メティー&ベルのアトリエ ーオラリオの錬金術士ー 作:斎藤 晃
どれくらい時間が立ったのだろうか?
次に僕が意識を取り戻したのは、どこかの建物の中だった。そして、隣にはあのモンスターみたいな見た目のアマゾネスの女性が!
「って、ここどこぉ!?」
僕は慌てて飛び起きようとしたけど、上手くいかなかった。手足が縄で縛られていて、身動きが取れなくされてしまっていた。
「ゲッゲッゲッ、起きたかい。アンタを寝ている間にいただいて、アタシのものにしようと思っていたけどね。イシュタルの奴に横槍を入れられちまったよ。」
そう言いながらフリュネさんが顔を向けた先に、僕も自然と顔を向けてしまう。そこにいたのは、褐色の肌をした女神だった。恐らくあれがイシュタルという神なのだろう。
「こいつがあの毒薬の作り手か。フリュネが拐ってきた時はどうしようかと思ったが、こうなったらこいつを魅了してさっさとあの毒薬を作らせるとしよう。」
よく見ると周りには他にもアマゾネスの人たちが、僕を囲むように立っていた。ここにいたって、僕はようやく理解した。ここはイシュタル・ファミリアのホームで、僕は暗黒水を目当てに拐われたのだと。
そして、イシュタル様は魅了を使って僕を洗脳しようとしてるのだ。
「も、モンスターだ。魅了するなんて、モンスターが化けてるんだ!」
「誰がモンスターだってぇ!!」
モンスターの中には魅了を使って、こちらを洗脳してしまうものも居る。それと同じ事をするなんて、モンスターとしか思えないのだ。*1
たぶん、ここにいる人達もモンスターによって洗脳されてしまい、自分たちの主神だと思ってしまっているのだろう。
「このガキッ! さっさと魅了して、その汚い口を閉じてやる!!」
そう言うやいなや、僕に向かって目をカッと見開くイシュタル様だが、何も起きなかった。良かった、エンゼルリボンを着けていたままだったから助かった。
「な、何で魅了されない。」*2
一方のイシュタル様や他のアマゾネスの人達も動揺しているようだ。ホッとしているのも束の間、僕は上着を脱がされ何かの液体を背中に落とされた。
「【錬金術士】、【霊魂収奪】? ……何だいこの物騒なスキルは。それに、【酒神師匠】? こ、こいつ神酒を作れるっていうのか!! あれは、神にしか作れない代物のはずだよ。」
「ひ、ひぃ!」
どうやら、僕に垂らした液体は何かの薬品だったみたいで、恩恵の内容を読めるようにしてしまうようだ。確かライラさんにそんな事を聞いた覚えがある。
「それよりも、この霊魂収奪だ。敵からステータスを奪えるだって? 装備依存みたいだけど、こいつに作らせたらフレイヤのやつに簡単に勝てるようになるだろうね。」
「もしかして、アポロン・ファミリアの連中がレベル1になったのは……。」
「素晴らしい。毒薬だけじゃなくて、これほどの物なら、確かにアストレアのやつが必死に守ろうとするはずだよ。オラリオのパワーバランスを一気にひっくり返してしまえるじゃないか!」
イシュタル様は上機嫌で笑いだしているけど、僕は気が気じゃなかった。アリーゼさん達がこれまで口を酸っぱくなるまで、僕の作ったものに対して注意してきたのは、こういう事を防ぐためだったのだと気がついたからだ。僕が不用意に捕まってしまったがために、オラリオで不必要な戦いが起きようとしているのだ。
どうすれば良い?
どうすれば逃げられる?
