ダークネスウォリアー孫悟飯   作:晴歩

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火蓋

 辺境の小惑星にある、チライ・レモ・ブロリー・パラガスの小さな警備会社。古いソファと、中古の端末と、安っぽいコーヒーメーカー。のんびりした午後だった。

 

レモが情報を確認している。

 

「…ん?ネットの速報が騒がしいな……銀河パトロールが全銀河緊急警報なんて何事だ…」

 

コーヒーを入れながらチライが答える。

 

「何それ?そんな警報聞いたことないね」

 

ブロリーはコーヒーは好まずに静かに水を飲んでいる。

ソファに腰を掛けたパラガスもその情報を確認する。

 

『旧惑星フリーザにて正体不明の金属生命体が量産されている』

 

パラガスの手が止まった。

 

「惑星フリーザだと…」

 

かつてサイヤ人を支配したフリーザの名を持つ星、惑星フリーザ。その名を聞くだけで、胸の奥がざわつく。

 

レモが映像を共用モニターに繋ぎ再生する。

そこには、衛星砲撃が降り注ぐ旧惑星フリーザの地表。地面が赤熱し、クレーターが次々と生まれる。そして、金属生命体の姿。それは、氷のように冷たい目をしている。

 

パラガスは驚愕する。

 

「な……なんだこいつは……!まさか……フリーザの……眷属か……!?」

 

レモが絶望的な情報を読み上げる。

 

「衛星砲撃で封じ込めてるだけだ……突破されたら……銀河中に広がる……一体一体が、全てフリーザクラス……誰が参加すんだよ、こんな作戦…」

 

チライも端末を確認しながら言った。

 

「量産ってどういうこと…?意味わかんない……マジでヤバいじゃん……」

 

パラガスは肩を震わせ映像を凝視した。

 

衛星砲撃が降り注ぐ旧惑星フリーザ。だが、地下施設は無傷。

大気圏内からの反撃で、衛星砲は破壊されていく。そして、量産型の金属生命体が次々と起動していく。

 

ブロリーも映像を見つめ、小さく息を呑んだ。

 

その映像を見つめていたパラガスが、突然立ち上がった。

パラガスは震える拳を握りしめたまま、低く、しかしはっきりと宣言した。

 

「オレは行くぞ!」

 

その声には、長年胸の奥に沈んでいた黒い影が、ようやく形を持って噴き出したような重さがあった。レモが慌てて駆け寄り言った。

 

「パラガスさん、無茶だ…!」

 

しかしパラガスはレモを睨みつける。

 

「オレの人生のモヤに、決着をつける!」

 

レモはパラガスを鎮めるように言う。

 

「あんまり思いつめなさんなって…!」

 

パラガスはその言葉を振り払う。

 

「お前に何がわかる…!」

 

その声は怒りと、恐怖と、執念が混じったものだった。

 

チライは端末を見つめながら、ぽつりと呟いた。

 

「でも確かに、ギャラはとんでもなくいいんだよなぁ……。桁が違う。こんな額、見たことないよ」

 

レモは呆れたように頭を抱えた。

 

「おい、チライ。お前いい加減ホントに早死にするぞ…」

 

そんな会話も構わず、パラガスは出発する。

 

「お父さんが行くなら…オレも行く…」

 

そう言って、ブロリーもパラガスに付いて事務所を後にした。

 

「あ!ちょっと!二人とも!」

 

チライは慌ててから、少し肩をすくめて言った。

 

「…パラガスさん、最近馴染み始めた気がしてたんだけどな…」

 

レモも頷く。

 

「…ああ……だが、仕方ないさ……生きてきた世界がオレたちとは違う。幼少期から構築されたもんってのは、そうそう変われやしないよ…」

 

チライは納得する。チライ自身、平均的と言われる平和な生活をしているとは言い難い。人は所詮、なる様にしかならない。彼女はそれを理解していた。

 

「そりゃそうか…」

 

そして続けた。

 

「あたしも行くよ。レモはどうする?」

 

レモは驚く。

 

「は!?お前が行ってどうするんだよ!」

 

チライは笑ってあっさり言った。

 

「こんな非常事態だよ?どうせ逃げても巻き込まれるなら、稼げる時に稼がないと損じゃん」

 

そう言ってチライはパラガスとブロリーの後を追う。

 

事務所に一人残されたレモは、深く息を吐いた。

どうせ逃げても巻き込まれる、チライが軽口で言ったその一言が、意外にも核心を突いていることに気づき、レモは苦笑した。

 

「チライの奴、たまに鋭いこと言いやがる。フリーザ級の量産なんて、冗談にもならねえ…」

 

