銀河刑務所の宙域に、ひとつの影。
ザマスは、ゆっくりと刑務所を見下ろした。
「……ここは、宇宙で最も醜悪な場所だ」
潔癖なザマスが、最初に殲滅に選んだ場所。
囚人たちの罪状を知っているわけではない。だがザマスにとって、それは関係がなかった。
人間ゼロ計画を掲げるザマスにとっては、管理する職員たちもまた粛清対象。
ザマスが刑務所へ攻撃を仕掛ける。
刑務所の警報が鳴り響く。
構造物、警備システムが次々破壊されていく。真面目な職員も全て。
そしてザマスは降り立ち、確かめるように囚人たちの檻を一つ一つ見て回る。
怒号。罵声。嘲笑。
そのすべてが、ザマスをいらだたせる。ザマスは手をかざす。存在が静かに消えていく。囚人も、職員も。
ザマスが刑務所の奥深くに足を踏み入れた時、空気が震えた。その先には、他の檻とは明らかに異なる区画があった。
重力結界、魔力封印、精神遮断。複数の術式が幾重にも重ねられた牢獄。
ザマスの襲撃により、封印の術式が崩れ落ちていた。
そして。
檻の奥から、乾いた笑い声が響く。
「…ふはは……解けたのか……」
封印の奥から現れたのは、老いた異形の魔術師。
魔術師はゆっくりと手を伸ばし言った。
「久しぶりの食事だ」
次の瞬間、ザマスの周囲の空気が歪んだ。エネルギーが吸われている。
ザマスは理解する。
「エネルギー吸収能力か。だが、無駄だ。私は不死身だ。力が尽きることはない」
魔術師は笑う。
「不死身……?ならば、永遠に奪えるという事だ」
ザマスの声に、怒気が起こる。
「人間め……」
魔術師は狂気じみた笑みを浮かべる。
「何者かは知らんが、我の糧となるがいい」
ザマスの胸に渦巻く激怒。
「穢れが……!」
魔術師は笑いながら、さらに吸収を強める。
「もっとだ…!不死身と言うならば!その力、私の無限とする!」
ザマスの神気を吸収し続け、魔術師の身体が変化していく。
皮膚の皺が消え、背筋が伸び、まるで時間が巻き戻されていくようだった。
魔術師はゆっくりと手を見つめた。その手は、もう老人のものではない。
「ほう!これは!いいぞ……!まさか、貴様、本当に不死身なのか!?」
魔術師は笑った。若返った顔に、狂気と歓喜が混ざった笑み。
ザマスは怒りを露わにし叫ぶ。
「滅せよ!」
空間が震え光が走る。空間がねじれ、衝撃波が弾ける。
力を得た魔術師は、笑いながら受け止める。
ザマスはさらに踏み込む。神気が凝縮し、空間が押し潰されるような圧力が走る。魔術師はその圧力を吸収しながら、逆にザマスへ向けて魔力の奔流を放つ。
二つの無限がぶつかり合い、刑務所の残骸が崩れ落ちていく。
ザマスは叫ぶ。
「貴様のような穢れが……神に挑むなど、許されぬ!!」
魔術師は狂気の笑みを浮かべたまま、ザマスの神気を吸収し続ける。
「ははは!素晴らしいエネルギーだ!!私はさらに強くなる……!無限に、永遠に!!」
空間が裂け、光がねじれ、二つの存在が衝突する。
若返った魔術師の気が、刑務所全体を震わせる。その気は濃密に、重く、圧力をもって膨張していく。
魔術師は笑う。
魔術師の周囲に複数の魔法陣が浮かび上がる。
それぞれが異なる属性を帯び、空間をねじ曲げながらザマスへ殺到する。
四方八方から迫る連続の力。
ザマスは、スーパードラゴンボールの力で得た無敵の力でそれらを防ぐ。
だがザマスの表情は怒りで歪む。
魔術師は、さらに攻撃を重ねる。魔力が奔流となりザマスを包む。
だがザマスは、そのすべてを見事に受け流す。
ザマスは怒り、手をかざす。空間が押し潰されるような圧力。
魔術師は、その気配を察し、即座に魔力障壁を展開する。
魔術師の障壁が軋む。だが、破れない。
魔術師は笑った。
「はは……ははは……!効かんぞ!お前の力は、すべて私の糧だ!」
ザマスの表情は険しい。
「……無限の力を得たつもりか…愚か者め…!」
魔術師はさらにザマスの神気を吸収しつつ語る。
「つもりではない。私は本当に無限だ!お前が不死身である限りな!」
ザマスは息を吐く。
「……この様な醜悪な者が、これほどの巨大な力を有しているとは…」
ザマスの瞳に、決定的な光が宿る。
「やはり……人間は危険な存在だ。滅ぼさねばならぬ…!」
空間が震え、二つの無限が再び衝突する。
魔術師は若返った身体をしならせ、ザマスの神速の動きを正確に追う。
魔術師は、なおもザマスの神気を吸収し続けていた。
若返った身体はさらに輝きを増す。
「もっとだ……もっと寄越せ……!」
魔術師の声は歓喜に震えていた。
だが、その震えは次第に異質なものへと変わっていく。
攻防は続くが、ザマスはそれを察知する。
魔術師は歓喜し激しい攻撃を繰り出し続ける。
その瞬間、魔術師の身体がわずかに軋んだ。
ザマスは言った。
「……気づかぬか。愚かな」
魔術師は笑う。
「負け惜しみか!?…まさか、お前のような餌が飛び込んでくるとはなぁ…!」
そして魔術師は、一瞬、違和感に躊躇う。
「なに…!?」
膨大な神気が均衡を失い、膨張し震え始める。
魔術師は必死に制御しようとするが、吸収した神気は止まらず、暴走を始める。
ザマスは、冷ややかに告げる。
「当然だ。神の力は、神の器にしか宿らぬ」
ザマスは静かに歩み寄る。
「貴様は己の欲に溺れ、限界を見誤った。人間の愚かさそのものだ」
魔術師の身体が震え、魔力が制御を失う。
「ば、ばかな、こんな…!」
ザマスは手をかざした。
「終わりだ」
「やめろ……!まだだ……私は……私が……こんなことで…!」
光が走る。そしてその存在が静かに消えた。
そしてザマスは呟いた。
「やはり…滅ぼすに値する……人類は、穢れである」
銀河刑務所は跡形もなく消滅した。