東方日々綴   作:春日霧

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その二十 挿話

『永遠亭にて』

 

 

 

 その朝、ようやく日の光が差し込めた頃。

 人里での普段着である小豆色の着物に身を包み、首に数巻き包帯を巻いた赤蛮奇は、隣室の住人が自分を呼んでいるのに気付いた。危うく通り過ぎてさっさと出かけるところであった。

 その住人、日暮はなぜか閉めたままの戸の向こうから自分を呼んでおり、よく聞いてみれば何だか苦しげな声である。

 

 仲が良いとはいえ自分は女性であるし妖怪なんだけど、と眉をひそめながらも戸を開ける蛮奇。

 

 正面に向けていた視線を下へ向けると、何だか戦場を横切ってきたかのような服装で自室に横たわり、顔を引きつらせ腰を押さえながら「あ、蛮奇さん。助かった助かった。ちょっと竹林の奥行きたいんだけど、助けてくれない?」とか何とか述べる日暮が、そこにはいた。

 面倒な友人をもったなぁと、蛮奇は溜息を吐きつつ思ったのだった。

 

 

 

 

 

「――それで?何をどう頑張ればその歳でぎっくり腰になんてなるの?」

「だから、運使い果たして不運で不幸を呼び寄せちゃったんだよ」

「もうちょっと具体的に」

「んーと?運を使い果たして、道間違えて妖怪の山の方行っちゃって、厄神様とぶつかって超絶不運状態」

 

 なるほどと頷いた蛮奇は日暮を背負い直す。うめき声が首の後ろから聞こえた。

 

 竹林に連れていってくれと言うくせに下手に動くとめっちゃ痛いなどと情けない顔で述べた日暮を、蛮奇は結局背負って行くことにしたのだ。

 どうせまだ朝靄が掛かる程度には早い時間だし、人里で起きている連中も少ない。一々横で呻かれるよりか背負って僅かに飛んで行った方が衝撃も手間も少ないだろう。と考えた末の結論であった。それに恥をかくとしても自分ではなく日暮だ。

 

「――でもそれでぎっくり腰程度で済むなんてすごいのね」

「程度って言ってもまぁ、その程度でも十分苦しいんだけどね」

「妖怪の手を借りるくらいだしね。……月初めにも手を貸したんだけど?」

「いつも済まないねぇ」

「……それは言わない約束でしょう。だっけ?」

 

 蛮奇はまったくもうと零し、溜息をしながら肩越しに日暮を睨んだ。

 怒りよりも呆れが強く見えるその睨みを受け日暮は、なるほどこれがジト目か。などと関係のない感想を思い浮かべた。謝ってもしょうがないであろうことは明白だからである。

 

 

 

 

 

 つい先日、不運に不幸と災厄が重なり疫病神と衝突し、四苦八苦を味わいながら香霖堂へ赴いた日暮であったがすぐさま身を案じた(もしくは自分の店を心配した)霖之助によって帰された。無駄足だったじゃないかと嘆きつつやっぱり帰りも不幸に見舞われた。

 不幸と一口に言っても大小様々である。

 姿の見えぬ何かに突き飛ばされたりしたのが一番多かったというのが日暮の所感であるが、それ以外にも幻覚を見せられ道を間違えたり踏み外したり、不意に音が聞こえなくなり前後不覚に陥ったり、それらもまとめて妖精の悪戯の結果である。

 妖精が絡まずとも、どこかに落ちていたゴミが風にあおられ飛んで来たり、財布を落としたり野犬に裾を噛まれたり。振り返ってみると一日で日暮は随分と生傷が増えた。

 

 さて、つらつらと日暮が受けた厄による不運を述べたが、香霖堂へ行き家に帰るまで散々な目に遭いつつも日暮はぎっくり腰なんていう身動きの取れないほどの負傷はしていない。ぎっくり腰になったのは帰ってからである。

