月 日 ( )
もうほとんど雪も溶けて、既に草木も芽吹き始めている。あの雪だるまも溶けていた。
冬が長引いたせいで暦が狂ったんじゃないかと考えていたが、どうやら春だけがものすごい圧縮されたようで、夏はちゃんとした時期に来るようだ。
こりゃ花見も一瞬だろう。
今日は香霖堂でワーキングであったが、霊夢ちゃんと魔理沙ちゃんがやってきた。
冬が終わり気温も大分マシになってきたので、前みたいに飛びまわれるようだ。
寒さを気にするのであれば、彼女たちには戦闘機乗りが着るようなフライトジャケットの着用をお勧めしたい。詳しくは知らないけど多分耐寒性能があると思う。
もしくはスカートではなくズボンの着用をお勧めする。
しかし彼女等はその妙な巫女服と古典的な魔女の服装にこだわりを持っているらしく、外の世界でも幻想郷でも、女性の服装に対する情熱は変わらないんだなと思った。
と、自分の中で結論を出して語ってみたら、霊夢ちゃんが「あんただってそのネクタイ、暑くても寒くても外さないじゃない」と揚げ足を取ってきた。
つまり幻想郷は変人の集う場所ということでよろしいかな。
今日は仕事だったのか蛮奇さんの姿が見えなかったが、いざ終わるとなると名残惜しくもあったので、夕食に冬の見納めとして一人鍋料理を食べた。
熱かった。
月 日 ( )
久々にパッチワーク一号の仕事である。
しかし冬が終わったのはつい最近で、人里は雪解け水で地面は泥だらけ。食べ物も少し不自由が出ていて、売上はあまり良くはなかった。
これは商売にならないなぁとか思いつつ、昼過ぎから仕事をさぼって上白沢さんの寺小屋に遊びに行っていた。そして寺小屋にいた子供たちに俺手造りの香霖堂のチラシをプレゼント。
興味を持たれて魔法の森にまで来られてもそれはそれで困るので、俺の訪問販売のチラシだ。これならば問題ない。
そのあと、上白沢さんが授業で使っていると言う数学のテキスト、教科書を見せてもらって、久々に数学の問題を解いたりしていた。いや、これでも昔は理系の大学生だったのだ。数学は……というか勉強はほぼ例外なく大嫌いだったが、年単位で触れていないと懐かしさも感じる。
古典的な頭脳パズルのような計算問題が多くて驚いた。
温故知新というのも馬鹿に出来ないな。
香霖堂への帰り際、あのメイド服の咲夜ちゃんとばったり会った。
彼女も彼女で似合っている服装ではあるけど、よくそのまま人里へ来れるよなとか思う。やっぱり妖怪たちと接していると常識は崩れていくのだろう。俺も気をつけなくては。
でも咲夜ちゃんはまだ人の心が残っていそうなので、人里にメイド服で来るとちょっと違和感あるよ。と言っておいた。人里へ来るときぐらい私服でも着たらどうかな、とも。
むしろほぼ年中無休の彼女に、人里へ来るとき以外いつ私服を着る機会があるのだろうか。と話しながら疑問に思ってしまったので熱弁してしまった。
しかし女性に服装云々はちょっと失礼だっただろうか。
今日はその後普通に別れてしまったから、今度お詫びに似合いそうな私服でもプレゼントしてあげよう。うんそうしよう。
月 日 ( )
今日は店番だったが、無縁塚に出向いていた森近君が、流れ着いた自転車を三台も拾ってきてくれた。ので目を通すと、フレームがへしゃげてはいるが奇跡的に前輪が生きている自転車があった。おそらく事故ったか転んだかで壊れたまま放置したのだろう。粗大ごみに出すと金が取られたりするからだろうか。
嬉々としてパッチワーク二号の前輪を四苦八苦して交換し、ついに(おそらく)幻想郷初の自転車が完成した。
やったーと喜んでいたのはいいのだが、さて乗ろうと思ったその時に俺は重要な問題に気付いた。空気入れが無いのだ。
これではいくらタイヤのチューブに穴が無くとも、万全とは言い難い。そもそもママチャリなので砂利道だと空気がバッチリ入ってないと心許無い。
初走行はまた今度にしよう。
他にも森近君は色々ゲットしてきたようだった。
おそらく鴉避けに使われていたであろう、紐が通されたままの変色して柄の見えなくなったCDなんて何に使うつもりなのだろうか森近君は。鴉天狗避けにでもするのだろうか。
あとまた何かのリモコン――暖房と書かれていたから恐らくエアコンのリモコン――を回収してきていて、なぜだか嬉々とした様子で店の奥へと持って行っていた。どうやらリモコンを集めているようだ。リモコンコレクターの誕生である。
