メティー&ベルのアトリエ ーオラリオの錬金術士ー   作:斎藤 晃

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アトリエシリーズの効果や特性には、結構ヤバゲな効果が含まれていることがあります。
今回のお話はそういうものです。


アイテム図鑑No.XXX ストラパール+α

 ある日のこと。

 

 『青の薬舗』から帰ってきたリリは、ナァーザさんからの要望を僕に伝えてくれた。

 

 デニッシュの売れ行きはいいのだけど、もっと日持ちがして気軽に食べられる物が欲しいらしい。

 

「ナァーザさんには分かったって言っておいて。何日かしたら試作品を持って行くからって。」

 

「そう伝えておきますね。」

 

 リリにナァーザさんへの返答を頼んで、僕は何を作ろうかと思案した。手軽に食べられて日持ちがする。クッキーやビスケットかなぁ…。とりあえず作ってみようか。

 

「まずは一番簡単な素朴な焼き菓子*1から作ってみよう。」

 

 材料はうに、水、トーンで良いや。それなりの素材でそれなりの品質のものを作る。良い品質のものを作るのはいいけど、それだと採算が取れない場合もある。リリはそこら辺には厳しいので、品質が高すぎず低すぎないものを、できるだけ低コストで大量に作る癖が自然と身についてきた。

 

「品質は80か。生命力も疲労も回復できるから、要望には答えられるかな。」

 

 ただし、発現した効果には”お腹にたまる”というデメリットがある。これは疲労は回復するけど動きが鈍くなってしまうというものだ。その辺りはナァーザさんに説明してどうするか考えてもらおうかな。

 

「次は……。」

 

 こうして僕は試作品の焼き菓子を幾つか作っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 要望を受け取ってから2日後、僕は作った試作品を持ってナァーザさんの元を尋ねた。お客の多い朝方と夕方を避けて、昼間に来たおかげで『青の薬舗』にお客さんの姿はなかった。

 

「ナァーザさんご無沙汰しています。要望のあった物の試作品を持ってきました。」

 

「ベル君、いらっしゃい。何が出てくるのが楽しみ。」

 

 僕はお店のカウンターに3つの袋を並べた。

 

「今回作ったのは、素朴な焼き菓子、旅人の糧食*2、ストラパール*3です。どれも体力と疲労を回復してくれます。」

 

 紹介した順番で調合難易度が低いので、できれば素朴な焼き菓子が売れればいいけど、効果が低いので他にも2種類持ってきたのだ。値段は難易度と回復効果に応じて高くする予定だ。

 

「3つとも焼き菓子なのね。3つも作ったってことは、それぞれ特徴があるってことよね?」

 

「はい。素朴な焼き菓子は、とにかく簡単に大量に作れるんですけど、効果は低いです。後の2つは作るのが少し大変ですけど、効果は高いです。旅人の糧食は保存食なのでかなり日持ちがしますけど、ストラパールは長くて1週間くらいでしょうか。」

 

「ふーん。素朴な焼き菓子は低効果でも低価格で売ればいけると思う。残り2つで、作るのが大変でコストがかかるのはどっち?」

 

「ストラパールですね。」

 

「うん、調合難易度とコストでは素朴な焼き菓子と旅人の糧食かなぁ。とりあえず食べてみましょうか。」

 

 そして、ナァーザさんはそれぞれ1つずつ試食していった。旅人の糧食では食べにくかったのか、奥に行って飲み物を持ってきていた。

 

「この中ではストラパールが一番美味しいかな。素朴な焼き菓子に甘いのとしょっぱい味付けの2つがあるのは意外だった。旅人の糧食は、味はいいのだけど口の中が乾いて食べにくいし、すごくお腹が膨れる感じがする。飲み物が必要になるのはマイナスかな。」

 

「あ、それなんですけど、素朴な焼き菓子には少しデメリットがあって、お腹が張って動きが鈍くなってしまうかもしれないんですよね。」

 

「それくらいなら許容範囲だと思うけど。」

 

 とりあえず、素朴な焼き菓子とストラパールの2つがナァーザさんは気に入ったらしい。食べる時に水分が必要なのは、ダンジョン探索ではマイナス評価なのだとか。ダンジョンでは水源がない階層も多く、水の確保が大変なのでこういう評価になるらしい。

 

「勉強になります。」

 

