メティー&ベルのアトリエ ーオラリオの錬金術士ー 作:斎藤 晃
ダンまちは最近は待ったので知識があいまいですが、ご容赦願います。
冒険者になりたい!
ダンジョンのある街で商売をするのは間違っているのだろうか?
私の人生はそのおよそ半分が不幸だったと思う。
例えば、生まれつき不治の病を患っていたり。
例えば、世界の中心と言われるオラリオで、冒険者になったにもかかわらずその病弱さゆえに碌に冒険ができなかったり。
例えば、長くはない月日とはいえ愛した男が黒き終末に挑んだ末に死んでしまい、愛の結晶を見せることすらかなわなかったり。
例えば、隻眼の黒龍によって、私にとって大切だった人の多くが死んでしまったり。
それでも私は生きている。
オラリオを追放されて、辺鄙な農村でゼウス様と共に短い共同生活をした。
愛しい我が子の成長した姿など見れないと思っていたが、今やその子は14歳となり私の営む菓子屋でとてもよく手伝ってくれている。
生まれ持った病は消え、愛しい子供たちに囲まれ、家業の菓子店の経営は順風満帆。
ときどき私のことを姉と間違えて後ろ指をさしてくるものもいるが、アストレアファミリアなどの私の味方をしてくれる人たちがそれを正してくれて、今ではそんなことは皆無だ。
今年に入ってアストレアファミリアなどの冒険者の顧客も増えた。
間違いなく今の私は人生で一番幸せな時を過ごしている。したはずだった。
「もう、お母さんのわからずや!僕は冒険者になりたいんだ!」
長男のベルはいつも私の手伝いを率先してやってくれてるし、店に出す菓子だけではなく、冒険者向けの道具作りも一部はできるようになった。
だからだろうか?
ベルは冒険者になりたいと言い出したのは。
「冒険者なんて危ない真似をベルにさせたくないのよ。ね? わかって?」
家族4人がそろった夕食の席で、ベルは冒険者になりたいという話を始めた。冒険者がどれほど過酷で大変かは、私が、私たちが一番よく知っている。ベル以外の3人は過去に冒険者だったのだから。
だからこそ、私は反対した。かつて私が所属していたファミリアは冒険の末に壊滅した。生き残ったのは、私を含め片手で数えられるほどだ。
だからこそベルにはそんな過酷な道を行かないでほしかった。
「なんでいつもそう言うの! お母さんだって冒険者だったんでしょ!」
ベルは私が過去に冒険者だったのを知っている。今のベルの年齢よりももっと幼いころに私たちは冒険者になったのだ。
「だからこそよ。それに私は碌に冒険もできずにレベル1で終わったのよ。それよりも錬金術を極めましょう。ベルだったら、私じゃ無理だった錬金術の極致にたどり着けるはずだわ。」
私の言葉にベルは口を噤んだ。この子は我慢強い。12になるまで、それこそ赤ん坊のころから各地を旅して廻っていたのだ。時に村で薬を売り、時に町で食品や菓子を売り、冒険者相手には道具を、商人相手には化粧品などを売って廻っていたのだ。
だからこの子には友達がいなかった。一か所にとどまることのない旅の連続。誰かと仲良くなる時間もなく次々と町や村を巡った。なぜならば、それが私たち錬金術士の生き方なのだから。
「もういい! こんな家、家出してやる!!」
ベルはそう言うと、食事の途中だというのに席を立ちあがって居間のドアを開けて外に出ようとした。だが、それよりも早くベルの首根っこを細く小さな腕が掴んだ。
「食事中に席を立つな。そしてわめくな。」
我が家の長女であるアーシャ*1は、ベルよりも小さな体にもかかわらず、兄の体を引きずり無理やり着席させた。いつも思うが、恩恵を失ったというのに、この子のどこにそんな力をだす源があるのだろうかと不思議になる。
とはいえ、不貞腐れた顔とは言え、ベルは席に座ったままだったので少しばかり安心した。
「なんでそんなに冒険者になりたいの? 今でも私たちは冒険者相手に道具を作ったり素材を買い取ったりしてるでしょ?」
ベルには錬金術士として大きな才能が眠っている。私では至れない錬金術の極致。賢者の石を始めとした数々の調合品を作れるだろう才能がベルにはあるのだ。
「…実は今日、神様に勧誘されたんだ。」
ベルは渋々ながら話していった。
実は今までいろんなファミリアに冒険者になりたいと訪ねたが、すべてのファミリアで断られたこと。
今日、たまたま路地裏で出会ったヘスティアと呼ばれる神に眷属にならないかと誘われたこと。
恩恵こそ授かってないが、眷属になりたいと約束したこと。
