ダークネスウォリアー孫悟飯   作:晴歩

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来訪者

 悟飯と魔人ブウが山で暮らし始めて、三年が経った。

三か月目からはビーデルとパンも加わり、山小屋はいつしか小さな家族の温もりに満ちていた。

 

ブウは、少しづつ常識という概念を、日々の生活の中で少しずつ学び、覚え、変わっていった。

悟飯は、毎日の修行とブウとの手合わせでさらに強くなり、トランクスも時折訪れては二人と拳を交え、互いを高め合った。

 

ブウもまた、悟飯やトランクスとの試合を通じて、持ち前の身体能力だけでなく、気の扱いや技の理屈を自然と身につけていった。

こうして三人は、有意義な相乗効果で、互いを押し上げながら成長していった。

 

 

 その日、山小屋には穏やかな時間が流れていた。

悟飯は薪を割り、ビーデルは煮込み料理の味を確かめ、パンはよちよち歩きながら気を操る遊びに夢中になっている。

遊びに来たトランクスは、ブウと一緒にお菓子を食べている。

 

パンは、地球人の子どもが自然と二足歩行や言語を覚えるように、当たり前のように気のコントロールを身につけつつあった。その才能は、悟飯ですら驚くほどだ。

 

 

 そんな中、山小屋のドアがノックされた。

この山奥で客など滅多に来ない。ビーデルが言った。

 

「お客さん? 珍しいわね」

 

悟飯とトランクスは、反射的に身構えた。

理由は一つ。ノックした相手から、気がまったく感じられない。

 

悟飯は静かに言った。

 

「……僕が出るよ」

 

慎重にドアへ歩み寄り、ゆっくりと開ける。

 

そこには、二人組が立っていた。

気は感じられない。だが、空気が重くなるほどの威圧感がある。

 

「こんにちは」

 

涼しい声で二人は挨拶した。

 

「こ、こんにちは……」

 

悟飯は戸惑いながらも返す。

その容姿、衣装、そして気が感じられないという事実。悟飯の脳裏に、ある言葉が浮かぶ。

 

「あなたたちはもしや……破壊神様と、天使様でしょうか?」

 

二人の目がわずかに見開かれた。

 

「ほう……これは驚きましたねえ」

 

 長身の男が微笑む。

 

「その通りです。こちらが破壊神ビルス様。私はお付きの天使、ウイスです」

 

「やはり……」

 

悟飯は息を呑んだ。

 

ビルスが顎を上げ、悟飯を見下ろす。

 

「なぜわかった?」

 

悟飯は落ち着いた声で答えた。

 

「僕は、界王神界のメモリーアーカイブで学ばせていただいています。

 そこで得た知識から、推察しました」

 

ウイスは感嘆したように目を細めた。

 

「これはこれは……度々驚かされますねえ」

 

悟飯は一瞬だけ迷ったが、すぐに腹を決めた。

 

「どうぞ、おあがり下さい」

 

悟飯が丁寧に身を引くと、ビルスは素直に頷いた。

 

「ふむ……では失礼するよ」

 

「お邪魔します。素敵な山小屋ですねえ」

 

招き入れられた二人を見て、ビーデルは笑顔で言った。

 

「あ、いらっしゃいませ。悟飯くんのお知り合いだったの?」

 

悟飯は曖昧に笑うしかなかった。

 

「ええと……まあ、そんなところです」

 

トランクスは背筋を伸ばし、まるで戦場に立つ兵士のように緊張していた。

額に汗がにじむ。

 

(やばい……この二人、ただ者じゃない……!)

 

ビルスとウイスが座布団に腰を下ろした瞬間、山小屋の空気はどこか張り詰めた。だが、その緊張を最初に破ったのは、ブウだった。

 

ブウは何も考えず、ただ目の前にあったクッキーを両手いっぱいに抱え、

ぽりぽり、もぐもぐ、むしゃむしゃ と、いつも通りの無邪気さで頬張っている。

 

その横で、パンがビルスを見た瞬間、ぱあっと顔を輝かせた。

 

「ねこ!ねこ!にゃー!にゃー!」

 

ビルスの耳がピクッと動く。悟飯は青ざめた。

 

「パ、パン!だめだよ!この方は…!」

 

ビルスは一瞬だけ目を細めたが、すぐに苦笑した。

 

「はは……僕は赤ん坊に怒るほど小さな神じゃないよ」

 

その言葉に悟飯は、ひとまず胸を撫で下ろした。

 

パンはビルスの尻尾を見つけて、さらにテンションが上がる。

 

「しっぽ!しっぽ!」

 

ビルスは苦笑い。

 

