宇宙の片隅、銀河科学技術連合ステーションの残骸。
その中心部、冷たい培養槽の中で、ひとりの少女が静かに目を開いた。
ステーションの自律AIが告げる。
「ユニット、アカッゴ。起動確認」
その身体には、ツフル王族の姫の細胞が組み込まれている。
かつてサイヤ人に滅ぼされたツフル文明の知性と繊細さを受け継ぐ者。
だが、彼女自身はただ、空白のまま生まれた。
ツフル文明が滅びる直前、科学者達の一部は、新兵器、ベビーの致命的欠陥に気づいていた。
ベビーは寄生・支配を本質とする兵器であり、宿主を乗っ取るたびに怨念が増幅し、制御が不可能になる。それは、純粋な怨念。ツフル文明復興の足掛かりにはなり得ない。自分たちが、宇宙規模の災害を引き起こす加害者になるという危惧。
それらを考慮した穏健派のツフル科学者たちは、第二系統を設計した。
それが、アカッゴ。
アカッゴはベビーとは真逆の設計思想で作られた。
寄生しない。支配しない。怨念を持たない。自己進化型。戦闘データを吸収して成長する。これは、ツフル文明が最後に託した希望の形だった。
しかし、設計には、兵器としての冷酷さも内包されていた。
少女型の肉体は、敵を最も油断させるための形態、兵器としての冷酷な設計だった。
自律AIが告げる。
「サイヤ人殲滅兵器としての機能、正常」
少女は復唱する。
「……殲滅……」
言葉の意味は理解できる。だが、そこに感情はない。怒りも憎しみも、復讐もない。そして、宇宙へ放たれたアカッゴは次第に気づく。
フリーザ軍は壊滅していた。サイヤ人の反応もどこにもない。使命の対象が、宇宙から消えている。
「……私は……何をすればいい……?」
空白の心に、初めて問いが生まれた。
その問いを抱えたまま、アカッゴは宇宙を漂い、戦い、敗北し、学び続けた。破壊や殺戮のためではない。ただ、強さの本質を知るために戦う。
まるで、純粋な武道家のようだった。
そして、ある日、サーチネットが異常波形を捉えた。
ナメック星上空で交錯する二つの影。黒髪と白髪の戦士の戦闘。
アカッゴは震えた。理解不能な深度への戦慄。
既存の戦闘モデルがすべて破綻した。そして思った。
「私は……あの境地に辿り着きたい…」
それは、ブレイクスルー。兵器としてではなく、求道者として。彼女にとって初めての感情。
憧れだった。
ナメック星の戦闘データを解析し続けても、アカッゴの内部アルゴリズムは理解不能のままだった。
「……あの境地に至るには…気の本質を……もっと深く知らなければならない……」
アカッゴは宇宙中の戦闘データを検索し、気の扱いに長けた種族を発見した。
ヤードラット人。気のコントロールを極めたと言われる種族。
瞬間移動、巨大化、分身、不思議な多種多様な技術を持つ。
そして彼女は、進路をヤードラットへと向けた。
アカッゴは静かにヤードラットの地表へ降り立った。
その姿は、ただの少女。だが、ヤードラットの達人たちは、侮りはしなかった。
アカッゴは道場を見つけ率直に言った。
「私は……気の本質を学びたい。あの境地……理解し、超えたい」
その言葉に、その場の長らしき者が答える。
「ふむ。あの境地とは。しかし、きみはちょっと不思議な存在のようだね。邪悪な気配は感じられないが」
長は微笑み頷いた。
「ここは、気の本質を学ぶ星。求道者の君を歓迎しよう」
アカッゴは素直に感謝の感情が起こった。
「ありがとう…ございます…」
こうしてアカッゴは、ヤードラットでの修行を正式に開始することとなった。