 シャツを駄目にし、わずかながらお金を入れていた財布を紛失した日暮は、家に帰ってから「これが何日も続くとなれば命がいくつあっても足りない。というかあの厄神は厄を溜め込み過ぎだろ」と文机の脚に小指をぶつけて涙目になりながらも考え込んだ。

 そしてそれを思いついたのは、日が傾き慎重に夕飯を作ろうかなと思い至ったものの、いきなりフライパンが手からすっぽ抜けた時であった。

 

「こうもちまちました不運が連続で来られてもなぁ……。いや、まとめて一気に不運を消費すればいいのか。幸運が使えるんだから不運も使えるんじゃ……」

 

 本人も根拠があったとは言え半ば冗談で言っていた『運を使う程度の能力』であったが、それが確かになってきた今ならば、幸運だけでなく不運も使えるのではないだろうかと、そういうことである。結果がぎっくり腰であるので、推測も間違いではなかったようだ。

 

 

 

 

 

 竹林は人里を出てすぐである。

 背負っている日暮は振動にも弱いのでほんの僅か地より浮いて移動する蛮奇は、人の目を警戒しつつもさっさと竹林に到着した。途中手が滑ったりして背負い直し、そのたびに日暮がうめき声を上げるのはおそらく厄の残り香であろう。

 

「それで?」

「それで、って何が?」

 

 さてそれじゃあ最奥にあるという診療所を目指そうと日暮が(背負われている状態ではあるが)意気込んだ矢先、蛮奇が疑問符を浮かべながら尋ねたのだった。

 

「どうやってその、永遠亭に行く?前行けなかったけど」

 

 前、というのはおそらく二週間ほど前のてゐという兎に出会った時の事だろうと日暮にはすぐ分かった。ゐの字が珍しい方だし兎だし幸運を授けるし、印象深かったのである。

 確かにあの時は目的地であった永遠亭には行けなかった。

 

「けどあれは行けなかったというか行かなかったわけだし、一応もう不運は使いきったからたどり着けない事はないと思うよ」

「へぇ、幸運じゃなくて不運も使えるのね。……じゃあ適当にまっすぐ飛んで行きますか」

「……今さらだけど蛮奇さん結構力あるね」

「女性に言う言葉じゃないよそれ。まぁ日暮が結構軽いのよ。ちゃんと食べてる?」

 

 肩越しに言葉を交わしながら蛮奇は前進した。

 竹は成長が早く前回の経験なんぞはてんで役に立たず、同じような見た目のそれらが大量に斜めに生えているためどうも平衡感覚が狂いそうになるが、こっそりと増やして飛ばした首を数個周囲に配置してまっすぐ飛ぶよう気を付ける。以前宴会の席で竹林に隠れ住む影狼に助言されたのだ。

 

「食べてる?ってか大体蛮奇さんと食べてるじゃん。ただ少し言わせてもらうなら蛮奇さんに食費持ってかれてぅぐっ」

「はいはい。あ、そうだ。今回の分のお酒貰わないと」

「ふぅ。え、また酒持ってくの」

「当たり前でしょ。あ、どうせなら皆で飲もうかな」

「……それならまぁいいけど」

 

 話が妥協点に落ち着き、ほとんど毎日のように会っているのでこれといって話すこともなく、しばらく話という話もないまま押し黙って進む二人。

 やがて、周囲に適当に飛ばした首のおかげでまっすぐ進めている自信はあるが、はたしてこの方向であっているのだろうかと思い始めた蛮奇であったが、正直どうしようもない。

 最悪手慰みに考え始めた弾幕とやらを所構わず放ってみて、先日の兎でも永遠亭とやらの住人にでも見つけてもらうかとは考えていたが、自分程度の妖怪に放てる弾幕なんてたかが知れているし、まかり間違って敵と思われても困る。

 

 背負っている友人が幸運を使えればいいが、などと考え始めた時、それは目に入った。

 薄暗い竹林の中で目立つ白い服と白い髪。それは人型、場所を考えるに妖怪だろうか。

 

