魔法科高校の熱を愛する者   作:パクチーダンス

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第四話 事件発生

 

 第一高校に入学してから二日目の学生生活は、選択科目を決めるのと、学校内の施設の説明・見学、専門課程の見学で幕を閉じた。

 

 金次は誰よりも早く教室から去り、学校の敷地から出て行った。そして、その足で三矢家本家を訪ねに行ったのだ。三矢家は神奈川県厚木にあり、東京の八王子市にある第一高校からは距離があるので、キャビネット(個型電車)乗って向かった。途中、菓子折りを買うことも忘れずに。

 

 前もって連絡はしてあるので、インターホンを押したら使用人が姿を現してすんなり家に通してくれた。使用人に連れられるまま長い廊下を歩くと、広い座敷に案内された。

 

「ここでお待ち下さい」

 

 金次が正座して待つこと数分、使用人が襖を開けた。そこから現れたのは、小柄でガッチリとした初老の男性、三矢家当主・三矢元。

 

「待たせて済まなかった」

 

「いえ、お時間を頂きありがとうございます」

 

 金次にしてはお固く丁寧な言葉遣いである。いつもの彼を知る者ならば「悪い物でも食べたの?」と勘違いしてしまう程に、今の金次は襟を正し、キッチリとしていた。

 

「して金次君、今日はどのような用件かな?」

 

「実は、三矢家の名をお借りしたいと思っていまして………」

 

「ほう、それは何故?」

 

 金次は元にこれまでの経緯を説明した。第一高校の現状、生徒達の悪しき伝統、その改革の為に動いていることを。

 

「なるほど、その様な事でしたら三矢もご協力しましょう。末の娘はまだ中学生ですが、いずれは第一高校に通わせようと思っていました。悪しき伝統は無くなった方がいい」

 

「おっしゃる通りです」

 

 三矢、四葉、七草、十文字、これで十師族の内4つの家が協力してくれる事になった。もう既に十分過ぎる感じもするが、生徒会長達も動いてくれているので、そんな野暮な事は言わない。

 

「さて金次」

 

「はい」

 

 先程までの堅苦しい雰囲気が嘘の様に消えた。元は、何処からか将棋盤と駒を持って来た。

 

「話は終わった事だし、一局どうかね?」

 

「えぇ、喜んで」

 

 その後、金次と元は一局では終わらず、日が暮れるまで将棋を指し続けた。そろそろ帰りたいと思っていた金次のもとに、末の子である詩奈から「そろそろ帰ったほうがいいんじゃない?」と救いの手を差し伸べてくれた事により、金次は解放される。家に帰った時は、午後8時を過ぎていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 入学してから一週間が過ぎた頃、第一高校は新入生勧誘活動の時期に入った。この時期、各クラブの新入部員獲得合戦は熾烈を極めるらしい。勧誘が激し過ぎて、授業に支障をきたす事もあるとか。それが毎年行われているようで、この期間は生徒会や風紀委員はそのトラブル対応に追われて慌ただしい。

 

「もぅー!こんなことやってる場合じゃないのに!」

 

 生徒会長が、手元に置かれている風紀委員から上がって来た報告書を見ながら頭を抱えている。

 

「ヒッ、七草先輩。風紀委員から体育館に応援をよこしてほしいと」

 

「無理ね、今はこっちが忙しいから。はんぞー君に回しておいて」

 

「は、はい〜〜!」

 

 あれから、新たに生徒会には中条あずさと服部刑部少丞範蔵という男子生徒が入った。あずさは、その小動物の様な見た目から、真由美が大変可愛がっている。あの一件以降、金次はあずさと何度か話す機会があったが、まだ金次のことを怖がっているようだ。悪い人間ではないと理解しているが、顔が怖いらしい。

 

「めんどくせぇな、勧誘なんざ禁止にしろ禁止」

 

 ソファに一人、お菓子を食べている金次。支持者は着々と集まっているのに、こんなふざけた行事のせいで本来の目的に取り掛かれない。

 

「そうもいかないのよ金ちゃん。学校側としては、九校戦の成績を上げてもらいたいから」

 

「あー九校戦ね、俺は興味ないな」

 