「まだ冒険者になって1ヶ月ちょっとだものね。逆にそれだけでこれほどのものが作れる方が凄いけど。とりあえず、素朴な焼き菓子とストラパールが良いと思う。」

 

 ストラパールは中間素材としてビュズダーナッツを作る必要があるから、一手間掛かって大変だ。

 

 でも、その分値段は高く設定してくれるらしい。それだけ、体力と疲労を回復できる回復アイテムはとても需要が高いのだとか。納品数は少なくなると思うけど。

 

「冒険者になってある程度経てば回復アイテムの重要性は骨身にしみる。特に疲労回復アイテムなんて他にはないから、かなり高く売れるんだよ。」

 

 具体的な金額はリリに任せるとして、こうして新商品はこの2つに決まった。頑張って調合しよう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナァーザさんとの話し合いが上手くまとまり、上機嫌で本拠地に帰ってきた僕が見たのは、お腹が凄く膨れてボールのようになってしまったリリだった。

 

「え、あ、リリ? 一体何が?」

 

「べるさまぁー! ごめんなさい! クッキーとパンをたべたらこんなことにぃー。」*4

 

 もしかして、試作品で作ったストラパールとシェルバニブレッドを食べたって言うの!?

 

「と、とりあえずハニーシロップで状態異常を解除しようか。」

 

 動けないリリの代わりに、ハニーシロップを飲ませると、ボールみたいにはち切れんばかりに膨れていたリリの身体がみるみる内に元に戻っていった。

 

「はぁ、もう一生あのままかと思いました。ところで、ベル様、あのパンとクッキーは一体?」

 

 鋭い目つきでこちらを睨みつけてくるリリに、一瞬気圧されたけど、試作品を勝手に食べたリリが悪いと思い直した。

 

「机の上においてあった物を食べたでしょ。あれは、『青の薬舗』で売るものの試作品…の失敗作だからね? 勝手に食べたリリが悪いよ。」

 

「へ、失敗作? やっぱりあれはパンやクッキーが原因なのですか?」

 

 勝手に食べたことで分が悪いと感じたのか、リリは僕の調合したものが悪いという話に持っていきたいようだった。

 

「調合室の中にあるものを勝手に食べたり、使ったりしちゃ駄目だから。ちゃんと約束して。」

 

「はい、分かりました。すいませんでした。」

 

 きちんと謝ってくれたので、僕はどんな失敗をしたのかを説明し始めた。

 

「あのパンはシェルバニブレッドと言って、体力と精神力を回復するものなんだけど、1つ欠点があるんだ。」

 

「…どんな欠点ですか」

 

「太る効果が発現するんだよね。あのシェルバニブレッドには、”ただちに太る”っていう効果が出ていたから、これはヤバいと思って、『青の薬舗』にも持っていかなかったんだよね…。」

 

「た、ただちに太る。」

 

 リリは青い顔をして自分のお腹をペタペタと触り、先程までボールのように膨れていたお腹が本当に元に戻っているのか確認していた。

 

「そして、ストラパールには”確実に太る”っていう効果が出ていたんだ。」

 

 リリがあんな姿になったのは、”ただちに太る”と”確実に太る”の合わせ技だったのだろう。これまでクッキー類を作ったことがなかったので、こんな効果が出るなんて知らなかった。

 

 お母さんのお店で、クッキーが置いてないのはもしかしてこれが原因なのかも。…お母さんもボールみたいになってしまったのかな。

 

「か、確実に太る…。ベル様、これは絶対に売ったら駄目です!」

 

「あー、売るものにはこの効果は発現させないから大丈夫…だと思う。」

 

「そこは断言してくださいよ!」

 

 

 

 

「ただいまー! いやー、まいったよ。帰りに医療系ファミリアの神に追いかけられてさ。でも、ベル君の秘密は死守したから安心してくれたまえ。」

 

 その時、神様が帰ってきた。神様は調合室に顔を出すと、「お腹すいた。」と言いながら、流れるように机の上に残っていた一切れのシェルバニブレッドを口の中に放り込んだ。

 

「あ…。」

 

「ああ!」

 

「へ? 食べたらだめだった…ぶげぇ!」

 

 僕はその日、”ただちに太る”という特性の恐ろしさを実感した。それはリリもそうだったようで、これ以降リリは調合室にあるものに手につけようとは、全くしなくなった。

 

 そして、神様もまた調合室に入る事を恐れるようになってしまった。

 

 まあ、勝手に触ったり食べたりすることが無くなったから、良しとしようかな!

