政略結婚で嫁いだ先は国民全員がサンタクロースの王国でした   作:北河ゆん

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第8話「見積もりの旅~黄金の洋服の街・錦舞国~」

 洋服の街――(きん)(まい)(こく)は、リュナリア王国よりも小さい国で、町ほどの大きさしかない。

 木造建築が立ち並んでいる所らしい。

 金をお菓子に張り付ける文化もあるようだ……是非食べてみたい。

 

 馬車の扉を叩く音が聞こえる。

 目を微かに開け、扉を開ける。

 

「リリシラ様、お初にお目にかかります。(はな)(ひめ)と申します。そちらに寝ておられるのは、ルナセインさんですね」

「ええ」

 

 (はな)(ひめ)は着物という、この国特有のものを着ている。

 華やかなドレスに比べて、落ち着いている雰囲気。

 

「ラスファインさんも、お城に行かれますか?」

「僕は……このあたりでゆっくりしていますので、お気になさらず」

「そうですか、残念です……ルナセインさん、リリシラさん、こちらに来てください」

 

 ルナセインを起こし、(はな)(ひめ)をあとに着いていった。

 

 お城は五階建てで、全体的に白く塗られていて、屋根の上には猫耳のような突起が上に付いている。

 城に入ると、木の香りが鼻をくすぐる。

 

「こちらです……」

 

 (はな)(ひめ)は四枚の壁のうち、中央の二枚に両手を伸ばし、ゆっくりと動かした。

 奥には一つの部屋があり、真ん中に一人の男性が座っていた。

 

「よくぞお越しくださいました、リリシラ殿、ルナセイン殿。拙者、(きん)(まい)(こく)を治めている、播磨(はりま)友禅(ゆうぜん)と申します。さあさあ、どうぞお掛けください」

 

 私とルナセインは、一枚のクッションに腰を下ろす。

 ルナセインの座り方を見ながら、真似してみる。

 この姿勢は足に負担がかかる。

 時間が経つたびに、ビリビリと足の裏に変なのが流れる。

 

「こちらでございます」

 

 ルナセインは、播磨(はりま)友禅(ゆうぜん)に見積もりの書かれた紙を渡した。

 播磨(はりま)友禅(ゆうぜん)はそれに目を通し、言った。

 

「確かに、頂戴しました。手紙から設計図を作る工程を、半分ほど手伝わせてはもらえないだろうか?」

「いえ、結構です」

 

 私は、ママーラから預かった伝言を播磨(はりま)友禅(ゆうぜん)に届けた。

 

「八割ほど終えているので、お気遣いは不要でございます」

 

 八割終えているというのは、相手に納得させるための常套句であり、実際は一割ほどしか進んでいない。

 しかし、お金を渡す頃には終わっているだろうと、言っていた。

 

「なるほど。八割終えているなら、手助けは不要ですね」

「では、おいとまさせていただきます」

 

 ルナセインは片足を立て、固まっている。

 勿論私も、同じ状態になっている。

 

 膝が笑っちゃって、立ち上がれない。

 思わず自分の足を見つめてしまう。

 膝の笑いが治まり、立ち上がったときには、ルナセインの姿はなかった。

 

「ルナセインさんは、どちらへ?」

「一足先に帰られましたよ」

 

 すぐに私は、壁の方へ振り向いた。

 

「リリシラさん、帰られる前に(あな)()()という茶屋に寄ってもらえないですか?」

「ええ、寄ってみます……」

 

 すぐに、馬車に戻ってしまったルナセインに、疑問を持ちながら馬車に戻ることにした。

 城の門の前で、ルナセインが一人の男性と話している姿がみえる。

 私は駆け足で、近づいた。

 

「ルナセインさん、早いですよ」

「ごめん……恥ずかしくて、足が勝手に逃げていた。申し訳ない」

「この方は?」

穴屋場(あなやば)を営んでいる。(あな)()(とし)(ぞう)でございます」

(あな)()()? あっ、播磨(はりま)さんから寄ってほしいと言われた所……」

「ご存知でしたか。では、穴屋場(あなやば)に参りましょう」

 

 (あな)()(とし)(ぞう)は歩き出した。

 

 私たちも、後に続く形で歩き出す。

 周りの光景は、木造建築が並び、石やレンガで作られた建物とは違う雰囲気が漂っていた。

 

 (あな)()(とし)(ぞう)は一軒の家に入っていく。

 その家の周りには、赤い布が掛けられた椅子が並んでいる。

 

「お待たせしました」

 

 (あな)()(とし)(ぞう)は、大きい皿の上に小皿を二つ載せて、それぞれに抹茶のカステラを二切れずつ盛って差し出した。

 

「金箔抹茶カステラでございます」

「金箔?」

「金箔というのは、金を薄くしたものです」

「おお……」

 

 ......金って、食べられるの?

 装飾品とか、食器とかに使われるものじゃないの?

 赤い布が掛かっている椅子に座り、カステラを口に入れる。

 噛む前に、ルナセインの方をみると、金箔を包んでいる抹茶のカステラを口に放り込んで噛んでいる。

 金箔は、食べられるものみたいだ。

 細い木製のフォークで半分にして、口に入れる。

 舌で、カステラと金箔を分けた。

 抹茶のカステラは、かなり味が染みていて噛めば噛むほど、深い茶の味わいが口に広がる。

 金箔は、口に溶ける紙を食べているみたいで、味はない。

 

「どうでしょうか? リリシラ様」

「ええ、美味しいです。金箔って必要ですか?」

「見栄えという部分では、必要です」

 

 なんだ、現地の人もそう思っているのか。




次の第9話「見積もりの旅~野菜の楽園~」は3月1日18:00投稿
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