魔法科高校の熱を愛する者   作:パクチーダンス

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第十六話 ようこそ第一高校へ

 

 休日があけた今日、生徒会はいつもの如く通常業務に勤しんでいた。任された分の仕事が終わった金次は、持参したアイマスクをし、腕を枕にしながら仮眠していた。

 

 金次がすぐ帰らないのは、達也の報告を待っているからだ。今日来るとは限らない。だが、いつなん時に何が起こるかわからないのでこうして遅くまで残っている。

 

 というのは建前で、本当は家に帰ってもやる事がないだけなのだ。

 

「お待たせしました」

 

 扉から入って来た達也の声に反応し、金次はアイマスクをとってグッと伸びをした。

 

「案外早かったな」

 

 数日は掛かると思った金次、

 実にスマートな仕事ぶりに達也を内心褒める。

 

 達也の登場で、全員の手がピタッと止まる。

 

「それで達也君、どうだったの?」

 

「簡潔に申し上げますと、

 彼女は催眠術に掛かっていると思われます」

 

「催眠術?」

 

 達也の報告はこうだ。カフェでの雑談の中、壬生の言動にはいくつか不可解な点があった。その中で最も疑問に思ったことは、摩利に剣の指導を乞うた時に、冷たくあしらわれたということ。

 

「摩利はそんなことしないと思うわ」

 

 一番の友人である真由美はそれを否定する。

 

「渡辺先輩に確認をとった所、

 そんな事実は無いと言われました」

 

 どうやら摩利と壬生、二人の間で何か勘違いが起きているようだ。それが『ブランシュ』などに与した理由に関係するかは分からないが、桐原が言っていた汚染というのが、その催眠術のせいだとしたら………。

 

「けど、彼女が白であるとは、

        まだ断定できないのでしょう?」

 

「申し訳ありませんが、100%そうだとは言い切れません。ですが、可能性は高いと自分は思います」

 

 真由美は考える。壬生達が催眠術に掛かっているのだとすれば、その洗脳を解けばいいだけのこと。

 

 しかし、自らが志願して犯罪集団に加わったのだとしたら……………残念だが、警察に身柄を引き渡すしかない。

 

 こうして考えても出来ることは限られている。達也の言葉を信じよう。

 

「分かったわ。じゃあー」

 

 そう、真由美が決定を下そうとしたその時、

 

 プルルルッと真由美の端末が鳴った。皆に断りを入れてから、応答ボタンを押し耳元に当てる。この時、このタイミング、真由美は何か嫌な予感がしたのだ。そしてそれは的中する。

 

「はい…………はい………分かりました」

 

 二回目の「はい」の時点で、真由美の表情が強張っていく。

 

「ありがとうございます。名倉さん、それでは」

 

 通話を切る真由美。

 

「会長………」

 

「皆よく聞いて。たった今、私の家の使用人から報告がありました。もう間も無く『ブランシュ』が一高に向かってくるそうよ」

 

「えぇ!?」

 

 あずさが悲鳴のような声を上げた。

 

「すぐに避難を呼び掛けないと!」

 

 今の時間帯は、下校している生徒以外は部活動に取り組んでいる頃だ。危険が迫っていることを知らせないと、そんな思いに駆られ、慌てた様子のあずさに金次はチョップをかます。

 

「落ち着け中条」

 

 強めのチョップをくらい、あずさは涙目で頭を押さえる。

 

「金ちゃん」

 

 この状況、貴方ならどうする? 

 そんな目で訴えて来る真由美に、金次は笑った。

 

「好都合だ。わざわざ向こうから倒されにやって来るなんてよ。連中、俺らを舐めてるな」

 

 武装した工作員が何人いようと関係ない。この場所をどこだと思ってる。魔法科高校最高レベルの生徒・教師が集う、第一高校だぞ。

 

「部活している奴らはその場で待機だ。お出迎えは俺たち生徒会と風紀委員、そして部活連がやる」

 

「俺、会頭に伝えて来ます!」

 

「わ、私も放送室に行って来ます!」

 

 服部とあずさが、

 自らが役割を担って行動を開始する。

 

「では、俺は渡辺先輩に伝えて来ます」

 

「お兄様……」

 

「大丈夫だ。すぐに合流する」

 

 心配するな、と深雪に一言告げて、

 達也も後に続いて生徒会室から出て行く。

 

「狙いは何でしょうか?」

 

『ブランシュ』の襲撃してくる理由。考えられるのは、最先端の魔法研究の成果だろうか。そう深雪は思考する。

 

「この状況に応じて、壬生さん達にも何か作戦が下っているのでしょうか?」

 

「そうね。彼女の動向も気になるわ」

 

 外に警備が集中して中が手薄になった所を、なんてことも考えられる。

 

「『ブランシュ』も壬生も"元"二科生も、このドタバタで全部解決するぞ。壬生の相手は渡辺先輩にでも任せればいい。ついでに誤解も解いてな」

 

