メティー&ベルのアトリエ ーオラリオの錬金術士ー   作:斎藤 晃

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仕事が忙しく、中々執筆時間が取れなかったので投稿が遅れました。
申し訳ありませんでした。

今回のお話は、ハゲルさん枠のキャラとの出会いです。
ロジーさんでもいいけど。


武器屋へ行こう!(前編)

 ソーマ様の弟子入りについて頭を悩ませている頃、僕はつい魔が差して誰にも告げずにたった一人でダンジョンに潜ってしまったことがあった。

 今考えればどれほど馬鹿なことをしたんだろう、と思えるが当時の僕は一人でも大丈夫だと無根拠に信じ込んでしまっていたのだ。

 というのも、当時の僕はアーシャと2人で5階層くらいまでは潜れていたので、1人でも行けるだろうと楽観的に考えていたのだ。

 

 旅をしている頃の話だ。アーシャとイクセルには錬金術の素養がなかったので、僕がお母さんに錬金術を習っている間は、レジーさんたちと戦闘訓練をしていた。

 僕も参加したことはあるけど、2人ほど訓練には身が入らなかった。当時の僕はお母さんと一緒に錬金術をできるのが楽しくて仕方なかったからだ。

 それでも戦闘訓練をしていたのは、錬金術に使う素材を得るためにはモンスターと戦う術が必要だったからだった。モンスターは草原にも森にも海にも川にも沢山いる。何処で素材採集をしてもモンスターは出てくるし、モンスター自体も素材となるドロップアイテムを落とすので、錬金術士にモンスターとの戦いは必須事項だった。

 

 だから、元々ある程度はモンスターとの戦い方は知っていた。

 ダンジョン産のモンスターは、確かに外のモンスターと比べて遥かに強かった。それでも、僕は戦えてきたし、アーシャ抜きでも戦えると思っていたのだ。

 まあ、あの日にそんな変な自信は持たないほうがいいと、学んだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブモォォォォッ!」

 

 その日、僕は5階層でミノタウロスに遭遇してしまった。本来いるはずのないモンスター。僕の数倍はあろうかという立派な体躯に、凶悪な顔つきをしたモンスターに僕は慌てて逃げ出した。

 ミノタウロスを見たことは実は1度だけあった。旅をしている頃、森の中でばったりあったことがあるのだ。あの時はお母さんがはたきの一振りであっさりと倒していたけど、僕に同じ事ができるとは思えなかった。

 とは言え、やらなければならない状況に追い込まれてしまった。逃げた先は行き止まりだったのだ。ダンジョンの中には行き止まりの道が多数ある。その1つに迷い込んでしまったのだ。

 

 だから、僕は戦う決意をした。

 ミノタウロスについてはギルドの資料である程度勉強していた。戦闘力はレベル2相当で、ハウルという相手を動けなくさせる咆哮が厄介だと言う。

 だけど、僕はそこに活路を見出そうとしていた。

 咆哮をするということは、大きく口を開けるということだ。大口を開けた中へフラムを押し込めば流石に倒せるだろう。倒せなくてもダメージを与えて、逃げる隙を作れるかも知れない。

 

 僕はドナーストーンとフラムをバッグから取り出し、その時を待った。

 そして、奴が大きく息を吸い込んで咆哮しようとする寸前に、僕はドナーストーンを奴に放った。ドナーストーンから飛び出た雷はミノタウロスに当たり、奴は大口を開けたまま動かなくなっていた。ドナーストーンの効果である”しびれる”*1が発揮したのだ。

 その隙の逃さずに僕はミノタウロスの口にフラムを放り込み、素早くやつから距離を取った。

 

 やった!

