鬼になった化物の子   作:すも

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鬼滅の刃の二次は初投稿です。


無限城裁判

"息の仕方があるんだよ、どれだけ動いても疲れない息の仕方"

 

……………

 

"炭治郎ほら、お父さんの神楽よ。うちは火の仕事をするから怪我や災いが起きないよう年の初めは"ヒノカミ様"に舞を捧げてお祈りするのよ"

 

……………

 

"炭治郎、この神楽と耳飾りだけは必ず途切れさせず継承していってくれ……"約束"なんだ"

 

……うん、わかった!

 

 

 

 

 

"うん、これで全部みたいだ、じゃあ甘い夢の時間は終わりだね。次は現実と向き合う時だよ……フフッ、あぁ、楽しみだなぁ……絶望に歪んだ顔をすぐ傍でじっくりと見れるだなんて!"

 

 

 

 

 

「ッ、ァ、ここは……?俺は、何を?なんだここ?」

 

在りし日の幸せな記憶を夢として思い出していた竈門炭治郎は夢から醒めて瞼を開いていた。襖や畳、階段等といった構造物が重力を無視して出鱈目に配置されている異様な空間に困惑しつつ、まだ夢の中なのかと寝ぼけまなこの炭治郎は起き上がるため身体を動かそうとするが……

 

「ッ、グゥッ!?」

 

突如として手足に走る激しい痛みで炭治郎の意識は急激に覚醒する。手足の痛みによってこの異空間は夢ではなく現実だという事実を理解した炭治郎は動揺しつつも何故このような状況に陥っているのか必死に思い返していた。

 

(そうだ、浅草の街を出歩いていたら急に意識が途切れたんだ!人攫い?いや、このおかしな空間は……まさか!?)

 

「お目覚めかな?怪我しているんだから無理しない方がいい」

 

最悪の事態を考え蒼白になった炭治郎に対して愉悦の笑みを浮かべた青年が話しかけてきた。

 

「なにせ今の君は手足をへし折られているんだから、ただの人間である君じゃもうまともに動けるわけがない。大人しくじっとしてなよ……うん、いい顔してるなぁ。恐怖と混乱で歪んでいる顔も悪くないね」

「お前は……!?」

「ああそうだ、自己紹介がまだだったね。僕の名は魘夢(えんむ)、十二鬼月の一人で下弦の参さ。さっき君が見ていた夢は僕の血鬼術によるものなんだ」

 

ウットリとした様子で炭治郎を見つめている青年、いや魘夢(えんむ)は自己紹介をする。目の前に鬼がいるのに身体がまともに動かないという危機的状況に激しい危機感を覚える炭治郎であったが状況は更に悪化していく。魘夢(えんむ)は炭治郎から目を離すと近くにいた侍姿の男に話しかける。

 

「どうでしょう黒死牟殿、この少年は間違いなく日の呼吸の使い手のようです」

「ウム……ご苦労だった魘夢(えんむ)……私も夢に立ち会ったが本物のようだ……しかしまさか……()の耳飾りが残っていたとはな……」

「ッ」

 

6つの目がある異形の侍を見た炭治郎は、彼から発せられる威圧感に息を呑む。侍の目に浮かぶ「上弦」の「弐」という数字を見て彼が鬼の中でも上澄みの実力者だと炭治郎は察する。そして炭治郎の鋭敏な嗅覚は異形の侍からは懐かしさと怒りの匂いが発せられているのを感じ取っていた。

 

「しかも耳飾りだけでない……日の呼吸をここまで正確に継承していたとは……だが……弱い、弱すぎる……」

 

日の呼吸の使い手があっさり無力化され連行されている事に黒死牟はあまりに不甲斐ないと怒りを露わにする。

 

「その程度の実力で……()の技を継承しているとは……笑止千万!……いや、だが、この少年は普通の人間だ……()がおかしいだけか……」

(なんだコイツ…?)