「ちょっと日暮、あれ見える?」

「え、あれってどれ」

 

 自分よりも幻想郷の住人に顔が広い日暮に聞けば、あるいは。そう考えた蛮奇が尋ね、日暮は蛮奇の首の横から顔を出し、正面の方をじっと見つめる。

 念のため散らせていた首を近くに寄せつつ蛮奇もじっと見つめていたが、やはり蛮奇には見覚えがない。そもそも影狼でない以上この竹林に知り合いはいない。

 

 少しして、日暮が声をあげた。

 

「あぁ、あれたぶん妹紅さんだよ。妹に紅って書いてもこう」

「字は聞いてないけど……知り合いなの?」

「んー、まぁ一応」

「煮え切らない返事ね」

 

 蛮奇が日暮の顔を覗いてみると、やはり難しげな顔をしていた。

 日暮が知っているというから大丈夫かと思ったが、危険な奴なのだろうか。そう考え警戒心を強めた蛮奇であったが、そんな蛮奇の心境の変化に反応したかのように、竹林に声が響いた。

 

「おーい、そこの人」

 

 蛮奇は、もしかしなくてもあの人影、日暮が言う妹紅とかいう奴が発した声であるとすぐさま分かった。危ない奴ならさっさと逃げるに限るが、日暮が何も言わないので判断しようがない。

 仕方なく小声で日暮へ尋ねる。

 

「ちょっと日暮。妹紅って人、大丈夫なの?」

「大丈夫、って何が?」

「何がって、危険じゃないのかって話よ。さっき言葉濁したじゃない」

 

 そう言うと、日暮は苦笑しつつ答えた。

 

「いやいや、さっきのはまぁ会ったことあるし話したことはあるんだけど、どうも人を避けてる節があって滅多に会わなかったってだけだよ。だから知り合いって言っていいのか分からないけど、紹介してくれたのが先生だしたぶん大丈夫」

「先生って、上白沢慧音?」

「そうそう」

 

 なら大丈夫か。

 蛮奇は肩の力を抜いた。

 

「ねぇってば。聞こえてるでしょ」

「はいはい。何かしら」

 

 再びかけられた言葉に応え、蛮奇は一目で妖怪だと警戒されないよう、飛行していたために浮いていた足を降ろし、歩いて妹紅に近寄った。

 近付くことによってはっきりと見えるようになったその人を見て、日暮はやはり自分の記憶通りであったと安堵の息を吐いた。実はちょっと自信が無かったというのもあった。

 

 妹紅は蛮奇を見やり、やがてその背に背負われた日暮を見ると少し驚いたような表情を浮かべたが、すぐに持ち直して真顔に戻りふと辺りを見ると、突然その右手に火を出した。

 驚いた蛮奇と日暮は揃って体をびくつかせた。

 

「ああごめん。ちょっと暗かったから。で、何だかおかしな格好だけど迷い込んだの?何なら出口に案内するけど」

「ほら、いい人でしょ」

「あんたそこまでは言ってなかった」

 

 蛮奇が背負った日暮を揺らして痛めつける。

 

「ん?なんの話?」

「こっちの話。――で、悪いけどどうせ案内してもらうなら手前じゃなくて奥がいいのよ。永遠亭……だっけ?そこに」

 

 蛮奇がそう言うと、怪訝そうな表情になった妹紅は蛮奇をじろじろ眺めその背で呻く日暮を眺め、そうして納得したように頷いた。

 

「なるほど。その背負ってる奴が病人だったか」

「ぁあいや、どちらかというとけが人ってか。まぁ変わらないか」

「で、どう?場所知ってる?」

「知ってる知ってる。正直あそこにゃあんま行きたくないけど、まぁ病人なら案内してあげるよ」

 

 そう言うと妹紅は二人に背を向け、着いておいでよと声をかけるとさっさと歩いて行くのだった。

 

