ダークネスウォリアー孫悟飯   作:晴歩

28 / 35
出会い

 フリーザ軍が崩壊してから十数年以上。

宇宙のあちこちで、かつての兵士たちは散り散りになり、生きるためにそれぞれの道を歩んでいた。

 

その中に、末端の作業員として働いていたレモと、若い冒険者のチライが居た。

 

二人は、民間の小さな警備会社を立ち上げ、これから一旗上げようと意気込んでいた。チライとレモは、食い扶持を求めて小型艇で宇宙を移動中、辺境の惑星からの救難信号を受信する。

 

二人はその惑星に降り立つ。

 

レモは文句を言いながら、古いセンサーをいじっていた。

 

「なんだよこの星……何もねぇじゃねぇか」

 

「でも救難信号は確かに出てるよ」

 

その時だった。センサーが、強い反応を拾った。

 

「……おいチライ……デカい戦闘力だ…」

 

「マジ?救難信号出してる奴か?」

 

「いや……強すぎる……こんな反応、フリーザ軍でも見たことねぇ……」

 

二人は恐る恐る反応源へ向かった。

そこで見たのは、巨大なダニの様な怪物と戦う一人の男。

チライとレモは驚愕する。

 

「やばいって…!あんなのに襲われたらひとたまりもないよ…!」

 

「ああ…だが、あの男、難なくいなしてるぞ…!」

 

青年は、その巨大ダニを地面に沈め、なにやら解体し始めた。

 

チライが言った。

 

「…まさか、あれ、食う気かな…?」

 

レモは震えながら呟いた。

 

「いや……そんなことより強すぎるだろ……こんなの、軍にいたら大将クラスだぞ……」

 

そしてチライは笑って言った。

 

「なぁ、あいつスカウトしようぜ?」

 

レモは驚く。

 

「は!?冗談だろ…!?」

 

チライはさっさと覚悟を決めて動き出した。

 

「…話してみよう。もし交渉できるなら、うちに来てもらう」

 

チライは、慎重に男へと歩み寄った。

 

その男はやはり、今狩った巨大生物を食べ始めた。

無言で、淡々と食事をしている。

 

そして、近寄ってくるチライに気づき仰天し、警戒の構えを取る。

 

チライとレモも慌てる。

 

「ま!まてまて!あたしは敵じゃない!!ちょっと、話をしたいだけなんだ!!」

 

チライは深呼吸し、ゆっくりと言った。

 

「……あ、あのさ。こんにちは」

 

男は返事をしない。ただ、目だけがチライを追う。

 

レモが小声で囁く。

 

「おい……返事しねぇぞ……やっぱ危険だって……!」

 

「しっ……!刺激しないように……」

 

チライは一歩だけ近づき、できるだけ柔らかい声で続けた。

 

「私たち、怪しい者じゃないよ。救難信号を受け取ってさ…」

 

男は、ほんの少し身体を引いた。怯えた動きだった。

 

チライは思った。

こいつは、攻撃的じゃない。ただ、人が怖いだけだ。

 

チライとレモがブロリーと距離を縮め始めたその時、スカウターが突然、鋭い警告音を鳴らした。レモが慌てて確認する。

 

「4200!?おいチライ、4200が近づいてくるぞ!!」

 

チライは驚く。

 

「えっ……!?このデカい怪物とかか……!?」

 

何かが高速でこちらへ飛んでくる。

 

「来るぞ!!」

 

レモが叫んだ。

 

次の瞬間、老人が空から降り立った。

 

「ブロリー!!ブロリー!!外界の者が来たのか!!?」

 

白髪混じりの髪、髭。鋭い目。痩せてはいるが、その身体には戦士の気配が宿っている。

 

レモは気づいて青ざめる。

 

「え…もしかしてこいつらってサイヤ人か…!?」

 

老人のその声は怒りではなく、期待と興奮に満ちていた。

数十年。この星に閉じ込められ、宇宙船も通信も失い、ただ生き延びるだけの日々。外界からの接触者は、彼にとって救いだった。

 

「お前たち!どこから来た!?宇宙船はあるのか!?脱出できるのか!?」

 

チライとレモは圧倒される。

 

「ちょ、ちょっと落ち着いてよ!」

 

老人は二人に詰め寄る。

 

「お前たちはどこの所属だ!?フリーザ軍か!?銀河パトロールか!?それとも別の勢力か!?宇宙は今どうなっている!?」

 

チライは両手を上げて慌てて否定する。

 

「あ、あたしたちはただの民間人!」

 

レモも必死に続く。

 

「そうだ!敵意なんてないからな!」

 

老人は息を荒げながら、期待に満ちた目で二人を見つめた。

 

「……頼む……教えてくれ……銀河は……今どうなっている……?」

 

レモは慎重に言葉を選んだ。

 

