ダークネスウォリアー孫悟飯   作:晴歩

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世界

 風が吹き抜ける荒野。

空は高く、雲は薄く、地平線まで遮るものはない。

 

悟飯は静かに立つ。

背後でトランクスが緊張し見守る。

 

ビルスは腕を組み、興味深そうに悟飯を見つめる。

 

「さあ、闇のサイヤ人とやら。君の力、見せてもらおうか」

 

悟飯は深く息を吸い、静かに目を閉じた。

 

悟飯の周囲の空気が、ゆっくりと沈むように重くなる。

魔族の気、深く、静かで、底なしの闇のような気。

 

だがその奥に、黄金の光が脈打つ。

 

その姿は、超サイヤ人でも魔族でもない。二つの気が完全に融合した、唯一無二の境地。

 

「…これが、ダークネスサイヤ人です」

 

ウイスは目を見張り、口元に微笑を浮かべた。

 

「ほう、これは。面白いですね。異なる気が、ここまで自然に融合するとは」

 

ビルスも腕を組み、興味深そうに悟飯を見つめる。

 

「ふむ、だが、面白いだけでは意味がない。実際に強くなければな」

 

ウイスは悟飯の気を分析しながら言う。

 

「これは神の気ではありませんが、この静かさは、神の気に近い。

しかも、魔族の気の深さが加わっている。宇宙でも、こういう気を持つ者は他にいませんよ」

 

ビルスはニヤリと笑う。

「面白い。お前、ちょっと私と手合わせしてみるか?」

 

悟飯は、静かに頷いた。

 

「はい。僕でよければ」

 

悟飯の周囲の空気が、重く沈み込む。重力そのものが歪んだような、異質な圧力。

 

トランクスは思わず後ずさる。

「悟飯さんの気が……重い……!」

 

魔族の気の深い闇、スーパーサイヤ人の爆発的な光。

 

その二つが完全に融合し、互いを打ち消すどころか、新しい質を生み出していた。

 

悟飯の気がさらに圧縮され、まるでブラックホールのような重さを帯びる。

 

トランクスは、声を震わせた。

「まさか……これが……悟飯さんの本気なのか……ここまで……!?」

 

ビルスは口元を上げる。

 

「…暇つぶしにはなりそうだ」

 

 

 戦いが始まった。

 

悟飯はビルスの動きを必死に追い、何度も吹き飛ばされながらも立ち上がった。

 

ビルスの拳を受け止める。かすかに反撃を入れる。何度倒れても立ち上がる。

 

ウイスは静かに感心する。

「これは驚きですね。破壊神の力を前にして、ここまで折れない人間は珍しい」

 

悟飯は打ちのめされながらも冷静に、ビルスの目をまっすぐ見据えていた。

 

その悟飯を見てビルスは言った。

 

「力の差が分からんわけではあるまい。それでも、まだ諦めないか」

 

激しい攻防が続く。その次元の違うやりとりにトランクスは圧倒される。

 

だが、その違いを理解できる時点で、トランクスもまた、大きく成長している証だった。

 

 

 そしてついに。

 

 

最終的に、ビルスの一撃が悟飯の腹に深く入り、悟飯は地面に叩きつけられた。

 

立ち上がろうとするが、膝が震える。それでも悟飯は、なんとか立ち上がる。

 

「……まだ……終わってません……」

 

ビルスはその姿を見て驚く。そして言った。

「まあまあ楽しめた。伸びしろもありそうだ」

 

ビルスは尻尾を揺らしながら続けた。

 

「次の機会までに、もっと強くなっておけ。僕を楽しませるためにな」

 

悟飯は気絶しそうになりながらも答えた。

 

「…ありがとうございます。必ず、もっと…強くなってみせます…」

 

ウイスは微笑む。

「ビルス様がここまで興味を持つとは、悟飯さん、あなたはなかなかに珍しい存在ですね」

 

ビルスが聞いた。

 

「君……神の気を感じることができるのか?僕の攻撃に、ずいぶん対応できてたじゃないか」

 

破壊神の攻撃を見切るだけでも異常。ましてや、悟飯は何度も反撃まで入れている。

 

悟飯は息を整えながら、首を横に振った。

「いいえ、でも、神の気の存在は、学んで知っていました」

 

「それと…気を感じない相手との戦いは、以前に何度も経験しているので。

だから見えない力には慣れていたんです」

 

ビルスは小さく笑った。

 

「なるほど…面白い奴だ」

 

 

 ビルスとの死闘は、悟飯の敗北で幕を閉じた。

悟飯は息を切らしながらも、深く頭を下げた。

 

そして、ビルスの攻撃を受け続けたことで、悟飯の身体は、神の気の圧力を覚え始めていた。

 

ウイスは悟飯の変化に気づき、静かに言う。

「悟飯さん……あなた、神の気の輪郭を感じ始めていますね」

 

悟飯は頷く。

 

「……はい。ほんの少しだけ……」

 

ウイスは満足げに微笑む。

「それは、次の境地への入り口ですよ。」

 

悟飯は静かに頷いた。

 

そしてビルスが言った。

 

「お腹が空いたぞ。あの長い名前の食べ物以外に、何か美味しい食べ物はないのか」

 

「え…?」

 

悟飯は考える。

 

 

神様が満足出来るものってなんだ…?

 

ビルス様って猫に似てるけど、キャットフード出したらまずいよな…

 

…あ、以前、東の都で復興を手伝っていた時に御馳走になった、あれなら…

 

 

そんな考えが巡り、そして提案した。

 

「お刺身なんていかがでしょうか?」

 

「なんだそれは、美味しいのか?」

 

ビルスが興味深げに聞く。

 

「はい、少なくとも、人間の僕の味覚には美味しかったです」

 

 

こうして、ビルスとウイスは、消耗しきって動けない悟飯の代わりにトランクスに東の都に案内された。そして、刺身を食べ、満足して地球を去っていった。

 

 

 ビルスとウイスが地球を去ったあと。トランクスは悟飯に言った。

 

「宇宙には……まだ信じられないくらい強い存在がいるんですね……。

悟飯さんが完敗するなんて…」

 

トランクスにとって悟飯は、絶対に負けない最強の戦士だった。

 

人造人間を倒し、魔人ブウを導き、どんな敵にも冷静に立ち向かう。

 

そんな悟飯が敵わなかった。しかも、破壊神はまだ全力を出していない。その現実は、トランクスにとって大きな衝撃だった。

 

悟飯は、それを当たり前の事として受け入れている。

 

「当然だよ、トランクス。宇宙は広いんだ。

僕より強い存在なんて、いくらでもいるさ。」

 

悟飯は言った。

 

「敗北は悔しい。けど、そこには、次の境地の入り口がある」

 

「もっと強くなれる。守りたいものを守るために」

 

トランクスは、頷いた。

 

「オレも、もっと強くなりたいです。悟飯さんみたいに……!」

 

悟飯は微笑む。

「一緒に頑張ろう、トランクス」

 

今日の出来事で、トランクスは、世界の広さを突きつけられた。

 

だが、悟飯は、とっくにそんなことを理解していた。

 

トランクスは悟飯の背中を見つめ、改めて偉大な師匠だと思った。

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