レモは端末に映る銀河パトロールの救援要請を見つめた。

フリーザ級の怪物が、銀河全域に広がれば、どこに逃げても安全などない。

 

ならば、巻き込まれる前に、こちらから動いたほうが賢明かもしれない。

ブロリーという戦力を銀パトに協力させたほうが、まだ生き残る可能性がある。あの金属の怪物に対抗できる存在なんて、銀河中探してもそうはいないはずだ。

 

レモは深く息を吸い、腹を括った。

銀河の命運に巻き込まれるのは避けられない。

ならばせめて、サポート役として全力を尽くす。

レモは慌てて三人を追いかけた。

 

「まてまて!オレも行く!チームだろ!」

 

 

 銀河パトロールの宇宙ステーションホールには、87人の戦士が集結していた。士官は、集まった人数を確認して息を吐く。

 

「全銀河から招集しても、たったの87人か……」

 

だが、司令官は言った。

 

「いや、悪くない数字だ。フリーザ級の脅威の前によく集まってくれた」

 

87人という数字は少ない。だが、ここにいる者たちは全員、銀河の果てから命を賭して駆けつけた精鋭だった。ざわめきは最小限。誰もが、生還は保証されないことを理解している。 それでも、覚悟だけは揺らがない強者達。

 

 

 87人の戦士の中に、ヤードラット人の二人、ハムムとムスター、そしてその弟子、まるで場違いに見える銀髪の少女、マシンミュータント・アカッゴの姿があった。そんな中、ハムムがふとアカッゴの肩を軽く叩いた。

 

「あそこ。君みたいな女の子がいるぞ。君と同じく、戦士には見えないな」

 

「女の子…?」

 

アカッゴは驚いて、ハムムの指差す方向を見る。

そこにいたのは、確かに戦士には見えない小柄な黒髪の少女。そしてその隣には、少女とは対照的な、屈強な戦士そのものに見える男性。

 

アカッゴは、その少女の気を解析しようとして困惑する。

ハムムとムスターも何かに気が付く。

 

「気づいたか、アカッゴ。あの少女、スピリットが君と同じ人工生命の波形だ。それに、ただの機械じゃない、君と同じく生体だ」

 

アカッゴの胸の奥がざわつく。自分以外の人工生命体を見るのは初めてだった。しかも自分と同じ少女型。

 

「あの強そうな男は……」

 

ヤードラット人のハムムは、少女の横の屈強な男も探ってみる。

 

「……読めない。あれは……ロボットだな……」

 

ムスターがうなずく。

 

アカッゴはそのロボットの解析を試み息を呑む。

 

「とてつもなく…高性能…全部は読めない…」

 

アカッゴは、自分と少し近いかもしれない存在達を前に小さくつぶやく。

 

「…いったい何者なんだろう……」

 

奇しくも、彼らは皆、サイヤ人という存在が起因して生み出された存在だった。

 

 

 地球からの参戦者、少女ラーネ。

ただの地球の少女の普段着で、ひと際場違いに見える。彼女は、緊張のあまり指先が少し震えている。その隣に立つ巨体は、人造人間16号。

 

ラーネは、主要攻撃班の編成が発表されるのを待つ中、周囲を観察していた。彼女の任務はただ一つ。

 

地球外の情報を学ぶこと。

 

ただ、未知を知るためにここへ来た。

そして実際、目の前に広がる光景は、ラーネの想像を超えていた。

頭で考えるだけの事と、体験するのではまるで違うと実感する。

 

「私、こんな場所にいていいのかな……みんな強そうで……怖い……」

 

16号は言った。

 

「お前は観察者だ。お前はお前の任務をこなせばいい」

 

16号は続ける。

 

「だが、オレのパワーレーダーでは、お前はこの中でもトップクラスに強い」

 

ラーネは目を丸くした。

 

「えっ……わ、私が……?」

 

「ああ」

 

16号は微笑した。

 

ラーネは、圧倒されながらも、周囲を丁寧に観察していた。

その中で、ひときわ目を引く存在がいた。

 

銀色の髪。淡い光を反射するような肌。

静かで、どこか儚げな雰囲気をまとった少女。

 

ラーネは思わず息を呑んだ。

 

「あんな女の子が……あの子も戦士なの……?」

 

ラーネの胸の奥に、自分と似た存在を見つけたような感覚が生まれる。

 

「どういう子なんだろう…?」

 

16号が静かに言った。

 

「お前と同じく、只者ではない。オレのパワーレーダーでも解析しきれん」

 

ラーネは小さくうなずく。

 

「……うん。外の世界って、怖いけど、ちょっと面白いね」

 

 

