メティー&ベルのアトリエ ーオラリオの錬金術士ー   作:斎藤 晃

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アトリエ恒例のお酒の話です。


アイテム図鑑No.XXX 神酒(ソーマ)

 ソーマ様が廃教会で居候を始めて数日、僕はソーマ様に神酒(ソーマ)の作り方を教わりながら、錬金術で再現に挑戦していた。

 ソーマ様が言うには、これまで成功作だと思っていたお酒が例の毒酒であり、極少数の成功例を除く8割位のお酒は失敗作だったらしい。

 失敗作と言われたお酒を見てみたけど、効果も特性もなんにも無い、本当にただのお酒だった。

 ソーマ様には何故失敗作や成功作ができるのかはよく分かっていないようで、ほぼ経験とカン頼りで作ってきたのだという。

 

 当面の間、ソーマ様の目標は毒を持たない神酒(ソーマ)の作成だという。

 当初はミアハ様に助力を求めたらしいんだけど、全く上手くいかなかったと言う。 

 どうもお酒に関する知識も技能も足りなかったようだ。逆に、ソーマ様も薬に対するそれが足りず、出来上がったのは毒酒のままだったらしい。

お母さんが言うには、ソーマ様は無自覚に錬金術を使ってお酒造りをしていたのでは無いかということだった。

 それが正しければ、錬金術が使えないミアハ様ではソーマ様に的確な助言は出来なかったのは仕方ないことだろうと思う。

 そんな事があったので、最後はソーマ様がミアハ様に見切りをつけて僕のところへ弟子入しに来たらしい。

 

 そして今は、僕が神酒(ソーマ)を作ってみて、どうすれば効果*1が発現するのか条件を調べてみようということになった。

 なのだが。

 

「あ、これやばい。」

 

 思わず愚痴がこぼれてしまった。

 そうして出来上がったのは失敗作の灰だった。幸い爆発はしなかったけれど、これで5回連続の失敗だった。

 

「うーん、神様のお酒を作るのは難易度が凄く高いですね。」

 

 失敗ばかりするということは、神酒(ソーマ)はとてつもなく高難易度の調合品だということになる。ただし、どれほどの難易度なのかは全くわからないのが問題だった。

なにせ、僕はヘッポコ錬金術士なのだ。自分の錬金術の腕前は自分が一番分かっているつもりだ。*2

 

「私としてはこんな釜をかき混ぜているだけで、色々なものを作れるのが凄いと思うがな。と言うか、この技術は本当に何なんだ?」

 

 ソーマ様の前で何度も錬金釜での調合を見せているのだけど、未だソーマ様はこの光景を見慣れていないようだった。近くの椅子に座って、僕達のことを眺めていた神様(ヘスティア様)もソーマ様の言葉にウンウンと頷いていた。

 

「ソーマ様でも一応は調合できることが分かりましたし、人も神も関係なく使える技術って言うことですよね?」

 

 最近になり神様(ヘスティア様)改宗(コンバージョン)したリリが、僕に疑問を投げかけてきた。

 そう、ソーマ様にも僕が教えて錬金術を使ってもらったのだけど、一応調合は出来たのだ。失敗作の灰だったけど。

 調合に失敗したものの、調合自体ができなければ材料のまま錬金釜の中を漂うことになるので、一応神も使える技術ということは証明できたのだ。

 

「お母さんも言っていたけど、多分ソーマ様は無意識の内にやり方は違うとは言え、錬金術を使っていたんだと思います。じゃなかったら、効果を発現したりしていないはずだし。」

 

 お母さんの考察は、僕にとっては目からウロコだった。錬金釜を使わなくても錬金術を使える。それは僕の持つ常識を破壊する話だったからだ。

 だけど、お母さんは先生やヘルミーナさんと一緒に錬金術を学びながら旅をしていたため、各地で似たような事例は見てきたらしい。錬金術とは違うけれど似たような道具を作れる技術だったり、恩恵を持たない人でも扱えるように発達した技術だったり。

 鍛冶も料理も裁縫も、突き詰めれば錬金術に繋がる部分はあるのだと言う。ただ、効果の発現や特性の付与が錬金術みたいに出来ないだけで。

 

「それでもなんとなく分かってきたことがあるので、今度は僕が思う通りにやってみます。」

 

 そう言って、僕は次の調合の準備に入った。

 ソーマ様から教えられた材料を手元の机に並べ、次々と錬金釜に入れていく。先程と違うのは材料の入れる順番やタイミング、そしてお酒のもと*3を材料に加えたうえで錬金スキルの使用する。

 ソーマ様の作り方は錬金釜を使わない方法なので、同じ材料や手順通りに作っても上手くいかないということを予想として立てたのだ。

 そして、それは間違いではなかった。同時に正しくもなかったけど。

 

「今度は…、失敗作の灰ではないのか?」

 

「うーん。一応成功といえば成功なのかなぁ?」

 

 錬金釜の中から瓶の形をした調合物を引き上げる。これも結構コツがあって、僕も学び始めた頃は散々苦労したものだ。

 

「品質は…たったの1。」

 

 余りもの品質の低さに僕は絶望した。確か材料の平均品質は45だったはずだ。それなのに出てきた代物はたったの1。つまりは、今の僕の実力では高品質の神酒(ソーマ)を作ることはほぼ不可能だということだった。*4

 

「だが神酒(ソーマ)だ。品質は比べるべくもないがたしかに神酒(ソーマ)だ。」

 

 ソーマ様も僕が作ったお酒を神酒(ソーマ)だと認識したことで、今回の調合は一応成功したということになった。

 

「多分、神酒(ソーマ)を作り出すには僕の実力があまりにも足りません。ここまで低かったら、お母さんでもソーマ様が作っていた品質のものは作れないかも知れません。」

 