「ほら金次君!お菓子ばっか食べてないで、貴方も何か手伝いなさい!」

 

「やらねぇよ。俺はもう帰るから」

 

 生徒会室の扉から出て行く際、「待ちなさーい!」と後ろから生徒会長の声が聞こえていたが、金次は無視して扉を閉めた。

 

「ったく、早くこの行事終わんねぇかな………」

 

 金次は昇降口に向かう途中、生徒会長から受け取った金次達の改革に賛同してくれる、有力な支持者をまとめた一覧のデータを端末で眺めていた。

 

(ほぅ〜、結構集まったじゃねぇか。知ってるところで言えば、「剣の魔法師」である千葉家に、あのホクザングループの北山家、あの子元気にしてるのか。そして五十里家に千代田家に十三束家、、、ん?司波?司波って何処だ?知らねぇな。一般の家系か?)

 

 何にせよ、これだけ集まれば完璧だ。後は百山校長と生徒会含めて話を詰めて、実行に移すだけ。

 

 金次は校舎へ出ると、外は人でごった返していた。先輩が新入生を勧誘、というか逃げられないように包囲していたり、しつこい勧誘に走って逃げる生徒がいたり、風紀委員に取り締まられる剣道部の姿があったりとカオス状態。

 

(なるほど、これも"熱"だな………)

 

「君!テニス部に興味ない?」

 

「いいや、君は絶対に山岳部に入るべきだ!」

 

 金次は立ち止まっていたら、テニス部、山岳部の部員から声を掛けられた。金次はどの部活にも入る気は毛頭無いので、この場から退散すべく走り出した。

 

「ちょっと待って!」

 

「はやっ!?」

 

 校内での魔法の使用は、一般生徒は禁止されているので、金次は持ち前の脚力で勧誘部員を振り切った。50mを6秒切る金次を捕まえられる者など、この学校にはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それが起こったのは、新入生勧誘活動の期間を過ぎた放課後の事であった。やっと本来の準備に取り掛かれると、気持ちを切り替えていた生徒会一同の雰囲気が、突如生徒会の扉をノックも無しにやって来た風紀委員の知らせによって、一気に崩れ落ちる。

 

「大変です!生徒会長!」

 

「ちょっと!ノックもせずに入って「それどころじゃないんです!」……え?」

 

 注意しようとした副会長の言葉を遮る風紀委員の男子生徒。彼は走って来たようで肩で息をしていた。しかし、彼は声を大にして生徒会全員にこう伝える。

 

「つい先程、剣道部と剣術部の乱闘が発生しました!怪我人及び重傷者が数名が出ています!」

 

「なんて事………」

 

 副会長は、その知らせを受けて口元を隠して驚愕を露わにする。他の生徒会役員も同様である。

 

「すぐに向かいます。副会長と真由美さん、はんぞー君は私と共に来て。鈴音さん、あかねさん、貴方達はここに残ってください」

 

 会長は誰よりも先に冷静になり、すぐに生徒会役員に指示を出す。

 

「後、金次君がトイレから帰って来たら、この事を知らせてあげて」

 

 そして、風紀委員の男子生徒の案内のもと生徒会長達は体育館へ向かう。現場に到着した彼らを待っていたのは、悲惨な光景であった。

 

「これは、一体何が起こったの………!?」

 

 確認しただけでも、3名の男子生徒が体育館床に倒れている。うち二人は、腕を押さえて苦悶の表情を浮かべており、一人は風紀委員に拘束されている。

 

「すいません、自分もまだよく分かってなくて……」

 

 風紀委員の男子生徒は、申し訳無さそうに頭を下げる。

 

「生徒会です!ここで乱闘があったと聞いて来ました。誰か、ここで起きた事を説明できる者はいますか?」

 

 生徒会長の声に反応して、いち早く近づいて来た者がいる。十文字克人である。

 

「十文字君」

 

「大変な事になりました、会長」

 