 ホールにブロリーとパラガスが到着し、アカッゴのセンサーが一斉に反応した。胸の奥が冷たくなると同時に、全身が沸騰する様に熱くなる。

 

その波形は、サイヤ人。

 

アカッゴの本能が警告を鳴らす。彼女の身体が震えた。自分でも抑えられないほどの、原始的な恐怖。隣でハムムがアカッゴの肩にそっと手を置く。

 

「アカッゴ、どうした?大丈夫か?」

 

アカッゴは小さく首を振る。

 

「…サイヤ人が…居る…」

 

ムスターがブロリーとパラガスを見て言う。

 

「今入ってきた二人か…サイヤ人の生き残りがいたのか…」

 

ハムムは優しく続ける。

 

「落ち着け、君は並みのサイヤ人には負けやしない」

 

アカッゴは、生まれて初めての強い恐怖を体感した。そして、ぎゅっと胸を押さえ、必死に息を整えようとした。

 

 

 全戦士87名に対し、スカウターによる戦闘力計測と班分けが始まった。

戦士たちは自分の所属班が呼ばれるのを静かに待つ。

 

司令官が結果を確認し、声を張り上げた。

 

「主要攻撃班、ブロリー、ハムム、ムスター、アカッゴ」

 

アカッゴは驚愕する。

 

「サイヤ人と…!?…同じ班……!?」

 

ブロリーがゆっくりとアカッゴを見た。

 

鋭くもなく、威圧もない。ただ、静かで、どこか不器用な視線。

アカッゴは息を止めた。恐怖と緊張で固まっている。

その異常な様子を見たブロリーは小さく首を傾げ声をかけた。

 

「…どうした?…だいじょうぶか……?」

 

その声は驚くほど優しかった。

 

アカッゴは、ただただ困惑した。

 

 

 ラーネと16号をスカウターが計測する。しかし。

 

「……エラー。対象の戦闘力を測定できません」

 

技術士官が慌てて別のスカウターを持ってくるが、結果は同じ。

 

「なんだこれは……?ステルス装備か……?」

 

16号は落ち着いた声で言った。

 

「問題ない」

 

司令官は少し考え、決断する。

 

「君たちは後方支援部隊に回ってもらう。計測不能の戦力は、前線で扱うにはリスクが高い」

 

ラーネは少しほっとしたように胸をなでおろす。

 

16号は静かにうなずいた。

 

「了解した」

 

そして老齢のパラガスも後方支援に回されたが、その目は、揺るがぬ決意があるように鋭かった。

 

 

 班分けされた戦士たちは突入船でそれぞれの想いを抱え待機する。

 

パラガスは、静かに鋭く気を高めている。ブロリーは、作戦そのものの事より、その父の様子に強く不安を感じていた。

 

ヤードラットのハムムとムスターは、静かに瞑想しながら、惑星から立ち上る異常な気配を感じ取っている。その二人の元で修行しているアカッゴも瞑想し、少し落ち着きを取り戻していた。

 

ラーネは16号の横で震えていた。頭で落ち着こうと考えても身体が言うことを聞いてくれない。16号はラーネの肩に手をかけ言った。

 

「無理をしなくていい。お前は生き延びればそれでいい」

 

 まもなくして、突入船は、囮のダミー船も含め、300機が次々と発進し、船体を包むバリアーがフルパワーで輝きながら大気圏へ突入していく。

船体が震え、空気摩擦で外殻が赤熱する。ラーネは後方支援船の座席で身体を固くし、アカッゴは主要攻撃班の船内で胸を押さえ、ブロリーは静かに目を閉じていた。

 

突入船が侵入した瞬間、そこには待ち伏せがあった。

 

メタルクウラ部隊。数十体。

 

「敵影多数!!回避…!!」

 

通信が叫ぶより早く、メタルクウラたちが一斉に突入船へ襲いかかった。

突入船のバリアーが貫かれる。金属の拳が船体を叩き割り、ビームが装甲を貫通し、突入船が次々と爆散していく。

 

「くそっ! 脱出しろ!!」

 

「ぐあああっ!!」

 

戦士たちの叫びが通信に溢れた。

そんな中でも、手練れの戦士達は、破壊された船から空中へ飛び出す。

しかし、メタルクウラの戦闘力は圧倒的だった。

 

空中で体勢を整えた瞬間、メタルクウラがすぐそこに迫る。

多くの戦士たちは、反撃する間もなく叩き落とされていく。

 

 

 ラーネは悲鳴を上げた。

 

「ああ……!!」

 

16号がラーネを抱え込み、船体の外へ飛び出す。

 

「ラーネ、落ち着け。お前の力なら対処できる」

 