「ですが、それでは風紀委員を指揮するものが居なくなります」

 

 風紀委員長である摩利が不在は、何かと不都合が生じる恐れがある。それなら、

 

「私に一つ、案があるのですが」

 

 深雪は金次達に、同じく剣に生きる者を紹介する。かくして準備は整い、金次達は校庭へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 テロリストが一高に到着したのは、真由美の使用人、名倉三郎の電話から実に10分後のことであった。

 

 正門から堂々と入って来る何台もの迷彩柄の車。車両の中には、電気工事の作業員のような格好をした男達が乗っていた。

 

 そして次々と車のドアを開けて校庭へと降り立つ。彼らの手には武器が握られていた。これからこの学校に阿鼻叫喚が巻き起こる。

 

 彼らの狙いは深雪の想像通り、魔法研究の成果。

この国の魔法研究の、最先端を収めた文献資料にアクセスできる校内唯一の端末、そこにハッキングを仕掛けに来たのだ。

 

「よし、手筈通りに行くぞ」

 

「お、おい。あれ……」

 

 一人の男が校舎の方を指をさしている。

 

「どうした?…………何だあれは?」

 

 男の顔色はどんどん悪くなっていく。不審に思った仲間の一人が、男が指差す方を見る。そこにいたのは、いや待っていたのは……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     「ようこそ (笑顔)」

 

 

 

 金次が満面の笑みで待っていた。あまりにも不気味な笑みなので、『ブランシュ』の工作員達は顔が引き攣っている。

 

 生徒会長・七草真由美、風紀委員長・渡辺摩利、

 

    課外活動連合会会頭・十文字克人、

 

 金次の後ろにいるのは、この学校の三巨頭。またその後ろに控えるのは、各組織のメンバー達が横一列にずらりと並んでいる。総勢20人近くのこの学校最大戦力が一ヶ所に集まった。

 

「おい! 俺たちの計画がバレてるぞ!」

 

「と、とにかくリーダーに伝えないと!」

 

 奇襲は失敗に終わり、慌てふためく工作員達。

 

    「スゥーーーーーーーーーーー」

 

 金次は肺の中がパンパンになるくらい思いっきり息を吸い込んで、

 

 

 

 

 

 

 

 

   「ぶっ飛ばせーー!!!」

 

 

 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

 金次の合図とともに、皆が雄叫びを上げて一斉に走り出した。

 

 

「うわぁぁ!来たぞ!」「う、撃て! 撃てー!!」

 

 

 金次を中心とした直径2m程の円が生成した。

 

 マシンガンから発射される弾丸、その全てを金次は身体で受ける。避ける気はさらさらなかった。

 

(まさか、まともに受けるとは!?)

 

 到底信じられない行動に、達也は驚愕する。抵抗なくやられてしまったと思った。だが周りは驚いた様子はなく走り続けている。そんな達也の驚きも束の間、

 

「痛ってぇーーな!けど慣れてんだわ!!」

 

「な、なぜ死なないんだ!「おりゃ!」ガハッ!?」

 

 金次の膝蹴りが工作員の顔を粉砕した。そのまま後方に吹き飛ばされ、受け身を取ることも叶わず地面を転がり続ける。

 

「死ねぇ!!」

 

 刃物を持った男が一人、

 金次の背後から刺そうと試みるが、残念かな。

 

「ほい」

 

「ぎゃゃぁぁぁぁああああ!!」

 

 凶器を持った男の腕が、人間の構造上、絶対曲がることはないし、曲がってはいけない方向に折り曲げられた。

 

(今のは………)

 

 達也は『目』で金次を見ていた。弾丸を浴びた金次だが、傷はないし弾痕は一切見られない。まるで、最初から何も無かったかのよう。達也はそれに覚えがあった。

 

(あれは俺の『再生』と酷似している。だが、あの身体能力はなんだ?一瞬にして敵の位置まで移動する超スピード、それにあの腕力。やはり十文字金次、彼はとても危険な男だ)

 

 金次の知らぬところで、達也の中の危険度が増していく。

 

「お兄様」

 

「深雪、後は先輩方に任せておこう。俺たちの出る幕はないよ」

 

 達也も深雪も戦いに参加する必要もなく、敵は一方的に蹂躙されていった。

 

「フンッ!」

 

 逃走する車を、克人は『ファランクス』で道を塞いで行く手を阻む。壁に激突した車の前頭部がペシャンコになる。なかなかお目にかかれない魔法が見れて、達也は興味深そうに眺めていた。

 

 車から逃げるように降りる工作員達を、真由美の『ドライ・ブリザード』が追い討ちをかける。風紀委員を引き連れて摩利も応戦。金次はポイポイと投げ捨てて一箇所に集めている。

 

 ちょっとやり過ぎじゃないか?と思うくらい敵に同情する達也。

 