 

だが()が、耳飾りの剣士がおかしいのだと思い直した黒死牟は怒りを鎮め、その様子を見ていた炭治郎は何が何だかわからず困惑していたのであった。

 

 

 

 

「ふん、弱いな。鬼になる資格もない弱者などさっさと殺せばいいのに」

「ヒィ、恐ろしい恐ろしい。いくら手足を折られているとしても万が一の場合がある……ああ恐ろしい!」

「ヒョヒョッ、これが久しぶりに見つかった日の呼吸の使い手ですか。なんとまあ弱っちい奴ですなぁ」

 

(上弦の肆に、伍と、陸!?嘘だろ!?なんで上弦の鬼達が集まっているんだ!?)

「フフッ、すごくいい顔してるねぇ。とても焦っていて徐々に絶望の色も浮かんできているいい顔だよ」

 

周囲を見回した炭治郎は上弦の鬼が集結している状況を確認し深刻な表情を浮かべており、それを魘夢(えんむ)は楽し気に眺めていた。

 

「こ、黒死牟殿、この者は本当にただの人間なのですか?も、もしかしたら鬼魅(きみ)殿のように擬態しているのかも」

「落ち着け……その心配は無用だ……」

 

上弦の伍である半天狗が震えながら問いかけるが黒死牟はその可能性はないと断言する。

 

「この少年は()鬼魅(きみ)のような化物ではない……生まれながらに異常な体温もなく怪力も持たず……透き通る目も持たない……ただの人間だ……私が保証する……」

「そ、そうですか。ならば安心……やはり恐ろしい!生まれながらの怪物が極稀に出てくるという事実が恐ろしいッ!」

「ヒョッヒョッ、相変わらず心配性ですなぁ」

「フン、臆病者が。もう尋問は終わったのだろう?さっさと殺せばいいのに何故やらない?」

 

黒死牟の言葉を聞いた半天狗はホッとするが、生まれながらの化物が時折誕生しているという事実に震えあがっていたが、その様子を見ていた他の上弦達は相変わらずだと特に気にしていなかった。上弦の肆の猗窩座は鼻を鳴らしつつも何故炭治郎を殺さないのか疑問を覚えていた。

 

「無惨様からの御命令です。無惨様の御確認が終わるまでは生かしておけと」

「ああ、あの御方の御命令か。なら仕方ないな」

 

魘夢(えんむ)の回答を聞いた猗窩座が納得するのを見ていた炭治郎はこの状況を打開できないか必死に考えていた。

 

(手足は折られた、日輪刀もない!なにか、なにか手はないのか!?この場を凌いで禰豆子と一緒にここから脱出する方法を……!?)

「禰豆子!禰豆子は!?禰豆子は何処にいるんだッ!?」

 

自分の家族で鬼になっても大切な存在である禰豆子の事を思い出した炭治郎は本気で焦った表情を浮かべる。その表情を見た魘夢(えんむ)は満足げな顔をしつつ炭治郎の疑問に答える事にした。

 

「禰豆子って君と一緒にいた女の鬼の事かな?どうやら君にとって大事な存在みたいだけど、他人よりも自分の事を心配するべきじゃないかな?」

「ふざけるな!禰豆子に何かあったら許さないぞ!」

「それ冗談かな?面白い事をいうなぁ君は。今の君に何ができるのさ?自分が俎板の鯉だという事が理解できないの?」

 

炭治郎から殺意に満ちた目で睨まれるが魘夢(えんむ)はケラケラと嘲笑っていた。実際今の無力化された炭治郎では十二鬼月どころか雑魚鬼にも勝てないのが現実であった。ひとしきり嘲笑した魘夢(えんむ)は一転して悲しげな顔―――まあ上っ面だが―――を浮かべて炭治郎を憐れんでいた。

 

 

 

「しかし君達も可哀想にねぇ……耳飾りとか日の呼吸とかいう呪いを継承した結果死ぬ事になったんだから憐れなものだね」

「呪い、だってぇ!?」

 

「だってそうだろう?そんな物受け継がなければ君は殺される事はなかったんだから。君を捕まえた鬼魅(きみ)殿は本当にお優しい方でねぇ、たとえ鬼狩りでもできる限り殺さないように配慮しているんだよ。鬼とは思えない程お優しい事だよね」

「……」

 

「でも日の呼吸については別さ。日の呼吸の使い手は必ず殺すよう厳命されているから、お優しい鬼魅(きみ)殿も容赦しないんだよ。残念だったね……まぁ恨むなら呪いを受け継ぐよう強いてきた自分の父親や御先祖様を恨みなよ」