そういったことばかりが頭に浮かぶけど、良さそうな手は思い浮かばない。皆の前で拐われたので、その内誰かが助けに来てくれるのを期待するしか無いのかな。
ポーチがない。武器もない。アイテムもない。今の僕には何もなかった。
冒険者になりたいと思った時、僕は
「おい、フリュネどうした?」
その時、誰かがフリュネさんに話しかけた。つい、僕もフリュネさんの方をみてしまう。すると、フリュネさんの体の色がより一層黒くなり、目は焦点があっていなかった。その上に、口から細長い舌がだらりと垂れ下がっていた。
「って、呪いで完全にモンスターになっちゃったの!?」
フリュネさんはモンスター化の呪いに冒されていた。それが、ここに来て一気に進行してしまったのかもしれない。そして、次の瞬間フリュネさんは声をかけたアマゾネスに向かって体当たりをした。
「フリュネ、一体アンタ何をっ!」
その声は最後まで続けられなかった。フリュネさんが振るった武器によって、そのアマゾネスは片腕を切り落とされたのだ。
「ギャァァァァー! う、腕が!? わ、私の腕がー!!」
「お前トチ狂ったか!」
「こいつ様子が変だよ。注意して!」
「ゲッゲッゲッ!」
さっきまでは僕は絶体絶命のピンチだったけど、逃げるチャンスが生まれたのだ。何とか逃げようと藻掻く僕に注意を向ける余裕は誰にもなかったようだけど、それで縄から抜け出せるほどの力もなかったし、器用さもなかった。
僕が足掻いている間にも、周りでは戦闘が繰り広げられていて、フリュネさんが周りのアマゾネスを圧倒していた。
「おい、ガキ。こいつはどうなってんだ! 呪いがどうこう言っていたが、なにか知っているのか?」
「こ、この人は、モンスター化の呪いに冒されていたんです。今その呪いが一気に進んで、完全にモンスターになってしまったんだと思います。」
「モンスター化の呪い……。与太話じゃなかったのかい!」
足掻いている内に、流石にイシュタル様に見つかったけど、僕に構っている余裕はないようだった。それほど、フリュネさんの力は周りを圧倒していた。レベル5だと聞いていたけど、モンスター化の呪いによってそれ以上の力を得てしまったのかもしれない。
「こいつを元に戻すには
「元に戻す前に私たちが殺されちゃうよ!」
形勢が不利と悟ったのか、イシュタル様とお付の男の人は逃げようとしていた。その間にも、どんどんと数を減らしていくアマゾネスの人たちだったけど、突然その内の1人が叫び声を上げた。
「このままじゃ無駄死にだ! あんたら逃げるよ。」
「何をっ!」
「悔しいが、私たちじゃ歯が立たない。他のファミリアに助けを呼ぶしか無いだろうね。」
「チッ、仕方ない。」
その言葉に僕は希望を持った。と言っても、このままじゃ殺されてしまうだろうけど。
「あ、あのこの縄をほどいて欲しいな、なんて……。」
「チッ。」
舌打ちされたけど、無事に縄を切ってもらえて、ようやく僕は自由の身になれた。これからは自分で動け、ということで僕はこのアマゾネスの女性の後を追って走り出した。この人の名前はアイシャというそうだけど、ある理由から僕のことをイシュタル様に知らせたらしい。
僕が他のアマゾネスの人達と建物内を走って逃げている中、途中でばったり出会った1人の獣人の女性も一緒になった。状況をあまり理解していないようだけど、アイシャさんの鬼気迫る説得によって一緒に逃げる事になった。
先ほどの理由が、この獣人の女性らしい。春姫という名前の彼女はレベルを上げる魔法を使えると言う。それが故に、イシュタル・ファミリアで飼い殺しにされているのだとか。将来的にはとある儀式のために、本当に殺されるかもしれないと言う。
そのために、僕が作る暗黒水を手に入れればレベルブーストの魔法を持つが故に飼い殺しにされている春姫さんから、イシュタル様の興味が薄れると思ったのだとか。結果は全くの反対だったらしいけど。
「申し訳有りません、皆さん。」
「春姫さんが謝ることじゃないですよ。」
「ああ、あたしがすべての元凶だ。恨むのならあたしにしな。」
「恨むだなんて。こうして助けてくれたわけですし。」
「あんたって、本当に甘ちゃんだね。」
「そんな無駄話してないで早く逃げよう! あいつが追いかけてきてるよ!?」
そんな事を話しながら走っている内に、イシュタル・ファミリアのホームから抜け出せた。フリュネさんは追ってくる気配はなかったけど、見えてないだけかもしれない。相手はレベル5の格上だし、モンスターになっているのでさらに強くなっているかもしれない。
