メティー&ベルのアトリエ ーオラリオの錬金術士ー   作:斎藤 晃

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アポロン・ファミリアとの戦いは、原作では立ちはだかる壁かつベルが成長するきっかけの1つとして描かれていました。
しかし、この作品ではメティーを敵に回してしまったので……。


お母さんは最終兵器!

 アポロン・ファミリアとの戦争遊戯は3日後に決まった。皆やる気満々で、お母さんに至っては鼻歌を歌いながら、戦争遊戯で使うメテオールを調合していたりする。あんなの使ったら、アポロン・ファミリアの人たちって影も形もなくなってしまうんじゃ…。

 

「メテオールってそんなに危険なものなんですか?」

 

「あれって、()()()()を召喚してぶつけるアイテムなんですよね。多分会場のお城なんて軽く吹き飛ばせると思いますよ。」

 

「種火みたいなものが他にもあるんだね……。」

 

 実家にある調合室で、アミッドさんの疑問に答えて、僕はメテオールがどのようなアイテムかを教えた。メテオールは今の僕では手が届かない強力な攻撃アイテムだ。

 

 まあ、作れたとしてもダンジョンの中で使えるかどうかは別問題だけど。使ったら自分ごと吹き飛ばしそうで怖すぎる。*1

 

 そんな事を考えていると、一緒に来ていた神様が、胃の辺りを押さえながら溜息を零しているのが見えた。

 

「それってアポロン・ファミリアの人たちはヤバくないですか?」

 

「ヤバいんですよね…。」

 

「なぁに、人聞きの悪い。人殺しなんてしないように気をつけて作ってるわよ。」

 

 僕たちの会話が聞こえていたのか、お母さんは今作っているメテオールでは死人は出ないと言ってきた。その言葉に、僕はちょっとだけ安心した。死人は出ないだろうけど、再起不能の大怪我をする人は大量に出そうだけど。

 

 同時に、いつものお母さんに戻ってくれたのが分かってホッとした。突然抱きしめられて泣き出したものだから、それを見たアーシャなんて酷い怒りようだったし、生きた心地がしなかった。

 

「それよりも、アポロン・ファミリア以外から戦争遊戯の申し出があったんですって?」

 

「う、うん。結構前から決まっていたけど、戦争遊戯って言って良いのかな? お酒の美味しさと薬効で勝負しようっていうだけの話だけど。あとは勝った場合の条件とかを話し合う予定だったんだけど……。」

 

「ファミリア同士の勝負は全て戦争遊戯となりますね。それと、ダミアー・ファミリアと言えば女性の眷族しかいない、女性向けの医療系ファミリア*2ですね。特に既婚者や妊婦に関する医療を重視しているようですね。また、主神が大のお酒好きらしいということは聞いたことがあります。」

 

「ああ、天界では彼女ってお酒を禁止されてたからね……。」

 

 ダミアー・ファミリアとのお酒の勝負は先週あたりには大体の条件は決まっていた。お酒の勝負をすることになったきっかけは、神様とダミアー様とでランチをしている時に、どっちのファミリアの作るお酒のほうが美味しいかで口論になったのが原因だという。

 

 ただ、向こうのファミリアは楽しむ気まんまんみたいで、屋台とかも呼んでお祭りみたいに楽しくやろうと計画しているらしい。勝負に勝った時の条件はこれから決めるけど、そこまで厳しいものはしない約束もしている。むしろ、目立つのが目的っぽい感じがする。

 

 話を戻して、どうやら僕は今やオラリオ中の医療系ファミリアから目標とされているらしい。一応は僕たちも医療系ファミリアとしてギルドには登録してあるので、新興の零細ファミリアにも関わらずここまで注目されてしまうとつい身構えてしまうけど。

 

 そして、女神デミアーは医療系ファミリアの主神であり、天界で禁酒させられていた関係で、下界では大のワイン好きで通っているらしい。それは、自派閥でワインを作っている事もあって、それは結構知られている話だという。

 