「ああそうだ。私は妹紅、藤原妹紅ね」

「私は……赤蛮奇」

「俺は日暮ってか、やっぱり忘れられてるのか。前に一度会ってるんだけど」

「え?嘘。ごめんごめん」

 

 

 

 

 

「あー着いた着いた。お、丁度良いのがいる。おーいてゐ」

 

 蛮奇たちが、平衡感覚の狂う変わらぬ景色の竹林をさっさと歩いて行く妹紅について行き、やがて竹林に紛れ込むように建った日本屋敷が見え、妹紅が声をかけた先には日暮達にとって見覚えのある少女が、何やら兎に指図をしている様子があった。

 

「んー?あぁ妹紅じゃない。どうしたの?今日はこんな朝っぱらから殺し合い?私としてはたまに巻き込まれて兎が死ぬからちょっとは気を付けてほしいんだけど」

「いや違くて。……そのことに関してはまぁ、ちょっとは考えておくけど、ほら、お宅のお師匠様とやらにお客さん」

「お客さん?」

 

 てゐが妹紅の背後に目をやれば、そこにいたのはどこか見覚えのある顔の二人組。

 

「何?男女が密着しちゃって。恋の病の特効薬は取り扱ってないよ」

「違うわよ。ぎっくり腰ですって、こいつが」

 

 蛮奇が背中の日暮を顎で示しながら言うと、てゐだけでなく妹紅も驚いた表情を浮かべた。

 

「……ぎっくり腰って若くても患うのね」

「……なんで連れてきたあんたが驚いてるのさ」

「まぁ類稀な不運があれば、若くても患うみたいっすね」

 

 日暮がそう言うと、妹紅は納得したようなしてないような声をあげ、思い出したようにてゐに向き直った。

 

「んじゃあ、私は帰るから。後よろしくね、てゐ」

「はいはい。いつもそんな風に何事もなく帰ってくれるといいんだけどねー」

「そりゃあいつ次第だよ」

 

 そうして妹紅は手を振り蛮奇と日暮にも挨拶をしてから、来た道とは別の方へやっぱりしっかりとした足取りで姿を消した。迷いの竹林を迷わずに歩けるほど慣れているようであった。

 ちろちろと見えていた妹紅の手の火も見えなくなると、てゐが再び二人を見やり、やっぱりどこか見覚えがあるなと思いながらも自己紹介をした。

 

「私はさっき呼ばれてた通りてゐ。因幡てゐだけど……お二人さんどこかで会ったかな」

「十日以上前だけど、竹林で会ったわよ」

「まぁそっちが名乗って喋っただけで、こっちはさっさと帰ったから名前知らないだろうけど。俺は日暮。背負ってくれてるのは赤蛮奇」

「日暮と赤蛮奇ね。よろしくー。んじゃこっちね」

 

 てゐは辺りに留まっていた兎に片手で払うような仕草をして散らすと、身を翻し日本屋敷、永遠亭の中へと入って行く。そうしててゐの先導の下、蛮奇と日暮はさっさと門をくぐり戸をくぐり中へ入った。

 戸口の前でてゐは、それなりに大きな声をあげた。

 

「おーい、お師匠様ー」

 

 しばらく何の反応もなかったが、やがて足音がして、戸口から見える廊下の向こうから、左右で赤と青が分かれており、更に上半身と下半身で左右の入れ違っているという珍妙な服装をした銀髪の女性がやってきた。

 彼女はちらと視線を蛮奇と、背負われた日暮に向けてから、大声をあげたてゐを見やる。

 

「こんな早くからお客さん?元気そうだし患者には見えないけど」

「これでも患者だってさ。口は回るけど腰が回らないって」

 

 てゐがおちゃらけた風に述べると、女性の視線が蛮奇と日暮へ向く。

 蛮奇が口を開くよりも先に、日暮が顔を出して話した。

 

「えーと、あなたが話に聞くえいりんさんですかね。人里に住む日暮です」

「ええ、私は永琳だけど。私の名前ってもうそんなに広まってるの?」

 

