界王神とキビトは、地球のドラゴンボールを集めるために、ブルマの元へ訪れていた。そしてブルマは、ドラゴンレーダーを起動させ驚きの声をあげる。
「え!?既に四つ!?同じ場所にボールが集まってる!…何者かがドラゴンボールを集めてるみたいね……」
界王神は顔を明るくし言った。
「なんと!しかしそれはある意味助かります!今は、一刻が惜しい!」
だがブルマは警戒する。
「でも、今の時代、ドラゴンボールの復活に気づいて、しかも集める能力のある奴なんて、只者じゃないわ。界王神様ならよっぽどの事がなければ平気でしょうけど、一応気をつけてくださいね」
界王神は頷く。
「はい、ありがとうございます、油断せず、接触して見ます」
そして界王神はレーダーをブルマから受け取り、キビトと共にドラゴンボールを集めに飛び去った。
西の都から遠く離れた荒野の一角。
そこには、一台の小型ワゴンが道路を進んでいた。
ピラフ達は、無理をせず、休憩を挟みながら地道にドラゴンボール集めを進めていた。
運転席にはマイ。助手席にはシュウ。後部座席ではピラフが広々とくつろいでいる。助手席のシュウが声を上げる。
「あれ?」
ピラフが尋ねる。
「どうした?」
シュウは画面を何度も確認する。
そしてシュウは青い顔で答えた。
「残りのドラゴンボールが集まっています…」
「何!?」
ピラフが叫ぶ。
ワゴンの中の空気が一変した。
シュウは続ける。
「オレ達以外にも、ドラゴンボールを集めている者が居るようです…」
レーダーの画面には、三つの反応が重なって表示されていた。
マイが険しい表情になる。
「まずいですね…きっと、只者じゃないですよ…」
シュウは不安そうに言った。
「まさか、またレッドリボン軍みたいな組織とか……」
三人の表情が不安で曇る。
その時。
ワゴンの前方に突如人影が現れる。
マイは急ブレーキを踏んだ。
「うわっ!」
ピラフとシュウは前のめりに飛ばされる。
ピラフはシートにしがみつき怒鳴った。
「な、何事だ!」
そして道路の真ん中に立つ二人を見て、窓を開け、身を乗り出して叫んだ。
「おい!お前たち!急に車の前に飛び出してきたら危ないじゃないか!」
一方、ワゴンの中では、シュウとマイが戦々恐々としていた。
シュウが震える声で呟く。
「…マイ…この二人……今、どうやって現れたんだ……?」
マイも青ざめていた。彼女ははっきり見ていた。
道路には誰もいなかった。瞬きをした次の瞬間には、二人がそこに立っていた。
ピラフ達の前に、瞬間移動で現れた二人、界王神とキビト。
界王神は、突然現れたことで相手をひどく驚かせてしまったのを察し、申し訳なさそうに一礼した。
「驚かせてしまって申し訳ありません……事態は急を要していまして……」
その態度は穏やかで、下界の者を見下すような様子はまったくない。
「私は界王神という者です。こちらは付き人のキビト」
そして界王神は、回りくどい説明をせず本題を口にした。
「単刀直入に申し上げると、宇宙の消滅を回避するために、私たちにドラゴンボールを譲っていただきたいのです」
その言葉を聞いて、車の窓から身を乗り出し、ピラフが激昂した。
「はぁ!?何をわけの分からんことを言っておる!お前たちみたいな怪しい奴らに譲るわけないだろ!」
界王神は困ったような顔になる。一方でシュウが首を傾げる。
「カイオウシン……?なんかそんな名前聞いた事あるような……」
マイもはっとした。
「あ……、確か、前にブルマさんが話してたような……」
その言葉を聞いて、界王神の表情がぱっと明るくなった。
「おお!あなたがたはブルマさんのお知り合いですか!?」
界王神は嬉しそうに続けた。
「私共も今、ブルマさんからこのドラゴンレーダーをお借りしてドラゴンボールを集めていたのです!」
そう言って手に持っていたドラゴンレーダーを見せる。
シュウとマイ、二人の警戒心が少し緩む。
しかし、ピラフだけはまだ疑いの目を向けていた。
「まだ嘘か本当かわからん!信用できるとは限らんぞ!」
界王神は、レーダーの一か所に集まった七つの反応を見て言った。
「とにかく、ここにドラゴンボールが七つ揃いました!ひとまず、ブルマさんの元へ行きましょう!瞬間移動を行います!」
ピラフ達は首をかしげる。
「瞬間移動?」
「カイカイ!」
キビトの瞬間移動の掛け声。
そして、いつの間にか荒野は消えている。