私はそれを聞いて頭を抱えた。
この子が英雄にまつわる物語が好きなことはよく知っていた。小さい頃はごっこ遊びに付き合ったし、アーシャとイクセル*2と共に冒険ごっこをして遊んでいたことも知っている。
だが、私たちが実際にモンスターと戦ったり、遺跡に潜ったりする時に連れて行ったことはそれほど多くはなかった。それをずっと不満に思っていて、今日それが爆発したのだという。
「エルソスの遺跡の時*3も僕は置いてきぼりだったじゃないか!」
「あの時はヘルミーナ*4も一緒に留守番だったろ。」
「でも、アーシャもイクセルも遺跡に潜ってたじゃないか! ずるいよ!」
先生*5の一番弟子であり、私の姉弟子であるヘルミーナはベルのことを事更に可愛がってくれていた。
とはいえ、クラネル家の中でいつも留守番にさせられていたのは思うところがあったのだろう。
自分だって戦える。
錬金術だって使える。
なのに、一緒に連れて行ってくれない。
それはベルの心の中に汚泥としてずっと残り続けていたのだろう。
酷いよ、とかずるいよ、とか言いながら涙を流しているベルを見ると胸が締め付けられるような痛みを覚えた。
だからだろか。
「仕方ないわね。」
私はそう言うと、アーシャとイセルクのほうに顔を向けた。二人ともため息をついたり肩をすくめたりしながら、私と同意見であることを伝えてくれた。
「ベルが冒険者になることは認めます。」
私がそう言うと、ベルは顔をあげて驚いた表情を見せた。そして、みるみる嬉しそうな顔になった。
だが、そう簡単に冒険者にならせてたまるものか。ベルは私の大切な宝物なのだ。絶対に失うものか!
「冒険者になるにあたっていくつかの課題を与えます。それをクリアしたら、冒険者になるのを認めてあげるわ。」
「わかった! 僕頑張るよ!」
泣いた子がなんとやら。これまで見たこともないほどの笑顔でそう言ったベルに、私は少しばかりの罪悪感を抱いたが、母親としての責務と愛情でそれを抑え込んだ。
「課題は明日の朝になったら伝えるから、今日は早く寝なさい。」
ベルは残していた夕食をすべて平らげると、すぐさま部屋へと戻っていった。
ベルが自分の部屋を閉じる音を聞いた後に、私たちは今後のことを話し始めた。
ベルには決して聞かれてはならない会話だ。
「いいのか母さん、いやメーテリア。」
「いつかはこうなるんじゃないかと思っていたわ。錬金術は旅人の技術。いつかはここを飛び立っていく日が来るのよ。それが少し早まったうえに、ダンジョンでその練習もできる。前向きに考えましょう。」
アーシャ、かつての姉の言葉に、私はこめかみを指で押さえながら答えた。かつて私同様に病に侵されていた姉は、7年前に先生によって健康な体となったが、かつての愚行に対する罰としてベルの2歳年下の妹としての生を歩むことを強制された。
今でもそれに対しては先生を恨んでいるようだけど、私は姉が私の子供になってくれてうれしい気持ちもあった。生きてくれてるだけでも嬉しいのに、少女となった姉を私の思い通りに着飾ることができる喜びに私は目覚めていた。
それはともかく、ベルだってモンスターと戦う事は今までに何度もあった。エルソスの遺跡は流石にベルでは手も足も出ないと分かっていたから置いていったけれど、錬金術師としての嗜みとして素材収集の一環としてモンスター退治のやり方はきちんと教えてきたつもりだ。
「率直に聞くけど、今のベルってどれくらいの強さなの?」
私では冒険者の強さなどわからない。レベル1のまま終わった私ではダンジョンのモンスターがどれほど強いのかすらわからないのだ。ダンジョン外のモンスターは非常に弱いとされている。ミノタウロスなど、はたき*6の一振りで倒せるとはいえ、ダンジョン産のモンスター相手ではどうなるかわからないのだ。
「…多分、あいつが作れる道具を加味したとすると、上層当たりなら苦戦すらしないだろう。」
「いつも思うが、お前はあいつに過保護すぎる。」
かつてのゼウスファミリアの生き残りであったザルド改めイクセルは、少し考えた後に上層付近なら大丈夫だろうと太鼓判を押し、アーシャは私に苦言を呈した。アーシャはゴブリン狩りをする際に、ベルをゴブリンの巣穴に蹴落として無理やり戦わせようとしたことがあった。
すぐさま私が気が付いてゴブリンを駆逐したが、ベルも半数ほどのゴブリンを倒していた。事情を知った私はアーシャを厳しく怒ってお尻ぺんぺんの刑に処した。先生が言うには、子供に対する罰としてこれが一番いいものらしい。