まぁ、彼には道具の名称が分かるとのことなので、同じ「リモコン」だか「コントローラー」という名称なのに姿形が違う道具がいくつもあるとくれば集めたくもなるだろう。
理解はできるけど、やっぱり変人だなぁという考えも拭いきれない。
あぁ、でも俺もよく蛮奇さんとかに変わってるねとか言われる。
つまり類は友を呼ぶということでどっとはらい。
月 日 ( )
五月といえばゴールデンウィークだが、幻想郷においてゴールデンウィークなんぞ存在しないし欲しくもない。であるならば、五月と言えば端午の節句。人日・上巳・七夕・重陽と並ぶ五節句の一つである。
と言ってはみるが、んなもんいらない知識と言えば要らない知識でしかなく、由来だとか何をする日なのかとかはてんで覚えていない。正直ただの祝日と言う認識しか無かった。
おそらく森近君に聞けば一から十どころか百か千まで教えてくれるのだろうけども、そこまで興味はない。
まぁ、子供の日となっていた気がするので、おそらく男児の健康やら何やらを祝ったりするのだろうし、季節の節目、節句であるからおそらく、季節を祝うものでもあるのだろうと推測。
まだ春を祝うには外観が冬過ぎるとも思えるが。
しかしここまで日記に書いてはみたが、よくよく考えれば子供の日は確か五月の上旬。五日辺りだったと記憶している。もしかしなくても既に終わっているのでは……?
蛮奇さんに聞いてきた。
終わってた。しかも特に何もしなかったらしい。だよね。うん。雪降りまくってたもん。
くそ。ボールペンだから消せやしねぇ。
気を取り直して今日の出来事でも書いておこう。
休みだったので蛮奇さんと部屋でストーブをつけてぬくぬくしていた。以上。
……こんな日だったから適当な話題書いてたんだけどな。
まぁいいか。誰に読ませるわけでもないし。
月 日 ( )
何だか知らない間に蛮奇さんに日記を読まれているような気がする。
いや、別に読まれて困る事も……無い事も無いかな?レティさんに対する嫁発言はネタだからね?もし読んでるのだとしたらそこらへんはちゃんと理解してよ?
まぁ、本人は存在を知っているだけで読んではいないと言っていたが、人里で台車を引っ張って商品を売っている時に通りかかった蛮奇さんが「その一号、重そうね」とさりげなく口に出したことのない名称を口にしていたのを覚えているので、かなり怪しいものである。
蛮奇さんは「日暮が前言ってたじゃない」と言っていたが果たして。
さて、今日はまたもや休日であったので、蛮奇さんと湖へ釣りに行くついでに姫さんに会いに行った。あれ?逆だったかな?会いに行くついでに釣りだったかな?
結果を言うと、夕食が豪勢になった。あと姫さんはすこぶる元気で相変わらずおっとりしていた。近々影狼さんにも会いに行こうと画策する俺と蛮奇さんであった。
姫さんと蛮奇さんと俺でくつろいでいると、霧の湖の丁度反対側辺りで、勝気な氷の妖精であるチルノちゃんがわーわーと声をあげて何匹……何人かの友達たちと遊んでいるのが見えた。
緑っぽい服が大妖精ちゃん略して大ちゃんで、黒っぽい服がルーミアちゃん。マントっぽいのがリグルちゃんだったかな?あと妖精二人より鳥っぽい羽が生えてるのがミスティアちゃん。前に何度か合ったが、チルノちゃんは氷の妖精なのに暑苦しいくらい元気である。
あの子たちは元気だねぇと年寄りじみたこと言ってみるが、蛮奇さんによれば、「でもあの集団って下手したら私たちよりよっぽど強いのよね」とのこと。
ろくろ首と人魚じゃ妖精とその愉快な仲間たちに勝てないのかー……とか思った。
月 日 ( )
今日は店番。
寒いからか店の奥の居住スペースでくつろいでいる森近君と、スーパーでいえばレジに当たる所……勘定台で合ってるだろうか。まぁ勘定台に、まるで今にも溶けて沈んで行ってしまいそうに見えるほどの脱力具合で居眠りをしていた俺。
正直、今ここへ客が来てもすぐ帰って行ってしまいそうなほど、商売意欲の見られない店主と店員であった。
幸い今日も客は来なかったが。……幸いじゃねぇよ。
いや、昨日も平然と日記を書いてはいるが、実は家に帰ったのは、とっくの昔に冬至も過ぎて昼が長くなっているというのにも関わらず、辺りが真っ暗になってからである。
