ダークネスウォリアー孫悟飯   作:晴歩

45 / 45
漸進

 全覧試合。力の大会の前哨戦にて、とりあえずの宇宙の消滅は免れた。

トランクスは、界王神界へ戻るなり、抗議する様にビルスに言った。

 

「なんで……何万年ってスケールで生きてる神様が、たったの四十八時間後に大会を設定しちゃうんですか……!」

 

それは素直な愚痴。

しかし破壊神であるビルス自身その事実に困惑している。

 

「知らん!!僕に言うな!!とにかく、与えられた時間で最善を尽くすしかない!!」

 

老界王神も、深く頷きながら口を開いた。

 

「それ自体が試練なのかもしれんの…」

 

ビルスは腕を組み、全員を見渡した。

 

「とにかく!四十八時間で行える最善を尽くす…!」

 

ビルスは界王神へ視線を向けた。

 

「あの精神と時の部屋のような、外界と時間の流れが違う空域があったな。そこへ選手候補を集める!そしてそこでの修行後に選抜を行う!目ぼしい候補を宇宙中から集めろ!」

 

界王神は目を輝かせた。

 

「なるほど!さすがビルス様!それなら、四十八時間でもたっぷり修行ができます!これなら勝てますよ!」

 

だがビルスは即座に叱責した。

 

「ばかめ!だからお前は甘いんだ!僕たちが思いつくということは、他の宇宙も当然同等の事をやってくるに決まっている!むしろ自分たちの想像以上のことを行ってきて当然だと想定しろ!!」

 

それは、言を俟たない道理であった。

 

 

 ビルスは腕を組みながら、悟飯、トランクス、アカッゴへ視線を向けた。

 

「界王神には徹底的に精査させるが……お前たち、誰か目ぼしい戦士を知らないか?」

 

悟飯は少し考え、苦笑を浮かべた。

 

「僕たちは……ほとんど地球から出たことがないので。戦士の情報は、全然持ってないですね……」

 

しかし、トランクスは何かを思い出したように顔を上げた。

 

「そうだ……ダーブラさん!あの人なら!」

 

ビルスは眉をひそめる。

 

「ふむ……なんか聞いたことある気がするな。誰だったか……」

 

「魔界の王様ですよ!ビルス様に知られているとは、さすがダーブラさん!」

 

ビルスは短く頷いた。

 

「ふむ……よし、そいつも呼んでこい!」

 

その一言に、界王神は目を丸くした。

 

「ええ……!?ダーブラと交渉……!?」

 

そして次いで、アカッゴが静かに口を開いた。

 

「私も、何人か心当たりがいます。まず、私の師匠であるヤードラット人の二人……」

 

「それと……種族は不明ですが、クリーザという人。そして……凄まじい力を持つサイヤ人……ブロリー」

 

それを聞いた悟飯とトランクスは息を呑んだ。

 

「サイヤ人……!」

 

「オレたち以外にも、生き残りが……!?」

 

アカッゴは続ける。

 

「ブロリーは、私が見た中でも、最も純粋な力を持つ戦士です」

 

その言葉は、ビルスの興味を強く引いた。

 

「ほう……サイヤ人の生き残りか。しかも凄まじい力……面白いじゃないか…!」

 

強者を求める破壊神の本能が、ビルスの声にわずかに愉悦を含ませる。

 

 

 続いてビルスは、老界王神へ視線を向けた。

 

「お前の潜在能力を引き出す術、あれを候補者全員に行ってもらう。いいな?」

 

老界王神は、一瞬狼狽しつつも、同時に状況の重さから、当然の事だと理解した。

 

「むむ……しかたありますまい……。あれは、本来ならば特別な者にのみ施す術なのですが……いや、宇宙の存続を賭けて戦う戦士たち…皆、特別と言って差し支えありませんな…」

 

悟飯はその言葉を聞き、複雑な表情を浮かべた。

 

「ええ……あれを受けないといけないのか……」

 

しかし、すぐに表情を引き締める。

 

「でも……確かに、それはやるべきだ。正直すごい嫌だけど…それくらいは我慢しないとね……」

 

トランクスは恐る恐る尋ねる。

 

「あの……俺はもう、術を受けなくてもいいんですよね……?」

 

老界王神は頷いた。

 

「うむ。こんな短期間で、何度も施しても意味無いからの」

 

