ダークネスウォリアー孫悟飯   作:晴歩

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辺境の午後

 銀河の辺境、惑星ノラ。

 

午後の光がゆるく差し込む草原。

ネコマジンは地面に寝転がり、片手で袋を持ちながら、もう片方の猫の手でグミをつまんでは口に放り込んでいた。尻尾は左右に揺れ、ダラダラとグミの味を楽しんでいた。

 

そこへ、空からふわりとクリーザが降りてくる。

クリーザは、帝王の息子という素性だったが、幼年期よりこの辺境に放置され、穏やかに平和に暮らしていた。

 

「こんにちは。ネコマジンさん」

 

「よお」

 

ネコマジンは軽く返し、もぐもぐとグミを噛み続けていた。

クリーザはネコマジンの横に立ち、しばらく無言でそのむしゃむしゃタイムを見つめた。

そして、ネコマジンがちらりとクリーザを見上げて言った。

 

「なんだよ、そんなジロジロ見るなよ。…ほら、やるよ、二粒」

 

猫の手でつまんだ二粒を、クリーザの手のひらにぽとりと落とす。

 

クリーザは、丁寧に受け取った。

 

「あ、ありがとうございます…」

 

「お前、オレの肉球もグミみたいだって思ったろ?」

 

「え?お、思ってませんが…」

 

ネコマジンはまた袋を抱え、もぐもぐと食べながら言う。

 

「で? 今日は何しに来たんだよ。遊びか?」

 

クリーザもグミを食べながら答える。

 

「はい、面白そうなテレビゲームを手に入れまして」

 

ネコマジンは伸びをして言った。

 

「テレビゲームか…オレの猫の手じゃ操作に不利だから嫌だ」

 

クリーザはその言葉を待っていたかのように、胸を張った。

 

「そう思いまして。 シンプルな操作で楽しめる、今流行りのリズムゲームというものを用意しました」

 

ネコマジンの耳がぴくっと動く。

 

「なるほど…それならちょっと面白そうだな。やってみるか」

 

「はい、ぜひ!」

 

 

 少し離れた場所では、オニオという小太りのオッサンがのんびりと畑仕事をしていた。彼はサイヤ人。飛ばし子として、幼少期にこの辺境に来て、そのまま馴染んでしまった。しかしその身体には、ネコマジンとの遊びで鍛えられた異常な潜在能力が眠っている。

 

そして、フリーザ軍に属していたという自覚だけはあるようだった。

 

「あ!あれはクリーザ様!挨拶せねば!」

 

フリーザ軍が壊滅した今、本来ならクリーザは帝王の後継者として銀河に君臨するはずだった。オニオも、サイヤ人として戦場に立つ未来があったかもしれない。

 

しかし、ノラで育った二人は、そのどちらにも興味がない。

 

彼らにとって大事なのは、今日の遊びと、昼寝と、おやつと、平和な暮らしだけ。

 

「クリーザ様!こんにちは!」

 

クリーザは軽く手を振る。

 

「こんにちは。あなたもやりますか?リズムゲーム?」

 

「はい!もちろん!ぜひ!」

 

 

 クリーザが調達してきたゲーム筐体が広場に設置されていた。

既に地元の子供たちのギャラリーが出来上がっている。

 

操作がステップ式だと知るとネコマジンは尾をぴくっと動かして笑った。

 

「おお、踏むだけならオレでもいけるな。やるじゃないか、クリーザ」

 

オニオはすでにワクワクしている。

 

「クリーザ様が用意したゲームなんて、絶対面白いに決まってます!」

 

筐体は三人同時プレイが可能なタイプ。

左にネコマジン、中央にクリーザ、右にオニオが並ぶと、子どもたちの歓声が一気に広がった。

 

曲が始まると、三者三様のステップが広場を沸かせる。

 

ネコマジンは猫らしい軽快さで、跳ねるようにパネルを踏む。

クリーザは無駄のない正確なステップで、まるでダンスのように美しい。

オニオは小太りの体を揺らしながらも、意外な俊敏さでリズムに乗る。

 

子どもたちは目を輝かせて叫ぶ。

 

「ネコマジン速ぇ!」

 

「クリーザさんの動きキレイ!」

 

「オニオのおっちゃんも負けてない!」

 

三人のステップが揃うたび、歓声がさらに大きくなる。

 

三人の動きは常識を超えていた。

それは彼らの、圧倒的な動体視力と反応速度の賜物。

 

観覧していた子どもたちは大歓声を上げる。

 

「帝王の息子すげぇ!!」

 

「ネコマジンもやばい!!」

 

「オッサンもすげぇ!!」

 

曲が終わると同時に、画面にはスコアカンストの文字。子どもたちは一斉に拍手し、歓声を上げる。

 

「うおおお!!すげえええ!!」

 

