創世のアームズ・ディーラー〜現代と異世界を駆け回る貧乏高校生の武器商売奮戦記!   作:大和タケル

39 / 88
第39話 八咫烏

 なぜか一騎討ちをする羽目になったオレは、その場に佇んで慌てふためく。周りの観衆はオレとボス鳥を中央に残し、数歩下がって円状に取り囲んだ。

 

「タケじい、タケじい、大変な事になっちゃったよおおおー」

 

「慌てるでない創真よ、まずは鑑定じゃ」

 

 目の前で、既に勝った気でニヤけているボス鳥を鑑定する。

 

八咫烏(ヤタガラス) Lv20

魔法障壁 Lv2

スキル 鑑定、念話、千里眼

 

「おいおい、レベルが20もあるじゃないか。オレはレベルが8しかないのに、どうやったら勝てるんだよおおー?」

 

「ふーむ、やはり八咫烏か。随分と久しぶりじゃのぉー」

 

「タケじいは八咫烏を知っているのか?」

 

「まぁな。1800年前にワシに仕えておった魔物じゃ。弱点も知っておるぞえ」

 

 どうやら弱点がある様で、少しだけ希望が出てきた。

 

「創真よ、ワークマンで買った警笛を準備するのじゃ」

 

 前から気にはなっていた。なぜワークマンで笛を買う必要があったのか?

 

 きっと、タケじいは八咫烏に遭遇する事を知っていたに違いない。

 

「さすがタケじい、八咫烏と戦う為に笛を用意してくれてたんだね?」

 

「いや、創真が遭難した時に笛で助けを呼べるかなーと思ってな。しかし、思わぬ所で役に立ちそうじゃわい。カッカッカッ!」

 

 タケじいの回りくどい言い方に、余裕の無いオレはイラッとする。

 

「……で、どうすればいいんだよ?」

 

「ヤツは周波数の高い音に弱いんじゃ。おそらくは空からお主の目を狙って特攻を仕掛てくるはず。その時に思いっ切り警笛を鳴らすのじゃ。そして、ヤツが怯んだら、剣の鞘で力一杯殴り付けるのじゃ!」

 

「わ、分かった」

 

 実力のない者が格上に勝つ唯一の方法。それは、タケじいを全面的に信じる事。オレは腹を括った。

 

 そんなオレを睨みつけ、八咫烏が動揺を誘う。

 

「おぅおぅ、兄ちゃん。そろそろ始めてもいいかあ? 逃げるなら今の内だぜっ」

 

 全てをタケじいに預け、開き直ったオレは剣を抜かずに鞘を構えた。

 

「ああ、いつでもいいぜ」

 

「てめぇ、剣は抜かねーのかあ? レベルが8の癖に舐めやがってぇー」

 

 やはり、鑑定のスキルでオレを対戦相手に選んでいた様だ。

 

「それじゃあ、行くぜぇ。謝るなら見逃してやるぜぇ。今の内だぜぇー?」

 

 オレはだんだん面倒くさくなってきた。

 

「いいから早く来いよっ」

 

「後で後悔するんじゃねーぞ」

 

 そう言残した八咫烏は空高く舞い上がり、上空から狙いを定めて急降下する。

 

「今じゃー、創真っ!」

 

 タケじいの掛け声に合わせて、オレは胸一杯に空気を吸い込み、思いっ切り警笛を吹き鳴らした。

 

 ピィィィィィィィィィィィーーーッ!!

 

 甲高い笛の音が辺り一帯に響き渡り、急降下してくる八咫烏が突然方向感覚を失った。そして、きりもみしながら落ちてくる。

 

 オレはタイミングを合わせて、八咫烏の頭を剣の鞘で思いっ切り引っ叩たいた。

 

 ガッコォォォーン!

 

 八咫烏は一回転して吹っ飛び、気を失って地面に倒れた。

 

 予測外の結果に辺りがシーンと静まり返るも、ようやくオレの勝利を確信したパーティーのメンバーが一斉に歓喜の声を上げる。

 

「よ、良くやったぁー、ソーマ!」

「や、やるじゃねーか、ソーマ!」

「わ、私は信じてたよ、ソーマ!」

「ソ、ソーマ!」

 

 喋れよっ!