 

 うん、前向きに考えよう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから1週間ほど経ったある日のこと、僕はたまたま『青の薬舗』の近くを通りかかったので、ついでにナァーザさんの顔も見ておこうと思って、『青の薬舗』に顔を出していた。

 

「ナァーザさん、売れ行きはどうですか?」

 

「あ、ベル君。新しく売り出した焼き菓子の売れ行きは凄いよ。特に女性冒険者は皆欲しがってるから。」

 

「それは良かったです。」

 

「でもね、…最近女性冒険者からダイエットに使える薬はないかって聞かれることが多いんだけど、何か良いものって無い?」

 

 ダイエットと聞いて、僕はピンときてしまった。もしかして、”太りやすい”の特性が働いているのではないかと。

 

「はははは、僕には作れそうにないですね。きゅ、急に用事を思い出したので、今日のところは、これで失礼します。」

 

「ちょ…。」

 

 ナァーザさんの静止を振り切り、僕は早足で本拠地へと戻っていった。

 

「僕は何も知らない。僕は何も聞いていない。僕は関係ない…。」

 

 ごめんなさい、女性冒険者の皆さん。僕は過ちを犯しました。許してください。

 

 その後、オラリオでは女性冒険者が全体的にふくよかになってきた、という話を聞いたけど僕たちは聞かなかったことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイテム図鑑No.XXX ストラパール

 

元々はとある街の銘菓だったらしいけど、今は回復アイテムとしてレシピが残されているだけになっている。

食べたら体力と疲労を回復してくれるお菓子。

ただし、食べ過ぎれば太る。*5

 

 

 

ベル

「僕は何も悪くない!」

 

リリルカ

「ベル様、ギルティです。」

 

ヘスティア

「ギルティ。」

 

アイズ

「最近お腹が出てきたような気がする…。」

 

 

 

 

 

 

アイテム図鑑No.XXX シェルバニブレッド

 

シェルバニ麦という小麦で作ったパン。

しっかりと練り、弱火のオーブンでじっくりと焼き上げた。*6

中はふかふか、外はこんがりの素晴らしい食感が人気の秘密らしい。

食べると何となく防御力が上がったような気がする。

食べすぎに注意。

 

 

 

ベル

「特性の発現には結構気を使いました。」

 

リリ

「女性冒険者の皆さん、無力なリリを許してください。」

 

ナァーザ

「最近また胸が大きくなった気がする。」

 

ティオナ

「胸が大きくなるパンがあると聞いて!」

 

 

 

 

 

 

アイテム図鑑No.XXX 素朴な焼き菓子

 

家庭でも簡単に作れる素朴なお菓子。

食べるとお腹が張ってしまい、動きが鈍くなることもある。

作るのに失敗すると苦くなる。

しょっぱい味と甘い味がある。*7

 

 

 

ベル

「甘いのが苦手な人も食べられるように、塩味も作りました。」

 

リリ

「これは安心して食べられそうです…。」

 

ヴェルフ

「鍛冶仕事の後は塩っ気のあるものが食いたくなるから、これは良いぜ。」*8

 

セシル

「眠気覚ましには苦いものが良いわね!」

 

 

 

 

 

 

アイテム図鑑No.XXX 旅人の糧食

 

かなり長期間保存できる保存食。

一口でお腹いっぱいになるという人もいるほど、満腹感がある。

でも、喉が渇くから水が沢山必要になる。

ダンジョンに潜る際には気をつけよう。

 

 

 

ナァーザ

「喉が渇くのが難点。それ以外は満点。」

 

ベル

「水ってとても大切なんだと思いました。」

 

アリーゼ

「水の確保ってダンジョンでは死活問題なのよね。」

 

リリ

「とあるファミリアでは、水の取り合いで殴り合いに発展したそうです。」

 

 

 

 

 

*1
ソフィーのアトリエより。

*2
フィリスのアトリエより。原作ではLP回復効果はないが、この作品ではあるものとする。

*3
シャリーのアトリエより。これもLP回復効果があるものとする。

*4
デブ声で。

*5
食べすぎなくても太る。

*6
実際は錬金釜で作った。

*7
ただし、塩も砂糖も入っていない。

*8
塩分は取れない。




アトリエシリーズには色んな食べ物が出てきますが、中にはヤバいものもあります。
確実に太るや、ただちに太るなんてその最たるものだと思います。
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