タマガミ・ナンバースリーは、荒野を揺らしながら突進した。
ネバの術で強化されたその巨体は、重く速い。
だが、ダーブラは冷静。
剣を軽く構え、その巨体の動きを正確に捉える。
油断も慢心もないダーブラは、相手の最強の一撃を基準に戦う。
タマガミ・ナンバースリーのハンマーが迫る。
大地が割れるほどの一撃。
しかしダーブラは、受け流しながら後退する。
タマガミ・ナンバースリーの拳が振り下ろされるたび、荒野が震え、岩山が砕け散る。
ダーブラは、あえて魔術を温存していた。切り札は、勝ち筋が見えるまで晒さない。
タマガミ・ナンバースリーの胸に初めての感情が渦巻く。
恐怖。
初めての同等以上との相手との対戦。その揺らぎが、致命的な隙となる。
ダーブラはその一瞬の揺らぎを見逃さなかった。
「今だ。魔術が刺さる…」
赤黒いオーラが地面に広がる。
タマガミ・ナンバースリーの足がオーラに触れた瞬間、巨体が硬直する。
ダーブラの低い声が響く。
「恐怖は、魔術のいい餌となる」
タマガミ・ナンバースリーの身体が固まり、動けない。
ダーブラは剣を構え、静かに告げた。
「終わりだ」
剣が赤く輝く。魔力が刃に収束し、空気が震える。
そして。
「……参った……」
タマガミ・ナンバースリーは、敗北を認めた。
ダーブラは剣を下ろし、魔力を収めた。
封魔陣が消え、荒野に静寂が戻る。
「…よく言った。敗北を認める勇気は、強さの一つだ」
タマガミ・ナンバースリーは静かに膝をついた。
タマガミ・ナンバーワンは剣を構え、最後の力を振り絞って突進した。
だが、ドゥの身体は、まるで液体か粘土のように形を変える。腕が伸び、胴がしなり、足が地を滑るように動く。
変幻自在。伸縮自在。予測不能。
タマガミ・ナンバーワンの剣が振り下ろされるたび、ドゥの身体はそこにいない。刃が触れた瞬間に裂け、すり抜け、伸びた腕がワンの背後から襲う。
「!」
タマガミ・ナンバーワンは避けきれない。
剣が届く距離にいるのに、当たらない。当たったと思えば、ドゥの身体は形を変えて避ける。
ドゥの腕が鞭のように伸び、タマガミ・ナンバーワンの胸を打ち抜く。
タマガミ・ナンバーワンの巨体が地面に沈む。立ち上がろうとした瞬間、ドゥの腕が伸びてワンの体を叩きつける。
そして、タマガミ・ナンバーワンは地に伏したまま言った。
「…見事だ、参った…」
ドゥはドラミングし、勝利の雄たけびを上げる。
そこに、クゥとドクター・アリンスの歓声が上がった。
魔王城。
「ほう…」
ダーブラとドゥの勝利に、ネバは感嘆の声を漏らす。
「ならば…」
残ったタマガミ・ナンバーツーに、集中して最大限の強化を施す。
トランクスは苦戦を強いられた。
『また動きが変わった…!』
タマガミ・ナンバーツーの槍が、まるで未来を読んでいるかのように、トランクスの動きを先回りして襲いかかる。
刀は届かない。踏み込めば迎撃される。避ければ追撃が来る。
完全に読まれていた。
「くっ……!」
トランクスは後退しながら、胸の奥で静かに決断した。
『あれを使う…』
刀を構え、深く息を吸い込む。
次の瞬間、トランクスの気配が、ふっと消えた。
タマガミ・ナンバーツーの瞳が揺れる。
「!?」
トランクスの身体から、気の流れが完全に断たれていた。
「絶気剣…」
悟飯のもとで学んだ魔族の気の応用。気を発散させず、断ち切ることで、相手に動きを読ませない。
そして、ヤジロベーから叩き込まれた、サイヤ人のパワーに頼らない技術。
トランクスは、それらを、自分なりに剣術として昇華させた。
タマガミ・ナンバーツーが槍を構え直す。だが、先ほどまでのようにトランクスの動きが掴めない。
だが、絶気剣には、リスクがある。
この技は、表層の気を断つことで、防御力が激減する。
攻撃を外せば、負けは確定。それでも、トランクスは迷わなかった。
互いに動かない。風すら止まったかのような静寂。お互いに悟る。勝負は、一撃。二者の視線が交錯する。
一閃。
そして静寂。
トランクスは刀を振り抜いた姿勢。タマガミ・ナンバーツーは、その場に立ち尽くす。
そして、タマガミ・ナンバーツーの両腕が、肩口から滑り落ちた。
タマガミ・ナンバーツーの槍が地に落ち、乾いた音を立てる。
勝負は決した。
トランクスの勝利だった。
水晶の前でそれを見ていたネバは、思わず身を乗り出した。
「……なんと」
水晶の中では、タマガミ・ツーが静かに膝をつき、敗北を受け入れている。