 そして、豊穣の女神らしく、お酒と薬の原料は全て自分たちで生産しているらしい。お酒と薬をかけ合わせた薬酒も研究していて最近販売にこぎつけたらしいけど、僕が作った祝福のワインの方が少しだけ早く出回ったために話題を奪われてしまい、結構お冠なのだとか。

 

「たしかそんな事も言っていたような?」

 

「それって逆恨みなんじゃ……。」

 

「それに加えて、酒場でしか売っていないのが原因だと思いますよ。いくらオラリオでも酒場に冒険者ではない女性が行くのは結構勇気が必要ですから、女性が手に入りやすいようにしろってことなのでは?」

 

「うーん、売る相手が冒険者じゃなかったらいいかな。」

 

 今は酔わないワインも売り出しているし、元々はダンジョンで酔っ払いながら戦って死傷者が出ないようにするための対策だったわけだし。

 

 だけど、一般人にあれだけの値段のワインを買える人はいるのかな? 『豊穣の女主人』では、1杯1000ヴァリス以上で売っているんだけど。

 

「ベル、ダミアー様との戦いは正々堂々と行いなさい。聞いた限りでは、その女神は素晴らしいお方じゃないの。」

 

 私もベルを生んだ時は本当に大変だったんだから、と言いながら、お母さんはダミアー・ファミリアとの戦争遊戯を受けるべきだと言ってきたのだ。ダミアー様のあり方に感銘を受けたようだった。そりゃあ、余命幾把もない状態で僕を生んだくらいだからね。

 

「でも、この状況じゃダミアーとの勝負は延期にしてもらうしか無いかな。いまはアポロンとの戦争遊戯に集中したいし。だからベル君、今からダミアーの所に行こうか。」

 

 神様の言葉に僕はうなずき、僕たちはダミアー様のところへと向かうことになった。

 

 僕と神様はダミアー・ファミリアの本拠地へ赴き、状況の説明をして勝負の延期してもらうことにした。

 

 ちなみに、ギルドの仲裁で戦争遊戯の期日が決まってからは、アポロン・ファミリアからの露骨な襲撃はピタリと止んでいた。幹部が軒並み逮捕されてしまった上に、ガネーシャ・ファミリアにも睨まれているから身動きが取れないらしい。

 

 ダミアー様はヘスティア・ファミリアがアポロン・ファミリアから攻撃を受けた末に戦争遊技を行うことになったと聞くと、可哀想なぐらい動揺してこちらのことを心配してくれていた。

 

 ヘスティア様がなんとかする目処は立っているから大丈夫と説明すると、動揺も収まったようだったけど。

 

 とりあえず、ダミアー・ファミリアとのお酒の勝負は延期するということで決まり、僕たちはアポロン・ファミリアとの戦いに集中するようにとのアドバイスを貰った。

 

 また、勝負の方法はあちらが主張したことを丸呑みした。というか、特に問題点が見当たらなかったのでこちらも異論がなかっただけだけど。

 

 勝負の方法は、ガネーシャ・ファミリアが選んだ審査員に、どちらの作ったお酒がより美味しいか判断してもらう、という単純なルールだった。ついでに、お酒も含めた色んな物品も販売したいらしい。前も思ったけど、お祭りをしたいのかな?

 

「なんか、ダミアー様って悪い神様に見えなかったですね。」

 

「ふふふ、ダミアーは僕の神友で善神だからね。後は、アポロンのことが苦手だから僕たちに同情したんだと思うよ。」

 

「ところで、まるでお祭りのようになりましたね。お酒の飲み比べだけじゃなくて、できれば屋台も出して欲しいと言われて驚きました。」

 

「これを機に知名度と売上をアップしたいらしいよ。どうしても医療系ファミリアとしてはディアンケヒト・ファミリアに遅れを取ってるから、ここで薬酒の効果をアピールしたんだってさ。薬酒といえば祝福のワイン一辺倒なのも気に入らないらしいけど。」

 