 話はこうだ。剣術部と剣道部の一年生が乱闘騒ぎを起こした。理由は、剣術部一年が剣道部一年に難癖をつけて、それに激怒した剣道部一年が魔法を使用して斬りかかったという事らしい。斬りかかられた生徒の友人が反撃に出て、斬りかかった生徒とその生徒の側にいた仲間数人に魔法を使用した。そして現在、反撃した生徒は風紀委員と部活連に取り押さえられて拘束された。

 

「剣術部1名は肩を打撲し、剣道部2名は腕を骨折しています」

 

 やり過ぎだ。最初に斬りかかった剣道部の生徒も悪いが、反撃に出た剣術部の生徒は二人も重傷者を出している。それよりも、

 

「上級生はどうしたの?何故止めなかったの?」

 

 新入生の面倒を見るのは上級生の仕事だ。こんな事になる前に、上級生がしっかりと面倒を見ないといけないのに。乱闘騒ぎがあった時、二、三年生は一体何をしていたのか。

 

「どうやら二、三年生はミーティングがあったようで、一年生のみが体育館で練習していたようです。それはどちらの部活も同じようで……」

 

 生徒会長は頭を抱えた。

 

「はぁ〜、剣術部と剣道部の部長には、私からキツく叱責させてもらうわ。とりあえず、あそこで拘束されている生徒に詳しく事情を聞かせてもらおうかしら。会議室にでも連れて来ましょう」

 

「めんどくせぇ事になったな」

 

「あっ、金ちゃん」

 

 あずさと鈴音からの知らせを聞いて、遅がけに体育館に参上した金次。

 

「金次君、これから事情聴取をするんだけど、貴方も来る?」

 

「もちろん」

 

「会長いいんですか?十文字は生徒会役員でもなければ風紀委員でも部活連でも無いですよ?」

 

 真面目な服部は、金次が事情聴取に加わるのを是としていない。だが会長は、

 

「もう今更じゃない?」

 

「まぁ俺は口出ししないで隅っこにいるからよ(ただの喧嘩だといいがな…………)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一同は会議室に移動すると、男子生徒への聴取を始めた。男子生徒は終始居心地が悪そうで暗い表情をしていた。自分の犯した事の大きさに気が付いたのか、それとも生徒会役員+風紀委員数名+克人(年齢詐称)+金次(部外者)に囲まれて胃を悪くしたのか、いずれにしても男子生徒は口を紡ぐことは許されなかった。

 

「ーなるほど、分かりました。処分はおって聞かせますので。今日はもう帰りなさい」

 

「……はい」

 

 男子生徒は足取り重く、視線を落としながら会議室の扉を開けて出ていった。扉が閉まった瞬間、生徒会長は椅子に全体重を掛けて座り込んだ。

 

「あ〜、もぉ〜、幼稚過ぎる!ガキかアイツら!」

 

「会長、お言葉が………」

 

「何よ!私だって言ってやりたいわよ!ガキは黙って勉強して卒業してけってさ!」

 

 生徒会長は頭をかきながら「うがぁー!」と人目を憚らず喚いていた。淑女らしからぬ生徒会長の様子に、その場にいる全員言葉が出ない。唯一、金次だけはそれを見て笑っていた。

 

「やっぱり喧嘩の元は、「一科生(ブルーム)」と「二科生(ウィード)」関連だったな」

 

 剣術部一年の「一科生(ブルーム)」が剣道部一年の「二科生(ウィード)」に対して起こした根拠のない言い掛かり。その内容は稚拙で幼稚、語るまでもないことだ。

 

「おい十文字、それは禁止用語だぞ」

 

 服部が金次に対して軽く叱責する。

 

「分かってるよはんぞー、あえて言ったんだ。しっかし、本当に腐ってるなこの学校」

 

「はんぞーと呼ぶな。俺の名前は服部刑部だ」

 

「それはお前ん家の官職だろ」

 

「今は官職なんてない。学校側にはその名前で届が受理されているんだ」

 

 金次が服部を弄って話が脱線し始めているので、副会長は「ゴホンッ」と咳払いをして注意を引く。

 

「ともかく、剣術部と剣道部のそれぞれに一年生の監督不行きの責任として、何らかの罰を言い渡さなくてはいけません。会長」

 

「えぇそうね。早く、こんな事が無くなるようにしないと………」

 

