東方日々綴   作:春日霧

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その八

 月 日 ( ) 雪

 

 休日。

 

 寒いので朝からストーブをつけてだらけていると、やっぱり蛮奇さんが部屋に暖まりにきた。もはや恒例である。男性の部屋に女性が入り浸るということに何か抵抗は覚えないのだろうか。ああ、妖怪だものね。

 

 幻想郷の妖怪とかって結構美人だけど、人里の人達は妖怪に惚れたりしないのかね。例えば子供の頃に霧の湖の妖精たちと一緒に遊んだりしたら、男の子なんかは平気でチルノちゃんとか大妖精ちゃんに惚れると思うんだけど。以前森近君は風当たりが強いと言っていたけど、女の子なんかはきっと香霖堂に入ったら間違って森近君に惚れちゃうかもしれない。子供は純粋だし。

 中身の偏屈さはともかく外見は美男だからね。森近君。

 

 と言う話を蛮奇さんにしたが、蛮奇さんは人間との交流が少ないらしい。なんとなく知ってたけど。あと俺は部屋が隣だったから隠れるも何もなかったけど。

 

 でも蛮奇さんのミステリアスな感じも、結構知る人ぞ知る美人みたいな扱いで人里の男性に人気かもしれないよ。と言ってみたが、なら日暮のミステリアスな感じと丁寧な接客態度で、人里の女子に人気かもしれないわよ。と返された。

 なるほど。やはりここは幻想郷ではなく桃源郷、いや理想郷……?

 

 一度くらいはもてたいものだ。

 

 あぁ、そういえば幻想郷にバレンタインデーは無かったな。そもそもチョコがあるかどうか怪しい。あれはまあ元が聖バレンティヌスにまつわる西洋の行事であるから、和風のこの人里では流行りにくいだろう。

 

 

 

 

 

 月 日 ( ) 雪

 

 晴れの日が恋しくなってくる休日。

 長屋の男手が少ないので俺も駆り出されて長屋の雪かきをする。

 

 しているそばから雪が積もっているので世の無意味さを理解させられた。腰が痛い。

 

 その際同じ長屋の、確か昔住んでいた家が焼けて長屋に住み着いた大工の男に珍しく親しげに話しかけられた。いや、普段嫌われているというわけではなくて、会う機会が少ないのでどこか他人行儀であったということだ。

 で、滅多に話さない人から親しげに「お、日暮さん日暮さん。お疲れさんです」みたいに話しかけられて俺はかなり警戒して様子を伺ったのだが、話の内容は丁度俺が昨日蛮奇さんと話した内容であった。

 つまり色恋沙汰。男のくだらない話である。

 

 曰く、この長屋の神出鬼没なクールガール赤さんとどう仲良くなったんだ。とか、赤さんと一緒に夜中人里を出て行って昼頃人里に戻ってくるってのは一体どういうことなのか。とか。

 別段隠すことでもないかな……と思ったが、そういえば蛮奇さんは妖怪だということを大っぴらにはしていなかったなと思い返し、適度にぼやかして話した。

 

 なんとなく長屋の男等と仲良くなった。

 

 その話の中で上白沢さんについても聞かれたのがきっかけで、そういえば最近上白沢さんに会ってないなと思い(とは言っても二週間ほど前に会ってるが)昼過ぎに上白沢さんのお宅にお邪魔して、適当に世間話をしてから夕飯もお邪魔する約束を取り付けて、んでもって一度帰った。

 そしてせっかくだから寒がって毛布にくるまっていた蛮奇さんも誘って、二人して食材を持ち寄って上白沢さんのお宅で再び鍋をつつくことになった。

 

 やっぱり熱いのは苦手だけど、大人数で食べるには鍋が一番楽なんだからしょうがない。

 暖かいし。

 

 

 

 

 

 月 日 ( ) 

 

 今日も今日とて雪だらけであり、春が恋しいと思いつつ香霖堂の店員としての職務を果たし、無駄話に花を咲かせていた。無論客は来なかった。

 まぁここまではいつも通り。日常である。

 

 しかし帰り際、朝方はずっと降っていた雪が止んでいたのだ。

 これはもしやと思いつつ帰路に着くと、あの雪だるまの所でちょっぴり疲れた様子のレティさんと遭遇。少し話をした。

 やはり雪が止んだのは霊夢ちゃんと魔理沙ちゃん、それから咲夜ちゃんが頑張った結果らしい。レティさんも冬の妖怪ということで弾幕ごっことやらの相手になりやられてしまったそうだ。まぁ三人相手は辛そうだなと思う。

 

 ふむ。ということはついにレティさんも次の冬までお休みするのだろうか。

 むむむ、と考え込んで一つ思いついた。

 レティさんに明日またここに来てくださいと約束しておく。あとは俺の運次第。

 