「これでも結構我慢していることも多いのよ。」
私がそう返すと姉さんはやれやれと言うかのように首を軽く横に振った。
「それで課題はどうするんだ?」
「まずは冒険のために必要な装備や道具を自分で作ってもらうわ。」
私の答えに2人して顔を上げて唸った。錬金術士の基本中の基本。自分で使う道具はすべて自分で作るのだ。もちろんそれらを作るための素材も自分で集める必要がある。
もっとも、2人は冒険に使うものだけを考えてるんでしょうけど、私はもっと根本的なところからのことを考えていた。
調合道具の作成。ベルにはそれを課題の一つとして与えようとも思っているのだ。
「素材は自分で集めるか、商人や冒険者から買うかして集めてもらいましょう。」
「素材を買う金はどうするんだ?」
「ベルの腕前だったら、冒険者にも商人にも売れるものを作れるだけの腕はあるはずよ。それにアリーゼさんたち*7にも頼んで、暇な時にでも手伝ってもらいましょう。」
「前言撤回だ。お前は十分厳しい」
私の方針に2人は少しばかり渋い顔をした。私が作る道具や装備品はごく一部の冒険者や商人にしか知られていない。なぜなら、簡単に悪用できるからだ。それに買占めや転売を警戒しているのもある。
だから、ベルには私と同等のものが作れるということを彼らに証明しなければならない。
同時に、私には別の思惑もあった。
「注文を全部捌こうと思ったらすごく大変なのよね。ベルにも今じゃ3割くらい頼ってるし。」
ベルの錬金術師としての能力はまだ低いが、中和剤やゼッテルなどの低位の中間素材程度なら最低限使えるものを作れるようになってきている。それがどれほどの助けになっているかは、錬金術士ではない2人にはよくわかっていないだろう。
だから、今回の話はベルの成長のきっかけとするにはちょうどいいのだ。そう思うことにした。
「ともかく明日から大変になるわよ!」
私は笑顔を作って2人に言った。
さあ、明日からこれまで以上にベルをビシバシ鍛えるわよ。
ああ、本当に楽しみだわ。
だって、ベルが成長していくのを見るだけの時間が、私たちにはまだまだたくさんあるのだから。
そして、翌日の朝になって母から告げられた課題の重さを理解したベルは、絶叫をあげた。
妹同様先生に命を助けられたが、治療の際に恩恵を失ったうえに、幼女にさせられた。髪や瞳の色をベルとお揃いにさせられたので鏡を見るたびにくり抜きたくなる。瞼を閉じる理由がまた一つ増えた。
今はメティーの経営する菓子屋を手伝っているが、接客はできない。
そして幼児にさせられた。髪も目もベルとお揃いにさせられた。特にそれを嫌だとは思ってない。
メティーの菓子職人としての弟子となり、菓子屋で仕事を手伝っている。
それとは別に近所のレストランで料理人の修行をしている。
アンタレスを討伐し、レア素材やレア特性を手に入れたが、遺跡を破壊してしまい、アルテミスファミリアがその犯人を追っている。
元孤児で超天才。アトリエシリーズに出てくる、ほぼすべてのアイテムを作れる。
シリーズすべてのアイテムを作れる。
高級はたき、超高級はたき、最高級はたきが存在する。
最初メーテリアを見てアルフィアと勘違いしていたが、言動を見て別人だと理解した。
別れ際にそよ風のアロマやオリフラムなどの自作アイテムをお礼として渡した。
その結果、ジャガーノートの襲撃から命からがら生き延びることに成功したが、延べ18人の死者を出したことで、酷いトラウマとなりメティーがオラリオに来るまで碌に冒険ができなくなっていた。(そよ風のアロマに付けた特性で全員蘇生した。なお人数。)
今ではメティーのアトリエの常連。
メティーがアルフィアに似ているという噂を消したりしている。
アーシャがアルフィアに似ているので驚いたが、女装したベルともそっくりなので納得した。(納得したとは言っていない。)
なによりも、命の恩人であるメティーの為にいろいろと便宜を図っている。
ダンまち×アトリエシリーズなお話でした。
この作品では、恩恵を持たなくても錬金術士はレベルアップできる(恩恵のレベルとは違う)し、ステータスもアップできる設定です。(かなり適当)
ただ、調合品を装備したり使用することによってより一層ステータスをあげることができるようになります。
調合品の名前や性能やレシピは黄昏シリーズと不思議シリーズのチャンポンにしています。同じシリーズで同じ名前でも全く違う性能だったりするのでややこしいですが。