 とりあえず目的は達成したので、僕たちはダミアー・ファミリアのホームをあとにした。僕も戦争遊戯で使うアイテム類を作らなくちゃならないから、これからが大変だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、やって来たアポロン・ファミリアとの戦争遊戯の当日。僕たちはオラリオから離れた荒野にある、特設の会場にやってきていた。目の前に見えるのは巨大な城塞で、僕たちはアレを攻め落とさなくてはならないのだ。

 

 普通なら、絶望するだろうけど、僕たちには生憎と普通じゃないお母さんがいた。多分お母さん一人で簡単に勝てるだろうけど、お母さんはこの戦争遊戯を僕への課題にするつもりなようだった。

 

 ちなみに、ヴェルフとセシルさんがヘスティア・ファミリアに改宗してでも参戦する、なんて息巻いてたけど僕の方から丁重にお断りした。お母さんが参加する以上、結果が見えてしまっているからだ。セシルさんの方はアストレア様に説得されていたけど。

 

 何よりも、これはヘスティア・ファミリアと言うよりも、僕たちクラネル家の戦いなのだ。……結果的にリリを巻き込んでしまったのは、ちょっと申し訳ない気持ちになるけど。リリにその事を言ったら、「むしろベル様のご家族とともに戦えて嬉しいです!」と喜ばれてしまったけど、何でだろう?

 

 意外だったのが、タケミカヅチ・ファミリアの桜花さんまでもが参戦したいと言ってきたことだった。今回は何とか諦めてもらったけど、何か助けてほしいことがあれば遠慮なく頼ってほしい、と言われて嬉しく思った。……この戦いの後に距離を取られたりしたら嫌だなぁ。

 

「あれくらいなら、メテオールだけでも壊せそうね。」

 

「むしろあんなのにメテオールはもったいなくらいだな。」

 

「いや、あいつらをこの手で直接叩きのめさないと駄目だろ。アイテムだけで終わらせたら俺の気がすまないぜ。」

 

 どういうわけか、僕の家族はあまりにも血気盛んだった。よほどお店を襲撃されたのが許せないらしい。勿論僕も許せないので、僕の持てる全ての力をあいつらに叩きつけるつもりだけど。

 

 ところで、僕が襲撃された時に、ソーマ様とカイルさん*3も攻撃されたけど、あっちはどうするんだろう? ガネーシャ・ファミリアとも戦争遊戯をするのかな。

 

「ベル様、本当に大丈夫なんでしょうか?」

 

「大丈夫だよ。最悪、お母さんだけで全部なんとかなると思うし。」

 

 だけど、それではお母さんの気が済まないので、僕も頑張らないといけない。今回、僕はお母さんにより高度なアイテムを調合して使用するようにとの課題を貰っていた。それをついにお披露目する時がきたのだ。

 

「じゃあベル。お願いね。」

 

「分かったよ。」

 

 という訳で、僕はアーシャと一緒にスカイフリーカーに乗って空へと飛び立った。アーシャの分は勿論お母さんが作ったものだけど、僕が乗るものは自分で作ったものだ。スカイフリーカーとは、見た目は空飛ぶほうきとも呼べる道具で、作るためにグラビ石という特殊な鉱石が必要になる。

 

 残念ながらダンジョンでは見つけること出来なかったグラビ石だけど、命さんが描いてくれた不思議な絵『ぷにの楽園』で1つだけ見つけることが出来ていた。耳ぷにが屯している先に、グラビ石の鉱石が含まれた岩があったのだ。輝夜さん達に頑張ってもらって耳ぷにを引きつけてもらっている間に、フラムで発破をかけてようやく手に入れたのが、このグラビ石だった。

 

 ちなみに、輝夜さん曰く耳ぷにはそこそこ難敵だったらしい。一体一体はそれほど強くないけど、際限なく仲間を呼び寄せるので滅茶苦茶面倒くさかったと言っていた。

 

 それにレベル2のセシルさんも防戦一方だったので、キラーアントの上位版みたいな感じだと言っていた。僕の場合はフラムを投げ続けていれば倒せるけど、あまり戦いたい相手じゃない。冒険者になる前から何度か戦ったことはあるけど、本当に面倒くさい相手だからだ。