マイは辺りを見回す。
「え……?どこ?」
シュウも呆然としている。
「場所が変わった…!?ここは…!?」
ピラフは見覚えのある景色に気付いた。
「カプセルコーポレーションか……!」
そして、その庭に居たブルマと目が合った。
ブルマは思わず声を上げる。
「あ!あんたたち!」
そしてすぐに察したように言った。
「……そっか。ドラゴンボールを集めていたのはあんたたちだったのね!」
ピラフは状況が呑み込めず怒鳴る。
「おい!ブルマ!これはどういう事なのだ!」
だがブルマは怪訝そうに問い返す。
「……まさか……今さら世界征服を企んでるの?」
するとピラフは再び怒鳴り返す。
「バカモノ!そんなつもりはない!」
そして続ける。
「ワシらは若返ってだな、最強のピラフマシンを作るという新たな夢が…」
そこまで言い、ふとブルマに尋ねる。
「どうだブルマ、お前も一緒に若返らんか?」
ブルマは思わず目をぱちくりさせた。
「え!?」
ピラフは言い放った。
「わしは、お前をスーパーアドバイザーとして採用する予定だ!」
さらに言葉を重ねる。
「ばあさんに先に死なれては困る!」
ブルマのこめかみに青筋が浮かぶ。
「何が採用するつもりだ、よ!偉そうに!それに誰がばあさんよ!失礼ね!」
しかしブルマはふと黙り込む。
「若返りか……七つ揃ったドラゴンボールの前に……なかなか抗いがたい提案ね……」
界王神はぎょっとした。
「え!?」
ブルマは慌てて手を振った。
「あ!もちろん!まずは界王神様の願いが優先ですよ!宇宙が滅んだら、若返ってもどうしようもないですからね!」
その言葉を聞いて、ピラフ達はまた首を傾げた。
「さっきからその宇宙が滅ぶとかどうとか…何を言っておるのだ…」
界王神は手短に説明した。
「ふむ……」
ピラフは短く唸る。話は荒唐無稽だった。
普通なら笑い飛ばしている。
だが、彼らも多くの絶望を経験してきた。
その絶望を、繰り返させたくないという想いは強かった。
やがてピラフはため息をつき決断した。
「仕方あるまい。今回は願いを譲ってやる」
界王神は丁寧に答えた。
「ありがとうございます!」
ピラフはダメ押しでブルマに確認する。
「おい!ブルマ!こいつらホントに詐欺師とかじゃないんだな!」
そしてピラフ達は、自分たちの夢をいったん脇に置き、宇宙を救うための願いを見届けることにした。
界王神は七つのドラゴンボールの前へ進み出て、高らかに告げた。
「出でよ神龍!そして願いを叶えたまえ!」
地面に並べられた七つの球が、呼応するように輝き始める。
そして、七つのドラゴンボールが眩い光を放つ。
昼間だった空が暗転する。
ドラゴンボールから激しい稲妻が立ち上る。
そして現れる巨大な龍。
顕現した神龍は重厚な声を響かせた。
「さぁ、願いを言え。どんな願いでも、可能な限り二つ叶えてやろう」
その言葉に驚き、ピラフ、シュウ、マイが同時に叫ぶ。
「え!?」
驚いたのはピラフ一味だけではなかった。ブルマも声を上げる。
「ちょっと待って!今なんて言った!?」
シュウは確認するように言った。
「二つって言いましたよね!?」
マイも慌てる。
「聞き間違いじゃないよね!?」
ピラフは神龍に直接訪ねた。
「おい神龍!今、二つと言ったな!?」
神龍は当然のように答える。
「そうだ」
ピラフ達は驚き顔を見合わせた。
これは、新たな地球の神、デンデがドラゴンボールを復活させた際に与えた力だった。
そして、驚いたのは人間たちだけではなかった。
巨大な龍の顔が固まる。神龍が声を裏返えらせ言った。
「か……界王神様……!?こ、これは、気づくのが遅くなり、大変失礼いたしました……」
その様子を見たピラフ達は再び騒然となる。
「な!?」
ピラフは界王神を見て引きつった顔で言った。
「こいつ……マジで凄い奴なのか……!?」
界王神は巨大な神龍を見上げながら、慎重に言葉を選んだ。
「では、お願いがあります」
神龍は丁寧に答える。
「お申し付けください、界王神様」
その様子を見ていたピラフ達は、神龍が敬語を使っているという事実に驚く。そして界王神は言った。
「力の大会に向けて修行を行っている異空間に、毎日の充分な食料を調達してもらう事は可能でしょうか」
神龍の目が淡く光る。願いの内容を吟味しているらしい。
しばらくして神龍は答えた。
「はい、可能です」