だけど、その途中で僕は見てしまった。何を見たのかというと、イシュタル・ファミリアのホームから立ち上る光の柱だ。イシュタル・ファミリアの人たちは、その光の柱を見た途端険しい表情をしたかと思うと、脱力したように座り込んでしまった。
「フリュネの奴、やりやがったな!」
「恩恵が……消えた?」
「あんたら、さっさと逃げるよ。今のあたしたちはただの肉袋にしかならないよ!」
アマゾネスの人たちの会話を聞いている限り、フリュネさんがイシュタル様を送還されてしまったらしい。そして、彼女たちからは恩恵の力が失われてしまったのだろう。
僕たちは光柱が夜の街を照らしているのを尻目に、繁華街の街中を必死になって逃げ続けた。綺羅びやかな建物と数多くの人混みの中を僕たちは必死になって走り抜けた。
そして、アストレア・ファミリアの狼人であるネーゼさんと街角でばったり出会うことになった。良かった、助かったぁ。
「ベル、良かった無事だったんだね! って、あんたは
武器に手をかけて、戦闘態勢に入ったネーゼさんをみて、僕は慌てて止めに入った。アストレア・ファミリアの人たちに、こんな繁華街で乱闘騒ぎなんて起こしてほしくはなかった。
「この人たちは僕をイシュタル・ファミリアから逃がしてくれたんです。実は、今すごく大変なことになっていまして……。」
「うん?」
僕はこれまでに起きたことをかいつまんで話した。フリュネさんに拐われて、イシュタル様に魅了されそうになったけど何とか助かったこと。
その時に、フリュネさんがモンスター化の呪いで完全にモンスターになってしまって、イシュタル・ファミリアの団員と戦闘になったことを説明した。
「モンスター化の呪いにかかっている奴が他にもいたのか……。それはともかく、皆と合流しよう。あんたらも付いてくるのは良いが、下手な真似したらただでは済ませないよ。」
「わかっている。もとよりそのつもりだ。」
という訳で、僕たちはアストレア・ファミリアの皆と合流することができた。この時に知ったけど、皆は僕のことを助けようと行方を探っていたらしい。
ウランダさんから事情を聞いて駆けつけたけど、モルドさんから詳しい事情を聞いて、イシュタル・ファミリアのホームに連れ去られたのだろうと言うことまでは分かったのだと言う。
けど、それが故に攻めあぐねていたらしい。このまま攻め込んでしまえば、凄まじい抗争が始まる可能性があったからだ。
「何はともあれ、ベル君が無事で良かったわ。」
「すいません、アリーゼさん。これまで散々注意してくれていたのに、僕は……。」
「いや、流石にアルバイトの面接に
「はい。よく分かりました。」
これまで僕は少し甘えていたのかもしれない。僕の作るアイテムがそんなに価値のあるわけ無いなんて、独りよがりの考えを持っていた部分もあった。大金が動くことが何度もあったけど、実感があまりなかったのだ。
だけどようやく分かった。僕が作るものには大きな価値がある。最初はそれほど高値がついていなかったリフュールボトルや祝福のワインの値上げが相次いだのは欲しがっている人がそれだけのお金を出してでも欲しいと思っているからなんだ。鳥と陽の杖や錬金剣にあれほどの値段が付いたのも同じことだ。
そして、欲しがる人のの中にはこうして僕を誘拐してでも手に入れようとする危険な人達もいる。それを体験したことで、僕はようやく錬金術で作ったものが周りからどう見られているのかを理解することが出来たのだ。
同時に、僕が冒険者になった頃にお母さんが言っていたことを思い出した。錬金術で作ったアイテムは非常に強力だから、アストレア・ファミリアにも回復薬しか売らなかったと言っていたことを。
そういった事を話すと、ようやく分かったのかとライラさんが呆れ顔で僕のことを見ていた。ライラさんだけではなく、他のアストレア・ファミリアの皆がそんな顔をしていた。
「それはともかく、
「それならば、あたしが囮となって奴を引き連れてこようか?」
アリーゼさんの言葉に、アイシャさんがそんな提案をしてきた。でも、この人たちは恩恵を失ってしまっている。そんなのは自殺行為としか思えなかった。
「元はと言えばあたしたちの不手際だ。それくらいのことはさせてくれ。」
「あなた達は恩恵を失ってるのでしょう? 私たちもあの光柱を見たから大体は事情がわかるわよ。」
「しかしっ!」
「いや、その必要はないようだぞ。」
アイシャさん達の言葉を遮るように、輝夜さんが鋭い目つきで何かを見つめていた。輝夜さんの視線を辿ってみると、そこには真っ黒いヌメヌメした表皮を持つ、二足歩行をするカエルみたいなモンスターが、建物の屋根を伝ってこちらに向かって飛び込んでくるのが見えた。