 

 輝夜さんたちのおかげもあって何体かの耳ぷにを倒せたので、ドロップしたぷにぷに玉・緑で錬金剣を作って渡しておいた。ちなみに発現した属性は風だった。

 

 それは置いておくとして、僕たちはスカイフリーカーに乗って、お城の上空へとやって来ていた。今回の戦争遊戯の種目は攻城戦と言うらしく、お城に立て籠もったアポロン・ファミリアを叩きのめせばこちらの勝利らしい。

 

 お母さんは、この戦争遊戯で僕の全力を出して戦えと言ってきたので、僕は自分の持ちうる全てを使ってあるものを調合してきていた。

 

「暗黒水、投下っ!」

 

 僕が今回の課題で作ったのは暗黒水だった。多分、現在の僕が作れる限界ギリギリ、というか限界の上にあると思う毒薬だ。効果範囲は広く、発現した効果は“レベルダウン・小”と“回復無効を与える・強”の2つだけだった。逆に言えばこの2つを発現させることだけに集中したとも言える。

 

 地上に落下した暗黒水は黒い瘴気を撒き散らして、かなり広い範囲のアポロン・ファミリアの団員たちに降り注いでいた。だけど、それは開けた場所にいる人達だけだった。屋内にいる人達をあぶり出すためにも、僕はダイアフラムを取り出して眼下の城門や城塔に向かって放り投げる。

 

 ダイアフラムと暗黒水は、今の僕が作れる最強のアイテムだ。どちらも何回も作るのに失敗したし、成功したものでも効果や品質は低かった。特に、暗黒水に関しては6回連続で失敗してしまい、心が折れかけてしまったほどだ。

 

 僕としてはよく作れたなと思うけど、これをアーシャに見せたら微妙な顔をされた。無理して低品質な高レベルアイテムを作るよりも、高品質な低レベルアイテムを作ったほうがいいと考えていたらしい。

 

 今回この2つを作ったのは、威力もそうだけど効果範囲が広いからだった。更に、“範囲拡大”の特性を付けることで、より広範囲に攻撃を加えることがきでるようになった。その分威力は低下したけど。

 

 

 そんな事を思い出している間にも、地上からは弓矢や魔法での対空攻撃があるので、それらを避けながら地上攻撃を続ける。とは言っても、僕が飛んでるくらいの高さにまでほとんど攻撃は届かない。時々レベル2だと思う人からの攻撃に注意するくらいだ。

 

 それに、僕は旅をしている間スカイフリーカーに乗ってきていたので、扱いには慣れている。これくらいは簡単に避けることが出来た。

 

 一方で、アーシャの方は僕の何倍も空での戦いが上手かった。スカイフリーカーの性能が高いこともあるけれど、低空を飛行しながら爆弾をばらまきつつ、戦う魔剣を自分の周囲に浮かべて、飛んでくる魔法や矢を叩き切っていた。

 

 あれってあんなふうに使うものじゃないはずなんだけどなぁ。僕が使っても、真っすぐにしか飛んでいかないのに。以前、アーシャにどうやって使ってるのか聞いたけど、腕を4本生やして振るうつもりで使っているらしい。僕にはアーシャの言っていることの意味が理解できなかった。

 

 また、アーシャはオリフラムだけではなくブリッツコアやオメガクラフトも使って、地上にいる人たちや城内の居館を攻撃していた。一発一発がとてつもない爆発力を持つ、お母さんの作ったアイテムは容赦なくお城を瓦礫に変えていっていた。死人が出てなければいいけど。

 

 僕は瓦礫になった建物にも暗黒水を投下していく。暗黒水の問題点は、密封された空間にまで効果を与えられないということだった。逆に言えば、建物を破壊すればそれも解決できる。

 

「これって、中にいる人達大丈夫なのかな?」

 

「これで死ぬようならば、冒険者などではないな。」

 

 僕の呟きに、いつの間にか隣に並んで飛んでいるアーシャが突っ込んできた。冒険者でもこんな爆発で生き残れるとは思えないけど。

 

