―破壊殺・羅針―
鬼舞辻無惨の命を受けた
―破壊殺・空式―
猗窩座の拳撃が衝撃波を発生させ黒死牟を襲う。凄まじい速度で放たれた衝撃波は人間はもちろん鬼であってもまともに反応できない速度であったが、透き通る世界によって攻撃を予測していた黒死牟は危なげなく回避する。そして瞬時に距離を詰めた黒死牟は自身の刀である
―月の呼吸、壱ノ型 闇月・宵の宮―
「ッ、ァ」
黒死牟の使った技は単純な居合切りであったが、鬼の身体能力と長年の鍛錬によって磨き上げられた技は神速の動きであり猗窩座でも反応できず両腕を切り捨てられてしまったのであった。
「ああ、クソ!またやられてしまった!俺は、俺はなんでこうも弱いのだ!なんて情けないのだ!」
模擬戦が終わり仰向けに倒れた猗窩座は両腕を瞬時に再生させつつも自分の弱さに憤りを覚えていた。鬼である彼は両腕を斬り落とされても瞬時に再生でき即座に戦闘復帰できるのだが、必殺の一撃をあっさりと躱され両腕を落とされた事実は猗窩座のプライドをいたく傷つけていたのだ。
「こんな有様では、これでは
「落ち着け……そう悲観しなくても……よい……お前は着実に……強くなっている……」
怒りの余り自分を殴り始めた猗窩座を止めつつ黒死牟は苦笑する。猗窩座と同じく打倒上弦の壱を目指す黒死牟は猗窩座の気持ちが痛いほど理解できたが、焦る必要はないと冷静に諭していた。
「我等は……短命な人間と違い……鬼となり永遠の命を得ている……たとえ今弱くとも……更なる……修練を積み重ねればよい……さすればいずれ……
「ぬぅ、そうか、そうだな!女々しく泣き喚く暇があるなら鍛錬する方がよっぽどいい!」
黒死牟の言葉を聞いた猗窩座は気持ちを切り替え更なる精進を行う事を決意する。やる気を取り戻した猗窩座は気合を入れ直すと共にふと気になっていた事を尋ねてみた。
「先程の斬撃は素晴らしい一撃だった。俺から見ても惚れ惚れする速さだったが、
「いや……確かに速さは重要だが……当たらなければ……無意味……
「なるほど、速さだけではなく観察眼や回避も鍛えなければならんと……つまり全てを鍛えて強くならなければ戦いの土俵に立つ事もできないのだな!」
「うむ……情けない話だが……
「応ッ!」
超えるべき壁が非常に高い事を再確認しつつも、黒死牟と猗窩座はいずれ超えてみせると諦める事なく引き続き修練に励むのであった。
「……って感じであの二人は頑張ってるんだろうね。いやー感動的だなぁ!たとえ無意味な修行だとしても二人が仲良しで俺も嬉しいよ!」
「ええ、僕も御二人の仲がいいのは素晴らしい事だと思います。でも無意味な修行というのは言い過ぎなのでは?」
「えっ、無意味なのは事実だろう?」
黒死牟達が修行している頃、無限城を出た
「そりゃ確かに二人も強くなってるとは思うぜ?特に黒死牟殿は
「今はそうですが、このまま着実に強くなれば僕にも勝てるようになるかもしれませんよ?」
「いや無理じゃないかなぁ?だって
「まぁ
「童磨さん、それは御二人に対する侮辱ですよ。彼らが真剣に挑むのなら僕も全力で答えるのが礼儀だと思います」
「そっかぁ、じゃああの二人は今後も瞬殺され続けるんだね!かわいそうに…」
「化物が慢心しないのなら弱者が勝てるわけないよねぇ……ところで前から気になってたんだけどさ、以前俺と模擬戦をした時に俺の血鬼術をあっさり斬り捨てていたけど、どういう理屈で斬ったの?」
「えっ、冷気毎まとめて斬り捨てればいいだけですよね?」
「えぇ?冷気って刀で斬れるものだっけ?……………うん、やっぱり
「……また、柱が殺されたのか」
鬼殺隊の名門である煉獄家の
「殺されたのは柱だけ、他の隊士達は生存するも全員が鬼殺隊を辞めると表明か。相変わらずお優しい事だ上弦の壱は」
手紙を呼んだ槇寿郎は鬼殺隊の最高戦力である柱を殺したのが上弦の壱であると察して溜息をつく。
「わかりきっていた事だ、あの化物に人間が対抗できるわけがないのは。誰も、
"こんばんは、貴方が今代の炎柱ですね。フフッ、炎柱の方は代々特徴的な容姿をしていますからすぐわかりました。僕は
"はい、腕を斬り落としました。まだやるつもりですか?……ああ、諦めるのですね。それはよかった、賢明な判断です。命は投げ捨てる物ではないですからね。僕は貴方の決断を笑いません"
"手当はしておきました。あとはゆっくり療養してください。限りある短い命を大事にするようにお願いします。ああそれと、これは忠告ですがもしお子さんがおられるのなら鬼狩りのような危険な仕事はさせず平穏な人生を送らせてあげてください。人の命は儚い物なのですから無駄に散らすような事はさせないように"
「ッ」
