メティー&ベルのアトリエ ーオラリオの錬金術士ー 作:斎藤 晃
多分読まなくても今後も支障はないです。
多分否定的な意見を持つ人が多くいると思います。
このお話は、アトリエでは竜退治はつきものというお話です。
ディアンケヒト・ファミリアでセシルさんの治療を行った数日後、私はお店を訪ねてきたアストレア様と付き添いのアリーゼさんと共に、お店のソファーで話をしていた。
「先日は本当にありがとう。セシルもすっかり良くなって、後遺症もなく退院できたわ。ディアンケヒトが、貴女の作った薬の秘密を暴いてやるってセシルを隅々まで検査したけど、結局何の成果も出せなかったらしいけど。」
「私からもお礼を言わせてください! 団員を助けてくれて本当にありがとうございました!」
2人からお礼を言われてついこそばゆくなってしまう。ついついティーカップを手にとって、中身が空だったことに気がついてティーポットからお茶を注いだ。
「本当に、貴女には何度も助けられたわね。7年前に5年前。それに2年前に貴女がオラリオに来てくれたことで、この子達も立ち直ることが出来たし。*1そして今回のことも。どうすればお礼になるのかわからないくらいよ。」
「お礼なんていいですよ。今回のことはベルへの課題として有効に活用させてもらいましたから。」
「それなんだけど、メティーさんって本当にベル君に厳しいですよね。1年以内にあの薬を作れなければ100万ヴァリスの罰金とか。」
アリーゼさんはベルのことを心配しているようだけど、これくらいの事は乗り越えてくれなければ困るくらいだ。
それに、100万ヴァリスと言っても1年後のベルなら無理なく払える金額だろう。もちろんアストレア・ファミリアからも薬代は貰っているけれど、それはそれだ。
「ベルには私以上の才能があると思ってるのよね。その才能を開花させるには、優しく教えていてはダメだったんだなって最近気づいたのよ。ベルってば、追い詰められると言うか、やらないといけない状態になるとすごい成長をするんだなって気づいて。この成長が続けば後数年、いえ1年ほどで私を追い越すかも知れない。そんな気がするのよ。」
アストレア様は本当に私に感謝してくれているらしい。
だけど、感謝したいのは私の方だ。実はアストレア様にはアーシャとイクセルのことは勘付かれてしまっていた。その上で、アストレア様は2人の事を見逃しているだけでなく、私たちの後ろ盾となってあれこれと助けてくれているのだ。
オラリオでこうして穏やかな日々を過ごせているのは、全てアストレア様のおかげだ。
その上で、ベルが錬金術士として成長する機会を与えてくれたのだ。こちらが感謝こそすれ、お礼を言われるようなことではない。
「それに、…世界は黒き終末の存在に怯えることはなくなったわ。*2
しばらく無言が続いた後に、ポツリとアストレア様は呟いた。
アストレア様には、何故私が旅を止めてオラリオでお菓子屋を開いたのかを話していた。私たちが旅をしていたのは、究極的にはあの黒竜を倒す方法を探すためだった。
ヘラとゼウスの両ファミリアが黒竜との戦いで敗北した後、唯一生き残ったレジーさん*3は先生の力を借りて黒竜に再戦を挑むべくアテのない旅を始めた。
その途中で立ち寄った村で、ゼウス様と一緒にいた瀕死の状態の私を見つけて救ってくれた。私は、姉ともう一度会いたいという思いから旅に参加し、7年前に姉は娘に、義兄は息子になって旅を続けるに至った。
その時に、レジーさんはアストレア様に「私たちは黒き終末を倒す方法を探して旅をしている。」と語ったという。レジーさんは、アストレア様に黒竜との再戦を果たし倒して見せると誓ったと、アストレア様から聞いた。
そして3年前。私たちはようやく黒竜を倒すことに成功した。決め手はエルソスの遺跡で封印されていた古代のモンスター”アンタレス”のドロップアイテムだった。
そのドロップアイテムに付いていた特性は、”魂を奪う”だった。敵のレベルを奪い自分のものにする特性を手に入れた私たちは、敵である黒竜のステータスを奪って倒すことが出来たのだ。
だけど、私たちが黒竜を倒したのは、別に救界をしたかったからでも、最後の英雄になりたかったからでも無かった。ただ、未来を憂いなく家族とともに楽しく生きていきたい。