界王神の表情が安堵で明るくなった。
「では!その願いを叶えてください!」
神龍は厳かに頷いた。
「承知しました」
巨大な身体が発光する。
「その願い、叶えられましょう!」
神龍の全身から黄金の光が溢れ出す。
そして、遥か彼方。
界王神が語っていた、力の大会に向けた修行が行われている異空間へと、神龍の力が届く。必要な食料が、今後毎日供給されるよう因果が構築されていく。
やがて光が収まった。
界王神は丁寧に礼を言った。
「ありがとうございます、神龍!」
神龍は慌てたように答える。
「い、いえ!こちらこそ、お役に立てて光栄でございます!」
それを聞いたピラフは小声で呟く。
「おい、ヤバすぎないかアイツ…神龍が下手に出てるぞ…」
シュウもマイも頷く。
「なんか、宇宙が滅ぶってのも信憑性出てきちゃいましたね……」
そして、ピラフが恐る恐る尋ねる。
「お、おい!次は、わしらの願いを叶えてもいいのか!?」
ブルマも確認するように界王神を見た。
界王神は頷いた。
「はい。我々の願いは叶えられました。そして、一刻を争う今、あなたたちが既に四つのドラゴンボールを集めてくださっていた功績は大きい」
ピラフ達は顔を明るくし、そしてピラフはブルマに尋ねる。
「お前はどうするのだ?」
ブルマは一瞬だけ悩む。
「うーん……」
だが、その時間は長くなかった。
「わかった!私も若返らせて!」
ピラフが嬉しそうに叫ぶ。
「おお!決断したか!」
ブルマは肩をすくめた。
「だってね…全然老けない宇宙人とか…何万年も生きる神様とか…そんな連中と付き合ってたら、倫理観もバグるわよ……」
界王神は苦笑する。
その時、ブルマの携帯端末が鳴った。
画面を見たブルマは驚いた。
「え?ヤジロベーから?珍しい~!」
ブルマは通話ボタンを押した。
すると、受話器の向こうから慌てた声が響く。
『おい!なんだこの空は!?まさか誰かが神龍を呼び出しやがったのか!?』
そしてブルマは電話に向かって苦笑した。
「ええ、まあ、今まさに呼び出してる最中よ」
そしてブルマは軽く尋ねた。
「ねえ、私たち、神龍に若返らせてもらおうと思ってるんだけど、あんたも若返る?」
『は!?いや…そんな事、軽いノリで言われても…』
ブルマはあっさり返す。
「時間がないのよ、どっちかすぐ決めてね」
空では神龍が待機している。
『おいおい……』
ヤジロベーは困惑した。そして少し考えぽつりと呟く。
『最近、あんまり腹いっぱい食えなくなってきてるんだよな……』
そして決断した。
『よし!オレも若返らせてくれ!』
ブルマは呆れる。
「しょーもない理由ね……」
『うるせぇ!』
そしていざ、願いを叶えてもらおうとしてピラフが慌てて言う。
「若返るのは良いとして、一体何歳まで若返るのだ!?」
マイが言った。
「本気で最強を目指すなら、当然、期間は長く持てたほうが有利ですよね…」
シュウが続ける。
「でも…幼すぎると何かと不便になりますよね?」
それももっともだった。
「メカ作りには、ある程度体力も必要ですし」
そしてピラフは考え答えを出した。
「では…十二歳前後が妥当か…」
それを聞きブルマが声を上げた。
「ええっ!?そこまで若返る気なの!?流石に子供すぎない!?」
だがピラフは達観して言った。
「ブルマよ、お前もその年になって、つくづく実感しているだろう…」
そして空を見上げる。
「年月が過ぎるのなど一瞬だぞ」
その事実に、ブルマは反論できなかった。
若い頃は、永遠のように感じた一年が、今では瞬きのように過ぎ去って行く。
「……確かに」
シュウも納得する。
「十二歳なら、工具も扱えますしね!」
マイも賛成した。
ピラフは神龍を見上げた。今さらになって喉が渇き身体が震える。
そしてピラフは意を決した。
「神龍よ!ワシと、ここにいるシュウ、マイ、ブルマ!」
そしてブルマをちらりと見る。
「それと……ヤジロベーか?」
ブルマは頷く。
ピラフは指を折りながら人数を確認した。
「この……この五人を!」
そして大きな声で叫んだ。
「十二歳まで若返らせてくれ!!」
言ってしまった。その瞬間。ピラフの心臓が緊張で激しく鳴る。
シュウもマイもブルマも息を呑む。
そして神龍が応える。
「承知した」
巨大な双眸が輝いた。
「その願い、叶えてやろう……!」
神龍の全身から金色の光が溢れ出した。