 

 と思った次の瞬間、なんとミノタウロスの身体は真っ二つになっていた。その次の瞬間、2つに別れた上半身の方が爆発を起こして血と肉が周りを真っ赤に染め上げた。

 そして、僕と名前の知らない女性は真っ赤っ赤になってしまったのである。

 

「………。」

 

「………。」

 

 無言で見つめ合う真っ赤に染まった僕と彼女。むせ返るような鉄さびの匂いが立ち込める中、呆然としていた僕だったけど、何か喋らなきゃと思いたち口を開こうとしたけど、先に女性の方から話しかけてきてくれた。

 

「ええと、ごめんなさい?」

 

 ただし、その言葉は何故か疑問形での謝罪だったけど。

 

「いえ、すごく助かりました。一か八かのかけだったので…。こちらこそすいません。」

 

 せっかく助けてくれた人を真っ赤に染め上げてしまったので、僕も謝罪を返した。フラムだけで倒せるかは分からなかったので、助かったと思ったのは僕の偽りのない本音だった。

  そして再び沈黙が生まれた。どうしようかと考えたけど、何も考えが浮かばないまま時間だけが流れ去っていった。

 

「ーーーーー!」

 

 暫くして、遠くから誰かが叫んでいる声がすると、女性は後ろを振り返って「無事で良かった。じゃあね。」と声をかけて歩き去って行った。

 僕は彼女を見送ると、一気に疲れが出てしまい腰を下ろして暫く休むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ということが先週あり、僕は自分の実力不足を痛感した。

 そして、神様とお母さん、更にはアーシャにもとことん怒られてしまい、これからはアーシャ抜きでダンジョンに潜ることを禁止されてしまった。

 僕お兄ちゃんなのに、妹よりも弱くて被保護者のような扱いを受けているんです。

 このままじゃ駄目だと思い立ち、戦いの練習をしようと思ったものの、頼れる人はあまりいなかった。

 アストレアファミリアの人たちは皆レベル3以上ばっかりで、少し怖かった。それに、彼女たちはガネーシャファミリアと並ぶ都市の治安を維持してくれているのだ。駆け出し冒険者の僕にそこまで時間を割いてくれるかどうかは分からなかった。*2

 結局、僕はヘスティア・ファミリア最強の冒険者である、妹のアーシャに泣く泣く訓練をつけて欲しいと頼むのであった。

 

 

「ほら、足元がお留守だぞ。」

 

 オラリオを囲む巨大な城壁の屋外通路で、僕とアーシャは戦闘訓練を行っていた。いや、一方的に僕が叩きのめされていた。

 僕はナイフを構え、アーシャは杖で僕を叩きのめす。今も切りかかった僕の足元に杖を突き立てて姿勢を崩され、そのまま通路に叩きつけられた。

 

「全く。やる気があるのはいいが、ベルに接近戦は無理だろ。」

 

 アーシャの顔には呆れがあった。冒険者になってからこっち、アーシャは前衛、僕は後衛と役割分担をしてダンジョンに潜っていた。だと言うのに、前衛の訓練を頼み込んだ僕に対して不満を持っているようだった。

 

「ベルの能力では前衛は無理だ。それよりも、しっかりと道具の使い方や使うタイミングを覚えるべきだろう。」

 

 アーシャの言うことに僕はぐうの音も出なかった。

 

「とは言えだ。不測の事態で接近戦をしなければならないことはあるだろうから、全くの無駄ではない。と言う訳で、訓練を続けるぞ。」

 

 早く立てと促すアーシャの言葉に従って、立ち上がる僕に襲いかかってくるアーシャ。十分に手加減されたアーシャの攻撃に、僕はそれを迎え撃ちながらいつか絶対に吠え面をかかせてやると誓うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誓ったはいいものの、僕はアーシャにボコボコにされた。幸い怪我は全て回復アイテムで治ったものの、僕よりも10C以上小さな妹のアーシャにいいようにされたという事で、僕の心はどんよりと曇っていた。

 アーシャは昔から生意気な妹だった。何となく僕のことを気にかけてくれていることは分かっているけど、いつも僕のことを下に見ているような態度で接してくるので、ムカつくことも度々あった。

 その上で、アーシャは僕よりも遥かに強かった。男として、兄として、そして冒険者としてアーシャに勝てる要素は何一つないことを、容赦なくつきつけられてしまったので僕の心は曇りきっていた。