モンスターの姿に気づいた人々が、叫び声を上げながら逃げていく。あっという間に人混みの消えた繁華街の中で、アストレア・ファミリアの皆はモンスター化したフリュネさんを迎え撃つために戦闘態勢に入っていく。
だけど、奴はそんな彼女たちを無視して僕目掛けて舌を伸ばしてきた。それにあっけなく絡め取られた僕は、モンスターの口に飲み込まれることとなった。
「いやー! ヌメヌメするぅ!?」
モンスターに飲み込まれ、生暖かい口の中で僕は必死にジタバタと足掻く。足掻こうとした。
だけど、モンスターは余りにも力が強く、身体中がミシミシと音を立てていくのが、自分でも分かってしまった。生暖かくて、ヌメヌメして、とっても臭いモンスターの口に飲み込まれていき、僕は今にも意識を失いそうになりそうだった。
「ベル、油断するな!」
その時、輝夜さんが刀でモンスターを斬りつけたことで、運よく口から逃れることが出来た。すぐさまリャーナさんが駆け寄ってきて、
「ちっ。かすり傷すらつかんか。なんて化物だ。」
「これが
見ると、ライラさんは叫び声を上げながら、武器を構えてモンスターの攻撃を受け止めようとした。だけど、逆にモンスターの攻撃で吹き飛ばされてしまった。
「こいつ、レベル5じゃなかったのかっ!」
ライラさんは先日の遠征でレベル5に昇格していた。ライラさんだけでなく、リューさんとネーゼさんもレベル5に昇格した。アリーゼさんと輝夜さんに至ってはレベル6になっている。それほど強力なモンスターと戦い、偉業を達成したということなのだろう。
だけど、それでもこのモンスターには届かないようだった。第一級冒険者がこれだけ集まっても倒せないなんて……。
「気をつけろ。モンスター化したことで、奴の能力は凄まじく上昇しているようだ。」
「嘘だろ、そんなん反則だろうが!」
輝夜さんとライラさんが軽い掛け合いをしながら、カエルっぽいモンスターからの攻撃を捌いていく。第一級冒険者が2人がかりでも攻めあぐねるなんて、このモンスターはどれほど強いんだ。
「皆、援護して!」
アリーゼさんはそんな指示を出しながら、ネーゼさんと共に2人に加勢するけど、形勢を逆転するほどではなかった。あのモンスターは、凄まじく強いだけではなく戦いが上手いのだろう。正直、僕では何が起こっているのかまでは正確には把握できなかった。皆の動きが余りにも素早くて、目で追うことは全く出来ないのだ。
だけど、これほどの戦力がいるというのに、モンスター化したフリュネさん相手に優位に立てていないということだけは理解できていた。
「ベル様、これを。」
この時になって、僕はリリがこの場にいることに気がついた。アストレア・ファミリアと一緒に来ていたリリは、僕のポーチを渡してくると
「この場で形勢を逆転するには、暗黒水を使うしか無いと思います。」
「だけど、ここで使ったら……。」
「大丈夫です。ギルドの仮決定は人間相手への使用の禁止です。ですが、あれはどうみてもモンスター。ギルドの決定に反することではありません。......はずです。」
実は、アポロン・ファミリアとの戦争遊戯のあとに、ギルドから暗黒水のオラリオでの使用禁止の仮決定が通達されていたのだ。本決定はまだだけど、オラリオで使うとどんなペナルティーが下されるかは分かったものじゃなかった。
ただ、ダンジョン内で使う分には、ギルドの関知するところではないと言っているらしい。どこまで本気なのかは分からないけど。
幸いにして、ポーチの中には暗黒水が入っていたので、それを手に取る。この暗黒水は、戦争遊戯の後に調合したもので、あの時の経験を元に発現する効果を見直したものになる。具体的には、“回復無効を与える・強”を発現しない代わりに“レベルダウン・中”を発現したものになる。
回復無効がなくても、この呪いを解くのはかなり難しいらしく、アミッドさんくらいしか解けないのではと言われたのが理由だった。
「皆さん、暗黒水を使います。」
「おっしゃ、あたしに渡してくれ。」
僕が暗黒水のことを言うと、耳ざとく聞きつけたライラさんが戦闘から離脱してきた。僕はとっさにライラさんに暗黒水を手渡す。
今あのモンスターと戦っているのは、アリーゼさんと輝夜さんとネーゼさんの3人だった。
その3人を、リャーナさんとセルティさんが援護している。2人とも
「痛いわね!」
アリーゼさんにモンスターの攻撃が当たり吹き飛ばされる。けれど、リャーナさんの治癒の術法によって、またたく間に傷が癒されていく。そして、アリーゼさんは再び戦闘に参加する。
