ダークネスウォリアー孫悟飯   作:晴歩

39 / 39
憂い

 子供とは、大人の真似をしたがるものだ。

 

5歳になったパンにとってのおままごとは、ブウと組手を取ることだった。ある意味、常識外れの英才教育。その環境で、パンの才能はみるみる開花していく。相手の強さも推し量れるほどに。

 

そしてある日、パンはふと思った。

 

「ラーネ先生って強いの?」

 

訊ねられたラーネは驚愕した。

 

普段は、普通の人間として振る舞い、自分の身体能力は決して見せないようにしている。

 

「え!? な、な、なんで!?」

 

5歳のパンの語彙力では上手く説明できない。

 

「んー、なんかそんな感じがする」

 

「へー、そうなんだ、ふーん……」

 

ラーネはそのまま話題を流そうとする。

 

しかしパンは純真そのもの。

 

「強いの?」

 

ラーネは困惑した。

 

「え、えーと……」

 

ラーネには、誰にも言えない不安があった。

 

ラーネは復興後に生み出された人造人間。破壊には関わっていない。だが…

自分の素性が知られれば、今のように人々と普通に暮らすことは許されないだろう。

 

パンの問いは、その不安を鋭く突いてしまった。

ラーネの表情が曇る。パンはそれを見逃さない。

 

「どうしたの? ラーネ先生……なんだか悲しそう……」

 

そして、感のいいパンは、自分のせいだと思ってしまう。

 

「パンのせい……?」

 

ラーネは慌てて首を振った。

 

「ううん! そんなことないよ!ごめんね! ちょっと考え事しちゃって!パンちゃんは何も悪くないよ!」

 

パンはほっとしたように微笑んだ。

 

 

 パンに「強いの?」と問われた日の夜。

ラーネは、重い胸のまま16号のもとを訪れた。

 

「パンちゃんに……私の力……見抜かれた……もう、普通に暮らせないかもしれない……」

 

16号はしばらく黙って考え、静かに問い返す。

 

「ふむ……お前は、孫悟飯には会ったことはあるのか?」

 

ラーネは驚き、答える。

 

「え……? うん……何度か……パンちゃんの送り迎えの時とか、参観日の時とか……」

 

16号は淡々と告げた。

 

「では、孫悟飯には既にバレているのではないか?」

 

ラーネは跳ねるように声を上げる。

 

「え!? そ、そんなまさか!?」

 

16号は冷静に言う。

 

「5歳の子供に見抜かれたんだ。孫悟飯に悟られていても不思議はない」

 

ラーネは言葉を失う。

 

「そ、そうだけど…パンちゃんとは長い時間一緒にいるけど……孫悟飯さんとは一瞬、何度か会っただけだから……」

 

しかし、不安は高まる。悟飯の洞察力は、パンの比ではないだろう。

 

 

 それから数日、ラーネはひどく沈み込んだ。

その数日間の沈み込みを見て、16号は静かに決断した。

 

16号が向かった先は、孫悟飯の家。

 

「孫悟飯」

 

名を呼ばれた悟飯は、玄関先で16号を見据えた。

 

その目は、異質な存在に対しても、剣呑さは見せず落ち着いている。

 

「はい。あなたは…?」

 

16号は一歩前に出て名乗る。

 

「オレは16号。ドクター・ゲロの作った人造人間だ」

 

悟飯は息を呑む。しかし構えは取らない。ただ、冷静に状況を見極めている。

 

16号は続けた。

 

「敵意はない。破壊活動を行うつもりもない」

 

悟飯は静かに問い返す。

 

「僕に、何の用ですか」

 

16号は淡々と、しかしどこか切実に言った。

 

「復興後に生み出された人造人間が居る。彼女は自分の素性に悩み、かつてなく苦しんでいる」

 

悟飯の表情がわずかに揺れる。

 

16号は核心を突いた。

 

「お前は、かつて人類を破滅させた人造人間の眷属である彼女を憎むか」

 

悟飯は一瞬黙り、そしてゆっくりと首を振った。

 

「いいや。僕は、枠で物をみない」

 

16号はわずかに目を細めた。

 

「そうか……」

 

そして深く頭を下げる。

 

「彼女を救いたい。力を貸してほしい。彼女はただの、優しい一人の人間だ」

 

悟飯はすべてを察した。

 

「ええ、そうでしょうね」

 

ここ数日、パンが言っていた。

 

『ラーネ先生、なんか元気ないの……』

 

悟飯は優しく微笑む。

 

「そうでなければ、うちの娘があれほど懐くわけがない」

 

16号は悟飯の言葉を聞き、驚く。

 

「やはり、既に気づいていたのか」

 

悟飯は首を横に振る。

 

「いいえ、詳細までは」

 

悟飯は落ち着いたまま、続ける。

 

「でも……今あなたに会って、線がつながりました」

 

悟飯は優しく微笑む。

 

「ラーネ先生は、きっと優しい人なんでしょうね」

 

16号は短く答える。

 

「ああ」

 

 