トランクスは深いため息をつき心の底から安堵し、そして小さくガッツポーズを取った。

 

その様子を見てアカッゴは、それ程までにつらい試練なのかと恐怖し覚悟を決める。

 

 

 修行空域へ入る準備を進める中、悟飯はビルスに許可を求めた。

 

「少しだけ……家に戻らせて貰えないでしょうか。家族の顔を見ておきたいんです」

 

ビルスは腕を組み、短く頷いた。

 

「行ってこい。主力の精神状態は重要だからな」

 

悟飯は深く頭を下げ、キビトの協力で、瞬間移動で地球へ戻った。

 

 

 夜の山は静かだった。

 

虫の声が響き、木々が風に揺れる音が微かに聞こえる。

悟飯の家、小さな山小屋は、宇宙の危機など関係なく穏やかだった。

 

悟飯が玄関を開けると、温かな灯りが漏れ、ほのかに漂う料理の香りが彼を迎えた。

 

「おかえりなさい。悟飯くん」

 

ビーデルがキッチンから顔を出し微笑む。

悟飯も靴を脱ぎながら微笑んだ。

 

「ただいま」

 

パンは既に眠っている。ベッドで穏やかな寝顔を見せていた。

悟飯はそっと近づき、娘の髪を撫でた。

 

 

 ビーデルは悟飯のために、温かい料理を用意していた。

山小屋らしい素朴な食卓。野菜のスープ、焼きたてのパン、そして悟飯の好物の煮込み料理。

 

悟飯はそれらを口にし、深く息を吐いた。

 

「……美味しい。やっぱり、ビーデルさんの料理は最高だよ」

 

ビーデルは微笑みながら、悟飯の向かいに座った。

 

「ありがと!おかわりあるからね!」

 

 

 部屋の片隅では、テレビが光を放っていた。

 

復興後、地球の文明はゆっくりと立ち直り、テレビ放送も少しずつ再開されていた。とはいえ、壊滅前ほど精密部品を量産できるわけではない。

テレビなどはまだ高級品の部類だった。

 

悟飯の家にあるテレビは、そんな貴重品のひとつだった。

新婚の頃、ブルマが祝いの一環として手作りした特製テレビ。世界に一台しかないハンドメイド品。

 

ブルマは「壊れたらいつでも持ってきて。私が直してあげるから」と笑って渡してくれた日のことを思い出す。

 

画面では、復興後の生活を支えるための「片付け特集」が流れていた。

断捨離をテーマにした番組で、軽快なナレーションが響く。

 

悟飯はその言葉を聞いた瞬間、背筋がひやりと冷えた。

今まさに、自分たちの宇宙が、不要物として処分されようとしている。

 

悟飯は思わず呟いた。

 

「僕は……なんでも使い捨てにせず、大切に手入れして、長く使っていきたいな……」

 

ビーデルはその言葉に微笑み、静かに頷いた。

 

「そうね。うちではそうしていきましょ」

 

そしてビーデルは悟飯の気配を感じ、妻としてすぐに察した。

 

「……何かまた、私の常識じゃ計り知れないことが起こってるのね……?」

 

悟飯は一瞬沈黙し、そして頷いた。

隠すつもりはない。悟飯はビーデルを信頼していた。

 

悟飯は深く息を吸い、静かに語り始めた。

 

「宇宙が……消滅の危機にあるんだ。四十八時間後に、運命を決める大会が開かれる。負けた宇宙は……消される」

 

ビーデルは息を呑んだ。

常識外の事が起こっているのだろうと察していたとはいえ、その内容は、流石に想定外が過ぎる。

 

「宇宙が……消される……!???」

 

悟飯は頷き続ける。

 

「だから、僕たちは大会までの間、時間の流れが違う空域で修行をすることになった。短い時間で、限界まで力を引き上げるために」

 

ビーデルはしばらく言葉を失っていた。

しかし、悟飯の目を見て、ゆっくりと呼吸を整える。

悟飯も、ゆっくりと食事を続けた。

 

 

 悟飯はおかわりを食べ終わり、ふっと肩の力を抜いて言った。

 

「急を要しているのに……無理を言って一時帰宅させてもらったんだ」

 

悟飯は照れくさそうに笑った。

 