 蛮奇さんは俺の仕事のパターン覚えているけど、俺は蛮奇さんの仕事のパターンよく知らない。明日は休みだっただろうか。

 多分ランダムに組めるタイプのシフトなんだと思う。

 

 しかし、彼女らが解決してくれたのか……。

 今回はちゃんと覚えているから、香霖堂に何本か酒を持って行くか。金が厳しいけどまぁなんとかなるだろう。うん。朝飯抜くという手もある。

 

 

 

 

 

 月 日 ( )

 

 今日も仕事なんだけど、雪解けも始まってくれそうだからちょっと仕事をさぼってまずは酒の買い出し。前回と同じのを奮発して三本買う。俺の食費が吹っ飛ぶ。

 

 そしてどうやら休みだったらしい隣の部屋の蛮奇さんの毛布を剥ぎ取って顔を洗わせる。妖怪だから朝から動くのはキツいだろうけどまぁ勘弁してもらう。その後、少々不機嫌な蛮奇さんを宥めつつ雪だるまの所へ向かった。思ったより不機嫌だった。

 

 俺が何をしたかったのかと言うと、この間雪だるまを見て写真を撮りたいと思ったことから連想して思いついた、一年お休みのレティさんとの記念撮影であるが、当然ながら俺はカメラを持っていないし蛮奇さんもレティさんもカメラを持っていない。

 じゃあどうするのかと言えば、そこはまあ今日一日分の運を使い果たして発動する俺の幸運で射命丸さんを呼んでしまおうというだけのことである。おそらく問題はない。

 何、射命丸さんなら昨日解決した異常気象について調べているだろうから、冬の妖怪であるレティさんを探していても何の違和感もあるまい。ちょいとばかし幸運であればカメラを持った射命丸さんが丁度やってくるということもあるだろう。

 

 実はここ一年くらい、自分の幸運さを使いこなす努力をしてきたのだ。何せ仕事中はよく森近君が、えーとなんだっけ?確か「道具の名前と使い道が分かる程度の能力」(たぶんニュアンスはあってる)みたいな感じの能力をぽんぽん使っているのだ。一介の男性として異能力に憧れを抱かずにはいられない。

 

 その努力の結果、俺は運を使いこなすことに成功しつつあるのだ!我ながら凄いと思う。まぁただ一日分とか一時間分の運を前借りして凝縮して幸運になれる程度なんだけど。

 というのを蛮奇さんに話したら「首飛ばすだけの私よりは凄いんじゃない?」と拗ねた感じで言っていた。……いや、首飛ばす方が凄いのでは。

 

 で、俺の今日一日分の幸運を使って射命丸さんの召喚に挑戦してみた結果だが、なんと上手くいった。雪だるまの前で昨日の話をしているレティさんと蛮奇さんの近くで、腕組みをしてうんうん唸っている俺。そんな所に颯爽と現れたマフラー装備の射命丸さん。

 マフラーするんならスカートの下にタイツとか履けばいいのにと思ったがもちろん口には出していない。生足は魅力的である。蛮奇さんも。

 

 いやぁ上手くいったなぁと達成感に満ち溢れている俺だったが、その後早速不幸に見舞われた。代わりに蛮奇さんが射命丸さんに頼みたいことがあるのでうんぬんかんぬんと説明をして、その癖して写真に写りたがらない蛮奇さんも取り押さえつつ、写真を撮ってもらった。

 

 その後は仕事なのでレティさんや蛮奇さんと別れて香霖堂へ向かおうとした俺だったが、今の俺の運勢は最悪であることを思い出し、手の内の酒瓶は射命丸さんに届けてもらった。

 

 そしてその後、香霖堂にたどり着くまでに俺が転んだのは三回。妖精にいたずらされたのは四回。そして香霖堂のドアノブに手をかけた途端、屋根の上に積もっていた雪が降ってきた。

 

 その後香霖堂では、俺と森近君、射命丸さんの三人で今回の長い冬に関しての愚痴を吐きまくる飲み会が始まり、予想通りやってきた霊夢ちゃんと魔理沙ちゃん、あと予想外であった咲夜ちゃんも交えての軽い宴会になった。さすがに狭いので香霖堂の裏手に出ての酒盛りと相成った。

 

 そこには大きな桜の木があって、ようやく冬が終わったのでその内咲くだろうとのことで、なんとも春が楽しみになる情報を頂いた。

 

 いろいろ話したのだが、なんだか長くなったので割愛しよう。

 日記とは短くあるべきだ。

 

 

 

 

 

 月 日 ( )

 

 いやぁ今日は仕事だったが、頭が痛かったな。

 朝昼と食事を抜いて酒を胃に入れたのもまずかった。ついでに運も悪かった。

 

 昨日日記を書いていた時はまだ平気だったんだが、一睡して起きてみるとアルコールが吸収されたからなのか知らないが、酷い二日酔いになってしまっていた。

 

