第二試合。武舞台に上がったのは、アカッゴとカリフラ。
カリフラはアカッゴと対面しニヤリと笑った。
「よう、お前さ」
カリフラは持ち前の気さくさで、肩の力を抜いたまま、気軽に話しかけた。
「もしかして、あのイケメンと付き合ってたりすんのか?」
それは彼女にとって自然な質問だった。
サイヤ人の男は戦闘以外のことにほとんど興味を示さない。恋愛などは女性が主導しなければ成立しない。
だから、相手の恋愛事情を軽く探るのは、カリフラにとって文化的な挨拶のようなものだった。
しかしアカッゴは、首をわずかに傾けた。
「イケメン……とは、なんですか」
「なんだ、お前んとこの宇宙にはイケメンって単語がないのか?」
アカッゴは少し考え、答えた。
「推測。イケメンと付き合う。麺類の生地を作ることの慣用句。答え。私は麺類の生地を制作したことはありません」
「は?……何言ってんだこいつ……」
アカッゴは問う。
「何故今、麺類の話を?」
「してねーよ!!」
カリフラは思わず声を荒げた。
「くっ、やるじゃねーか……私のテンポを乱す気かよ」
しかしアカッゴは、首を横に振った。
「作戦ではありません。別宇宙の人との会話……難しいです……」
「それはこっちのセリフだ!!」
互いに困惑する中、大神官の宣言。
「第二試合、第六宇宙代表、カリフラ選手。第七宇宙代表、アカッゴ選手」
「はじめ!」
試合開始の号令が響くと同時に、カリフラは獣のような笑みを浮かべて突進した。
「はっはーっ!!」
その拳は鋭く、速く、重い。サイヤ人特有の戦いの喜びが全身から溢れている。アカッゴは防御に徹し、最小限の動きで攻撃を受け流す。
カリフラの猛攻が続く。アカッゴは防御一辺倒。
カリフラが笑みを浮かべ叫ぶ。
「どうしたぁ!手も足も出ねぇか!!」
さらにカリフラの猛攻が続く。
そしてアカッゴは呟く。
「……困った……」
カリフラは完全に自分が押していると思い、勝ち誇った笑みを浮かべる。
「はっはー!あたしの力が想定以上すぎたか!?」
アカッゴは困惑したまま、正直に状況を説明しようとする。
「……逆……。私、神々から、試合を面白くしろと命じられている……」
「ああ!?それはどういう意味だ!?」
アカッゴが答える。
「あなた……あまりにも弱すぎる……どう面白くすればいいのかわからない……」
「ん……だと……?」
カリフラの顔が真っ赤になり、額に青筋が浮かぶ。
「弱すぎるだけじゃ飽き足らず……そのうえ、あまりにもだとぉ……!?」
「ざけんなこらあああああッ!!!」
怒号とともに、カリフラは再び突進した。
その気は先ほどの比ではない。怒りで一気に戦闘力が跳ね上がっている。
だが、アカッゴはやはり難なくいなした。
最小限の動きで衝撃を逃がし、攻撃の軌道を読み切り、淡々と受け流す。
カリフラは歯ぎしりしながら叫ぶ。
「このやろぉっ!」
アカッゴは静かに問いかけた。
「何故……あなたが代表になれたのですか……?」
その声音には皮肉も煽りもない。ただ純粋な疑問がそこにあった。
「もしかして……第六宇宙って弱い……?」
その瞬間、カリフラの怒りは頂点を突破した。彼女の顔が真っ赤になり、全身の気が爆発する。
「……あたしだけのことじゃなく……仲間のことまで馬鹿にしやがったな……」
怒りが限界を超えた瞬間、カリフラの気が一気に跳ね上がった。
黄金の光が彼女の周囲を包み、髪が逆立ち、瞳が鋭く輝く。
「てめえええええッ!!!!」
カリフラは、スーパーサイヤ人へと覚醒した。
アカッゴはその変化を見て、驚きに目を見開いた。
「これは……あの時のブロリーと同じ変化……サイヤ人特有の、スピリットの倍加技能……」
彼女のセンサーは、カリフラの気が倍化した瞬間を正確に捉えていた。怒りを引き金に、戦闘力が一気に跳ね上がる、サイヤ人の本能的な覚醒。
黄金のオーラを纏ったカリフラは、先ほどとは比べ物にならない速度で再びアカッゴへ突進する。
その派手な変化を見た全王は、子どものように身を乗り出して喜んだ。
「わあ!すごい!かっこいいねー!」
その声を聞いたシャンパは、すぐさまビルスを煽りにかかる。
「はっはー!全王様がお喜びだ!いいぞー!カリフラ!」
ビルスは歯ぎしりしながら焦りを隠せない。
「ぐぬぬ……おいアカッゴ!お前もなんか変身しろ!」
突然の無茶ぶりに、アカッゴは困惑した。
「え……そう言われても……」
しかし、ほんの一瞬だけ考えたあと、彼女は静かに息を吸い、スピリットの波形を操作し意図的に発光させた。