鏡で隻腕となっている自分を見た槇寿郎はかつての光景を思い返す。終始敵と認識されず一蹴され幼児を諭すように言い聞かされた事実は槇寿郎の心を完全にへし折っていた。そしてそれは槇寿郎だけでなく煉獄家の代々が体験していた出来事であった。
「
頑固な息子の顔を思い返した槇寿郎は涙を流しつつ心配していた。
「何故わからないのだ、今の鬼殺隊が存続できているのは化物の気まぐれでしかないのだぞ!お館様もお館様だ、勝てない戦いをいつまで続けるつもりだ!?」
槇寿郎は鬼殺隊が鬼舞辻無惨を殺せるとは欠片も考えていなかった。上弦の壱がいる限り鬼殺隊の勝利はなく、そして永遠の命を持つ鬼に対して人間はあまりにも不利だと理解していたからだ。
「……まあいい、どうせ言っても聞き入れないのだ。馬鹿息子も、お館様も、無駄な足搔きをすればいい。運が良ければ化物の慈悲で生き残れるだろうさ、俺のようにな」
ひとしきり愚痴を吐き続けた槇寿郎は最終的に虚無の表情を浮かべ現実逃避の為に酒を飲む事にしたのであった。
「そう言えば鬼殺隊の方達から炎柱が新たに就任したと聞きました。やはり炎柱は煉獄家の方なのでしょうか?……残念です、忠告を聞かず命を粗末にするなんて」
「ああ、炎柱ってなんかスゴく特徴的な人達なんだって?馬鹿だよね、先祖代々何度もやられているのに懲りないだなんて本当に頭が悪いぜ」
「できれば説得に応じてほしいのですが、難しいでしょうね。今まで説得が通じた炎柱の方は一人だけですし」
「相変わらずお優しいね
「ご心配なく、僕の血鬼術があれば人間の味覚を再現して消化できるので。美味しいですよ」
「ふーん、人間の食事ができる血鬼術とか変わってるなぁ。やはり
「そうですね、心の奥底ではそういう気持ちがあるのかもしれませんね」
<人物紹介>
●黒死牟
→上弦の弐。第二の縁壱であるオリ主こと
明確な目標がある今の兄上なら生き恥形態も受け入れるだろう。鬼殺隊は泣いていい。
●猗窩座
→上弦の肆で役立たずの狛犬。打倒上弦の壱を目指し黒死牟と一緒に修行に励んでいる。原作より強くなっているがやはり第二の縁壱にはまったく歯が立たない。それでも諦めずひたむきに強くなるのを目指す姿勢は無惨様や黒死牟から高く評価されている。
今の強化された猗窩座が鬼殺隊と戦えば一方的な虐殺劇となるだろう。鬼殺隊は泣いていい。
●煉獄槇寿郎
→元炎柱な酒柱。上弦の壱である
家に伝わる古文書にて日の呼吸と始まりの剣士のチートっぷりを知り激しく動揺している時に第二の縁壱と遭遇してしまう。理不尽な強さを見て心が完全にへし折れてしまい
あの化物がいる限り鬼殺隊の勝利はないと確信しており、息子が鬼殺隊に入らないよう息子をぶん殴ったり刀を突き付けたり、遂にはお館様に涙の直談判までして必死に行動するが最終的に諦めた。運が良ければ生き残れるだろうと投げやりに考えている。
●煉獄家の人達
→スゴく特徴的な容姿をしている人達。
先祖代々鬼殺隊に入って鬼と戦い続けた名家だが、この世界では上弦の壱(偶に上弦の弐)によって炎柱が何人も殺されている。炎柱で今まで生き残ったのは槇寿郎だけであり、他の炎柱は最後まで戦って死んだ模様。
●煉獄杏寿郎
→現炎柱。父親の必死の説得も聞かず鬼殺隊に入り炎柱となった。父親から上弦の壱の恐ろしさについて聞いているがそれでも世のため人のために戦う事を決意した心のつえぇ奴である。でも心の強さだけではどうしようもないのだ。
●
→第二の縁壱だが縁壱ほど聖人ではない普通の感性の持ち主。一人ぼっちは寂しいし嫌われるのは傷つくし他人と他愛のない会話を楽しんだりする素朴な性格である。でも戦闘能力はまったくかわいくない模様。
無惨の命で鬼殺隊の柱を何人も殺している。一応殺す前に引退して平穏に暮らすよう説得しているが最後まで戦う心のつえぇ奴ばかりで一度しか成功していない。元酒柱については「なんか心が折れてそう!意地を張らないで引退して平穏に暮らそーよ!」と説得し上手くいき喜んでいた。
鬼殺隊については脅威とは認識しておらず「やめておけ、命は投げ捨てる物ではない」と殺す前に説得を試みるようにしている。説得に応じなかったら?本人の意思を尊重して殺します。
●童磨
→上弦の参。
●
→人間の味覚を再現する血鬼術で戦闘能力は皆無。人間の食事を楽しめるので
●鬼殺隊
→原作よりも強化された黒死牟と猗窩座がいる上に第二の縁壱までいるのでズタボロである。鬼殺隊は泣いていい。縁壱が復活すれば何とかなるかもしれないが現実は非情である。
お館様は鬼の中に第二の縁壱がいる事を察しており頭を抱えているようだ。ちなみに珠世様も頭を抱えているようだ。無惨様からは何人も殺されてるのに諦めないとか完全に異常者じゃないかと思われている。
今回は短めに終わると思います。今後は少しずつ投稿していく予定なのでよろしくお願いします。