ネバはその姿を見つめながら頷いた。
「…タマガミの腕、後で直してやらんとな……破壊されなくてよかったわい……」
トランクスは刀を収め、荒い息を整える。
タマガミは創造以来、常に圧倒的優位に立ち続けてきた。読み切れない相手に対する経験が、決定的に欠けていた。
対してトランクスは、自分より強い相手と戦うことこそが日常だった。タマガミ達は、圧倒的な力で敵をねじ伏せる戦いしか知らない。トランクスは、死線を越え続けてきた実戦を知っている。
その差が、最後の一撃を分けた。
タマガミ・ナンバーツーは顔を上げ、トランクスをまっすぐに見据え言った。
「…では……次は、知の試練だ」
トランクスは思わず声を上げた。
「はっ!?」
タマガミ・ナンバーツーは、失われた腕の痛みなど感じていないかのように、淡々と続ける。
「知の試練。この魔術式を解いてみせよ」
空間に複雑な魔術式が投影された。
トランクスは愕然とした。
「な、なにこれ……?全く意味がわからない……!」
「トランクスさん!がんばれー!」
背後から、妖精アクアが声援を送る。
トランクスは頭を抱えた。
「いやまって!地球育ちのオレは、魔術なんて全くわからないんだけど……!」
その言葉を聞いたタマガミ・ナンバーツーは、考慮した。
「…ふむ……なるほど。それはフェアではないな」
タマガミ・ナンバーツーは魔術式を消し、新たな光を空間に描き始めた。
「では、問題を地球の数学に差し替えよう」
トランクスは青ざめた。
「い、いや、それはそれで困るんだけど……」
タマガミ・ナンバーツーは淡々と言った。
「では、始めるぞ」
トランクスは青ざめ、その場に崩れ落ちそうになる。
その様子を見ていた小さな妖精アクアが、おずおずと手を挙げた。
「あ、あの……私が解いては、だめなのでしょうか……?」
タマガミ・ナンバーツーは即答した。
「だめだ。勝負は一対一と決まっている」
トランクスは完全に絶望した。
「……オ、オレのせいで……う、宇宙が終わる……」
その瞬間、タマガミ・ナンバーツーの頭に、ネバのテレパシーが届いた。
『かまわん。そのお嬢さんに答えさせてやれ』
タマガミ・ナンバーツーは驚き、反論する。
「ネバ様……しかし、それでは……」
ネバは静かに続ける。
『お前は、わしの力で強化されておった。ならば、あの娘が助力するのも道理。これで二対二。フェアな勝負となる』
ツーは納得し頷いた。
「…なるほど…承知しました」
そしてアクアに向き直る。
「許可が降りた。娘、そなたが解いても構わん」
アクアは胸に手を当て、小さく息を吸い込んだ。
「は、はいっ……!」
タマガミ・ナンバーツーは、再び空間に魔術式を展開する。
複雑な光の陣が、静かに宙に浮かび上がった。
アクアはふわりと宙に浮き、魔術式をじっと見つめた。
「わぁ……!こういうの、好きなんですよね!」
アクアは楽しげに魔術式の周りを飛び回り、指先で光の線をなぞる。
「この符号は逆転式……ここは補完陣……あ、ここの呪文構造、ちょっと珍しいですね……!」
完全に楽しんでいる。だが、すぐにハッと気づき、
「……いけない、いけない!楽しんでる場合じゃなかった!」
気を引き締め、アクアは魔術式の中心に向き直った。
その瞳は、知の妖精としての鋭さを帯びる。
アクアが指先で最後の線を結ぶと、魔術式が静かに収束し、光が一点に集まった。
タマガミ・ツーは目を見開いた。
「……正解だ。見事だ、娘よ」
アクアは胸に手を当て、ほっと息をつく。
トランクスは、心の底から安堵した表情でアクアを見つめた。
「アクア……本当に助かった……!」
アクアは照れながら笑う。
「えへへ、お力になれてよかったです」
一方ダーブラは、苦戦しながらも、知の試練を見事自力で突破していた。
そして雄たけびを上げる。
「はーっはっはっは!私は魔界の王として、ちゃんとお勉強もしていたのだ!」
その声は、かつての傲慢ではなく、努力を積み重ね、それが実った者の歓喜の雄たけびだった。
もう一方の魔人ドゥは、知の試練にはお手上げだったが、トランクス同様、二対二の勝負を許され、兄のクゥがそれを突破。
その瞬間を見たドクターアリンスの目が、まん丸に見開かれた。
「え?アンタ……頭いいの!?」
クゥは胸を張って言った。
「まあ、こういうのは得意なんです!」
こうして、トランクスたちは、無事に三つのドラゴンボールを手に入れたのであった。