 幻想郷も侮れないわね。などと零した永琳。

 しかし日暮が彼女の名前を知っているのは、香霖堂に訪れた霊夢と魔理沙から話を聞いていたからであって、正直一月ほどではまだまだこの竹林の奥の薬師の名前は広まっていない。

 薬の効き目が確かであるのは、何人か使った人たちから広まり始めているようではあるが。

 

「ええと、それでですね。不幸中の幸いって言っていいのか知らないんすけど、まぁまぁ軽めの症状ではあるんで自力?でここにはこれたんですが、診てもらえれるって話で合ってますかね」

 

 俺どうも人里の人とあんま話さないんで自信が持てないんですけど。と続けた日暮に蛮奇が本日数度目の溜息を吐いた。なんで妖怪の自分より人間の知り合いが少ないんだ。と、蛮奇はちゃっかりバイト先の店員を自分の知り合いにカウントして日暮を憐れんでいた。

 

「合ってるわよ。……まあここではなんだし、奥へ行きましょうか」

「よし、じゃあもう私は別に――」

「てゐ。ちょっとお茶でも入れて来て頂戴」

「――は?いやいや、そりゃ鈴仙の仕事じゃ」

「ウドンゲには姫様の相手を頼んでるのよ。姫様のご指名でね」

 

 永琳のその言葉で、てゐは溜息とともに肩を落とし、ふてくされたように両手を頭の後ろに組みながらさっさと廊下の奥へと消えて行った。「私ともあろう兎が、不運だなぁ」という声が最後に聞こえた。

 

「じゃ、着いてきてね。さっさと診ちゃうから」

 

 

 

 

 

「なるほど。レイセンは鈴に仙人の仙、優曇華の花と同じ字を書いて、イナバはカタカナ」

「は、はい。そうですけど……」

「日暮、いい加減初対面で漢字聞くのやめなよ」

 

 永琳に連れられ、一応診療室という扱いになっている部屋についた日暮は、何やら適当に診察を受け、驚いたことにぎっくり腰だけでなく僅かながら足の指の骨も折っていたという驚きの事実を知り思い出したかのようにやってきた痛みを味わった。

 しかし彼女は日暮の予想を大きく上回る程凄い人物だったようで、しばらく苦痛に涙を流していると、永琳の指示により薬を入れた袋をいくつか持ってきた鈴仙がやってきて、手渡されたをれを日暮が飲むと驚くほど痛みが消えた。

 さすがに即効ではなかったが、先ほどまでの痛みが嘘のようであった。

 

 ちなみに、てゐはお茶を持ってくるとさっさと姿を消したので、呼ばれた鈴仙が仕方なく仕事をしていた。

 

 

 そうして応接間のような部屋へ場所を移し、渡された薬を片手に蛮奇と合流した日暮であったが、いつもの癖とも呼べる新しい知り合いに名前とその漢字を聞いて回るという奇妙なことを始めたのであった。

 ちなみに永琳には診察の際に聞いている。

 

「そうは言ってもさ、俺の趣味って日記ぐらいしかないわけだし、日記に今日の出来事を書くとしたらやっぱり今日会った人の人名は欠かせないわけじゃん」

「カタカナでいいじゃない」

「俺が嫌だ」

 

 すでに己の能力で波長を読み、二人が妖怪と人間であることを知っている鈴仙は、おかしな二人組だなと思いつつ同時に妖怪と人間でもこうも仲良くなるんだなと思った。

 また、霊夢たちから聞いたらしく、自分が月の兎であると知っていて握手を求めてきた日暮はこの屋敷の奥にいる姫様を知ったら、やっぱり握手をしたがるんだろうなとも思った。

 

「ほら、いい加減帰るわよ」

「まあそう焦らずにさ」

 

 なぜか用が済んでも帰ろうとしない日暮と、その後もしばらく話をする鈴仙であった。





 ではまたいつか



 2016/4/12 片仮名のカを漢字の力にする程度の修正をしました。
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