ダークネスウォリアー孫悟飯   作:晴歩

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再会

 魔界へは、瞬間移動では行けない。

 

魔界は、界王神界とは対となる異界。界王神界の移動術では到達できない領域だった。

 

だからトランクスは、魔界への航行が可能な宇宙船を手に入れる必要があった。

 

幸い、界王神界には古代から伝わる宇宙船が保管されていた。

 

だが。

 

その船は、あまりにも古すぎた。

 

船体は苔むし、魔力炉は沈黙し、制御盤は埃をかぶっている。

界王神界の誰が触れても、うんともすんとも言わなかった。

 

「…もたもたしてる場合じゃないのに…」

 

トランクスが焦る。界王神は深刻な顔で頷く。

 

「すみません…迂闊でした…。我々は宇宙船を使う必要がなかったので…」

 

界王神の声が沈む。空気が重くなった瞬間、トランクスは、ハッと気づく。

 

「地球からオレの母さんを呼びましょう!母なら、なんとかしてくれるかもしれない!」

 

界王神は驚く。

「トランクスさんのお母様を?」

 

界王神は驚いたが了承した。可能性のあることは全部やるしかない。迷っている暇はなかった。

 

 

 キビトに連れられ、ブルマが界王神界に到着した。

 

ブルマの目はすでに古代宇宙船へ釘付けになっている。

 

界王神は深く頭を下げた。

 

「ブルマさん。我々に協力できることがあれば、何でも仰ってください。例えば…」

 

界王神が手をかざすと、空間から巨大な金属塊が出現した。

 

「わっ!」

 

トランクスとブルマは驚く。

 

界王神は説明した。

 

「これは、カッチン鉱。宇宙一硬い物質です。必要な素材があれば、私が用意します」

 

ブルマは、驚嘆しつつ感嘆の声を漏らした。

 

「すごい……!流石宇宙の神様!私たちエンジニアにとっては夢のような技ね!」

 

だが、界王神は苦渋の表情で答える。

 

「いいえ…神などと言っても、私は、宇宙船を修理することもできない…。どうか、この船を、大魔界へ向かえるようにしていただきたい…!

これは、メモリーアーカイブでかき集めた、この宇宙船の資料です。地球語で読めるようにしています」

 

それを見ながらブルマは言った。

 

「流石!これなら、なんとかなるかもしれない!」

 

 

 古代宇宙船は、ほんの三日ほどで見事に蘇った。たったの三日だが、現在の逼迫した状況では、その日数でも戦々恐々だった。

 

「よし、これで大魔界まで行けるはずよ」

ブルマは額の汗を拭いながら、誇らしげに言った。

 

界王神は深く頭を下げた。

「ブルマさん……感謝の言葉もありません。まさに奇跡です」

 

ブルマは笑い言った。

「奇跡じゃないわ。界王神様が準備してくれた資料と素材があったから、こんな短時間でできたんですよ」

 

界王神界は、再び深く頭を下げる。

 

「これ程の人物たちが、下界に育っていたこと、界王神として誇らしいです!」

 

ブルマは照れながら笑う。

 

「ええ?まったまたぁ!大げさなんだから!」

 

こうして、トランクスは、大魔界へ向けて出発した。

 

 

 トランクスは操縦席に座り、前方の暗い宇宙を見つめる。

隣には、知識対策として、メモリーアーカイブの管理妖精の一人、アクアが同行している。二人は緊張の表情を浮かべていた。

 

アクアが小さく呟く。

 

「うう…緊張します…こんな重大任務…」

 

「うん…オレもだよ、なんとか頑張ろう」

 

トランクスは前を見据えたまま答えた。

 

やがて大魔界へ通じるワープゲートが遠くに姿を現した。

 

その瞬間だった。

 

複数の機影が、トランクスたちの船の前に陣取る。

 

アクアが震え上がる。

 

「ト、トランクスさん……敵でしょうか……?」

 

黒い装甲を纏った小型宇宙艇。

槍のような兵装らしきものを搭載しているように見えた。

 

トランクスの緊張が高まる。

 

「宇宙船で戦闘になんてなったら……どうしようもないぞ……」

 

汗が滲む。緊張が船内を満たす。

 

そして通信が入った。

 

『こちらはダーブラ大王直属の監視部隊。トランクス殿、聞こえますか』

 

トランクスは思わず目を見開いた。

 

「オレの名前を!?ダーブラ…さんの……兵士!?」

 

アクアも驚きで羽を震わせる。

 

通信は続いた。

 

『お迎えに参りました。大魔界のワープゲートを通過するには、暗証番号が必要です』

 

トランクスは完全に固まった。

 

「暗証番号!?」

 

アクアは頷く。

 

「はい…私たちの最初の難関の予定でしたが…」

 

通信の向こうの魔界人は、淡々と、しかし礼儀正しく告げた。

 

『ダーブラ大王は、魔界へ向かう珍しい古代宇宙船の中に、あなた様の気配を察知されました。そのため、我々に暗証番号を届けるよう命じられたのです』

 

トランクスは呆然とした。

 

「そんなことが…」

 

魔界人の兵士は誇りを滲ませて答えた。

 

『大魔界の大王、ダーブラ様の情報網を、侮ってはいけません』

 

その言葉には、揺るぎない自信があった。

 

 

 ダーブラの監視部隊に先導され、古代宇宙船は大魔界の空を滑るように進んだ。

 

予定よりも、驚くほど迅速にたどり着けた。

 

