創世のアームズ・ディーラー〜現代と異世界を駆け回る貧乏高校生の武器商売奮戦記! 作:大和タケル
オレは目の前にいる舐めきったアルミラージを鑑定する。
アルミラージ Lv5
魔法障壁 Lv1
スキル 角突進
ふむふむ、アルミラージはすばしっこいという事だが、角突進には要注意だな。
色々な事を考えていると、不意にヤツと目が合う。
ニヤリ。
一瞬、アルミラージが笑った様な気がした。そして、また何食わぬ顔で人参を食べ始める。
「こいつぅ、舐めやがってぇぇー!」
ブゥーンッ!
オレは怒りにまかせて剣を振るう。しかし、刃が当たる寸前に見事な横っ跳びでかわされ、下手くそと言わんばかりに笑みを浮かべると、どこかへ逃げ去ってしまった。
「タケじい、狩れる気がしないよぉー」
「カッカッカッ、かすりもせんかったのぅ」
「アドバイスはないのかよ?」
「自分で考えるのも修行じゃ。しばらく頑張ってみるのじゃ」
「勿体つけやがって、このクソじじいー!」
それから数時間、ひたすら剣を振り回し、寸前で逃げられる事を繰り返し、疲れ果てて地面に倒れ込んだ。
「ハァハァハァ……ちくしょおおおー!」
全く当たらない事にイラ立つオレを見かねて、ようやくタケじいがアドバイスをくれた。
「創真よ、前にワシが教えた事を思い出すのじゃ」
そう言えば、深夜の素振りでタケじいが言ってた小さく振る事。
斬ろうと振るのではなく、当ててから振り斬る、そして、2撃目は突きだ。これを深夜に練習させられた事を思い出し、連撃の型をゆっくりなぞる。
「イチ、ニー、サンッ!」
「どうやら思い出したようじゃな。それに剣のスキルを合わせるのじゃ」
オレは舐めきって人参を食べているアルミラージに向き直り、言われた通りにやってみる。
まずは瞬歩で一気に距離を詰める。
ザザァーッ!
突然、目の前に現れたオレに驚くアルミラージ。そこへ腕を小さく折りたたみ、肩から素早く振り下ろす。
シュッ!
当たった! そのまま一気に振り抜く。
ブゥンッ!
むっ、手応えが弱い。毛皮にかすっただけだ。しかし次の瞬間、アルミラージが危機迫る顔で横っ跳びをするが、2撃目がそれを逃さない。
ザクゥーッ!
2撃目の突きが、アルミラージの胴体を空中で捉えていた。
剣に刺され、もんどり打つアルミラージは、やがて魔石に変わり地面に落ちた。
ポトリ。
パチパチパチ。 「よくやった!」
タケじいが褒めてくれた。
とても嬉しくてガッツポーズをしていると、なぜかタケじいが困った顔になる。
「創真よ、もうすぐ日没じゃ。あと1匹倒さねば宿には泊まれんぞ」
そう言われて辺りを見ると既に薄暗くなっており、帰りの時間を考えるとあと1匹狩れるかどうか……。
「絶対あの宿に泊まりたい!」
強い思いで人参畑を駆け回り、辛うじてもう1匹を仕留める事ができた。
結局、今日の戦果はアルミラージ2匹と不甲斐ない結果に終わり、2時間歩いて東門に着く頃には辺りがすっかり暗くなっていた。
「マズい、カレンさんに怒られるよぉー」
疲れた体にムチ打って走り、ギルドに着いたのは午後の7時過ぎ。換金所のカレンさんがニコニコして出迎えてくれた。
「ソーマ、今日は時間を守れたね。良い心懸けだよ。それで、今日も凄いのを見付けて来たんじゃないだろうね?」
「残念ながらアルミラージ2匹です」
「アハハハ、それが普通だよ」
カレンさんから銀貨1枚を受け取り、推しの宿、和倉屋へ向かう。
「いらっしゃーい、あれっ昨日のお客さんですね。今日もお泊りですか?」
「はい、お世話になります」
そう言ってカウンターに銀貨1枚を置き、昨日と同じルームキーを受け取ると、部屋に荷物を置いて露天風呂へ直行した。
ザップーン!
「いい湯だなぁ、疲れた体に沁み渡るぅー」
露天風呂を堪能して部屋に戻ると、持ち込みの非常食で腹を満たす。
「明日こそは宿の夕食にありつくぞー」
オレは決意を固めてベッドに入った。
・・・・・
チュン、チュン……。
「おはよう創真、朝じゃぞぉーい」
モーニングコール、いやモーニングじじいの囁きで目が覚めた。
「うわっ、タケじいか、一体どうしたんだ?」
「おめでとう創真、レベルが5に上がっとるぞ」
「タケじい、今日は朝から何か変だぞ?」
「まぁなんじゃ、とりあえずステータスを見てみぃ」
恥ずかしいが例の呪文を唱える。
「アイズウィンドウ、オープン!」
大和創真 Lv5
魔法障壁 Lv1
ジョブ 商人(アームズ・ディーラー)
スキル
1、英雄遺伝子
2、.異世界転移
3、交渉術
4、短剣術
5、剣術 必殺技:連撃
おおっ、スキルに剣術が追加されている。そして、カッコイイ必殺技が出てきた。
「なぁタケじい、必殺技を発動する時は連撃ぃーって唱えればいいのかな?」
「ばかもん! 唱える必要があるのは異世界転移だけで、他は自動発動じゃ」
あれっ? 交渉術発動とか言ってたような……ちょっと恥ずかしくなった。
でも、これでレベルはアルミラージと互角。今日こそはクエストをコンプリートして、宿屋の夕食にありつこう。いやいや鋼の剣を購入しようと心に決めた。
コンコン、コンコン。
どうやら朝食の準備が出来た様だ。オレは身支度を整えると、腹一杯に食べて和倉屋を出発した。
【第23話 難敵アルミラージ 完】