東方日々綴   作:春日霧

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その七

 月 日 ( ) 雪

 

 今日も今日とて物静かな振り方ではあるが遠慮なく振り続ける雪である。

 イメージとしては細いくせに頑丈なピアノ線。ごめん、自分でも何言ってるか分からない。

 

 まあつまり相変わらず寒々しい春である。一体いつになったらコートをしまえるのだろうか。

 

 ここのところ相変わらずパッチワーク一号は積雪にやられてお休み中であり、俺が修復中のパッチワーク二号は後輪とサドルを交換できたので残すところ前輪のみであるが、まだまだ目処は立っていない。

 そして積雪と立地により閑古鳥が冬でも鳴き叫んでいるので、もはや仕事というより森近君の生存確認に行っているようなものだ。掃除とかもしているし。

 あとやっぱり自宅のストーブの燃料がもったいないので、香霖堂のストーブで温まりにいっているようなもの。

 

 はやく冬も明けないだろうか。レティさんには申し訳ないが。

 

 秋にはあの姉妹の神様がいたし冬にはレティさんが目覚めてくるが、やはり春にもそういった季節特有の妖怪やら妖精やら神様がいるのだろうか。楽しみだ。

 夏に幻想郷にやってきたので、春になれば丁度四季折々の幻想郷を楽しみはしたことになる。

 

 夏に夏らしい向日葵の咲き誇っている所へ見に行きたいという気もあったが、あそこは稗田邸で稗田嬢から教わった危険区域なので見に行けていないという心残りはある。

 秋にはしっかりと妖怪の山の紅葉を見たし、冬の雪景色は現在進行形で見ている。

 

 春の桜が楽しみだ。

 

 

 

 

 

 月 日 ( ) 雪

 

 今日は通勤中にレティさんにあった。相変わらず美人。

 しかも楽しそうに雪だるまを作っていたものだから魅力倍増。嫁に欲しい。

 俺も隣に雪だるまを作った。

 

 そんな癒される時間の後、しばらく世間話をしたのだが、その中で「もういい加減に春にならないかしら……」と憂いに満ちた表情でぼやいていたので、やっぱりこの気候は異常らしい。

 冬に絶好調になる妖怪と言えど、自然の摂理には納得しているらしく春が来るのもやぶさかではないらしい。というかいつもより冬が長くて疲れているようだ。

 

 冬の妖怪ですら辟易としているというのはかなりヤバいのではないだろうか。

 

 この隔離された土地で異常気象をもたらすほどの環境汚染やら何やらは無いだろうし、どうせまた以前の赤い霧みたいなファンタジー要素満載な事件なんだろうと推測。

 ……霊夢ちゃんに頼めばなんとかしてくれるだろうか。

 でもあそこ遠いし、誰も通ってないだろうから雪も積もってるだろうし。

 

 というかあんな偏狭な場所に長い冬と積雪で押し込まれていたら食料も枯渇するのではないだろうか。つまりその内食料を探しに山を下りてくる獣の如く人里へやってきたりするのでは。

 でも食料探してる獣って気性荒いよね。

 

 森近君にそういえばもう四月入ってたんですねーと話を振ると、「それどころか明日からもう皐月、五月だよ」とありがたい情報をもらった。

 嘘だろぃ。五月で雪降っとるんかいな。霊夢ちゃーん!

 

 やっぱり売り上げがゼロなので給料は雀の涙ほどであった。

 森近君の苦労も分かるのでこれだけでもありがたいものだ。

 

 

 

 

 

 月 日 ( ) 雪

 

 休日。

 しかし休日の方が自室にこもっている分、ストーブの燃料を普段より消費してしまうのであまり嬉しくないというのが最近の心境。

 しかも俺の休日のスケジュールを長い付き合いで把握してしまった蛮奇さんが、休日に限って俺の部屋のストーブに温まりに来るので、なんだか釈然としない。

 まぁまぁそんな顔しないでよ、と蛮奇さんが皮をむいた蜜柑を俺に差し出してきたが、その蜜柑も俺の買った物である。

 もうすぐ冬も明けるだろうと予想されていた頃に安売りされていたのを大量に買ったというのに、蛮奇さんのせいでもう残り少ない。

 

 姫は人魚だし寒いのなんてへっちゃらだろうし、影狼は冬眠でもしてるんじゃないだろうか、というのが蛮奇さんの弁だが、要は寒い時に霧の湖に行きたくないという事だろう。影狼さんが冬眠しないだろうという予想は既に立てているのだ。

 そうなると行き先が俺のところしか無いって辺り、彼女も友達少ないよなぁとなんとなく同情のこもった目で見てしまう。

 

 ……と書いてはみたが、そういえば俺も蛮奇さん以外友達いないじゃないか。

 いっつも香霖堂で働いている俺は農作業やら何やらやっている人里の人たちとの交流があまり取れていない。更に言えば、香霖堂で働いているというだけで何やら尊敬した目で見られたりもしているから何故か敬語を使われる。