次の瞬間、アカッゴの身体から白銀の光がふわりと立ち上がった。
髪は逆立たず、形も変わらない。ただ、純粋なエネルギーだけが美しく発光し、まるで銀色の炎のように揺らめいた。
全王は再び身を乗り出して歓声を上げる。
「おお!こっちは銀色だー!きれいだねー!」
ビルスはすぐさま乗っかる。
「いいぞー!アカッゴー!」
一方、シャンパは怒り心頭でビルスに食ってかかる。
「おいビルス!てめぇ!パクってんじゃねぇぞ!」
ビルスは即座に反論した。
「どこがパクリだ!こっちは銀色だ!髪も逆立ってない!」
ウイスは横で微笑みながら、「兄弟ですねぇ」と呟いた。
トランクスは、その様子を見て言った。
「これ……宇宙の存亡がかかった試合なんですよね……」
悟飯は苦笑しながら肩をすくめた。
「う、うん……まあ……」
武舞台では、黄金のサイヤ人と白銀の人工生命体が向かい合い、全王の歓声を背に、激突する。
カリフラがスーパーサイヤ人へと覚醒したことで、試合の空気は一変した。
黄金のオーラが武舞台を揺らし、彼女の動きは先ほどとは比べ物にならないほど鋭く、速く、重くなる。
アカッゴはその猛攻を受けながらも、依然として冷静だった。
観客席で悟飯が状況を見極めながら呟いた。
「どうやら、あの人……初めてスーパーサイヤ人になったようだね。まだ力の使い方に慣れていない。消耗が激しい」
「そのようですね」
トランクスも頷きながら、カリフラの動きを追う。
だがトランクスは、スーパーサイヤ人へと変化したカリフラよりも、アカッゴの動きに目を見張った。
「あの人…強いですね……サイヤ人を滅ぼすことが目的って……」
悟飯もアカッゴの力を見極めつつ答える。
「うん。でも、それを履行するつもりはないとも言っていた」
「そうですけど……」
彼女はサイヤ人に滅ぼされた種族の末裔。
トランクスはあの時、自分が咄嗟に何も言い返せなかった事を想う。
アカッゴは攻撃を受け流しながら、静かに分析を続けていた。
アカッゴが冷静でいられた理由は、ただ「強いから」ではなかった。
スーパーサイヤ人の力は確かに脅威だ。常人ならその圧だけで膝をつく。
だが、アカッゴは、もっと規格外の存在を知っていた。
あの日。
ブロリーの暴走を、真正面から見た。
空間が歪み、地面が砕け、気の波形が常識を超えて跳ね上がる。
アカッゴはその時のログを、何度も何度も解析した。
延々とデータを読み返し、波形の変化、エネルギーの流れ、感情の揺らぎ、すべてを研究し続けていた。
だからこそ、今のカリフラのスーパーサイヤ人化は、驚きはしても、恐怖にはならない。
カリフラは確かに強い。だが、アカッゴの中には、基準ができてしまっていた。
ブロリーを基準にしてしまったのだ。
すでに、最悪の暴風を知っていた。
だからこそ、カリフラのスーパーサイヤ人化を前にしても、アカッゴの瞳は揺らがなかった。
しかし、アカッゴは、サイヤ人の異常な成長速度も知っている。
油断すれば、一瞬で形勢が逆転する。今この瞬間の優位を逃すわけにはいかなかった。
カリフラの攻撃は荒々しく、力強い、だが、まだ制御が甘い。
黄金のオーラは揺らぎ、呼吸は荒く、動きに無駄が増えていく。
アカッゴは静かに判断した。
今だ。
カリフラが怒りに任せて突進した瞬間、アカッゴはカリフラの背後に回り込んでいた。
白銀のオーラがわずかに揺らぎ、手刀が振り下ろされる。
乾いた衝撃音が響く。
カリフラの身体が前のめりに崩れ落ちる。
黄金のオーラが消え、カリフラは気絶していた。
怒りと覚醒の反動で、体力が限界に達していたのだ。
大神官が静かに宣言する。
「第七宇宙、アカッゴ選手の勝利です」
ビルスが歓声を上げ、シャンパは悔しがる。
悟飯はアカッゴの勝利を見届けながら、静かに息を吐いた。
「……問題は本大会だね……」
悟飯は、カリフラの倒れた姿を見つめながら続ける。
「きっとあの人……とんでもなく強くなって帰ってくるよ。あのタイプのサイヤ人は……父さんやベジータさんと同じだ」
悟空やベジータのようなサイヤ人は、負ければ負けるほど強くなる。
敗北を糧に、限界を破り、次に会うときは別人のような力を手にしている。
カリフラもまさにその系統だった。
初めてのスーパーサイヤ人。
制御は甘く、消耗も激しかった。
だが、その初めてを経験したサイヤ人は、次に会うとき、必ず強くなっている。
武舞台の外では、気絶したカリフラが運ばれていく。
その胸の奥では、すでに次の戦いへの火が燃え始めているのだろう。