全覧試合の会場。
十二の宇宙の破壊神、界王神、天使たちが整然と並び、そこはまるで、宇宙の中心という様相を纏っていた。
大神官が一歩前に出た瞬間、その神々ですら震えるように緊張が走る。
「これより、全覧試合を執り行います」
その声は静かでありながら、圧倒的な響きを持っていた。
悟飯は思わず息を呑む。
「あれが、大神官様…」
そしてその大神官の声とともに全王が姿を現す。
「全王様、おなりです!」
その外見は、悟飯たちの想像を遥かに超えていた。
無機質。
感情が読めない。
そして幼い。
トランクスは、拳を握りしめ、怒りを隠しきれずに歯を食いしばった。
「……あんな……子供みたいな存在が……こんな無茶苦茶なことを引き起こしたのか……!」
悟飯が慌てて横目で制止しようとしたその瞬間、ビルスが鋭く怒鳴った。
「トランクス!抑えろ!」
その声には、破壊神としての威圧が込められていた。
トランクスはハッとして息を呑む。
ビルスは低く、しかし真剣に言った。
「堪えろ、僕がお前を破壊するだけでは済まされんぞ、宇宙を消すつもりか…」
トランクスは唇を噛みしめ、必死に怒りを押し殺した。
悟飯はそっとトランクスの肩に手を置く。
全王は、無表情のまま、辺りを見まわす。
悟飯は背筋に冷たいものが走った。
アカッゴもまた、その存在を前にして小さく震えていた。
全覧試合に選ばれた宇宙は第七宇宙と第六宇宙。
第六宇宙の破壊神シャンパが、ビルスへ歩み寄った。
肥満体形のシャンパは腹を揺らしながら、ビルスに声をかけた。
「よぉビルス、とんでもねぇ事になっちまったな」
ビルスは腕を組んだまま、そっけなく返す。
「ふん、まぁな……」
二人は兄弟。だが仲が良いとは言い難い。むしろ、顔を合わせるたびに火花が散る。
シャンパはビルスの顔を覗き込み、ニヤリと笑った。
「お前、ちゃんと面白い選手を揃えたんだろうな?全王様を退屈させたら、ここで終わりだぞ!」
トランクスは、その言葉に背筋が冷える。
ビルスは鼻で笑った。
「ふん。お前のほうこそ、ちゃんと強い選手を集めたんだろうな。うちのチームは強いぞ。弱すぎて一瞬でケリがついたら、目も当てられんぞ」
シャンパは胸を張り、ドヤ顔で叫んだ。
「もちろん強い!そして見ろ!女子もいるんだぞ!女子も!似たような選手ばかりで全王様を退屈させてはいけないからな!」
ウイスはくすりと笑った。
「兄弟ですねぇ」
ビルスは嫌そうに顔をしかめる。
「やめろウイス……」
それを聞いたシャンパはビルスに問う。
「なんだと?お前のチームにも女子がいるのか!?」
ビルスはふんと鼻を鳴らす。
「……まあな」
シャンパは目を見開き、焦りの色を浮かべた。
「くっ!?お前のチームにも女子が……!?くそっ、全王様の興味を独占できねえじゃねぇか!」
悟飯とトランクスは、女子がいるかどうかで破壊神が本気で焦る光景に、呆然とするしかなかった。
第六宇宙代表が並ぶエリア。
その中で、ひときわギラギラした視線を向けてきたのが、サイヤ人の少女、カリフラだった。
彼女は腕を組み、ニヤリと笑いながら第七宇宙側を見渡す。
そして、トランクスを見つけて珍しそうに反応した。
「おっ?なんかカッコいい奴がいるな。うちの近所にはいないタイプだ」
そのカリフラを見たアカッゴは呟いた。
「……あれは……サイヤ人のスピリットの波形…… 」
悟飯は静かに頷く。
「うん。第六宇宙にもサイヤ人がいるようだね…」
トランクスにとっては、物心ついてから、悟飯と自分、そしてパン以外で初めて見るサイヤ人。
「女性のサイヤ人か…」
第六宇宙と第七宇宙。ついに第一試合の幕が上がる。
会場の空気の緊張が高まり、大神官の声が響く。
「第一試合。第六宇宙代表、マゲッタ選手。第七宇宙代表、魔人ブウ選手」
マゲッタがリングに立つと、シャンパは腹を揺らして高笑いした。
「どうだビルス!全王様を飽きさせない、うちのバリエーション豊かな選手陣は!」
メタルマンという異質な存在。巨大で、重い。
ビルスは腕を組み、ふん、と鼻を鳴らした。
「こっちの魔人ブウも面白さでは負けん。あいつは何をするかわからんからな」
トランクスは驚く。
「あれ、生物なのか?まるっきりロボットじゃないか…」
アカッゴはマゲッタを見つめながら、分析する。
「…マシンミュータントの私に通ずる…?」
大神官の試合開始の号令とともに、リングの上では、常識外同士のぶつかり合いが始まる。
マゲッタの超重量の拳が振り下ろされ、ブウの体がぐにゃりと歪む。
だが、ブウは殴られても、押しつぶされても、高熱の蒸気を浴びても、まったくダメージを受けていない。
逆にマゲッタも、ブウの伸びる腕、弾む体、予測不能の攻撃を受けても、まったく怯まない。
悟飯は目を見開き、思わず声を漏らした。
「なんて丈夫なやつだ……ブウの攻撃をものともしてない……!」
トランクスも驚きを隠せない。
「メタルマン……あんなに硬いんですか……!?ブウの攻撃が効かないなんて……!」
アカッゴは高速で波形を読み取り未知の種族を解析する。
一方、第六宇宙の戦士たちも、ブウの異質さに目を丸くしていた。
カリフラが声を上げる。
「なんだアイツ……!?マゲッタの重さにも、高熱にも、まるでダメージ受けてないじゃないか……!」
金属音が響く。
マゲッタの蒸気がブウを包み、リングが白く染まる。
しかし、どちらも倒れない。どちらも怯まない。
その攻防はしばらく拮抗し、観客席の神々すら息を呑むほどの激戦となった。
ブウはにこっと笑い言った。
「じゃあ……これならどうだ?」
両手を前に突き出す。
「チョコになっちゃえ!」
魔術光線がマゲッタを包み込む。
そして光が収束した瞬間。
マゲッタは、チョコになっていた。
会場が静まり返る。
カリフラの驚愕。
「は!?どういうことだ!?」
シャンパが叫ぶ。
「おい!!マゲッタァ!!」
大神官の判定。
「マゲッタ選手、戦闘不能。第七宇宙、魔人ブウ選手の勝利です」
全王は手を叩いて喜んだ。
「おもしろーい!」
「はい、もどしてやる!」
ブウが再度術をかけるとチョコは元のマゲッタに戻った。
第六宇宙の天使、ヴァドスは微笑み、シャンパに向かって言った。
「シャンパ様。本大会では魔術対策は致しませんとね。全覧試合があって良かったですね。きっと他の宇宙の皆さんも対策をしてくるでしょう。もうあの技は通用いたしませんわ」
「くっそぉぉぉ…!!!」
シャンパは悔しそうに歯噛みする。
ビルスは嬉しそうにブウに声をかける。
「よくやったブウ!全王様もお喜びだ!」
第一試合は第七宇宙が勝利した。
だが、メタルマンという強力な未知の存在を目の当たりにして、試合を控えるトランクスとアカッゴ、二人の緊張は高まる。