 上白沢さんには正直頭が上がらないし、前紹介された妹紅さんは俺の活動範囲とかみ合うことが少なくあまり会う機会が無い。

 

 では人里の人以外ではどうかと考えてみても、森近君は完全に尊敬するべき年上とか上司とかそういう相手だし、魔理沙ちゃんとか霊夢ちゃんは完全に妹分というか近所の娘っ子みたいな感じだし、紅魔館のあの主従は正直怖い。

 霧の湖の妖精たちは可愛げがあるんだけど、あれも妹分というか、近所の小学校の子どもたちって感じだな。話相手にもなりゃせんだろう。

 

 あれー?友達いないなー。

 あ、いやでも森近君とは前に何度か飲んだことあるし、友達ってことでいいんじゃないかな。半人半妖っていうから見た目と年齢全然違うんだろうけど、見た目の年齢は俺と近そうだしね。

 

 とまぁ自分の交友関係について蛮奇さんと談笑しながら考えたりしていただけの、何とも怠惰な一日でした。いやぁ、休日ってのはいいね。

 

 夕飯は蛮奇さんからも食材を借りて、気温的にはまさにベストだが暦的には正直言って微妙な鍋を作って二人でつついた。ぶっちゃけ猫舌なので熱い汁物は苦手なのだが、蛮奇さんが食材を持ってきて鍋食べない?と聞いてくるのだから仕方がない。

 いつだってどこでだって男性は女性に弱いのだ。

 数少ない友人だしね。

 

 

 

 

 

 月 日 ( ) 雪

 

 またもや休日。

 蜜柑とストーブの仕返しだとばかりに朝方から蛮奇さんの部屋にお邪魔して、食材を頂き朝飯を作り、ストーブの前で暖まったりしていたが、影狼さんの様子見を理由にストーブを消されて外に連れ出されてしまった。ひどい人だ。

 

 とは言っても霧の湖で落ち合うのでないとすると、影狼ちゃんがいるのは迷いの竹林と言うこととなり、迷いの竹林は迷いの竹林故に、迷いやすいのだろうと小学生でも理解できる。

 どこにいるのかもわからない影狼ちゃんを竹林の中で探しまわるのは得策ではなかろう。

 

 という俺の説得により予定はあっさりと変更になり、人里散策in冬景色と相成った。

 無論昼飯代は俺持ちになった。フェミニストとして当然のことである。でももうしばらく勘弁な。収入が減ってるので余裕が……。

 

 昼食後この寒い中霧の湖にでも行かない?とか言い出した蛮奇さんと人里を出て歩いていると、レティさんが暇そうに惰性で雪だるまを作っていたので三人で雪遊びをした。

 

 まぁたまにはこんな日も悪くないだろうということで。

 

 夕飯はまたもや蛮奇さんと二人で鍋をつついた。

 昨日は白菜やらお肉やらの鍋だったが今日はストレートにおでんだ。

 

 重ね重ね書くが俺は猫舌なのだが。

 それを知ってか知らずか、小皿に具を取り分けて冷ましている俺の目の前で、美味しそうにおでんを食べる蛮奇さんだった。

 

 

 

 

 

 月 日 ( ) 雪

 

 出勤。

 さてさて森近君は生きてるかなーと香霖堂を訪れたが、相変わらずじめっとした室内で寒々しく本を読んでいた。ストーブをつければいいのに。

 森近君も燃料が尽きるのを危惧して節約しているのかもしれない。がしかし、ついてないと当然寒いので勝手知ったる俺がストーブをつけた。

 

 その後俺はスコップやらを手にして、香霖堂周囲の雪かきを始めた。

 スコップなどで目に付く場所の雪を遠くへ放り捨て、屋根の上の雪も適当に放り投げる。ああ腰が痛いし腕が痛いし息が上がる。俺は肉体労働は苦手なのだ。

 

 それらを終えてから室内を掃除したり商品の手入れをしたりしていると、まぁ客が来なくても半日くらいは潰せる。結構雪かきが時間を喰う。

 これで後は店の片隅に椅子を置いて座り込み、本を読んだりしているだけの簡単なお仕事なのだが、夕暮れ時に店の扉が開き、霊夢ちゃんでもなく魔理沙ちゃんでもない顔が覗いたので俺も森近君も驚いた表情をしてしまった。

 

 客は紅魔館のメイドさん咲夜ちゃんであり、食材を求めて人里にでかけたついでに香霖堂で何か面白いものが無いか探しにきたついでにここの所の気象について意見を聞きに来たらしい。やけについでが多いな。効率重視ということだろうか。