 やっと勧誘期間も過ぎて時間が確保される。明日にでも百山校長に掛け合う必要がある。そんな思いも知らず、服部は水を差す言葉を言う。

 

「会長、こんな事言うのもなんですが、本当に差別が無くなると思いますか………?」

 

「えっ?」

 

「何を言うのはんぞー君、皆が一丸となって頑張っているのに。それを貴方は……」

 

 副会長は服部に非難の目を向ける。が、そこで待ったをかける者がいる。

 

「良いんだぜはんぞー、お前がどう思っているのか吐いちまえよ」

 

「…………これからやろうとしていることは、確かにこの学校に変化がもたらされるかもしれません。ですが、魔法世界は実力の世界。強き者が弱きものを虐げるこの現状が、無くなるとは思えないんです」

 

「それは………」

 

 生徒会長は、服部に対して反論しようにも言葉が続かなかった。本当に出来るのか、と言われても即答は出来ない。保証なんてどこにもないのだから。無謀な事だとは最初から分かっている。

 

「オイオイはんぞー、お前勘違いしてねぇか?」

 

 そこで、生徒会長の中で燻っていた火をつけさせた男、十文字金次が声を上げる。

 

「勘違い?」

 

「俺は何も、この学校から差別を無くそうとは一ミリも考えてねぇよ」

 

 それは、耳を疑う言葉であった。学校の改革者筆頭である金次から告げられた言葉は、その場にいる全員を驚かせた。

 

「は?だってお前、それを無くすために今まで」

 

「俺は一度だって「無くす」や「ゼロにする」なんて言った覚えはねぇよ」

 

「金次君、私に嘘をついたの………?」

 

 生徒会長は金次に裏切られたと思ったのか、彼女の表情、そして声には静かな怒りを孕んでいた。

 

「魔法師には絶対的な力の差が存在する。大前提として、人類には差別を無くすなんて無理だ。でもな、それを限りなくゼロに近づける事なら可能だ。だからやってるんだよ」

 

「違うわ金次君。私はこの学校から差別をゼロにしたいのよ。だから私に協力してくれたんじゃないの?」

 

「認識の違いだな。俺は極力、奴らのうざったい声が俺の耳に届かないようになればそれで良いのさ。だから協力したんだ」

 

 生徒会長の語っているのは理想論だろう。それを実現しようと副会長は支持していた。なら他はどうだろうか。七草真由美は?市原鈴音は?中条あずさは?十文字克人は?本当にゼロにしようと、ゼロになると思っていたのだろうか。

 

「なぁ生徒会長、もし"差別"を無くそうと思ったら次は"平等"を目指さないといけなくなる。なら"平等"ってなんだ?俺はしらねぇよ。アンタは知ってるかい?」

 

「……………………………」

 

 生徒会長は、自身のスカートを掴んで顔を歪ませる。反論出来ない。自分は甘かったのかもしれないと目の前の男に思い知らさせれた。

 

 過去の記憶が呼び起こされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここに入学してからというもの、右を見ても左を見ても「ウィード」だとかスペアだとか言って蔑むクラスメイト。注意した時、彼らは笑っていた。

 

『おいおい、何言ってんだ?』

 

『あんな奴らの肩なんか持つなよ。アイツらは「ウィード」なんだからよ』

 

「は?」

 

 彼らは私を、おかしな人間でも見つけたような、そんな目を向けて来た。私、そんなおかしなこと言ったかしら?

 

「ちょっとそこの貴方達、そこは彼らが使っていたテーブルよ」

 

『良いのよ、ここは今から私達一科生が使うの。二科生は素直に端っこのテーブルを使っていればいいわ』

 

「そんなこと言って、貴方ー」

 

『もういいです。私達、別のテーブル使いますから』

 

「ちょっ、ちょっと待ってよ」

 

 何でそんな顔して去って行くの?貴方達は悪くないのに。悪いのはどう見たってこの子達じゃない。それなのにどうして………。

 

「会長。昨日、体育館裏で一科生と二科生の喧嘩がありました。報告書は目を通されましたか?」

 

『ん?あぁアレね。二科生は一週間の自宅謹慎ってことで決定したから』

 