ラーネは震えながら16号にしがみついた。

 

「……怖い……怖いよ……!!」

 

空中での戦闘音が、雷のように響き渡る。

 

突入船が次々と破壊され、空中に投げ出されたラーネは、16号の腕の中で震えていた。周囲ではメタルクウラたちが戦士たちを蹂躙し、爆発音と悲鳴が空を裂いている。

 

ラーネの呼吸は浅く、視界が揺れ、胸の奥が締め付けられる。

 

「こ、怖い……こんなにも……怖いなんて……う、動けない……」

 

声は震え、涙が滲む。

 

16号は落下速度を制御しながら、ラーネの状態を冷静に分析していた。

 

「ラーネ。お前は戦士ではない。戦う必要はない。お前の任務は情報収集だ。バリアーを張って身を守っていろ」

 

ラーネは震えている。

 

16号はラーネを優しく放して言った。

 

「オレは行かねばならん、部隊が全滅する前にな。死ぬなよ!」

 

 

 ラーネは空中で、16号に言われた通り必死にバリアーを展開していた。

 

恐怖は消えない。

 

爆発音、悲鳴、金属が砕ける音。空は閃光と爆風で満ち、メタルクウラたちが戦士たちを次々と叩き落としていく。ラーネの手は震え、呼吸は浅く、涙がこぼれそうになる。

 

ラーネの周囲に展開されたバリアーは、最初は彼女一人を包む小さな球体だった。だが、近くで戦士たちがメタルクウラに追い詰められているのを見た瞬間、ラーネの胸の奥で何かが弾けた。

ラーネは震える手を前に突き出し、バリアーの出力を上げた。

 

光が一気に広がる。

 

「…!?防御フィールド!?」

 

「助かった……!!誰が張ってるんだ……!?」

 

周囲の戦士たちが驚きの声を上げる。

 

メタルクウラの光線がバリアーに直撃し、火花が散る。

 

衝撃でラーネの身体が揺れる。だが、彼女は歯を食いしばり、バリアーを維持し続けた。重症を負った戦士が吹き飛ばされながらも、バリアーの内側に転がり込むようにして息をついた。ラーネのバリアーは、周囲の戦士たちを包み込むように広がり、メタルクウラの攻撃を次々と弾き返す。

 

 

 ラーネのバリアーが戦士たちを守る中、空中では16号が単独でメタルクウラ部隊へ突撃していた。その巨体はまるで弾丸のように空を切り裂く。16号の両前腕が取り外され、そこに砲口が出現する。

 

「ヘルズフラッシュ!!!」

 

砲口から爆発的な拡散エネルギー波が空中に広がり、複数のメタルクウラを一気に飲み込んだ。

 

メタルクウラたちは高速で散開し、一部は腕をクロスして防御姿勢を取る。

だが、完全には防ぎきれない。

 

数体のメタルクウラがエネルギー波に直撃し、ダメージを負う。

 

ダメージを負った者に16号は追撃をかける。

空中で一気に加速し、損傷したメタルクウラに正面から拳を叩き込む。

 

別のメタルクウラが光線を撃つが、16号は追撃を止めず突き進む。

 

そして、三体のメタルクウラの破壊に成功した。

 

16号の圧倒的な破壊力に、周囲の戦士たちが息を呑む。

 

「す、すげぇ……!」

 

「い…いけるぞ…!」

 

「…あいつを軸にすれば、戦いようはあるぞ!」

 

16号は誇ることなく、ただ冷静に戦場を見渡す。

 

新たなメタルクウラが三体、16号の周囲に出現した。

16号は即座に分析を開始する。

 

「反応速度……向上。装甲強度……上昇。エネルギー効率……改善。これは、アップデート型か!?」

 

三体のメタルクウラが同時に襲いかかった。

16号は腕で防御するが、先程とは比べ物にならない衝撃が走る。

 

三方向からの連撃。16号の装甲が軋み、空中で大きく弾き飛ばされた。

 

「くっ……!」

 

16号が体勢を立て直す前に、アップデート型の一体が高速で接近し、胸部へ強烈な蹴りを叩き込む。

16号の巨体が空中で回転し、雲を突き抜けて落下していく。

 

落下しながらも、16号は冷静に状況を判断する。

 

「さっきの群れより……明らかに強い。アップデート型が存在するということは……」

 

16号は空を見上げる。

 

そこには、雲の影から次々と姿を現すメタルクウラの群れ。

その中には、明らかに強化された個体が複数。

 

「……まずいな。もし、あれ以上の強化型が何十体も存在するなら…勝ち目はない…」

 

その言葉は、戦場の現実を突きつける冷徹な結論だった。

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