ちなみに、今日のアーシャは念願の黒い服を着ていた。アーシャは黒色が好きらしく、よくお母さんに黒色の服をお強請りしていたのが、ようやく叶ったのだ。

 

 ただし、黒い服とは言っても凄い数のフリルとリボンが付いたワンピースドレスと、その上に羽織るフリフリのコートだったけど。*4似合ってるよと言ったら腹パンされてしまった。

 

 どうもフリフリなのがあまりお気に召さないらしいけど、お母さんにはそんな事を言えないので僕に八つ当たりしたらしい。酷いよアーシャ。

 

「それを言うのならば、ベルのやってることも大概だな。レベルを下げるなど、冒険者にとっては死ぬほど恐ろしいことではないか。」

 

「そうなのかな?」

 

「そうだ。」

 

 とりあえず当初の目的は達成したので、僕たちはお母さんたちの待っている場所へと戻った。

 

 

 

 

 

 

「大分お城は壊れたけど、まだ形は残ってるわね…。」

 

 お母さんはそんな事を言って、手に持ったメテオールを掲げた。すると、上空に巨大な魔法陣が現れて、そこから巨大なうにや隕石が降り注いで爆発し城壁が破壊されていく。

 

「べ、ベル様、メーテリア様ってすごいんですね。あんな栗? 隕石? を次々に降らせるなんて…。」

 

「そうだよ、お母さんって凄いんだよ。ちょっと怖いけど。あと、あれはうにだよ。」

 

「あれでちょっとなんですか。う、うに?」

 

 僕とリリがそんな事を話している間にも、隕石やら巨大うにやらが城に降り注いで瓦礫の山へと変えていく。あれって、本当にアポロンファミリアの人たちって生きているのかな?

 

「さて、これくらいでいいでしょう。行くわよ皆。」

 

 無事な建物がなくなったお城を見て満足したのか、お母さんは壊れたお城に向かって歩き始めた。アーシャもイクセルもそれに続いて行くので、僕たちも慌ててついて行った。

 

 間近に近づいたお城は、正に瓦礫の山だった。それでも無事な人はいたようで、時たま出会ったアポロン・ファミリアの人たちを、お母さんたちは叩きのめしていった。

 

「容赦ないですね、メーテリア様達。」

 

「容赦したら俺たちが危険にさらされる。どんな時でも全力を出すべきだぜ。」

 

 リリの呟きに、いつの間にか近づいてきていたイクセルがそんな事を言ってきた。

 

「モンスターに情をかけても最後の一撃を仕掛けてくるかもしれないし、傷が癒えたら再び襲ってくるかもしれない。だったら、もう2度と襲ってこないように倒すしかないだろ。コイツラも同じだよ。」

 

 僕たち家族は、もう10年以上もの間世界中を旅して回ってきた。その間には何度もモンスターにも襲われたし、盗賊とかにも襲われたりした。大抵はレジーさんのような大人たちが撃退していたけど、アーシャとイクセルが加わってからは2人も戦いに加わることが多くなった。

 

 そう言えば、2人って僕とどんな関係なんだろう? もう7年も兄妹をしているけど、僕は2人が親戚だってことぐらいしか知らなかった。髪も瞳の色も同じだから、血は繋がっていると思うんだけど。何回か尋ねたことはあるけど、結局思ったような答えを聞いたことはなかった。

 

「まあそうだけどさ、死人出てないよね?」

 

「母さんが最後に新作の回復アイテムを使うらしいぞ。だから大丈夫だろう。」

 

 答えの出ない疑問を頭から追い払いつつ、イクセルとそんな事を話し合いながら歩いていくと、居館跡にたどり着いた。そこには幾人かの人達が集まって、僕たちを待ち構えていた。多分幹部の人たちなのかな。見た感じよく生きてたなってくらい、見た目がボロボロだった。

 

「あの人はアポロン・ファミリア団長の太陽の光寵童(ポエブス・アポロ)です。レベルは3。他にもレベル2の幹部も複数いますね。」

 