 

 一方、ボス鳥のまさかの敗北に、魔鳥達は慌てふためいていた。

 

「ク、クエー、ク、クエー、ク、クエー!」

 

「ソーマ、とどめを刺すなら今の内だよッ」

 

 魔鳥の暴発を恐れたキャロルが腕押しするが、オレは皆んなに頭を下げる。

 

「皆んな、このボス鳥はオレの祖先と関係があるんだ。済まないが命を助けてやってもいい……かな?」

 

「ソーマが勝ったんだ。ソーマの好きにするといいさ」

 

 代表してキャロルが答えると、皆もにっこり微笑んで納得してくれた。

 

「皆んな、ありがとう!」

 

 オレは気絶している八咫烏に近づいて体を揺する。すると、目を覚ました八咫烏がオレを見るなり喚き出した。

 

「う、うーん、何が起こったんだ? ……て、てめぇ、覚悟しやがれっ!」

 

 そこへ、タケじいが念話で語りかける。

 

「ヤタよ、お主は創真に負けたんじゃ。神妙に致せ!」

 

 すると、八咫烏が動揺しながらキョロキョロと辺りを見回す。

 

「えっ、その声は、もしや、主様ですか?」

 

「そうじゃ。久しいのう、ヤタよ」

 

 主の声を聞いた八咫烏が目に涙を浮かべて泣き出した。

 

「あ、主様は生きてらしたんですね? ヤタは、ヤタは、うううう……」

 

「違うぞ、ワシは子孫である創真の遺伝子の中におるんじゃ」

 

「そうなんで……ええっ? この弱そうな若造の中にですかぁー」

 

「そうじゃ。相変わらず口が悪いヤツじゃのぅ」

 

「あ、主様、会いとうございましたぁ。うううっ」

 

 なぜか、八咫烏がオレに抱きついて泣いている。しかし、途中で泣き止んで顔をしかめた。

 

「若造、おめぇー臭いぞ!」

 

「放っとけ!」

 

 タケじいの説得もあり、八咫烏とオレは和解した。そして、一騎打ちの約束を守ると共に、鴉の紋が入った御守袋を渡された。

 

「おい若造、取っておけ!」

 

 おおっ、このパターンは虹色魔石かぁー?

 

 オレが御守袋を受け取ると、八咫烏は子分の魔鳥を引き連れて更に東へと去っていった。

 

 こうして、オレ達パーティの魔鳥討伐クエストが終わった。

 

 そして、今日の戦果は魔鳥が54羽で、お金にすると金貨7枚。それにクエスト報酬の金貨10枚を合わせると、金貨17枚の大儲けだ。

 

 ちなみに、1人当りの報酬は金貨3枚と銀貨3枚。残りは諸経費と宴会代になり、御守袋はオレが貰う事になった。

 

 その後、ファームガードはギルドに戻り、カレンさんの所で報酬と高級メロンを受け取ると、例の如く隣の酒場で宴会を始める。

 

「カンパーイ!」

「今日はソーマが大活躍だったねー!」

「ソーマ、オレの酒が飲めねーのかあ?」

「ソーマ、素敵だったわぁ!」

「ソ、ソーマ……」

 

 はいはい、何も言わないのね。

 

 いつもの様に、美味い酒と肴。そして、とろける様な甘い高級メロンを食べながら楽しい夜は更けていった。

 

 今日はディーンの絡み酒を上手く交わしたので、ホロ酔い気分で和倉屋の露天風呂に入る。

 

「はぁぁー、生き返るぅぅー!」

 

 心も体もスッキリし、部屋に戻って鴉の御守袋を開けると、中から出てきたのは予想通り虹色の魔石。そして、付随能力は超レアスキル『千里眼』であった。

 

 

【第39話 八咫烏 完】

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。