 翌朝。パンは悟飯に手を引かれ、元気いっぱいに幼稚園へやってきた。

 

「おはよう!ラーネ先生!」

 

パンはいつも通りの明るさで挨拶する。

ラーネは、ここ数日の沈んだ様子のまま、無理に笑顔を作って返した。

 

「…おはよう」

 

その笑顔は、パンにも無理をしていると分かるほど弱々しい。

 

悟飯も軽く会釈する。

 

「おはようございます」

 

そして、悟飯は静かに続けた。

 

「昨日、16号さんに会いました」

 

「!?!?」

 

ラーネの頭が真っ白になる。

膝が震え、その場で倒れそうになる。

何も考えられない。呼吸すら忘れそうになる。

 

悟飯は優しい声で続けた。

 

「僕は、あなたに恨みなんてありません」

 

悟飯はまっすぐに言葉を重ねた。

 

「いつもパンに良くしてくださって、感謝しています。だから……どうか元気を出してください」

 

ラーネの目が揺れる。

 

悟飯はさらに言う。

 

「パンも、ここ数日……あなたのことを、とても心配していました」

 

パンは横で大きく頷く。

 

ラーネの胸が締めつけられる。

 

悟飯は微笑んだ。

 

「あなたが優しい人だってことは、パンを見ればよくわかります」

 

ラーネは、その場で泣き崩れそうになるのを必死にこらえた。

パンは、そんなラーネを心配そうに見つめる。悟飯はそっとパンの頭を撫でた。

 

「先生はちょっとお疲れなんだよ。きっと明日からは元気な先生に戻ってるよ」

 

悟飯の声は優しく、ラーネを責める気配は一切ない。

ラーネは涙がこぼれそうになるのを必死にこらえ返事をした。

 

「は、はい!」

 

その声は震えていたが、パンの前ではどうにか笑顔を保とうとしていた。

 

パンがラーネの手を引きながら園内へ入っていく。

ラーネはまだ完全ではないが、昨日より少しだけ元気を取り戻していた。

 

悟飯は二人の背中を見送り、ほっと息をついたその瞬間。

 

キビトが瞬間移動で現れる。

 

悟飯は振り返る。

 

「キビトさん……?」

 

キビトは深刻な表情のまま告げた。

 

「孫悟飯。界王神界で、界王神様とビルス様がお呼びだ」

 

悟飯の表情が一変する。

 

「お二人がご一緒に……?……ただ事では無さそうですね……」

 

キビトは重く頷いた。

 

「かつて無い脅威だ……」

 

悟飯の背筋に冷たいものが走る。

 

パンの送り迎えの直後とは思えないほど、空気が張り詰めていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

転生ナメック星人、地球へ(作者:一般通過ナメック星人)(原作:ドラゴンボール)

▼これはスラッグがフリーザと戦闘になってしまった世界線。▼もしもピッコロ大魔王と同じ様に、スラッグがタマゴを吐き出していたら。▼尚、タマゴの中身は転生者とする。▼


総合評価:722/評価:7.48/連載:6話/更新日時:2026年04月16日(木) 20:22 小説情報

Z戦士の虎杖悠仁(作者:汚ねえ花火)(原作:ドラゴンボール)

 虎杖って部品思考になっちゃったり色々悲惨な目にあいすぎだよなぁ。▼ それを回避するためには全てを粉砕できるパワーがあれば良いんじゃ!?▼ そのパワーを手に入れるためにはインフレバトルの頂点世界に虎杖を投入すれば良い!!!(迷案)▼ というわけで虎杖に宿儺を添えてドラゴンボール世界にinしてしまおう!!!▼ というお話。


総合評価:887/評価:8.52/連載:14話/更新日時:2026年06月13日(土) 21:02 小説情報

地球人と魔族の混血はサイヤ人を超えたい(作者:抹茶好きの紅茶)(原作:ドラゴンボール)

 魔族の血を引いた地球人である転生オリ主が強さを追い求める話。


総合評価:311/評価:8/連載:10話/更新日時:2026年05月31日(日) 16:33 小説情報

TS転生憑依ロリ人造人間16号(作者:政田正彦)(原作:ドラゴンボール)

お、俺はただ……じ、人造人間16号を美少女にしたら……▼お、おもしれえんじゃねえかと思ってよ……へへ……▼だ、だから……美少女にした上で記憶ぶっこ抜いた男を憑依させて……TS転生憑依ロリ人造人間16号を造ったんだ……▼クククッ……も、もう止められんぞ……▼ヤツの曇らせと勘違いの嵐は……!!▼なんか思ったより長引きそうだから短編から連載に変えたぞ……クククッ……


総合評価:4909/評価:8.64/連載:12話/更新日時:2026年04月03日(金) 14:20 小説情報

孫悟空成り代わりオリ主(作者:雨曝し)(原作:ドラゴンボール)

▼ 孫悟空に成り代わったオリ主が可愛い子を求めて冒険する話。▼タグは随時追加


総合評価:3999/評価:8.08/連載:6話/更新日時:2026年03月30日(月) 13:29 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>