魔法科高校の熱を愛する者   作:パクチーダンス

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第五話 不満爆発

 

 国立魔法大学付属高校に新しい制度を作る。だが、言うは易く行うは難し。それは、今の制度よりもより良いモノでなければならない。そもそも一学生の身分である金次達が、口を挟んでもいいものなのか。

 

「いいえ、学生である私達だからこそよ。新しい時代を作っていく私達がやるべきことよ」

 

 生徒会長のその一言で、生徒会役員及び十文字兄弟は、今の一科生・二科生制度を廃止させると共に、新制度を学生の手で作り上げる事を決意した。

 

「ーと言うわけで、皆さんには5月に入る前までにいくつか案を考えてもらいます。これは強制です。一人一つは最低でも必ず考えて来ること!」

 

 かくして、金次達の改革は、全ての魔法科高校を巻き込んだ壮大なものへと移り変わっていく。

 

「あ、あの会長、それでは以前から考えていたものはどうされますか?」

 

「あ〜あれね、一科生と二科生の立場逆転させるやつ?勿論やるわよ。だって、アイツら(一科生)が知った時の間抜けな顔が見たいもの」

 

「アッ、ハイ」

 

 生徒会長は「ウフフ」と不気味な笑みを浮かべていた。副会長の目には、生徒会長が頭にツノを生やした悪魔のように見えたらしいが、きっと幻覚だろう。多分だけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 5月1日。全学年の一科生及び二科生の生徒達は朝のホームルームにて、一科生だけに許された魔法実技の個別指導を受ける権利が、二科生に移行された旨を伝えた。

 

 教師の言葉に驚きと戸惑いを見せた後、二科生は歓喜に打ち震える中、一科生は「こんなの納得できるか!」と不満が爆発。すぐに教師に異議申し立てをするが「もう決定した事だから」と軽く突っぱねられる始末。

 

 一時間目の授業が終わると、すぐに一科生の何人かは職員室および校長室を訪ねて抗議しようとした。しかし、扉の前には一枚の紙が貼られていた。

 

   『異議申し立てのある者は、

    どうぞ生徒会室へお願いします』

 

 という内容が書かれた紙であった。職員及び校長は対応してくれないということであった。でも何故生徒会なのか?という疑問を持ちながらも、一科生は仕方なく生徒会室へ足を運ぶ。しかし、扉にはまたも紙が貼られていた。

 

 『クレームのある人は、グラウンドへGO!!』

 

 ふざけた内容である。明らかに自分達を遊んでいる、おちょくられていると激怒した一科生は、グラウンドへと一目散に駆け出した。そこに待っていたのは、

 

「ノコノコとやって来たな。マヌケども!」

 

 グラウンドのど真ん中、そこに体操着を着た十文字金次が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あらかじめ、不満の矛先が二科生に行かないように生徒会は手を打っていた。何故なら、一科生は必ず不満を抑えきれず暴走するから。では、どのようにしてそれを押さえつけるのか。それは4月末の話。

 

「そんなの簡単だ。不満の矛先を一つにすれば良い」

 

「どこに集約させるのよ?」

 

「勿論、この俺だ」

 

「却下」

 

「オイオイ、早ぇな」

 

 一科生の怒り・不満を受け止める為に、誰かを犠牲にするなんて出来ない。「誰かを犠牲にするくらいなら私が」と生徒会長はそう口にしようとした時、

 

「なぁ生徒会長、俺が素直に奴らの不満を受け止めると思うか?黙って殴られると?冗談じゃねぇよ」

 

「じゃあ、どうするの?」

 

 金次はニヤッと口角を上げる。こう言う時は、大抵絡でもないことを考えていると、これまでの事で皆が理解していた。だから今回も、

 

「全員、ブチのめせば良いんだよ」

 

「「「「「「「は?」」」」」」」

 

 何言ってんだコイツ?というのが皆で一致していた。「遂に頭がイカレたか」と克人は心の中で嘆いた。

 

「それはもっと却下」

 

「いいや、これで良いのさ。例えば、俺を倒したら今までのように戻してやる、そう言えばアイツらは躍起になって俺に襲いかかって来る。そして俺がブッ飛ばす。そうすりゃアイツらは、大人しく椅子に座るしかねぇ」

 

 戦って元に戻ると言うのなら、下手なプライドを持ち、魔法に自信がある一科生(優等生)は立ち向かっていくだろう。その鼻をへし折る良い機会だ。だけど、

 

「でもそれは、金次君が勝つ前提ですよね?」

 

「なんだよ市原先輩、俺が負けると思ってるのか?」

 

