 なので汗を拭いたり顔を洗うだけで支度は済ますことにした。

 

 まぁ夜が本番の妖怪たちと飲み会をしたわけなので、勿論徹夜明けの出勤だった。なので、いつもよりほんの少し雑な仕事になってしまった気がするし、結局カウンターで爆睡してしまった。申し訳ない。

 やはり彼女らとの飲み会は思いつきで行くものではない。

 次の日が休日の日に限るべきであると、今一度思い知ったのである。

 

 そういえば、いつどうしてこういうこだわりを持ったのか妙に覚えていない、日記に日付を書かないというこだわりのせいであやふやではあるのだが、これから夏本番なのでそろそろ幻想郷に来てから一年が経つはずである。七冊目の初めの方を読む限り、大体葉月。

 

 自分で自分を祝ってもどうしようもないのでそういったことはするつもりはないが、お世話になった妖怪らには適当に挨拶しておこうか。でもお世話になった相手多いんだよなぁ。人生で一番濃かった一年だったと言っても過言ではないのだし。

 

 上白沢さんとか森近君に高いお酒買うくらいでいいかな。

 

 ……ここで酒を思いつく辺り、近頃宴会やら飲み会やら行き過ぎた気がする。

 

 暑中お見舞いとお中元も兼ねてしまうか。金ないし。




 萃夢想編、完。
 今回は一般人でも絡めそうなので絡みました。おかげで日暮の知り合いが増えました。キャラ増やしすぎた気もするけど仕方ない。結局キャラの偏りも改善できてないような気もするし……。
 反省点は多い。

 ではまた挿話を挟んで次回永夜抄編です。



 おまけ。
 結構時間かけて考えたけどちょっと違うかなぁとも思って載せなかった萃夢想(萃香自機)のvs日暮戦闘前会話風萃香の台詞。

「私はあんたのことをよく知ってるよ。ずっと見てきたもの。前回はいなかったみたいだけど。
 宴会ではいつも周りの奴らに怯えながらも、律儀に全員に声をかけてたわね。
 人間にしては命知らずで好奇心が強いみたいね。
 でもその割には人ごみが嫌いだなんだ言って、妖怪の時間になる前に帰って。
 行動に揺れがあるのよね。
 人外に、幻想郷の者達に、憧れでも抱いてるのかしら?」



 2016/4/11 一瞬転びそうになったけど立ち直った程度の修正をしました。
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