「もうすぐしたらキビトさんが迎えに来る。ご飯、美味しかった……かなり元気出たよ。帰ってきて良かった」

 

ビーデルは悟飯の言葉を聞き、安心したように微笑んだ。

 

 

 そのあと、悟飯は食卓を離れ、そっとパンの寝室へ向かった。

小さな布団に包まれた娘は、静かな寝息を立てている。

 

悟飯は膝をつき、パンの頬をそっと撫でた。

その体温を感じながら、心を整理するようにそっと目を閉じる。

 

そして、覚悟を決めた悟飯が立ち上がると、ビーデルは言った。

 

「行くのね…」

 

悟飯は頷いた。

 

ビーデルは悟飯の手を取る。

 

「気負わないでね……悟飯くんは、一人で抱え込みすぎる癖があるから……」

 

ビーデルは悟飯の手をぎゅっと握りしめ、その瞳に揺るぎない覚悟を宿したまま続けた。

 

「例え宇宙が消えてしまったとしても、一緒に消えられるなら、何も怖くないわ。私が怖いのは、悟飯くんが無理をして無茶をすることよ…」

 

悟飯は息を呑んだ。

確かに、気負いすぎるのは図星かもしれない。

 

「……ありがとう、ビーデルさん」

 

二人は再会を誓うように抱擁を交わした。

 

そして、外の空気が揺らぎ、キビトが姿を現す。

悟飯はもう一度ビーデルを見つめ頷く。

 

悟飯はキビトと共に、瞬間移動で修行空域へと発って行った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

転生ナメック星人、地球へ(作者:一般通過ナメック星人)(原作:ドラゴンボール)

▼これはスラッグがフリーザと戦闘になってしまった世界線。▼もしもピッコロ大魔王と同じ様に、スラッグがタマゴを吐き出していたら。▼尚、タマゴの中身は転生者とする。▼


総合評価:745/評価:7.48/連載:6話/更新日時:2026年04月16日(木) 20:22 小説情報

Z戦士の虎杖悠仁(作者:汚ねえ花火)(原作:ドラゴンボール)

 虎杖って部品思考になっちゃったり色々悲惨な目にあいすぎだよなぁ。▼ それを回避するためには全てを粉砕できるパワーがあれば良いんじゃ!?▼ そのパワーを手に入れるためにはインフレバトルの頂点世界に虎杖を投入すれば良い!!!(迷案)▼ というわけで虎杖に宿儺を添えてドラゴンボール世界にinしてしまおう!!!▼ というお話。


総合評価:938/評価:8.55/連載:14話/更新日時:2026年06月13日(土) 21:02 小説情報

TS転生幼女は伝説の超サイヤ人を救いたい。(作者:こねこねこ)(原作:ドラゴンボール)

かつて不死身だった幼女と、それに人生を歪められてしまったブロリーさんのお話。


総合評価:3887/評価:8.2/連載:81話/更新日時:2026年07月24日(金) 18:00 小説情報

TS転生憑依ロリ人造人間16号(作者:政田正彦)(原作:ドラゴンボール)

お、俺はただ……じ、人造人間16号を美少女にしたら……▼お、おもしれえんじゃねえかと思ってよ……へへ……▼だ、だから……美少女にした上で記憶ぶっこ抜いた男を憑依させて……TS転生憑依ロリ人造人間16号を造ったんだ……▼クククッ……も、もう止められんぞ……▼ヤツの曇らせと勘違いの嵐は……!!▼なんか思ったより長引きそうだから短編から連載に変えたぞ……クククッ……


総合評価:5100/評価:8.63/連載:12話/更新日時:2026年04月03日(金) 14:20 小説情報

大魔王を倒してから10年後…強く成長した大魔道士が、再び!(作者:ポップ)(原作:ダイの大冒険)

大魔王バーンを倒してから10年後のポップが主人公(25歳)のお話です。勇者ダイの帰還、仲間達のそれぞれの道、そして大魔王なき後に変わり始めた魔界の勢力図。バーンという絶対的な存在を失った魔界では、各勢力の争いが激化し、普通に暮らしていた住民達にも被害が広がっていた。▼そんな中、魔界のエルフ達から地上へ助けを求める声が届く。その願いに応えたのは、かつての臆病な…


総合評価:2443/評価:8.74/連載:9話/更新日時:2026年07月22日(水) 14:58 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>