 リリが誰なのかを教えてくれたので、あの人達が幹部なのは間違いないようだった。

 

「き、きさまら、このような真似をしておいて、無事で済むと思うなよ!」

 

 幹部の人たちは威勢がいいけど、団長のヒュアキントスさんはなんだか顔色が悪い気がする。そういえば、お母さんが叩きのめしたと言っていたから、レベルが奪われたんだよね、あの人。

 

 そんな事を考えていると、アポロン・ファミリアの人たちが一斉に襲いかかってきたので、こちらも武器と爆弾を手にして迎撃する。

 

「騒音しか撒き散らせない蛆虫共め。」

 

「とりあえずお前らは全員ぶちのめす。」

 

 アーシャとイクセルはおたまとフライパンで、次々とアポロンファミリアの人たちを叩きのめしていく。なんで調理道具なんだろう? 2人ともきちんとした武器を持ってるはずなのに。*5

 

「こっちにも来ましたよ!」

 

「大丈夫だよ。リリもきちんと火炎剣(フレイムタン)で迎撃して!」

 

 僕たちの方にも何人か来たけど、暗黒水でレベルダウンを起こしているのか動きが鈍い。セシルさんに作ってもらった火炎剣(フレイムタン)を手に、リリが火炎攻撃を放つと2人が丸焦げになって倒れた。

 

 怯んだ残りの1人は僕がフラムを投げると、あっさりと吹き飛んで地面に叩きつけられた。…死んでないよね?

 

 そして残ったのは、団長のヒュアキントスさんただ1人だけだった。投獄されていたけど今回の戦争遊戯のために、慣例によってガネーシャファミリアの監獄から出てこれたらしい。

 

 だけど、その顔色は悪くて身体も何だか小さく震えているようにも見える。

 

「さて、落とし前をつけてもらいましょうか。」

 

「お、俺はレベル3なんだ。レベル3のはずなんだ。間違ってないよな? 一体お前は一体何なんだ!」

 

 ヒュアキントスさんは叫び声を上げながらお母さんに斬り掛かってきたけど、お母さんはそれを難なく躱してはたきの一撃を見舞わせた。それだけでヒュアキントスさんは瓦礫の山に突っ込んで動かなくなった。

 

「物足りないわね…。」

 

 お母さんは何を思ったのか、ヒュアキントスさんに近づくと生命の蜜を使って治療した。するとすぐさま怪我が治った。

 

「さあ立ちなさい。これじゃ私の気がすまないわ。」

 

「な、なにを。」

 

 ふらふらと立ち上がったヒュアキントスさんを再びはたきで叩き、倒れ込んだらまた生命の蜜で治療した。それを何回も繰り返していると、ついには滝のような涙を流しながら命乞いをしてくるまでになっていた。

 

「ふふふ、さあ、もっと鳴きなさい、この豚め。」

 

「た、助けて、お゛がーち゛ゃ゛ーん゛!!」

 

「母さんめ、楽しんでいるな。」

 

「さすが元ヘラ・ファミリア。おお怖っ。」

 

 何度も何度も癒しては叩きのめすお母さんの姿に、僕とリリは恐れ慄いた。*6いつものお母さんの面影はなく、何だかヘラ様のような恐ろしさと苛烈さが伝わってくるような……。*7

 

 アーシャとイクセルの2人は雑談しながら、欠伸をするほどリラックスしているみたいだったけど。その度胸ってどうすれば身につくんだろう。分けてほしいよ。

 

「絶対にメーテリア様を怒らせないように気をつけますね…。」

 

 お母さんの笑い声とヒュアキントスさんの泣き声を聞きながら、リリの呟きがやけに耳に残った。お母さんを怒らせたら、レジーさんですら逃げ出すくらいだからね。お母さんを怒らせないことが1番だよ。

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、戦争遊戯は僕たちの勝利で終わった。僕たち、と言うかお母さんの勝利だけど。

 