「三人とも最強だ!!」

 

「フルコンボだ!!」

 

ネコマジンは伸びをしながら笑う。

 

「ふーっ、まあまあ面白かったな」

 

クリーザも満足げに頷く。

 

「ええ。悪くありませんでした」

 

オニオも汗を拭きながら笑った。

 

「いやあ!楽しかった!」

 

ノラの午後は、今日も平和に過ぎて行った。

 

 

 フリーザ軍が壊滅した後、銀河の片隅で一つの生命が目を覚ました。

それは、ツフル人の怨念そのもの、寄生兵器、ベビーだった。

 

漂流する金属片の中で、彼は寄生体としての本能に従い、ある時、フリーザ軍残党の戦士に取りつく。寄生した瞬間、戦士の記憶が流れ込み、銀河の現状が理解できる。

 

惑星ベジータは消滅し、サイヤ人は、恐らく絶滅している。

フリーザ軍も壊滅し、残党は散りじり。復讐の対象すら見つからない。

ベビーは長い間、復讐の相手を失ったまま、怨念体として自己進化のために、弱い者を蹂躙し、銀河を彷徨い続けた。

 

ある日ベビーは、銀河の片隅から、かすかに揺れるサイヤ人の反応を感知する。

 

ベビーの中の怨念が一気に沸騰する。

 

「……サイヤ人……現存していたのか……!」

 

寄生した戦士の肉体が震え、ベビーの怒りに呼応して気が荒れ狂う。

 

「許さん……!ツフル人を滅ぼした貴様らを……必ず根絶やしにしてやる……!」

 

その気配は、惑星ノラという辺境の星から発せられていた。

 

 

 ノラにいたのは、小太りで、畑仕事が日課の、戦闘民族らしさの欠片もないサイヤ人、オニオ。

 

飛ばし子としてこの星に流れ着き、争いを知らずに育った。ネコマジンと遊び、クリーザと笑い、高い潜在能力を持ちながら、本人は大して気にしていない。

 

ノラの空が揺れた。寄生したフリーザ軍戦士の肉体を操り、ベビーが飛ぶ。

憎しみに満ちた気が響く。

 

「サイヤ人……見つけたぞ……!」

 

ベビーはついにノラの地表へ降り立つ。怨念に満ちた叫びが、平和な草原に響き渡る。

 

「サイヤ人……! 貴様を滅ぼすために、私は生まれた……!」

 

しかし、返ってきたのはのんきな声だった。

 

「ん?なんだアイツ。クリーザ様の知り合いですか?」

 

クリーザが答える。

 

「違いますよ。サイヤ人がどうとか言ってますよ。オニオさんの知り合いでは?」

 

ネコマジンは尻を掻きながら言った。

 

「なんか怒ってるな」

 

オニオは困惑する。

 

「酔っぱらってるんですかね?」

 

「かもしれませんね」

 

「興奮の仕方が普通じゃねえもんな」

 

三人は関わらないほうがよさそうだと、ベビーを無視してどこかへ行こうとする。

 

ベビーの怒りは限界を超えた。

 

「サイヤ人……!貴様の肉体を奪い、ツフル人の復讐を果たす……!」

 

寄生体としての本能が爆発し、ベビーは残党戦士の口から銀色の寄生虫のような本体を飛び出させ、一直線にオニオの口へ飛び込もうとした。

 

オニオは、反射的に顔をそむけ、手を振り下ろした。

 

「うわっ! 気持ちわりっ!!」

 

銀色の寄生体は、オニオの手のひらに弾き飛ばされ、地面に叩きつけられ動かなくなった。

 

クリーザが言う。

 

「死んでいますね」

 

ネコマジンがボソッと言った。

 

「お前、人殺しじゃん…」

 

「え!?いや!まてまて!!どう見ても人じゃないだろ!!」

 

オニオは慌てて否定する。

 

しかしネコマジンは追い打ちをかける。

 

「宇宙人なんじゃねえの?喋ってたし」

 

クリーザは、その存在を冷静に観察した。

 

「これは……寄生型の生命体ですね。肉体を奪い、内部から支配するタイプです。危なかったですね」

 

その言葉に、オニオは冷や汗をかく。

 

「え…そんなヤバい奴だったんですか…さすがクリーザ様、博識でいらっしゃる…」

 

クリーザは言った。

 

「はい、これは危険です。放置すれば、星の全住民に甚大な被害が出る可能性がありましたね」

 

オニオはホッとする。

 

「じゃあ、退治しても良かったんですね…!」

 

「可哀想ですが、どの道、そうせざるを得なかったでしょう」

 

そう言ってクリーザは、ベビーの死体を気功波で消滅させた。

 

「じゃ、オレ、アニメの時間だから帰るわ」

 

ネコマジンはそう言って、三人は挨拶してこの日は解散した。

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