「ところで、肝心の効果とやらはどうなんだい?」

 

 僕の弁解の言葉を聞き流して、神様が僕に神酒(ソーマ)に毒が含まれているか聞いてきた。

 僕はそれに対して自信満々に答えた。

 

「2つの効果の内1つは発現してないですね。でも、1つは発現しました。」

 

 神酒(ソーマ)には発現する効果のスロットと言うべきものが2つあり、今回はその内の一つの発現に成功したのだ。この成功は小さな一歩かも知れないけれど、間違いなく重要な一歩目だった。

 

「発現した効果は、なんと強烈に酔うです!」

 

「お酒で酔うのは当たり前なんじゃないかい?」

 

「これはそういうものじゃないですよ、神様。状態異常として酔ってしまうんですよ。多分動けなくなったり、意識を失ってしまたりするのかなぁ?」

 

「意識を失う状態異常って、それかなりヤバい代物ですよね? 薬じゃなくちゃ治らないってことですよね?」

 

「リリルカの言う通り、これは危険だろうな。だが、『魅了』と『依存』に比べれば遥かにマシな代物だろう。これは希望が持てるな。」

 

 今回の調合で分かったことは、神酒(ソーマ)は属性値によって複数の効果が発現するということだった。

 これ以降も何回か調合を続けてみたけど、分かったことは1つ目の効果枠の効果は低い順番で、酔う、酷く酔う、強烈に酔う、依存、という順番に発現するということだった。

 残念ながらそこで材料が無くなったので、2つ目の効果がどう変化するのかは分からなかったけれど、属性値を下げれば危険性は下がるということが分かって、僕もソーマ様も大満足だった。

 

「つまり、もし神酒(ソーマ)を作るのならば、その属性値とやらを低くして酔うという効果を発現させれば問題ないということなのか?」

 

「完全にというわけではないですけど、多分そうだと思います。醉う、程度だと数時間程度で回復しますし、ホッフェン水を使えばすぐに回復できます。だけど、ソーマ様の言う失敗作では効果は効果は1つも発現しなかったので、多分この2つは全くの別物のお酒ということになると思います。」

 

「つまり、私は別物の酒を同じ酒だと認識していたということか。つくづく酒神として己の未熟さが嫌になる。」

 

 今回の実験は、ソーマ様の神としてのプライドを痛く傷つけるものになったようだった。だけど、ソーマ様の顔には笑みが浮かんでいて、瞳は光り輝いていた。

 神様たちは下界に未知を求めてやってきた方たちが大半なのだと言う。今回の結果で、ソーマ様は下界の未知を知ることが出来たのだ。

 だからこそ、ソーマ様の目には希望の光が灯っているのだろう。

 

「言っとくけれど、ベルくんは僕の(・・・)眷属なんだからね! 僕の!」

 

「分かっている。ベル・クラネルは私の(・・・)師匠だ。これからも多くを学ばなければならないが、お前の邪魔をするつもりはないさ。」

 

 何だか神様とソーマ様が睨み合ってるけど、急に険悪な雰囲気になったのでどうすればいいのか分からなかった。

 

「さ、ベル様。一旦休憩にしましょう。私が(・・)ベル様のためにお茶とお菓子をご用意しますよ!」

 

「甘い物は止めてね?」

 

 リリが急に僕の腕を取って休憩しようと言ってきたので、窓から差し込んでくる日光が傾いてきているのを見て、結構時間が経ってるのを理解した。

 そして、僕達は睨み合う2人を他所に教会の地下へと降りていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイテム図鑑No.XXX 神酒(ソーマ)

 

酒神の作るありがたいお酒。

ただし、中にはヤバい効果を発現するものもあるから気をつけよう。

まだ分かっていないことも多いから、飲むのは止めたほうがいいと思うな。

失敗作と言われる同名のお酒もあるけど、そっちは安全だよ。

 

 

 

ベル

「あなたの落とした神酒(ソーマ)は危険な神酒(ソーマ)ですか? それとも安全な神酒(ソーマ)ですか?」

 

ヘスティア

「安全な方しか選択肢がないじゃないか!」

 

ソーマ

「危険な方はガネーシャがモンスターの調教用として持っていったぞ。調教がかなりやりやすくなったらしい。」

 

リリルカ

「つまりモンスター用のお酒を今まで人に飲ませていたわけですね。リリはソーマ様に恐怖を感じました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
『魅了』も『依存』も発現した効果であり、特性ではなかった。

*2
なお、比較対象は先生(天才)とヘルミーナ(超天才)とメティー(秀才)である。

*3
酒の木という樹木の樹液から不純物を取り除いたもの。

*4
高難易度のアイテムを低レベルで作ると品質が低下する。品質1はほぼ最低品質である。最低品質は0。




 アトリエシリーズのお酒イベントは多いので、やっぱりネタとしてもお酒は使いやすいですよね。
 この作品では、神酒(ソーマ)の危険性は、発現した効果ということにしています。
 一応設定としては、調合に必要な錬金術士レベルは100くらいとしています。
 なお、この世界での錬金術士レベルは50が最大値な模様。一応はレベル15くらいのベルでも調合できるけど、品質はゴミです。飲んだら(効果も味も)ヤバいです。
 神の作る酒ということで、人間では正真正銘の神酒(ソーマ)は作れないよねってことです。
 錬金術を神でも扱えるというのは完全に独自設定です。
 原作でもヘファイストスは鍛冶技術を学んで習得したし、タケミカヅチも武術の技術を習得して第一級冒険者も投げ飛ばしていましたし。
 なお、ソーマの錬金術の腕前はあまり上達はしない模様。だってお酒しか作らないし。




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