東方日々綴   作:春日霧

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 ※萃夢想編と永夜抄編の間(夏→秋)に日暮がやってそうなこと※
 ・香霖堂「夏の梅雨堂」with日暮
 ・同上「無縁塚の彼岸花」
 ・日暮幻想郷一周年
 ・萃香嬢と酒飲みくらいはしてる。そして気絶。
 ・そろそろ小町とは会話してる。


 今回は出オチです。(異変が)



その十六 八冊目

 月 日 ( )

 

 大分秋めいてきて朝方がそれなりに冷え込んできた。

 まだ冬用の布団じゃなくてもいいかな。なんてたかをくくっていたおかげで軽く風邪気味である。情けない。でも馬鹿は風邪をひかないので俺は馬鹿じゃない。良かった。

 

 とりあえず今夜からはちゃんと暖かくして寝ようと決心しつつ、鼻を啜り喉の調子がおかしいながらも職場に赴いて働いてきた。

 

 んでその香霖堂での話なのだが、なんか森近君が昨晩は平気だったかい?なんて言うもんだから、あぁ冷えましたもんね。風邪気味ですよ。なんて答えたらどうやら的を外した答えだったみたいで呆れた顔をされた。もう秋だし暖かくして寝た方がいいと思うよとも言われたが。

 

 そして森近君が言うには、昨晩は満月で当然妖怪たちの血も騒いでテンションアゲアゲだった上に、なぜかその満月が長らく夜空に居座って沈む気配が無かったそうなのだ。ついでに夜が明ける気配もなかったそうで。

 頭の上にハテナマークを浮かべつつ「でも夜あけてますよね?」と窓の外を眺めたら、森近君は溜息混じりに「もう終わった話だからね」と言った。どうやらまたいつもの流れだったようだ。

 

 そんな寝てる間に事件起こって解決されてもどうしようもないのだが、やはり霊夢ちゃんと魔理沙ちゃんは酒をたかりに来るのだろうかと冷や冷やしていたが来なかった。まぁ話を聞く限り要は徹夜だったみたいだしお疲れなのだろう。

 

 満月なのは当然自然現象だから、問題はその満月が沈まなかったというところだろう。

 ええと?赤い霧が吸血鬼の仕業で、長い冬が亡霊嬢の仕業で、前回の宴会は結局鬼の仕業だったよな。じゃあ今回の満月は誰だろう。予測立てておこう。

 うーむ。満月だろう?狼男とか?いや、月を止めるんだからもっと凄い感じのなんかだろうな。魔術師とか。もうちょい黒幕っぽい黒幕を期待しておこう。あ、影狼さん大丈夫かな。

 

 というか、満月で妖怪の血が騒ぐというなら森近君も結構危なかったのではなかろうか。いや、それ以前に俺は自宅の隣室の蛮奇さんの事を考えるべきか。大丈夫だったのだろうか。

 帰ってから聞いてみようと思ったが家にいなかった。飲みに行っているようだ。

 

 

 

 

 

 月 日 ( )

 

 あー体調がすこぶる悪い。こんなの久々、どころか幻想郷に来てから初めてではないだろうか。一年間風邪どころか何の病気にもかからなかったから油断していた。

 なんとなくわかる自分の運勢も今は完全に不運の方向に傾いているのが分かる。絶不調というやつだ。幸運にしようにも使う運がないような感じ。

 体調が悪くなるとこうなるのか。怖いな。泣きっ面に蜂とか平気で起こりそうだ。

 

 今日も森近君の所へ行ってパッチワーク一号で人里を駆けねばならぬのだが、こんな体調で人里から出たら不運も相まって悪戯妖精の餌食になってしまうし下手すりゃ命すら危うい……かも。

 かといって幻想郷に携帯電話はおろか固定電話すらなく「今日休みますね」なんて連絡ができない。こういうときどうすればいいのだろうか。テレパシー能力に目覚めるべきだろうか。無理だ。

 

 仕方ないし事後報告で休んじゃっていいかなぁと思ったりもしたが、それでは森近君に悪いなとも思ったわけだ。心配掛けてもアレだし。

 とは言ってもあんまり心配しそうにないなぁ森近君。クールだし。

 

 じゃあ誰かに伝言なり手紙なり届けてもらうか。という結論を出し、まず隣室の蛮奇さんを考え、蛮奇さんは森近君と面識ないよなぁとか面倒事は嫌いだろうなぁということで却下。

 では次……というより人里で頼み事ができるのはあと上白沢さんしかいないんだよなぁ。

 運が良ければ射命丸さんでも通りかかるんだけど。

 

 力振りしぼって適当に身だしなみ整えてから寺子屋に行くか……ああそうだ寺子屋、上白沢さん仕事中じゃん……どうしよ。まさしく不運だなぁ。

 