「……そうですか。一科生の生徒はどうしますか?」

 

『まぁ一日だけでいいだろ』

 

「えっ?何故そんなに短いのですか?報告では、一科生の方が明らかに過剰な攻撃だとー」

 

『オイオイ、一科生の貴重な時間を無駄に出来ないだろ?アイツらは良いんだよ。スペアなんだから』

 

「そんな……」

 

 間違ってる。皆んな間違ってる。こんな場所にいたら、私はおかしくなっちゃう。変えなきゃ。私が変えなくちゃ。

 

 

 

 私は生徒会長になった。この学校である程度の権力を持つ事ができた。今の副会長と一緒に、この学校を変えようと頑張った。

 

 でも、私のしたことは全てが無駄に終わった。誰も変わることはなかった。私は酔っていたのかもしれない。助けなきゃ、なんて下手な正義を振り翳して、正義の味方気取りで。

 

 そんな時、彼がやって来た。十文字金次。彼は十文字家の問題児として有名で、入学初日から問題を起こした。生徒会にやって来た彼は、

 

『なぁ生徒会長さん、アンタに"熱"はあるかい?』

 

『あぁそうだ"熱"さ。俺は"熱"を愛している。

 "熱"とは"賭け(ギャンブル)"で"賭け(ギャンブル)"は"人生"』

 

『アンタに"熱"はあるかい?この腐った学校を変えたいと思う"気持ち()"がよぉ』

 

 私は再び突き動かされた。私の中で"熱"が帯びた。今度こそ変えてやろう。この学校を。彼となら出来る、そう思ったんだ。なのに、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふざけんじゃないわよ

 

「あ?なんて言った?」

 

「ふざけんじゃないわよ!!」

 

 その声は外にまで聞こえていただろう。今まで聞いたことのない、生徒会長の怒号であった。だが、彼女はそれだけでは終わらなかった。

 

「何が"一科生は偉いだ"よ!何にも偉くないわよ!アイツら馬鹿よ!身体だけ大きくなっただけの小学生!陰湿で幼稚で低脳で頭空っぽ!何が偉いか言ってみなさいよ!アンタ入試何位なのよ!こちとら主席よ馬鹿やろう!!」

 

「か、会長……?」

 

彼ら(二科生)もそうよ!言われっぱなしで頭に来ないわけ!?どうしてやり返さないの!?私だったらやるわよ!拳の一発や二発喰らわせてやるわよ!それぐらいの意地は持ってないの!?雑草(ウィード)なら何度踏まれても潰れない努力をしなさいよ!」

 

 二年間、溜まりに溜まった思いの丈を吐き出した。「ゼェゼェ」と荒い息を上げる生徒会長を、皆が唖然として固まっている中、金次は真っ直ぐな目で彼女を見つめていた。

 

 生徒会長は金次に近づくと、彼の胸ぐらを掴んだ。

 

「貴方のせいよ!貴方が私をもう一度突き動かしたのよ!もう無理だと思った私に、火をつけたのは貴方なのよ!許さないから!中途半端な結果で引き下がってなるものですか!こうなったらとことんやってもらうわ!責任、取ってもらうんだから!」

 

 睨みつける生徒会長に、金次は笑った。

 

「"差別"は無くせねぇよ。どうするんだ?」

 

「なら、完璧とは言えないまでも、出来るだけ、最大限、"平等"に見える制度に変えるしかないわ」

 

「制度そのものを変えるか…………面白ぇな」

 

 金次は入学当初、この学校の制度に"熱"が感じられないと嘆いていた。だが、目の前の彼女は、学校の制度そのものに"熱"を与えようとしている。

 

「じゃあやる事一つだな」

 

「………どう言う事?」

 

「何も一科生・二科生の制度は、一高にだけあるんじゃないぜ。二高にも三高にもある。制度を変えるなら、すべての高校に手を加える必要がある。なら俺たちが相手するべきは誰なのか?」

 

「………誰なの金ちゃん?」

 

 ここで、今まで黙っていた真由美が金次に問い掛けた。金次はニヤッと笑みを浮かべた。そして、それは生徒会長も同じだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「教育機関だ/よ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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