 森近君が言うには、少し前にレミリア嬢を伴って来たらしいので、つまり今日は話を聞きに来たのが本題と言う事だろう。

 そういうのは森近君の専門分野だろうと思ったので、森近君に話を振って俺は適当に手に取った本を読むことにした。案の定変な本であった。

 確か「非なんちゃら型計算機の未来」だとかなんとか。

 中身を見たが完全にPC関係の専門書であった。意味が分からなかった。何故あんなのを森近君は読めるんだ。しかも全15巻。

 絶対これ本屋で売れなかっただろう、こんな専門書をシリーズ化するなんて正気の沙汰じゃない。とか思いつつ俺はそっと本を元の場所へ戻した。

 

 どうやら森近君は森近君なりにこの異常気象について考えていたようで、いつも外の道具に関して述べている突拍子もないことではなく、それなりに筋の通った話をしていた。そうか。彼はやはり幻想においての知識が専門なのか。

 

 あと咲夜ちゃんは紅魔館の暖炉などの燃料がこのままでは尽きるかもしれないのだと言っていた。このまま続くのであれば原因を突き止めてとっちめに行くとも。

 メイド服の女性がとっちめるのか……スカート持ち上げたら手りゅう弾が転がってきたりしないよね。この幻想郷に重火器は無いと信じたい。

 

 まぁ、俺には関係ない話なんだけどね!

 

 今日は客は来たが話を聞いただけで満足して帰って行ったので結局売上はゼロ。お眼鏡に適うものは無かったようだ。残念。

 

 

 

 

 

 月 日 ( ) 雪

 

 案の定パッチワーク一号は雪の下であった。

 今日も店番。

 

 しかも今日は来客ゼロ。ぶっちゃけ暇だった。

 

 この調子じゃあ冬の次に夏が来そうですねぇと森近君に話しかけて、そのまま無駄話に興じた。さすがに森近君も雪が積もりまくっている中無縁塚へ行くのは嫌なようで、ここ最近はずっと香霖堂の中にこもって引きこもりへの道を歩んでいる。そのせいで森近君も退屈に思っているようで、霊夢ちゃんと魔理沙ちゃんと、あの咲夜ちゃんがなんとかしてくれないだろうかとぼやいてた。

 

 俺も激しく同意である。

 でも霊夢ちゃん、あんな寒そうな巫女服なんだし、さっさと解決してくれないかなー。

 

 どうせ今回のこれも妖怪とか神様とかすっげー輩のせいなんだろう。(と勝手に推測)

 前にあった赤い霧のヤツはなんでも紅魔館の主、レミリア嬢が出した日光避けに出した霧だったらしいが、今回の長い冬と言いその赤い霧と言い、なぜ毎回農作物に影響を与えるレベルで変なことをぽんぽんとするのだろうか。

 もう冬の作物も収穫し終えているし、かといってこれでは春の作物も夏の作物も上手く育たず、冬が明けたらまた物価が上がってしまう。大変だ。

 

 ちょっと腹が立ってきた。こちとら金も稼げんと言うのに。

 冬眠の一つや二つしておくべきだろうか。この幻想郷でならできる気がする。

 熊の妖怪とかいたら是非教えてもらおう。

 

 

 

 

 

 月 日 ( ) 雪

 

 そういえば、この雪も全然止まない。小降りだったり大降りだったりはするが基本的に降りっぱなしだ。実は冬が終わらないのではなく雪が終わらないという話だったりして。

 鶏と卵のアレだ。

 

 さて今日も出勤だ。

 前にレティさんが暇つぶしに作った雪だるまが未だに道に残っていたが、顔や手が取れていた。折角なので直して行った。

 射命丸さんに会ったら写真撮影を願いたいところだ。

 そうだ。パッチワーク二号が完成したらカメラを手に入れるのを目標にしよう。

 

 がしかし森近君に聞いてみれば、カメラなんて使っているのは新聞を作っている天狗達だけなので、要は現像の技術を持っているのは妖怪の山の天狗達だけであるという話だ。

 それは困った。フィルムは確か臭化銀だか何かが光学的な変化でうんぬんかんぬんな仕組みだったと記憶しているが、化学は嫌いだったのでよく覚えていない。それに現代人故にデジタルカメラの方が馴染み深いのでフィルムカメラの現像なんてもちろん見たことない。

 

 この幻想郷でデジタルカメラを手に入れても、まともなパソコンもないしプリンターもないだろうから、意味はないと思う。前に聞いた妖怪の山の河童達なら何とかできるというが、妖怪の山は俺の中で危険だと記憶されているので近付きたくない。

 いやまぁ、霧の湖は妖怪の山の麓だから、見る分にはよく見るんだけど。

 

 仕方ない。パッチワーク二号が完成したらまた考えよう。

 

 今日も客は来なかった。

 給料の少なさを見て、俺も森近君も早く冬が明けないかなぁ……と窓の外を眺めながら溜息をついてしまった。

 

 溜息をすると幸せが逃げると言うが、幸せが逃げたから溜息をするのだ。







 2016/4/11 どこかしら修正。
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