「金次君がどのくらい強いか知りませんが、一科生はここにいる私達を除いても300人近くいます。それを全て相手に出来るとは思えません」

 

 市原の言うことは最もである。金次一人に対して、全学年の一科生を相手取るのは無謀としか言いようがない。集団リンチに遭ってしまう。誰もがそう思っている中、金次は自信たっぷりに言い放つ。

 

「この学校に、俺より強い奴なんていねぇよ」

 

 金次はそう豪語した。傲慢な物言いに市原は眉を顰めるが、金次の言葉に同意するものが現れる。

 

「確かに、学校中を探し回ってもお前よりも強い生徒はいないだろう」

 

 金次の兄、十文字克人である。

 

「十文字君、それは本当ですか?」

 

 克人から耳を疑うような言葉が出て来た。生徒会長は克人に問い掛ける。

 

「はい、身内贔屓を無しにしても金次は強いです。自分の学年の中には、まずいないでしょう」

 

 克人は客観的かつ冷静な分析によって、そう結論づけた。珍しく克人がそう褒めるので、金次は皆にドヤ顔をしていた。副会長はムカついたので頭を引っ叩いた。

 

「……ねぇ十文字君、自分の学年ってのは十文字君も含まれているの?」

 

 真由美の恐る恐るといった質問に対し、克人はキッパリと答えた。

 

「あぁ、金次は俺よりも強い」

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「要するに、お前を倒せば良いんだな!」

 

「話が早くて助かるぜ、やれー皆んな!」

 

 一科生達が一斉に金次に向けて魔法を放つと同時に、金次は自分を中心とした領域を展開する。魔法が金次の身体に直撃した。

 

「なっ!?」

 

 一科生達は、金次も何らかの魔法を行使して来ると思っていた。この金次を中心とした半円状の領域魔法が、防御魔法だと思っていた。しかし、それを通過して金次の身体にモロに当たった。

 

 一気に血の気が引いていく。放った魔法の殺傷能力は低かった。だが、それも複数個となるとそうもいかないだろう。身体中の打撲、病院送り。それが頭をよぎる。地面に倒れ込む金次。だが、

 

「スターーート!!」

 

 次の瞬間、金次は大地を踏み締めて一科生目掛けて走り始めた。彼は何事もなくピンピンしていた。

 

「何で!?……ぐはぁ!?」

 

「まず一人目」

 

 金次は、一番距離が近かった男子生徒の腹に拳を一発ぶち込んだ。壮絶な痛みに耐え切れず、お腹を抑えて地面に倒れ込む。

 

「次、お前な」

 

「なっ!?来るな!!」

 

 金次にCADを向けて魔法を連射する。だが、これを金次は障壁魔法を展開せず、己が身体で回避する。常人ではあり得ないスピードで。

 

「はぁ!?」

 

「二人目」

 

 金次はさっきと同様、腹を拳で貫き、グラウンドに倒れた相手はジタバタと痛みに悶絶している。

 

「自己加速術式だ!減速をかけろ!」

 

「違うんだなぁこれが!」

 

 一人また一人と、腹パンで沈めていく金次。一向に魔法が効いてる様子を見せない金次を恐れて、次々とその場から退散していく一科生。その様子を、克人と真由美は校舎の陰から眺めていた。

 

「ねぇ十文字君、私の目には金ちゃんに魔法が直撃したように見えたのだけど、何で動けているのかしら?」

 

「アイツの魔法だろう」

 

「……………」

 

 それは分かっている。魔法でなければ一体何だというのだ、と言うような目で克人を軽く睨む。

 

「スマン、少し意地悪だったな。だがな七草、他人の魔法を詮索するのはマナー違反だぞ」

 

「………ごめんなさい」

 

 当然の叱責に謝罪を示す真由美。

 

「だが、口外しないなら金次も許してくれるだろう」

 

「十文字君は知っているの?」

 

「金次自身から聞いた話だが、アイツの使う領域魔法には、ある特殊な力があるんだ」

 

「特殊な力……?」

 

「なんでも金次のやつは、自分の身に起きた、あらゆる事象を改変することができるらしい」

 

「…………は?」

 

 真由美は衝撃を受け、何度も目を瞬かせていた。驚いて開いた口が塞がらない真由美を見て、「俺も初めはそんな感じだった」と克人は共感し笑った。

 

「それって、治癒魔法ではないの?」

 

「金次曰く、身に降りかかったありとあらゆる負傷を、全ての事象を無かったことにできる。それは、魔法以外の攻撃で傷を負っても同じだ。効果は永続的に続く、そう言っていた」

 

「そ、そんなことって…………」

 