 

「いつまで拗ねているんだ。ずっと戦闘訓練を重ねてきた私と、ずっと錬金術を学んできたお前。戦えばどちらが勝つのかなど明白だろうに。」

 

 アーシャの言うことは最もだ。だからこそ僕の心は晴れなかった。もうちょっと戦闘訓練も頑張るべきだったのでは、という考えが浮かぶけど今更の話だった。

 

「そもそもお前が超えるべきなのは私じゃなくて母さんだろう? 見ろ、私の姿を。上から下まで母さんが作った装備品とアイテムだらけじゃないか。」

 

「でもお母さんって、錬金術も凄いし戦闘も得意だよね?」

 

 立ち止まって腕を伸ばしたアーシャを見ると、確かにアーシャはお母さんの作った物ばかりを身に着けていた。武器も、防具も、装飾品も、腰のポーチも、その中に入っている沢山のアイテムも、すべてお母さんの作ったものだった。*3

 いつにもなく饒舌なアーシャは、不器用ながら僕を励まそうとしているのかも知れない。

 でも、僕はお母さんが錬金術抜きでもすごく強いのを知っている。エルソスの遺跡でお母さんが倒したモンスターは、レジーさん曰くレベル7以上は確実の大物だったらしい。

 

「そ、それに、私では錬金術は使えない。錬金術で作るものがなければ私は十分に戦えない。だから、早く錬金術の腕を磨いて母さんを超えて、私の装備品やアイテムをすべて作ってみせろ。…言っておくが、レグナントや母さんを基準に物事を考えるなよ? あの2人の戦闘能力はどう考えても異常だからな?」

 

 アーシャは僕を励まそうと良いことを言っていたけど、最後の言葉で台無しになったなと思った。

 それはともかくとして、アーシャの言葉に僕はお母さんが以前言っていた言葉を思い出した。

 

『ベルは今から私の息子で弟子であると同時に、ライバルになるのよ!』

 

 お母さんは僕をライバルだと言った。僕よりも遥かに高みにいるお母さんがである。

 僕から見ればお母さんは高位の錬金術士だ。それでも、上には上がいる。先生とヘルミーナさんは、お母さんでも手が届かないとてつもなく凄い錬金術士だった。

 

 昔旅をしていた頃に、先生とヘルミーナさんが一緒になってトラベルゲートというアイテムを作っていたことがあった。

 トラベルゲートとは、遠く離れた場所からでも一瞬で拠点に戻れてしまうという瞬間移動ができるアイテムのことである。

 それを作った2人の話を聞いていたお母さんの顔は何処か寂しそうで、悲しそうだった。今ならば、あまりに遠い2人の背中を見て、自分が情けなく思っていたのだと理解できるけど、当時の僕は子供だったのでお母さんを元気づけたくて僕も錬金術を頑張ると言い出した。

 お母さんはそんな僕の我儘に笑顔で錬金術を教えてくれたけど、僕はお母さん以上に錬金術の才能はなかったみたいで中々上達しなかった。

 そして、なまじ錬金術を学んでしまったために、僕は先生とヘルミーナさんがどれほどの高みにあるかを理解してしまった。先生の持つ信じられないほど大量の知識を、ヘルミーナさんの震えるほど恐ろしいほどの才能を、そしてお母さんがどれほど血の滲むような努力をして2人に追いつこうとしてきたのかを、理解できてしまった。

 

 結局僕もお母さんも落ちこぼれだった。1度はお母さんの心は折れてしまっていたけど、僕が冒険者になりたいと言い出してからお母さんは再びやる気を見せてくれていた。それがとても嬉しい。

 僕が一気に成長したから。それに負けたくないから。

 だから、僕はお母さんに負けないくらい努力しないといけないのだ。

 

「僕、頑張るよ!」

 

 アーシャの言葉は僕を元気づけてくれた。戦闘訓練は続けるけど、それ以上に錬金術を頑張ろうという気持ちが強くなった。普段は尊大で生意気な妹だけど、今この時はアーシャの言葉が嬉しいと思った。