魔王城。

 

宇宙船が着陸すると、城門前にはすでに数十名の兵が整列していた。

その中央に、堂々と立つ影がある。

 

ダーブラだった。

 

トランクスがタラップを降りると、ダーブラはゆっくりと歩み寄る。

 

「久しぶりだな、青年。トランクスよ」

 

その声は以前よりも柔らかく、どこか嬉しそうですらあった。

 

トランクスは背筋を伸ばし、丁寧に頭を下げた。

 

「はい。お久しぶりです、ダーブラさん」

 

ダーブラはトランクスを眺め、満足げに頷いた。

 

「ふむ……さらに腕を上げたようだな」

 

トランクスも、素直に返す。

 

「あなたも……」

 

その瞬間、ダーブラは大きく笑い声を上げた。

 

「はーっはっはっは!魔界の王に、腕を上げた、などと、言うではないか!」

 

トランクスは、慌てて否定した。

 

「あっ! す、すいません!生意気でしたね!」

 

しかしダーブラは笑いながら首を振った。

 

「かまわぬ。そなたにはそれを言う資格がある!」

 

その言葉は、叱責ではなく肯定だった。

 

アクアは肩の上で目を丸くし、小さく囁いた。

 

「……え?…魔界の王様と、お友達…なの……?」

 

魔界の王は、かつて剣を交えた青年の成長を、心から喜んでいるようだった。

 

 

 トランクスは深く息を吸い、ダーブラに協力を仰ぐため、現在の宇宙の危機について語り始めた。

 

ダーブラは、遮ることなく黙って聞いた。

 

トランクスが確信を伝える。

 

「……だから、魔界のドラゴンボールを集める必要があるんです。

どうか力を貸していただけないでしょうか」

 

言い終えた瞬間、静寂が落ちた。

 

ダーブラは、トランクスをまっすぐに見つめ言った。

 

「ようやく、借りを返せる時が来たようだ」

 

その言葉は、静かだが力強かった。

 

その声はさらに深く響く。

 

「今こそ返す時だ。トランクスよ。そなたの使命に、魔界の王として力を貸そう…!」

 

トランクスは安堵する。

 

「ありがとうございます…!」

 

ダーブラは玉座の方へ歩きながら言った。

 

「迅速に動かねばならぬのはよくわかった。ならば…」

 

魔力通信陣へ歩み寄り、低く、しかしよく通る声で呼びかけた。

 

「ドクター・アリンス!」

 

魔力陣が淡く光り、すぐに返答が響く。

 

『ハ、ハイ! 大魔王様!』

 

ダーブラは、静かに告げる。

 

「お前が、秘密裏に生み出した魔人が二体いるな」

 

通信の向こうで、アリンスの息が止まる。

 

『げっ……ば、ばれてる……!?』

 

「それを使う。準備しろ」

 

『はっ、はいっ!!直ちに!!』

 

そして、ダーブラは玉座の前に立ち、語り始めた。

 

「魔界のドラゴンボールは三つ。それぞれが、タマガミと呼ばれる守護者によって守られている」

 

ダーブラは続ける。

 

「一つ一つを巡って集めている余裕はない、そうだな?」

 

トランクスは真剣な表情で頷く。

 

ダーブラは言った。

 

「……よし。それぞれのタマガミのもとへ向かう者を決める」

 

「私は、タマガミ・ナンバースリーのもとへ行く」

 

「かつて、少しばかり因縁があってな。あやつとは、私自身が決着をつける必要がある」

 

その言葉には、戦士としての気迫が宿っていた。

 

続いて、ダーブラは魔力通信陣に向かって声を張る。

 

「ドクター・アリンス!」

 

『ハ、ハイ! 大魔王様!』

 

「お前はタマガミ・ナンバーワンのもとへ行け。一番近いだろう」

 

通信の向こうで、アリンスが盛大に動揺する気配が伝わってきた。

 

『えっ……!?はっ、はいっ! 直ちに向かいます!』

 

そしてダーブラはトランクスへ視線を向ける。

 

トランクスは頷き言った。

 

「では、オレがナンバーツーの元へ行きます」

 

ダーブラは満足げに頷く。

 

「よし。それぞれ、タマガミのもとへ向かう。宇宙の未来は、我らの手にかかっている」

 

その声は、魔界の王としての威厳と、戦士としての誇りを併せ持っていた。

 

さらにダーブラは、側近に命ずる。

 

「……念のため、ナメック人のネバにも声をかけておけ」

 

側近は姿勢を正し問い返す。

 

「ネバ殿に…ですか?」

 

ダーブラは静かに頷いた。

 

「奴なら、もし我らが勝負に負けた場合でも、強制的にドラゴンボールを回収できる可能性がある」

 

その言葉を聞いたトランクスの胸に二つの感情が同時に湧き上がった。

 

ひとつは、ネバという未知の存在への驚き。

 

(強制的にドラゴンボールを回収できるって……!?いったい何者なんだ……?)

 

だが、トランクスの胸に湧いたもうひとつの感情は、それ以上に強かった。

 

ダーブラは、自分が負ける可能性を否定せず、冷静に見据え、その上で最善の手を打っている。

 

それは弱さではなく、強さだと感じた。

 

(……やっぱりすごい人だ、ダーブラさん……これが、王か…)

 

こうして、ダーブラ、アリンス、トランクスの三者は、同時にそれぞれ、別のタマガミのもとへ向かうこととなった。

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