 神様も僕たちの大勝利ということで、アポロンファミリアに厳しい条件を突きつけたらしい。ファミリアの解体や、オラリオからの追放とか、財産の没収とか。追放先はお母さんの意見が通って、オリンピアになったけど。

 

 先生たちは現在オリンピアを拠点にしているようで、レジーさんとの間に生まれた子どもの世話をしながら、錬金術を教える学校をつくろうと頑張っているらしい。ヘルミーナさんも手伝っているようだし、ヘラ様やゼウス様も楽しみにしているとか。

 

 少し前に、先生からお母さんに手紙が届いたのだけど、オリンピアにはすごい力を持つ炎があるらしく、何でかは分からないけど穢れてしまっているらしい。

 

 しかも、終末の種火とかN/Aとかを使った時に出てくる汚れた炎を集める力があるらしく、将来のことを考えると炎を消すのではなく、定期的な浄化を行うほうが良いのだとか。*8

 

 錬金術の学校は、錬金術を広める為だけではなく、炎の定期的な浄化を行うための錬金術士を育てるためにも作るのだという。

 

 お母さんにも学校の先生にならないかという声がかかったらしいけど、断ったと聞いた。お菓子屋が軌道に乗ったし、今が楽しいからだという。

 

 そんなわけで色々と人手がいるだろう先生たちのためにも、アポロン様を丁稚としてヘラ様たちの元へ送ることが決まったのだ。眷族の人も何人かはそれに着いていくつもりらしいけど、ヘラ様の名前を聞いたアポロン様は青い顔をして倒れ込んだとか。神様に聞いたら、アポロン様はゼウス様の不倫相手の子供らしい。僕は静かに手を合わせた。

 

 まあ、ヘラ様って結構怖い雰囲気あるものね。女神って怖い人ばかりじゃないんだと知ったのは、オラリオに来てからだったし。神様(ヘスティア様)を初めて見た時は、本当にヘラ様と同じ女神なのか、って凄く驚いたくらいだ。

 

 ちなみに、アポロン・ファミリアは敗北がなくても結構厳しい沙汰が下される予定だったらしい。ガネーシャ・ファミリアのカインさんを攻撃したし、ソーマ様を手中に収めようとしたのでは、と疑惑が持たれていたからだ。

 

 あっちは否定してたらしいけど、ソーマ様の作るヤバい神酒(ソーマ)を手に入れたらオラリオを裏から乗っ取ることが出来そうだから、今回のこともあってガネーシャ様はかなり神経質になっているらしい。

 

 

 

 そんなこんなで、僕たちの戦争遊戯は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「賠償金は良いですよ。でも、あんな巨大なお屋敷は手に余ります!」

 

「えー、凄く良いところじゃないか。アポロンの像とかは要らないけど。でも、それを手放すなんて。」

 

「私たちは4人しかいないんですよ。しかもアーシャ様は実家住まい。一体誰が管理するんですか!」

 

「で、でも、ゴブニュに改装をお願いしちゃって……。」

 

「キャンセル、キャンセルです! その上で売り払ってしまいましょう!!」

 

 という訳で、ウチの経営担当であるリリの意見が通って、アポロン・ファミリアから賠償として受け取った屋敷は売ることになった。お母さんは自分の店の修理費用と将来の改装費用だけを受け取ったので、残りは丸々僕たちのものになった。

 

 その使い道をどうするかで僕たちは色々と話し合ったけど、ヘスティア・ファミリアでお店を出したいという僕の意見が通ることになった。今まで住んでた廃教会は一部を吹き飛ばされてしまったので、纏まったお金も手に入ったし、どうせなら新しい建物に引っ越そうという話になっていたのも理由だけど。

 

 とは言え、お店をするとなると問題となるのが、ヘスティア・ファミリアの人手不足だった。

 

「はぁ……。ベル様、お店の在庫管理や接客、帳簿付けを誰がやるか分かっていますか? 私たちは冒険者業とファミリアの運営だけで手一杯なんですよ」

 

「僕も無理だから…。」

 

 僕とリリの視線は自然と神様へと向かっていった。以前はじゃが丸くんの屋台のバイト*9をしていたけど、今ではファミリアの経営も軌道に乗ったために止めてしまっていた。

 