 なので今日一日しかめっ面で仕事をこなしていた。

 半人半妖である森近君は健康だったし、おそらく霊夢ちゃんも魔理沙ちゃんも咲夜ちゃんも、元気いっぱいで今日を過ごしているに違いない。

 

 あーだこーだ言いつつも家に帰って寝るというのは従業員精神に反する行為であり、看過できぬ。それに、今日は夕方に射命丸さんが写真を現像して持ってきてくれる予定だったのだ。

 ならば待つしかあるまい、といつも以上に脱力して窓際に置いた椅子に沈み込むように座り込んで、窓の外を眺めて過ごした。

 

 そして日が半分以上沈んだ頃、香霖堂にやってきたのは平生通りの射命丸さん。聞けば天狗は鬼の次くらいに酒に強いのだとか。

 きっと天狗達はウィスキーとアブサン、ジンを合わせたアルコール濃度の高いカクテルのアースクエイクすらも、軽く飲み干してしまうに違いない。

 俺はそんなもん頼んだことすらないが。

 

 貰った写真はレティさんと俺と蛮奇さんの記念写真が三枚と、その後の香霖堂での飲み会の写真が幾つか。頼んだわけではないが、昨日撮った物を全部現像してきてくれたようだ。

 香霖堂での写真は森近君の分も現像してきてくれていて、感謝してもしきれない程であったが、代わりにここ最近あった新聞のネタになりそうな話を聞かせてくれと頼まれたので、後日お茶でもしましょうということになった。今のうちにここ最近の日記を読んでネタになりそうなことを思い出しておく。

 

 その後すぐに射命丸さんは帰っていったのだが、別れ際に俺は昨日の写真を新聞に使わないよう頼んでおくのを忘れなかった。抜かりはない。

 

 そして帰り際に雪だるまの所でレティさんに写真を、そのままでは不便だろうからとあらかじめ霧雨店で買っておいた封筒に入れて渡す。

 喜んでもらえたようで、とても綺麗な笑顔でありがとうと言ってくれた。嫁に欲しい。

 

 帰宅後、蛮奇さんに写真を渡した後、夕飯を少なめにして頑張って胃に流し込んだ。

 明日には不調も治っているだろう。

 

 

 

 

 

 月 日 ( )

 

 さて今日は休日。

 射命丸さんとお茶するという予定があったりはしたが、それ以外は至って普通な休日そのものだった。人里ではようやく冬が終わったとのことで、どことなく浮ついた雰囲気があるが、それ以外はやっぱり普通だった。

 

 昨日貰った写真を入れるためのアルバムが欲しいが、そんなものカメラのない人里にあるわけもなく、ならばと代用品になりそうな物を探す。

 結論から言うと見つからなかった。まぁ当然だ。

 

 しかし、もしかしたら天狗の集落にはあるかもしれない。

 

 そう思って昼頃お茶した射命丸さんに聞いてみれば、やっぱりあった。彼女ら天狗はカメラを持って写真を撮って新聞を作っているのだ。保管する物が無ければいけない。

 

 頼んでばかりで申し訳ないが、と頭を下げつつアルバム一冊と写真立てを二つほど手に入れてきてもらう約束を取り付けた。

 それくらいお安いご用です。と言ってくれたので、ひとまずまた今度お酒でも奢りますよと言っておいたが、他にも何か考えておかないと頭が上がらなくなる。

 

 

 

 

 

 月 日 ( )

 

 連日申し訳ないが今日も射命丸さんと昼に落ち合った。

 

 天狗は幻想郷では珍しい、社会を形成している妖怪だと頭に入れてあったが、そこまで自由に動いて大丈夫なのだろうか。

 そう思いつつも、昨日と同じ場所で射命丸さんと落ち合ってお茶をした。

 アルバムと写真立てを受け取り、お返しに人里で手に入る酒を何種類か買っておいたのを渡す。

 

 天狗にとっては水みたいなものかもしれないけど、少なくとも天狗の集落では手に入らない酒であろう。そう思って買っておいたものだ。無論、一昨日貰った給料が吹っ飛んだ。

 予想より喜んでもらえた。

 

 ではまた縁があれば。と別れ、俺はその後まだちょっと肌寒い気候に追いやられるように家に帰り、既にストーブで暖められている隣の蛮奇さんの部屋に乗り込み、写真立てを渡した後夕食時まで話をしたりして過ごした。

 夕飯もそのまま蛮奇さんの部屋で頂いた。

 

 冬もようやく終わったらしいから、また姫さんや影狼さんたちと酒が飲めるねと話をして、今度行く時はどちらが酒を買ってくるか。という題目でしばし議論が続いた。共に収入が少ないという哀しい主張が一致してしまった。

 結論は先送りである。







 2016/4/11 じわっと修正。
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