「黙れ!俺の父や先祖を侮辱するな!」

「おぉ怖い怖い、でも事実だろう?日の呼吸なんて受け継がなければこんな状況になってなかったんだからさ」

「グッ、グウゥゥゥッ!」

 

歯を噛みしめ悔し涙を流す炭治郎を見て魘夢(えんむ)はゾクゾクとした表情を浮かべ思わず絶頂しかけていたが、琵琶の音が響いた瞬間即座に平伏する。困惑した炭治郎が周囲を見回すと他の上弦の鬼達も平伏しており、彼等が平伏する程の存在が接近しているのだと炭治郎は察する。

 

(十二鬼月が平伏するって事は、まさか)

 

「うむ、集まったか、そこの少年も目覚めたようだな」

 

十二鬼月が忠誠を誓う眉目秀麗な男……鬼の始祖である鬼舞辻無惨が現れた事で炭治郎は家族の仇である無惨を睨み付けるが同時に奇妙な違和感を抱いていた。

 

(コイツが鬼舞辻無惨!でも、なんだ?様子がおかしいぞ?なんというか……すごく上機嫌だぞ?)

 

炭治郎は無惨が信じられない程上機嫌で有頂天になっているのを察して困惑する。そして主人が浮かれているのを見て十二鬼月も思わず互いの顔を見合わせる程困惑していた。実際今の無惨はその長い生の中でも初めてとも言えるくらい上機嫌な様子で鼻歌を歌いつつ配下の鬼達や炭治郎を見ており、彼らが困惑するのも無理はなかった。

 

「ああすまない、私とした事が随分と浮かれていたようだ。楽にしていいぞ」

 

配下達が困惑しているのを察した無惨は苦笑しつつもご機嫌な様子であった。今まで見た事がない程上機嫌な主人の様子を見て黒死牟は意を決して確認する。

 

「無惨様……もしや……」

「ああそうだ、上手くいった。私は克服したのだ」

「おぉ……!それは……おめでとうございまする……!」

「うむ、ありがとう」

 

主人の悲願が達成されたと知った十二鬼月達は非常に喜ばしい事だと我が事のように喜び祝福していた。

 

鬼魅(きみ)の甘さについては虫唾が走っていた、化物の癖に鬼になっても甘い奴だと呆れていたが……情けは人の為ならずとは言うが本当なのかもしれん。奴が生かしておいた小娘の鬼が巡り回って私に僥倖を齎してくれるとはな」

「ッ、まさか、まさか!?」

 

状況が理解できず困惑していた炭治郎であったが、無惨がふと零した言葉を聞いて血の気が引く。そんな炭治郎を見た無惨は微笑みつつ言葉を続ける。

 

「炭治郎君、君の妹は素晴らしい子だった。私の為に用意してくれてありがとう。君の妹を取り込んだお陰で私は太陽を克服できたのだ……本当に感謝しているよ」

「お前ッ!?お前えぇーーーッ!」

 

妹が無惨に喰われたと理解した炭治郎は折れた手足を無理矢理動かしつつ起き上がり無惨に飛びかかろうとするが、瞬時に無惨の手刀に貫かれていた。

 

「さて炭治郎君、今日の私は実に気分がいい。日の呼吸の使い手は例外なく殺すつもりだったが気が変わったよ。特別に君を鬼にしてあげよう……君も妹さんのような特異体質かもしれないし試してみるのも悪くないと思ってね」

「がッ、がああああぁぁッ!?」

「わぁ……!激しい怒りと深い絶望が両立している歪み切った顔だぁ。とってもいい顔だよ、さようなら炭治郎君、そしてこれからよろしく」

 

激しい怒りを見せる炭治郎を見つつ無惨は上機嫌な様子で自分の血を炭治郎に分け与える。それを見た魘夢(えんむ)は最高に満足した様子で笑顔を浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

「……うーむ、よく考えてみれば鬼にする必要はなかったかもしれん。もう太陽は克服しているし鬼を増やす必要はまったくないし……」

 