 もうしょうがないし蛮奇さんに頼もう。仕方あるまい。

 起きてるかなー。

 

 

 

 

 

神無月の一(晴)

 

 昨日死力を尽くして蛮奇さんに助力を頼んだら思ったよりもけん身的に看病してくれた。いや、森近君に伝言してくれるだけでよかったんだけども、俺を布団に押し込んだかと思えばぶつくさと文句を言いつつもおかゆ作ってくれたりして

 

 

 

 いいい

 いろはにほへと

 

 日暮のこの筆?やけに使いやすいね。どこで買ったのか気になる。

 そういえば日暮は外来人だったか。なるほど、外の道具。

 

 というか風邪ひいてるのに日記なんか書こうとしてるんじゃないよ全く。それに思っていたよりって何よ思っていたよりって。一言余計。

 親しき仲にも礼儀ありっていう言葉を贈っておく。

 

 それにしても、幸運が自慢なんだなんて言っておいて案外風邪ひくものなのね。それ以前の話として幸運のくせして幻想郷に迷い込んだりしてるから、幸運っていうのもそこまで大したものじゃないのかもしれないけど。

 それとも、風邪をひく不運が起こる程運を使ったの?

 

 あ、そうだ。お酒一本、看病のお代に貰っとくよ。

 

 

 

 

 

神無月の二(晴)

 

 せっかく昨日手紙みたいに書いてあげたのに今日も寝込んでるとは思ってもみなかった。さっさと風邪治しなよ。早く治さないと奥に隠してる果実酒までもらって行っちゃうよ。

 まぁ熱も引いてきたし明日には治ってるだろうけどね。

 

 そうそう、丁度この間の満月のひと騒動で竹林の奥に隠れてた奴らが出てきてね。なんだか薬師みたいな仕事をしてくれるって言うから、ちゃんと利用して用心しなさいよね。人間ってのはもろいんだから。

 ああでも、日暮の風邪が治りそうな頃に薬の話がくるなんて、今よっぽど運がないのね。同情する。同情しても酒は貰って行くけど。

 

 手伝い程度の料理人の給料じゃ滅多に酒も買えないんだよね。お昼が出るのはありがたいけど。

 

 それじゃお大事に。

 

 

 

 

 

 月 日 ( )

 

 病気で寝込んでいる時のあのまさしく朦朧とした意識と、なんだか世界と隔絶されたかのような気持ちはどうも不思議で、後になって面白さを感じてくる。あとすりおろした林檎マジ美味い。

 

 とかなんとかで二日間も寝込んでいたわけなのだが。はて、これは一体どういうことなのだろうか。確かに一昨日日記を書いている最中に「大人しく寝てなさいよ」と小言を言われつつ日記を取り上げられたのは覚えているのだが、よもや日記に記述までされているとは思わなんだ。

 ついでに言えば酒瓶が二本も強奪されているのもいささか納得しかねる。親しき仲にも礼儀ありという言葉を返しておきたい。酒もそう安くはないのだ。

 

 しかし蛮奇さんの見た目なら給仕で十分稼げると思うんだけどなぁ。というかいくら料理のバイトしててもシフトいれなさすぎなように見えるけど、そのせいなのでは。

 言ったら怒りそうだけど。

 

 そういえば、蛮奇さんは森近君に風邪をひいたから数日間休むと言っていたと伝えてくれたそうなので、今日も大事を取って休んだわけだが、明日には治ったと言いに行こうと思う。淡白なイメージもあるので心配しているかは判断しかねるが、まあ心配させるわけにもいかないだろう。

 

 あと蛮奇さんが言っていた竹林の奥のうんぬんの薬師であるが、今日その一人を見かけた。めっちゃ懐かしいというか親近感すら湧くやもしれぬブレザー姿のウサ耳の女子。

 幻想郷的に言えばまあ妖獣とかそういう類なんだろうけど、どうしてもウサ耳でブレザーって辺りで水商売とか夜の仕事の女の子にしか見えなかったと心の中で謝っておく。いや、なんかスカート短いしさ。言った方がいいのかな。

 言う言わない以前の問題として今日は見かけただけだったし口も交わしてないんだがね。

 なにやら忙しそうにあっちこっちへ行っては人と話していた。表情が硬かったのは竹林の奥に隠れ住んでたって話からしてコミュ障とかそういうのなんだろうかと邪推。

 

 竹林かぁ……たまには行ってみるかなぁ。影狼さんもいることだし話を聞くついでにその薬師とやらを覗きにというか会いに。

 なんだかんだで竹林に入ったことはまだ無かったしな。

 

 

 

 

 

 月 日 ( )

 