 

「とりあえずは…武器を作り直すところからかなぁ…。」

 

 僕はそう言いながら腰の鞘からナイフを抜いて見つめた。ナイフは刀身の半ばでポッキリと折れてしまっていて、最早使い物にならなくなっている。元々装備品の調合は苦手だったけど、流石に2週間ほどで駄目になるとは思っても見なかった。

 

「母さんと比べるのもアレだが、ベルの作る装備品は色々と粗があるからな。それでどうするんだ? 母さんに助けを求めるか?」

 

 アーシャはわざと挑発するように僕の方を向いて言ってきた。その顔はわずかに笑みが浮かんでおり、僕がどのように足足掻くのか楽しみにしているかのようだった。

 

「お母さんには頼らない。弟子としてライバルとして、僕は自分で頑張るよ。」

 

 とは言っても、今のままでは到底お母さんを超えることはままならない。

 だから、僕はアーシャに言った。

 

「とりあえず武器屋に行ってみない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バベルの4階から8階にはヘファイストス・ファミリアのテナントが入っていて、そこには各種様々な装備品が売っているということは、ギルドで僕達の担当アドバイザーになってくれているエイナさんから、以前に教えてもらっていた。

 ただ、その頃の僕は自分の作った武器が十分通用すると思っていたから、そこに行くことはないだろうと思い聞き流していたわけだけど。

 僕はそんな考えを改め、自分に足りないものが何なのかを探るためにここにやってきたのだ。

 けれど…。

 

「うーん。僕達、場違いだよね。」

 

 ヘファイストスファミリアのショップに並んでいる武器や防具の数々だけど、その値段は桁違いだった。もちろん品質も高く付いている属性(・・)も凄かった。そう、属性だったのだ。*4

 特性はついてなく、効果も発現していない。鍛冶師としてはすごい作品なのだろうけど、錬金術士の僕が求めるものはここにはないように思えた。…そもそも高すぎて手が届かないけれど。

 

「ベル、とアーシャも。奇遇だな、こんなところで。」

 

 その時、僕達に声をかけてきた女性が居た。振り返ると、そこに居たのはアストレア・ファミリアの副団長の輝夜さんだった。

 

「輝夜さん、ご無沙汰しています。」

 

「…。」

 

 僕が挨拶をするのに合わせてアーシャも無言ながら軽く頷いた。以前よりはマシだけど、妹の無愛想さにはほとほと呆れてしまう。

 

「自分で装備を作れるあなたがここに来るとは…。何かあったので?」

 

 輝夜さんは僕がここにいることがそんなに驚きなのだろうか?

 たしかに、僕はアストレア・ファミリアの皆に装備品を作ってあげたけど。

 

「その、作った武器がもう壊れてしまってしまいまして…。」

 

 僕は輝夜さんにここに来た理由を語り始めた。それを聞いていく内に輝夜さんは納得した顔になっていった。

 

「なるほど、それは宜しいことです。私たちに作ってもらった武器や防具も、結局は持っているだけのお守りとなっていますから。」

 

 僕が作った装備品は、アストレア・ファミリアの皆の能力に比べて装備の性能が低すぎるために、武器や防具としては使われていなかった。もちろんそれは理解していたが、正面切って言われるとかなり傷ついてしまう。

 これからに期待している、という言葉は何度もかけてもらっていたけど、それが何時になるということが僕にもわからないのは結構ストレスなのだ。

 

「その装備選びに私も付いていっても?」

 

 どうも輝夜さんは僕達についてきたいらしい。何も面白いことなど起こりそうにないのに、何を考えてるんだろうか?