その後無限城を出た無惨は草原に座り込みぼんやりとした様子で考え事をしていた。太陽を克服した無惨は空で輝く太陽を眩しそうに見つめつつ日向ぼっこしていたのだ。

 

「まぁいいか、とりあえず彼の事は後で考えよう……ふぅむ、ただの太陽がこうも素晴らしく見えるとは。太陽も私の事を祝福しているのかもしれないな……いや、それはないか。フフフ、我ながら浮かれすぎだな」

 

普段なら考えられない程浮かれているのを自覚した無惨は苦笑しつつも穏やかな様子で日向ぼっこを楽しんでいた。だがある事を思い出した無惨は鬼の始祖である特権を使い自分の配下達の中でも最強の存在に確認する事にした。

 

鬼魅(きみ)、鬼狩りの親玉の現在の居場所は把握しているな?―

―はい無惨様―

―うむ、ではこれから親玉の居場所に行こうと思う。いい加減鬱陶しいしそろそろ引導を渡してやってもいいだろう。貴様もついてこい……手を抜くなよ?―

―かしこまりました。御供いたします―

 

もはや自分の脅威ではないが鬱陶しい鬼狩り達を始末する事を決めた無惨は日向ぼっこをやめ鬼殺隊の指導者……産屋敷家に向かう事にしたのであった。

 

 

 

 

 

<人物紹介>

●竈門炭治郎

→無限城に連行されたが奇跡的に無罪となり死ぬ事はなかった。よかったね!第二の人生を頑張ってほしいものである。まあ鬼としての素質は滅茶苦茶あるので多分大丈夫だろう。

 

 

 

魘夢(えんむ)

→十二鬼月で下弦の参。人間の頃から人が苦しむ顔を見るのが大好きだった筋金入りの異常者である。血鬼術が尋問に便利だと重宝されている。炭治郎の絶望した顔をすぐ傍で見て大満足していた。

 

 上弦とは違い下弦の鬼達は戦闘能力よりもスキル(血鬼術)の有用性が重要とされているが、無惨のお気に入りなら有用な血鬼術でなくても下弦になれるようだ。

 

 

 

●黒死牟

→弟の耳飾りが今まで残っていた事に驚いていた。炭治郎については「コイツ弱すぎるだろ」と怒りを覚えるが、よく考えたら縁壱や鬼魅(きみ)がおかしいだけだと思い直していた。

 

 

 

●上弦の鬼達

→半天狗と玉壺が原作通り上弦入りしていた。黒死牟の話を聞いて「生まれながらの化物って怖いなぁ」と思っていたとか。ちなみに堕姫と妓夫太郎は下弦の壱として頑張っている。

 

 

 

●無惨様

→いたよ!太陽を克服した鬼が!とウキウキで取り込み無事に太陽を克服した鬼の始祖。今までの人生の中で一番上機嫌な様子を見せており炭治郎への感謝の言葉は煽りではなく本心である。あまりに浮かれすぎて勢いで炭治郎を鬼にしていたが「よく考えたら鬼にする必要なかったよな」と反省していた。

 

 太陽を克服し最高にハイって気分になり日向ぼっこを楽しんでいたが、いい加減鬱陶しい鬼狩り達を排除しようと思い直し鬼魅(きみ)をお供に鬼狩り退治に出かける事にしたのであった。

 

 

 

●禰豆子

→禰豆子は犠牲になったのだ……無惨様が太陽を克服する為の犠牲にな……

 

 彼女は何かおかしいという鬼魅(きみ)の言葉を聞いた無惨様は最初は半信半疑だったが、色々と試した結果禰豆子が太陽の下でも活動しているのを見て驚愕し急いで取り込み狂喜乱舞していたとか。

 

 

 

鬼魅(きみ)

→自分を化物だと自認する第二の縁壱。無惨様の命に従い鬼狩り退治に付いて行く事になった。太陽を克服してないので肌を日光に晒さないよう異様な厚着姿で行動しており傍から見れば完全に不審者であったが大丈夫だ、問題ない。日光を遮断する為視界が全く見えてないが第二の縁壱なので何も問題ないのだ。




今回は短めに終わると思います。今後は少しずつ投稿していく予定なのでよろしくお願いします。
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