「あんたがた、ここにどれくらい……?」

 

「数十年だ。外界の情報は何も入らん」

 

レモが深く息を吸い、ゆっくりと告げた。

 

「フリーザ軍は……壊滅した。フリーザも死んだ。サイヤ人も絶滅した。宇宙は……もう昔とは随分違う」

 

パラガスの顔から血の気が引いた。

 

「……フリーザ軍が……壊滅……?あのフリーザが……死んだ……?サイヤ人も……絶滅……?」

 

チライは静かに頷く。

 

「時代は、変わったよ…」

 

パラガスは震える声で呟いた。

 

「…な……もはや……復讐する相手すらいないというのか……」

 

この地に追放され数十年の執念が、音もなく崩れ落ちていく。

 

ブロリーは、父の背中をじっと見つめていた。

その目は、穏やかだった。

 

チライはそっとブロリーに微笑む。

 

「…あんた、優しい目をしているね」

 

ブロリーは驚く。

 

「…え?…やさ…しい…?」

 

チライはブロリーの方へ一歩近づき、ゆっくりと声をかけた。

 

「ねぇ、あんた……うちで働かない?」

 

ブロリーは瞬きをした。

 

「……はたらく……?」

 

「そう。私とレモの、小さな警備会社」

 

レモは慌てる。

 

「うわ、なんて奴だ…さらっとスカウトしてやがる…」

 

チライは笑った。

 

「あんた、ブロリーって呼ばれてたね?あたしはチライ。あんた、強いし、優しそうだし、うちに来てくれたら嬉しいな」

 

ブロリーは少し考え、ぽつりと呟いた。

 

「……よく…わからない…」

 

チライが明るく言う。

 

「じゃあ、少なくとも嫌ではないんだね!それじゃ。試用採用ってことで!」

 

「しよう…さい…???」

 

パラガスは、その会話を黙って聞いていた。

ほんの何分か前までなら、ブロリーを止めていただろう。

だが今は違う。復讐も、野望も、すべてが無意味になった。

 

「……ブロリー」

 

ブロリーが振り返る。

 

「……父さん?」

 

パラガスは、老いた声で言った。

 

「……好きに生きろ。もう……お前を縛る理由は……何もない」

 

ブロリーの目が揺れた。

 

「……自由に……?」

 

「…ああ……オレはもう、自らが天下を取る気力もない…」

 

ブロリーは、困惑する。状況がまるで分らない。

 

チライは笑顔で手を差し出す。

 

「よろしくね、ブロリー」

 

ブロリーは、戸惑いながらも、その手を握った。

 

 

 ブロリーがチライの手を取ったあと。チライは、恐ろし気なものを食べていたブロリーに、自分の携帯食を分け与えたりしていた。そしてチライはふと、少し離れた場所で座り込んでいる老人、パラガスを見た。外界の現実を知り、復讐も野望も消え、ただ静かに肩を落としている。

 

だが、スカウターの数値は、はっきりと示している。

 

チライは小声で囁く。

 

「なぁレモ……あのオッサン、戦闘力4200だぞ。普通の状況じゃ無敵クラスだ。あいつも味方なら……」

 

チライは呆れる。

 

「ばか!やめとけ!ここしか知らないブロリーとは違う!あんな世代のサイヤ人、オレたちが捌けるわけないだろ!惑星をいくつも落としてた連中だぞ!」

 

しかしチライは、パラガスの方へ歩いていった。レモは頭を抱える。

 

「ねぇ、パラガスさん」

 

パラガスは顔を上げる。その目は、どこか虚ろだった。

 

「……なんだ」

 

チライは少し笑って言った。

 

「よかったらさ……あんたも一緒に来ない?私たちの警備会社で働かない?」

 

パラガスは目を見開いた。

 

「…働くだと?」

 

チライは慌てて引きつり笑いを浮かべながら言った。

 

「い、いや!こき使おうってんじゃないよ!?ちょ、ちょっと気が向いたときに……手伝ってくれたら嬉しいなーなんて……」

 

声も裏返っている。

 

レモは半分諦める。

 

「ば、ばかだアイツ…」

 

パラガスはゆっくりと息を吐き、静かに言った。

 

「…とりあえず、ここに残ってもどうにもならん、脱出させてくれ…」

 

チライは胸を撫で下ろす。

 

「あ、ああ!それはもちろん!」

 

レモは肩を落とす。

 

そして、パラガスは静かに結論を出す。

 

「…よかろう……とりあえず、お前たちと同行しよう…」

 

レモが思わず声を上げる。

 

「えっ、マジ!?」

 

チライはホッとしつつ、苦笑した。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

そしてブロリーは小さく呟いた。

 

「…この星を…だっしゅつ……」

 

宇宙の片隅で、一つの奇妙なチームが誕生した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。