ただそれだけのためだった。
「世界を救うのはもう止めた*4、ね。貴女はそれでいいと思うわよ。そして、今の私達の役目は、そんな貴女たちの日常を守ること。」
アリーゼさんは目を大きく見開いて私とアストレア様を、何度も頭を振りながら忙しなく見ていた。アストレア様はアリーゼさんにもこの話はしていなかったのだろう。
「だからアリーゼ。この話は絶対に黙っててちょうだいね。もし漏れたりしたら、最後の英雄の1人が大暴れすることになるわよ。」
アストレア様が、人差し指を口元で立てながら言うと、アリーゼさんは黙ってブンブンと大きく頭を縦に振った。
私は最後の英雄と言われて、ちょっと凹んだ。英雄などともてはやされた末に、ゼウスとヘラのファミリアは滅んだのだ。私はそんなものにはなりたくない。
それに、その言い方では私が暴力的だと誤解されてしまう。
「それと、最近ロキがあなたとベル君のことを探っているようね。何処かであなたのことを知ったのでしょう。ベル君に関しては、祝福のワインが目的らしいけど。それと、フレイヤ・ファミリアもベル君に興味を持っているらしいわね。」
オラリオの2大派閥が私や子供たちにちょっかいを掛けてこようとしている。
それをアストレア様から聞いて、私はついしかめっ面をしてしまう。ロキ・ファミリアに関しては、『豊醸の女主人』での私のやらかしが原因だと思うけれど、フレイヤ・ファミリアについては全く心当たりがない。
オラリオはいい街だけど、神々の思惑や一部の冒険者たちの野蛮さは面倒臭い。
でも、青春を過ごしたこの街でお菓子屋を開くことが、私にとって夢(の1つ)だったのだ。ただでやられるつもりはない。
「多分ロキ・ファミリアはそれほど問題はないでしょうね。貴女は覚えていないかも知れないけど、7年前の18階層での戦いではロキ・ファミリアの幹部2人がいたって言うから。」
その話は初めて聞いた。あの時は色々といっぱいいっぱいだったから、周りのことがあまり見えていなかったのだ。
「だけどフレイヤ・ファミリアはきな臭いわ。どうも、フレイヤがベル君を気に入ったようね。怪物祭の時の騒動も、フレイヤが関係してるんじゃないかって、ガネーシャは勘ぐっているらしいわ。ロキもね。」
もしそれが本当なら、私はロキと手を組むことになるかも知れない。アストレア様の言葉には少しばかり怒りがこもっていた。正義を司る女神として怪物祭の時の騒動の原因と言うことが本当ならば、それを黙って座視するわけにはいかないのだろう。
「それに、あのモンスター化の呪いについて、2人ならなにか知ってるかも知れないわ。だから、貴女は心配しなくて大丈夫。もしなんかあったら私たちに言って頂戴。絶対に貴女達の力になるから。」
それだけ言うと、アストレア様は時間を取らせて悪かったわね、という言葉を残してアリーゼさんを伴って帰っていった。
私たちの生活を必ず守ると言ってくれた正義の女神に、その姿が見えなくなるまで頭を下げ続けた。
この作品を考えていた当初、3部作で書こうと考えていました。
1作目がメティーとの出会いから暗黒期まで。
2作目がアルフィアとザルドを仲間に迎え入れてから黒竜討伐まで。
3作目がこの作品です。
2作目まではドシリアスで、戦闘ばかりだったので、息が詰まりそうになって書くのを途中で止めました。あまりに長くなりそうなので、途中でエタりそうだなと思いましたし。
Q1.フレイヤはモンスター化の呪いを知ってるの?
A.知りません。オッタルも知りません。2人とも驚いています。
Q2.黒竜の強さは?
A2.レベル68。毎ターン2回攻撃+各種状態異常を振りまいてくる。一定以上までHPが低下すると、強力な回復魔法を使う。各種状態異常ほぼ無効。
真正面から戦っては勝ち目は1ミリもありません。(DLCでの高難易度追加ボスみたいな存在。)
勝利するためには超レアな特性が必要になります。それが”魂を奪う”になります。(魂を吸収するでもよし。)
アトリエでシリーズでは、凄く強い敵が何の理由もなくポイッと放り込まれるので、黒竜もそんな感じです。そうしないと、作り込んだアイテムを使う敵がいないし。