ちなみに、帰りは夜目の利く蛮奇さんに先導してもらった。
つまり単純に睡眠不足で疲れていたのである。
前に蛮奇さんや姫さん影狼さんで飲んだ時もそうなのだが、やはり彼女等は妖怪であり人間でなく、夜の方が活発なのである。
人里に住んでいる蛮奇さんはお店の開いている時間などを考えているらしいし、冬の妖怪レティさんなんかは冬ならば朝も夜も関係なしに元気だが、姫さんなんかは完全に夕方こそが朝。
そんな彼女等と酒を飲んでいては当然夜更かしもするし寝不足にもなる。
と、まぁこんな具合に、昼過ぎにやってきて気持ち良さそうに寝ている俺を叩き起した霊夢ちゃんに、心の中で長々と言い訳したのである。口には出していない。
先ほど客は来なかったと述べたが、冷やかしは来たのである。
霊夢ちゃんとはこの間の長い冬事件(春雪異変と言うらしい)について、前回打ち上げみたいになった時に話せなかったことを話したりした。
例えば、彼女等は異変の元凶を追い求めて冥界にまで行ってきた。とか。
そこには半人半霊という正直意味わからない人種の剣士がいたとか。
前に上白沢さんから聞いた話だと、直接的・物理的な戦闘は禁止されているとか何とかなのに、剣なんか役に立つのだろうかと話を聞いていて思ったが、霊夢ちゃんが「まぁ筋は良かったわよ」と言っていたので、うん、まぁ役に立つかはともかくとして何とかなるものなんだろう。
にしても、前回は吸血鬼の根城に殴りこみに行ったが、今回は冥界、物凄くざっくり言うと死者の国である世界にまで行ってくるとは。
幻想郷の娘っ子は皆たくましいな。俺ならそんな所死んでも行きたくないね。
あぁ、死んだら行くんだったな。冥界。
月 日 ( )
今日は人里へ商売。
売れ行きもよかった。大分持ち直してきたようだ。
また以前のようにぽんぽん無縁塚へ物拾いに行くようになった森近君だが、相変わらず商売より趣味優先であり、売り物よりも非売品の方がよく増える。俺という店番がいるからなのか昔より頻繁に見に行っているとは魔理沙ちゃんの談だ。
なので少しずつ人里に売りに行けるまともな品が少なくなっているのが近頃の俺の悩みである。
需要よりも供給が驚くほど少ないのだ。
まぁそんな頭が痛くなるような話はさておいて。
今日は人里で昨日話題になった半人半霊の剣士を見かけた。
幻想郷の奇人変人人外妖怪と交流を持つのも趣味になり始めている俺は、もちろん声をかけた。「もしもし、そこの刀二本携えてる女の子。もしかして冥界の庭師の子ですか?」と。咲夜ちゃんに話しかけた時もこんなんだったなと思った。
その時女の子が買い物していた店の店主は変な物を見るような目で俺を見た。
その女の子、若白髪からも苦労が伺える女の子は、名前を魂魄妖夢と言った。(漢字も聞いてきた)髪に着いた黒いリボンと腰に携えた二本の刀が特徴の、庭師兼剣術指南役という厨二心がくすぐられるような肩書きを持った半人半霊であり、確かに脇に白い物体がふよふよと浮いていた。
つまりあの白い物体が彼女の半身、半霊部分なのだろう。
ちなみに若白髪のくだりは冗談である。
時間があるとのことだったので、甘味処で暫し話をした。
……なんだか射命丸さんとか蛮奇さんで馴れてしまっている自分が怖いが、少なくとも自分の判断基準からすれば十分整った部類に入る外見の女性と飲み食いするというのはなんとも凄い体験である。以前の俺は想像どころか妄想すらしなかっただろう。
んで、彼女からは冥界の、霊夢ちゃん達が赴いた白玉楼という屋敷?の話を聞いた。
彼女もあのメイド長咲夜ちゃんと同じく、一人の主に仕える身の物であるらしく、妖夢ちゃんが仕えるのは白玉楼の主であり地獄の閻魔直々に冥界の幽霊の管理を任されるほど凄い人らしい。
ただ健啖家であり料理すればするだけ食べるのが玉に瑕らしい。
通りで妖夢ちゃんは大量の食材を入れた買い物袋を背負っていたわけだ。
小一時間ほど話した後、半霊部分と思われる物体に触らせてもらった。
ひんやりしていた。
別れ際にはきちんと香霖堂の宣伝もしておいた。
抜かりがないのが自慢である。
妖々夢編、完。
以上、冥界に行かず幽々子様のゆの字も出てこないし八雲一家は存在すら認知できない妖々夢編でした。
でも一般人ならこんなもんじゃないかな(開き直り)
2016/4/11 ぽつぽつと修正。