 

「ええと、面白いことなんて無いと思いますよ?」

 

「いいえ、貴方様が行く先々では絶対に面白いことが起こるはず。これまでのことを考えてみなさい。」

 

 そう言われると心当たりが多すぎた。

 冒険者になる前は、アストレア・ファミリアの皆に錬金術で作ったアイテムで驚かれた。

 冒険者になってからも、毒酒騒動が起き、ソーマファミリアの解散してソーマ様が僕の弟子になってしまった。

 よく考えてみれば、この2ヶ月ほどは絶え間なく起きる騒動の連続だったような気がする。

 

「それから、ロキ・ファミリアの【剣姫】がダンジョンで血まみれにされたとかで、主神のロキ様や【剣姫】と親しい眷属がたいそうお怒りとか。何でも【剣姫】が窮地に陥った初心者を助けに入ったところでミノタウロスを爆破して、血まみれにした冒険者がいるとか。心当たりは?」

 

「はい。ごめんなさい、それ僕がやりました。」

 

「やはり。」

 

 そう言うと輝夜さんはお腹を抑えながら笑い出した。あの出来事は不幸な事故だったんだ。なのにそんなに笑うなんて、ちょっとカチンと来たけど反論する勇気もなかったし、反論すれば更にからかわれるだけだと分かっていたのでしなかった。

 だって、全部本当のことだから。

 

「だからこそ今度も面白いことが起きそうな気がするというわけだ。」

 

 僕はため息を吐いて、輝夜さんの同行を認める他無かった。見るからに不機嫌になったアーシャを見るのが怖かったけど。

 

 輝夜さんが言うにはもっと上の階には、駆け出しの鍛冶師が作った作品をおいているテナントがあるらしい。この階には第一級冒険者向けの商品しか置いてないので、僕にはそっちのほうが良いだろうと言ってくれた。

 正直言うと、こんな高額な装備品ですら僕の求めるものとは違った。確かに品質も凄いし、武器や防具として素晴らしい出来栄えだと思う。

 だけど、錬金術で装備品を作るための参考になるとは、到底思えないものばかりだった。

 だから、それよりも質が落ちるものを見ても、あまり参考にならないのではないか、と思っていた。

 

「うーん、駆け出し用だから値段は手頃だけど品質もそれ相応としか言えない。」

 

「どれもこれもゴミばかりだな。」

 

 アーシャの言葉はキツイけど、基本的には僕も同感だった。輝夜さんも同じようなものだろう。そもそも彼女は第一級冒険者(レベル5)。低レベルの頃はこういうこところに結構来ていたらしいけど、今は先ほど僕達が居た高額商品を置いているフロアしかいかなくなっているらしい。

 やはり見るものはないな、と思った時奥まった部屋にキラリと光る系鎧があることに気がついた。

 近づいてみてみるとそれは極ありふれた軽鎧に見えた。だけど、僕の目にはそれがとてつもなく凄いものに見えていた。

 

「この鎧がどうかしたので? 確かに他のものよりは質は良さそうだけど。」

 

 輝夜さんにはこの鎧のすごさがわからないらしい。アーシャも同様らしく、疑問を顔に浮かべていた。

 

「この軽鎧、効果が発現してる。しかも攻防強化*5の特性が付いてる!」

 

 そう、効果が発現し特性が付いているということは、この鎧は錬金術やそれに類いする技術によって作られているということになる。

 それは、間違いなく僕が求めているものだった。ソーマ様と同じだ。無意識に錬金術を行使している人が、鍛冶師にもいたんだ!

 

「へ? つまり、その鎧はあなたと同じ錬金術師が作ったってことで?」

 

「多分違うと思います。槌で打った後が残ってるんで、間違いなく鍛冶師が作ったものだと思います。それでも錬金術で作ったのと同じようなものを作れるなんて、凄い! なんて人が作ったんだろう?」

 

 僕は鎧を隈無く探して誰が作ったのか調べた。鎧の下の隅に、ヴェルフ・クロッゾという名前が書かれていて、これがこの鎧を作った人なのだろうと分かった。

 

「クロッゾ? あの魔剣の?」

 