 魔法による治療は一時的なもの。それが治癒魔法の原則である。効果が持続する内に何度も掛け直しすることで、偽りの治癒を世界に定着させることが出来る。

 

 だが金次は違う。彼には継続的な施術が必要ない。彼が領域内にいる限り、損傷を受けること無く時間が経過した状態でこの世界に定着するのだ。

 

「ちゃんと痛みは感じるらしい。けどそう見えないのは、単なるアイツの痩せ我慢だ」

 

「やばい、次の授業始まっちまう。あっ、兄貴に真由美こんな所で何やってんだよ。早くしないと授業始まるぜ」

 

 肩を回しながら校舎に歩いて来た金次。

 

「金ちゃん、グラウンドで倒れている生徒はどうするの?」

 

「放っておけよ。しばらく立てないだろうからさ」

 

「やり過ぎだ金次」

 

「ちゃんと手加減したさ」

 

 目の前で克人と話している金次を見て真由美は思う。金次に勝てる魔法師は、自分が知りうる魔法師の中には誰もおらず、もしかしたら、日本の何処にもいないのかもしれないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、二限目と三限目の間の休み時間にも、金次と一科生達の戦いは起こった。結果は勿論、言わずもがなである。グラウンドで立っているのは金次のみである。

 

「さーて、教室に戻るか」

 

 それがしばらく続いた。お昼休みも放課後も次の日もその次の日も、金次は一科生と戦い続けた。そして勝ち続けた。来る日も来る日も向かって来る一科生を腹パンで沈めていく日々が、なんと二週間も続いたのだ。

 

 こんなにめげずに向かって来るとは、金次も思っていなかった。終盤は金次が熱くなって相手をヌンチャク代わりにしたり、プロレス技を掛けたりと楽しんでいた。

 

 そして第一高校の中で、金次は最強の称号を手にしたのだった。誰も金次に向かって来る者がいなくなった頃、ようやく一科生は大人しくなった。大人しく歯噛みしながら椅子に座って授業を受けた。

 

 

 

「やっと終わったわね」

 

 生徒会室で、お菓子をボリボリと食べる生徒会長。

 

「まさか、本当に全員倒しちゃうなんて」

 

 ズズズッとお茶を飲む副会長。

 

「だから言っただろ?負けねぇってよ。信じちゃいなかったのかよ」

 

「いやいや、信じていたとも。よくやった金次君」

 

 生徒会長のわざとらしい言い方にムッとした金次は、彼女の食べているお菓子、良いとこの店の煎餅を強奪する。

 

「あっ!最後の一枚だったのに」

 

「ふるへぇお(うるせぇよ)」

 

 隣にいる真由美が「私も食べたかったのに」と不満を漏らしている。その様子に「やれやれ」とため息を吐く克人。すると副会長はコホンッと咳払いした。

 

「そろそろ真面目な話に戻りましょうか。その後の皆んなのクラスはどんな感じなの?」

 

「個別指導を受けられない事に対しての文句は今も続いていますが、金次君のお陰でクラスの雰囲気も落ち着いて来ました」

 

 そう言ったのは市原である。最も、金次のお陰というのは少し違う気もする。金次は自分で騒ぎを起こして自分で鎮圧した。まさにマッチポンプだ。

 

「私と金次君のクラスも同じです」

 

「アイツらの怒った顔は傑作だったな中条」

 

「いえ、凄く怖かったです………」 

 

 金次の机の周りを囲んで「何故こんなことを?」や「すぐに元に戻せ!」なんて言ってクラスメイトが大変ご立腹であったが、

 

「黙れ」

 

 と言って金次は一蹴した。その様子を隣でビクビクしながら目に涙を溜めていたのがあずさである。

 

「しかし会長、十文字に勝てないからと二科生に八つ当たりする者も現れています」

 

 服部は風紀委員からの報告書を見てそう言った。

 

「まぁ、そういう奴も出るわな」

 

「それに、今まで一科生が受けていた恩恵を二科生が手にしたことで、態度がデカくなったという報告も」

 

「全く、人間ってなんて愚かなのかしら」

 

 生徒会長はため息を吐き頭を抱えた。今まで蔑まれていた分、態度がデカくなったのかもしれない。だけど実力は何も変わっていない。かえってボコられるだけだろうに。

 

「あ〜あ、ホント嫌になっちゃう」

 

「全くだ、つうかよ5月もあっという間に終わるな」

 

「金ちゃんが入学したのが、つい最近の事だと感じちゃうわ」

 

「7月に入ると九校戦の準備で忙しくなりますね」

 

「九校戦か〜、準備やだな〜」

 

「会長、もう素を隠さなくなりましたね…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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