「これが第一級冒険者の戦いだというのか!」
「これだけの第一級冒険者が集まってるって言うのに、それでもあいつを倒せないの!?」
イシュタル・ファミリアのアマゾネスの人たちは、激戦を見ながら動揺していた。レベル6が2人とレベル5が2人に加えて、レベル4の魔導師が2人も居ると言うのに、あのモンスターに有効打を与えられずにいた。
時たま攻撃を当てることは出来ているようだけど、全くダメージになっていない。それどころか、時々アリーゼさんたちにも攻撃が当たって、結構なダメージを受けているようだった。その証拠に、ネーゼさんのリフュールボトルが自動発動している。体力が50%まで削られてしまった証だ。
形勢はこちらのほうが悪かった。けれど、輝夜さんとアリーゼさんとネーゼさんがモンスターの動きを必死になって止めている間に、ライラさんが暗黒水を使った。
皆の分のエンゼルリボンは渡してあるけど、今ここにいる人達が全員身に着けているのかどうかは分からなかった。だから、何の躊躇もなしに暗黒水を使ったライラさんに、僕は凄く引いた。
多分、エンゼルリボンを着けているのを分かった上で使っているんだと思うけど……。
だけど、効果は劇的だった。アリーゼさんたちの動きは変わらなかったのに、モンスターの動きが目に見える形で鈍くなったのだ。流石は“レベルダウン・中”だ。レベルを5も下げたらここまで劇的に変わるものなのか。
「畳み掛けるわよ!」
アリーゼさんの号令の元、アストレア・ファミリアの人たちが弱ったモンスターに次々と攻撃をしていく。あっという間に形勢が逆転してしまい、ついにはモンスターは地に倒れ込んだ。
「とどめを刺すべきか?」
「いえ、止めておきましょう。こんなんでも呪いの被害者よ。まあ、ベル君を誘拐した張本人でもあるから、メティーさんに人間に戻して貰った後に、じっくりと話を聞かせてもらいましょう。罰を下すのはそれからでも遅くないはずよ。」
「団長、それは生ぬるくないか?」
輝夜さんの提案をアリーゼさんは却下したけど、ネーゼさんが異論を唱えた。
「どこでモンスター化の呪いにかかったのか、調べないと不味いと思わない? 突然モンスターになって暴れ始めるなんて、普通じゃないわ。セシルなんて、意識を失って病院に担ぎ込まれたと言うのに、
「……たしかにそのとおりだね。」
アリーゼさんの言うことは理にかなっていたからだろうか、ネーゼさんはすぐに謝罪をしてアリーゼさんの言う事に従った。気絶したモンスターを生きてるナワで縛り上げ、僕たちは一旦帰路につくことになったのだった。イシュタル・ファミリアのアマゾネスの人たちも、事情聴取ということで、連れて行くことになった。
今日は僕たちはアストレア・ファミリアのホームで泊まるように言われたので、素直に従うことにした。『星屑の庭』に着くと、そこには神様とミアハ様とナァーザさんに加えて、お母さんたちも揃っていた。
皆を集めたのは、イシュタル・ファミリアの動向に注意をしているということだろうか。イシュタル様が送還されたことをアイシャさんが説明すると、皆して驚いた様子だった。自らの眷族が突如としてモンスターと化して主神までをも殺してしまったのだ。驚かないはずがなかった。
ちなみに、フリュネさんが変化したモンスターは、厳重に縛り上げてガネーシャ・ファミリアにある牢屋に放り込むらしい。
少し落ち着いた頃になって、神様からお母さんが終末の種火を持ってイシュタル・ファミリアに攻め込もうとしていたのだと聞いた。
アーシャやイクセルもそれに同調していたのだけど、必死になって神様とアストレア様が説得して、終末の種火が使われることはなかったのだと言う。本当に使われなくてよかったよ……。使われていたら、オラリオって無事だったのかな?
とりあえず、こうしてアルバイト採用面接に端を発した大事件は、一応の終わりを迎えるのだった。もう、面接なんて懲り懲りだ!
フリュネはヒキガエルという蔑称で呼ばれていますが、マジでカエルのモンスターになりました。あの見た目で何の問題がないというのはおかしいと思ってこうなりました。瞳孔もカエルそのものだし。
そして、フリュネにイシュタルは送還されましたとさ。
冒険者が突然モンスターになって主神を送還するヤバい話になりましたが、元ネタのナザルスにしてもモンスターと化してソフィーたちに襲いかかっていましたし。
余談ですが、ナザルスのイベントを見返したら、呪いではなく毒となっていてやっちまったなと後悔しました。間違えたものは仕方ないので、この作品では呪いとして書いていきます。