 輝夜さんの呟いた、魔剣という言葉を聞いて僕は硬直した。

 魔剣。魔法を剣に込めた使い捨ての攻撃アイテムだ。攻撃アイテムという意味では、僕達の作るフラムやレヘルンに近いものがあるとも言える。

 だけど、決定的に違うことがあるとすれば、錬金術で作るアイテムが特性で強化できたり使用回数を増やすことができるのに対して、魔剣にはそれが出来ないということがある。

 

 昔、先生とお母さんたちが魔剣を研究していた時期があったらしい。魔剣を錬金術で再現して、色々な特性を付けたけど、特性は上手く発揮できなかったらしい。

 特に使用回数に関しては、例えば6回使用可能な魔剣を作っても、2~3回ほどで壊れてしまったらしい。

 しかも、込められる魔法は攻撃魔法に限定され、属性も4大属性のみだったという。

 この結果を踏まえて、先生たちは魔剣をこう評したという。

 

『汎用性がない、発展性がない、使用回数が増やせない。3無い剣だなこりゃ。』

 

 これ以降、僕達の間では魔剣は作る価値のない産廃扱いされている。もちろん僕も作ろうとすら思わない。発現する効果枠すらなく、特性を載せても意味がないのだから。

 

「さ、産廃。魔剣を産廃…。」

 

 輝夜さんは僕の魔剣に対する酷評を聞いて、顔を引き攣らせていた。

 オラリオの冒険者の間では、魔剣は結構需要があるらしい。いざという時の備え、手数を補うための手段として。滅茶苦茶な値段だけど。

 だけど、錬金術士からすれば魔剣を持っていくよりも、フラムやレヘルンを持っていく方がよっぽど役に立つのだ。

 

「まあ確かに。使用回数も威力も、あなたの作るアイテムのほうが下手な魔剣よりも遥かに勝っているな。」

 

「私からすれば魔剣など重い、嵩張る、すぐに壊れるで、使いにくいとしか思えんがな。」

 

 アーシャは装備のみならずアイテム類も母さん謹製の物を持っている。その中には永久機関*6の特性が付いているものもあり、それと比べれば魔剣など月とスッポンとしか言えない。…いつか僕も永久機関を載せた無限フラムを作りたいなぁ。

 

「と言う訳で、この鎧の出来は良いんですけど、あのクロッゾ製ということなんで、使っていたら突然壊れるギミックが組み込まれている、なんてこともあり得るかも知れないです。そんなの怖くて参考にできません。」

 

 僕はそう言って鎧を元あった箱に戻した。その時、赤い髪が特徴的な男の人が怒鳴りながら駆け寄ってきた。

 

「魔剣は魔剣だろう! 何で俺が作った鎧まで魔剣扱いされなきゃならんのだよ! これがクロッゾの呪いってか、ふざけろっ!」

 

 どうやら男の人はこの鎧の制作者らしい。だから僕はこの人に言ってやった。

 

「恨むなら魔剣なんて作った奴を恨みなよ。」

 

 

*1
敵を一時的に麻痺させて動きを止める。

*2
頼んでいれば確実に訓練をつけてくれていた。

*3
ちなみに今日の出で立ちは、ロロナのアトリエのエスティーの服

*4
属性は制作者が装備に付与できる力で、特性は素材が元々持つ力である。特性のほうが種類は豊富。

*5
力と耐久が3上昇する

*6
アイテムの使用回数が無制限になる。




拙著のベル君は、アイズとは運命的な出会いにならなかったので、例のスキルに目覚めず、冒険者としては驚異的な成長というか飛躍はしません。
それは元アルフィアなアーシャが担います。
その分ベル君は、アトリエ主人公にふさわしく錬金術の腕が急成長というか進化しますけど。
今回はヴェルフとの出会いを描こうと思いましたが、長くなったので前後編とします。


ちなみにこの作品でのベル君の好みは、守ってあげたい可愛らしい女の子です。強い女の人に囲まれて育った(レグナント(【女帝】)メーテリア(戦闘錬金術士)アーシャ(アルフィア))為に、自分より強い女性は嫌だと思うようになりました。
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