「……まあ、確かに猫っぽいがね。しかし、赤ん坊にここまで懐かれるとは思わなかったな」

 

悟飯の緊張は続く。

 

ブウは相変わらずテーブルの端で、もぐもぐ、むしゃむしゃ と、お菓子を頬張っている。

 

ビルスがちらりと視線を向ける。

 

「そのピンクの奴が食べているもの、なんだかいい匂いがするな」

 

ウイスも鼻をひくつかせた。

 

「ええ、ビルス様。我々には馴染みのない食べ物ですねえ。興味深い…」

 

ブウは二人の視線に気づき、皿を抱え込むようにして言った。

 

「やらないぞ!」

 

悟飯は慌てて立ち上がった。

 

「ブ、ブウ! お客様にそんな態度をとってはいけないよ!」

 

ブウは悟飯を見る。

悟飯を信頼するブウは、仕方なくしぶしぶ納得する。

 

「……わかった。一個ずつだぞ。やる」

 

ビルスとウイスは、思わず目を輝かせた。

 

「ほう……では遠慮なく」

 

「いただきますね」

 

二人は同時にひと口かじった。

 

次の瞬間。

 

「……うまい!」

 

「美味ですね~! これは驚きです!」

 

ビルスは目を見開き、ウイスは頬に手を当てて感嘆の声を漏らす。

 

「甘いのにしつこくない……!これは、なんという名前の食べ物だ!」

 

悟飯は、思い出しながらながら答えた。

 

「えっと、確か……米麹を使った自然な甘さのデッカイドー特産小豆100%ぎっしり薄皮あんパン、だったかと……」

 

ビルスは眉をひそめた。

 

「なんだその長い名前は」

 

ウイスは感嘆している。

 

「しかし……これは素晴らしい。風味と甘みが、絶妙に調和しています」

 

ビルスはもう一口かじりながら、満足げに言った。

 

「名前は変だが、うまいものは、うまい!」

 

薄皮あんパンを堪能した後、ウイスがふと表情を引き締めた。

 

「これは思わぬ収穫でしたが……ビルス様。我々は美味しいものを探しにここへ来たわけじゃありませんよ」

 

ビルスは口の端についた餡を指で拭いながら、はっとした。

 

「おお、そうだった。危うく忘れるところだったよ」

 

ビルスは、悟飯をじっと見つめて言った。

 

「僕たちがここに来たのは、ここにサイヤ人の生き残りがいると知ってな」

 

悟飯に緊張が走る。

 

「……サイヤ人に、何か……?」

 

「ああ。ちょっとした予知夢を見てね」

 

「予知夢……?」

 

ウイスが付け加える。

 

「まあ、ビルス様の予知夢は的中率が高くないんですけど」

 

「余計なことは言うな!」

 

ビルスは咳払いし、悟飯に向き直った。

 

「君。スーパーサイヤ人ゴッド、という存在を知っているかい?」

 

悟飯は深く息を吸い、静かに首を振った。

 

「残念ながら……聞いたことがありません。メモリーアーカイブを精査すれば、何か見つかるかもしれませんが……」

 

ビルスは悟飯の表情をじっと観察し、ふむ、と短く唸った。

 

「そうか……」

 

そして視線を横へ滑らせ、トランクスに向ける。

 

「そこの若いの。君もサイヤ人だろう。君も知らないか?」

 

突然名指しされたトランクスは、びくりと肩を震わせた。

 

「は、はいっ! す、すみません、聞いたことありません!」

 

緊張のあまり、余計な言葉が口をついて出る。

 

「で、でも……悟飯さんは、ダークネスサイヤ人なんですよ!」

 

「ト、トランクス……!」

 

悟飯が慌てて制止するが、もう遅い。ビルスとウイスの視線が同時に悟飯へ向けられた。

 

「なんだそれは」

 

「聞いたことありませんねえ」

 

悟飯は苦笑し、頭をかいた。

 

「いえ……僕たちが勝手に名乗ってるだけなんで……」

 

ビルスはしばらく悟飯を眺め、やがて口元をわずかに吊り上げた。

 

「……でも、ちょっとだけ面白そうな響きだね。闇のサイヤ人、か。見せてくれる?」

 

悟飯は一瞬だけ迷った。だが、破壊神の要望を断るという選択肢は存在しない。悟飯はそれをよく理解していた。

 

静かに覚悟を決める。

 

「わかりました。もっと広い場所に移動させてもらってもよろしいでしょうか」

 

「いいよ」

 

ビルスは軽く言った。

 

こうして、悟飯、トランクス、ビルス、ウイスの四人は山小屋を後にし、荒野へと移動した。

 

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