 そのために、ファミリアの中で1番暇をしているのは神様だった。

 

「分かったよ! 僕に任せろ。」

 

「そうなると、ミアハ・ファミリアにも話はしないといけないよね。」

 

「いっそのこと、ミアハと一緒にお店をすることにしないかい? 正直言って、僕だけじゃちょっと心細いというか……。」

 

「そうですね、今までもナァーザさんには凄く助けられているわけですし、ミアハ・ファミリアと一緒に店舗経営すれば色々な問題に対処するノウハウも得られるでしょう。それに、あちらもその方が借金返済が進むのではないかと思います。」

 

「じゃあ、ミアハには僕から話をしておくね。」

 

 そういうことで、僕たちは新しくお店を出すことになったのだった。良かった。こっちに余裕ができたから、これからの関係を考えさせてください、なんて事にならなくて。

 

 あそこにはこれまで沢山お世話になっているから、恩知らずなことはしたくなかったんだ。

 

「それから、まだ大事なことがあります。ファミリアの紋章とお店の名前をどうするのかという問題が。」

 

「うーん、僕は竈の女神でベル君は錬金術士だから炎と釜でいいんじゃない? 名前の方は、竈釜(かまかま)の店とか。」

 

「紋章の方はともかくとして、名前の方はどうかと思いますよ。」

 

 お店の名前をどうするかで神様とリリが揉めているけど、僕は自然とある名前を口ずさんでいた。

 

「ベルのアトリエ…。」

 

 お母さんのお店の名前は『メティーのアトリエ』なので、その子供でお母さんの1番弟子である僕のお店ならば『ベルのアトリエ』が当然なのではと思って、つい口ずさんでしまったのだ。

 

「ベルのアトリエ…。今じゃ、オラリオ一の回復アイテムの作り手*10と言っても過言ではないベル様のお店ですから、それは良い名前だと思います。」

 

「ミアハの所の店をどうするかって話もあるけど、売り場を分ければいけるんじゃないのかな。まあ、まずは話し合わないと始まらないと思うけど。」

 

 そういうことで、僕たちが新しく出すお店の名前は『ベルのアトリエ』で決まったのだった。

 

 まだ細部を考えることは多いけれど、自分のお店を持てるということで、僕はとてもワクワクした気持ちになっていた。いつかは、お母さんに負けない物を作り出して、お店に置けたら良いなと思いつつ、皆とこれからのことを話し合い続けたのだった。

 

 

 

 

*1
歴代アトリエでは、自分もダメージを貰う攻撃アイテムが存在する。

*2
独自設定。ボナ・デアと同一視されているため。

*3
ガネーシャ・ファミリアのレベル3の男性団員。ソーマの護衛を担当している。

*4
ロロナのアトリエのクーデリアの服。

*5
メティーの我儘である。

*6
ベルは純粋な恐怖で、リリは将来の義母(予定)の苛烈さに。

*7
ヘラは5年前にメティーたちの一行に参加して、一緒に旅をしていた。

*8
終末の種火とかが使い放題になるため。

*9
時給30ヴァリス。

*10
ただし、メティーを除く。




リリルカは、この戦争遊戯で格上を2人ほどこんがりと焼き上げたことで、レベル2にランクアップしました。ベルはレベル1のままです。倒した相手がレベル1だったので。
錬金剣は、魔剣と違って経験値が入ります。

メーテリアを主人公に据えると考えた時、真っ先に思い浮かべたのがマリーのアトリエの武闘大会で、エンデルクを踏みつけるシアの姿でした。

なので、メーテリアが名の知れた冒険者を戦争遊戯などで笑顔で叩きのめして終わろうと思っていました。最初はオッタルを踏みつけたかったけど無理でした。

初めてGeminiで挿絵を作りました。メティーの顔はシアそのまんまですけど。画質が荒いのは勘弁してください。

とりあえず、ベルが自分のアトリエを持つことで、タイトルを回収しました。
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