(頼もしい先輩達だ………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廊下の窓から雄叫びが聞こえて、壬生は急いで窓を開けて顔を出す。

 

「作戦がバレてた………!?」

 

 窓の外から、金次が敵を次々と投げ飛ばす光景が見える。戦いは一方的だった。『ブランシュ』は圧倒的劣勢に追い込まれていた。

 

(これじゃあ、侵入の手引きも出来やしない)

 

 作戦は中止。こうなってしまった以上、壬生はどうすればいいのか分からなかった。

 

(すぐに司主将と合流しないと)

 

「ちょっと何処に行くの? セ〜ンパイ」

 

「誰……?」

 

 壬生の正面、両手を後ろに組んでニコニコと微笑みながら立ちはだかる一人の女子生徒。

 

「一年E組の千葉エリカです」

 

「……………そう、ごめんなさい。

 私急いでいるの。通してもらえないかしら?」

 

 通してもらえないか? それはおかしな話だった。

 エリカの体は華奢では、廊下を塞ぐには程遠い。

 

「一体どちらへ?」

 

「貴方には関係ないでしょ」

 

「そうはいかないんですよね〜、

 私も頼み事されちゃってるんですよ」

 

 何を?と聞く前に、既に壬生は戦闘態勢に入っていた。それを見たエリカはニヤッと笑って獲物に手をかける。

 

「やれやれ、やっぱそうなっちゃうか」

 

 とは言いつつも、エリカはやる気満々であった。

 金次達とは違う場所で、剣と剣の戦いは始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、張り合いがねぇよ」

 

 地面で伸びている工作員達を見て、金次は愚痴をこぼす。戦闘は終了した。金次達の中に怪我人は一人もいなかった。

 

 敵は魔法も使えない連中だったのもそうだが、作戦がバレたとなって終始逃げ腰なのも金次をイラつかせた。

 

「おーい、コイツら逃げないように縄で縛っておけ」

 

 金次の命令で、風紀委員・部活連の一年生が工作員を縛っていく。

 

「金ちゃん」

 

 真由美が金次に手を振る。既に生徒会役員で固まっていた。

 

「おい達也、お前サボってたろ?」

 

 深雪は百歩譲として、達也が戦いに参加しなかったことを金次はちゃんと見ていた。

 

「すみません」

 

「先輩にだけ任せやがって。

 自分は妹と楽しくおしゃべりですか? あぁ?」

 

 達也は謝罪しながらも、その顔には申し訳なさを一切出さないので、その顔を見て金次は凄んでいた。

 

 かたや深雪は、

 むすっとした顔で金次を軽く睨んでいた。

 

「まぁまぁ、危ないことは先輩の務めよ。

    達也君と深雪さんはまだ一年生なんだし」

 

 達也と金次の間に割って入る真由美が、

 「どうどう」と金次の正面に立ち落ち着かせる。

 

「真由美、お前も調子に乗って前に出過ぎだ。

           楽しくなってんじゃねぇよ」

 

「だって、こんな掃討戦滅多にないじゃない?

 溜まったストレスを発散するのに丁度いいわ」

 

 そう言う真由美は、自身の肩を揉みほぐしている。

日頃から猫を被っている彼女は色々と溜まっているものがあるようだ。

 

「ここはもう片付いた。千葉の奴はどうなった?」

 

「いえ、まだ連絡は来ていません」

 

「そうか」

 

 連絡が来ないと言うことは戦闘中か、もしくは壬生に負けて気絶しているかの二択。後者はあり得ないなと金次は結論づける。

 

「金次、七草」

 

 一通り指示をし終えた克人がコチラへ向かってきた。

 

「後は市原と服部、中条に任せよう」

 

「じゃあ、コレからお礼参りと行くか」

 

 いよいよアジトへと乗り込む。

 

「誰が行く?」

 

「俺と兄貴、兄貴のとこの部活練から数人連れてくればいいだろ」

 

「えっ? 私は?」

 

「いや、生徒会長が学校から離れるのは何かとマズいだろ。お留守番だ」

 

 え〜〜、と文句を言う真由美。ぶつぶつ言う真由美を無視し、金次は何か思い出したかのように達也へと視線を向ける。

 

「達也、お前に仕事がある」

 

「何でしょう?」

 

「壬生の他にネズミ(・・・)がいるだろ?

         駆除しといてくれ。簡単だろ?」

 

「……なるほど」

 

 金次の言いたい事を理解した達也は小さく頷いた。確かに簡単な事だ。

 

「深雪、千葉から連絡が来たら渡辺先輩もそこへ連れて行け」

 

 さ〜てと、行きましょうかね。金次はそう言って指をポキポキと鳴らす。今度はこっちから行ってリーダーの顔を拝みにいこうか。そして殴る。とてもシンプルだと金次は不適な笑みを浮かべていた。

 

 

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