その光が五人を包み込む。
ピラフ。シュウ。マイ。ブルマ。
遠く離れた場所にいるヤジロベー。
そして光が消える。
そこにいたのは老人たちではく、十二歳前後の子供たち。
神龍が空から声を響かせた。
「願いは叶えられた!ではさらばだ!」
威厳に満ちた声。だが直後。
「では、界王神様!失礼いたします!」
そして神龍は轟音と共に光となり、七つのドラゴンボールは空へ舞い上がり、それぞれ別方向へ飛び去って行った。
空は元の青空へ戻った。静寂が訪れる。
若返ったピラフは拳を握りしめた。
「第二の人生の始まりだ!!」
シュウもマイも思わず笑みを浮かべた。
長く生きてきた者たちに、思いもよらぬ未来が再び与えられた瞬間だった。
若返ったばかりのブルマたちは、自分たちの小さくなった手や身体を見回していた。その時、まだ通話中だったヤジロベーの声が携帯から響く。
『ホントに若返ったな……けど、ガキすぎじゃねえか?何歳まで若返らせたんだよ?』
ブルマは答える。
「十二歳よ」
『十二歳かよ……』
だが、すぐに声音が明るくなった。
『けどまあ……成長期だからたらふく食えるな。悪くないかもな……』
そして界王神が告げた。
「では、我々は戻ります。ありがとうございました!」
ブルマは、ふと思いついたように言った。
「あ、そうだ。その修行空間にヤジロベーも連れて行ったらどうかしら?」
界王神はきょとんとした。
「え?その方は一体…?」
ブルマは続ける。
「あいつ、ああ見えて強いらしいから」
『おい』
電話の向こうから嫌そうな声が聞こえる。
ブルマは無視した。
「しかも若返ったから、修行すれば伸びしろもあるだろうし」
界王神は少し困った顔になる。
「はぁ……しかし……並みの人間が参加できるというレベルではないのですが……」
するとブルマは軽い調子で言った。
「もし役に立たなかったら雑用でも何でもさせればいいわ」
『おい!』
ヤジロベーの声が一段大きくなる。
『ブルマ!お前!何を勝手なこと言ってんだ!オレはそんな面倒くさそうなとこ行かねぇぞ!』
しかしブルマは完全に聞き流していた。
「あの孫くんが、あいつのこと買ってたみたいだし、うちのトランクスも懐いてるしね」
界王神の耳がぴくりと動く。
「ほう!?トランクスさんが!?」
界王神の中でヤジロベーの評価が急上昇する。そして尋ねる。
「その孫くんというのは誰なのですか?」
ブルマは答えた。
「ああ、悟飯くんのお父さんよ」
界王神の目がさらに大きく開いた。
「なんと!そのような方に一目置かれた人物!それほどの人物が、まだ地球にいらっしゃったのですか!」
界王神は力強く頷いた。
「ではぜひ!そのヤジロベーさんという方もお連れしましょう!」
『おい!!』
電話越しの声がさらに大きくなった。
『オレは行かねぇっつってんだろ!!』
ブルマは携帯に向かって言った。
「宇宙が滅んだら、せっかく若返っても、美味しい物も二度と食べられなくなるのよ!」
しかし事情を知らないヤジロベーには意味不明だった。
『はぁ!?いったい何の話だ!わけわからねぇこと言われても、オレは面倒くせぇ事はやらねぇ!』
すると界王神が横から口を挟む。
「時間がありません。ちなみにこれから我々が向かう場所には、食料が豊富にあります」
ヤジロベーが少し黙る。界王神はさらに続けた。
「一流シェフもスカウトする予定です!」
『む……』
電話の向こうでヤジロベーの声が止まった。
『何だと……』
ヤジロベーは考えた。
(修行がどうとか言ってな……けど、そんなもん適当にサボりゃいいし……美味いもんたらふく食えるなら、行ってみてもいいかもな……今の地球じゃ高級料理なんて滅多に食えねぇし……タダならなおさらだ……)
数秒後。
『……しょうがねぇな。そこまで言うなら行ってやるよ』
こうして話はまとまった。だが、ヤジロベーは一つ重要な事実を知らなかった。彼が向かう修行空域には、破壊神ビルスが滞在していることを。
もし知っていたら、全力で拒否しただろう。
だが今の彼は、高級料理が食べ放題かもしれないという期待で頭がいっぱいだった。
「では参りましょう」
界王神がキビトへ視線を向ける。
そして、ヤジロベーと合流し、彼らは異空間の修行場へと立っていった。
待ち受けるのは、極上の食事だけではなく地獄の修行。
ヤジロベーがそれを知るのは、まだ少し先のことであった。