 ひとまず今日は森近君に挨拶に行ってきた。というか働いてきた。もう治ったし。

 案の定森近君は淡白な反応だったけど、淡白なりに心配はしてくれていたようだった。「おや、もう風邪はいいのかい?良かった。丁度商品に埃が積もり始めた所なんだ」とか何とか。もうちょっと分かりやすい言い方で心配して欲しいとも思う。

 いや、というかはたきぐらいかけないでどうするんです。商売やる気ないのかこの店主は。

 

 まあ仕事ないよりかマシかなーとか仕事中毒めいたことを考えつつ掃除をし、ふと思い出してパッチワーク一号、というか人里への売り込みの話をした。

 端折って言うとそろそろ限界じゃね?という話。

 

 そもそも無縁塚から森近君が拾ってくるのは森近君が興味を持った物、使えそうだなと思った物であって、その二つを、彼に商売っ気があるのかないのかよく分からない比率で拾ってくるので、当然ながら毎回売りに行く量よりも店に残しておきたいと彼が思ってしまうものの方が多くなってしまうのだ。

 なのでふわっとした感覚だがもう二三回で売りに持って行くものがなくなりそうなのである。あと客の反応もだいぶ悪くなっている。いや、売ってる物が物だしどうもまともな客が集まりにくいというかなんというか。

 

 で森近君も、その辺り僕もどうしようか悩んでいたところでね。なんて言うもんだからもうどうしようもない。仕入れてくる森近君がどうするか悩んでるんじゃあ売る回数を減らすしか無かろうということで、じゃあ月一くらいにしときますかというところで話が付いた。

 まあ給料は減っちゃうけど、雰囲気気に入ってるし別にいいかなと。

 

 しかしどうしたものか。

 今までの働き状況ですら貯金する余裕もほとんどなかったというのに。

 内職でも探すべきだろうか。

 

 帰り際にまたあのウサ耳ブレザーちゃんを見かけた。名前はまだ知らない。

 何やら小さな箱?を各家に置いては家主に話しかけている。よく分からない。なんだろうあの箱。パンドラの箱かな。いや、いくら幻想郷でもそんなもんは無いか。というかそんなもん配るわけないだろう。

 薬でも入ってるのかな。保険の入会サービスみたいな感じの無料配布とか。

 

 

 

 

 

 月 日 ( )

 

 出番が減ることが決定しているパッチワーク一号のお仕事。 

 なんだか寂しく……なるほどでもないかな。いや、愛着はあるけど。

 

 今日は売り払いながら今後売りに来る回数減るんですよーと言ってたらマニアっぽい人ががっかりしていた。いやなんかすみませんと頭を下げつつ、今日は完売して帰った。

 そしてふと手元にある銭を眺め、やっぱり別の職も探しとくべきだなぁと思った次第。

 

 幻想郷に来て一年以上パッチワーク一号で金稼いで生きて来たけど、確かに飢えたりはしなかったけど余裕もそこまで無かったってのも事実。箪笥貯金も思うように貯まらないし。

 酒代を削ればそりゃ余裕だらけだけど幻想郷の人外と仲良くしたいし娯楽も少ないので削りようがない。仕方ないね。仕方ない。うん。

 

 実を言うと果物とか、香辛料とか、数世紀前に高かったであろう物も高い。まあ見るからにこの幻想郷のどこを探しても生産してないだろうなっていう食料が売ってたりするのでどっかで誰かがちょくちょく輸入してるんだろうなって勝手に思ってるけど、そこら辺どうなんだろうか。案外どこかで取れたりするんだろうか。南国の果実なんぞ。

 

 ついでに言うと、それも関係しているが単純に普及されていないという理由で洋食店がかなり少ない。一応パン屋はあるものの少々お高い。のでたまーにしか食べない。

 たまにはカレーライスとか食べたいんだけどなぁ。あってもあんまり美味しくない店ばかりだし。言っちゃあ悪いけども。

 咲夜ちゃんとかに頼めば作ってくれるだろうか。紅魔館、西洋っぽいし。

 

 あっとそうだ。

 あのウサギ耳のブレザーちゃん、うちの長屋にも来たみたいで昼頃長屋にいた花火職人の……だれだったかな。まあ花火さん(仮称)が説明を受けてくれて帰ってきた俺とか他の住人に説明してくれた。

 なんでも置き薬?という形らしく、各家に設置されたその置き薬の箱を定期的に見回って減った分のお金を請求するらしい。ヤバいめっちゃ賢いとか思った。

 中身は長持ちする感じの簡単な薬だけなので、かなりヤバ目の病気なんかになったら迷いの竹林の奥にある永遠亭(?)とやらに来てほしいだとか。いや無理だろと思った。

 

 馬鹿なのか賢いのかよく分からん奴だなブレザーちゃん。

 そこまでして竹林から離れたくないのか……。引きこもりなのかな。







 2016/4/12 アイロンをかけた程度の修正をしました。
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