創世のアームズ・ディーラー〜現代と異世界を駆け回る貧乏高校生の武器商売奮戦記!   作:大和タケル

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第57話 バカ大臣

 水曜日出発、異世界勉強2泊3日の旅3日目。

 

 勉強もした。アウレに日本刀も渡した。後は鋼の剣を10本持ち帰るだけ。

 

 オレは宿の朝食を控えめに食べて日本へ帰還した。

 

 ガタン。

 

「あら? 創真、お帰りなさい」

 

「ただいまあー母さん」

 

 秘密を話してから2回目の帰還で、母もだいぶ慣れた様だ。

 

「朝食出来てるわよー」

 

「今行くよ」

 

 急いで学校の準備を済ませると、食卓に座り2回目の朝食を取った。

 

「いってきまーす」

 

「いってらっしゃーい」

 

 いつも通りの日常。心なしか、母が普段より元気に見える。パートのシフトを減らしてくれたのかもしれない。

 

 オレのやっている事が母の役に立っていると思うと、なんだか嬉しい。

 

「創真くぅーん、おはよう」

 

「おはよう、香織」

 

 いつもの通学路、いつも以上に元気な挨拶。昨日の別れ際のキスで、少し気まずさを感じていたが、それは杞憂に過ぎなかった。

 

「香織、昨日は勉強に付き合ってくれてありがとう」

 

「いいえ、どういたしまして。また、一緒に勉強しようね」

 

 カワイイー!♡

 

 オレは照れながらうなずいた。

 

「ところで創真君、昨日のニュース見たぁ?」

 

「ああ見たよ、レールガンの事だろ?」

 

 香織は悔しそうに訴える。

 

「あの憎ったらしい浜井のバカ大臣がね、もう必要ないからって、お父さんのゴブリン対策室の縮小を決めちゃったのよ!」

 

「なんだってぇー、ゴブリン対策室が無くなるって事なのか?」

 

「ううん、それは分からないわ」

 

 すると、香織が囁やき声に変わる。

 

「でもね、昨日の夜に河田さんが家に来て、お父さんと話しているのを廊下でこっそり聞いてたの。そしたらね、今回の作戦からGAT隊を外すそうなのよ」

 

「ええっ?」

 

 香織さーん、いったい君は家で何をやっているんだい? とツッコミを入れたい所だが、GAT隊がマズい状況にある事が分かった。

 

 香織は頬を膨らせたまま話を続ける。

 

「お父さんは、レールガンの護衛にGAT隊を充てるように何度も進言したんだけど、あのバカ大臣が全て却下したそうよ」

 

「レールガンに接近されると危ないな」

 

「そうなのよ、固定砲台には必ず護衛が必要なのに、素人の2世バカ大臣が……」

 

 香織さん、あなたは間違いなく真壁家の人ですよー。

 

 オレ達は熱い議論を交わしながら学校へ向かった。

 

・・・・・

 

 1限目の授業中、先程聞いた香織の話に考えを巡らせる。

 

 それにしても、レールガンに護衛無しとはあまりにも危険だ。そこを突破されると九州内陸まで遮る物が無い。

 

 GAT隊が護衛につけば、内陸への流出も阻止出来るのに、軍隊である以上は命令違反など出来ないだろう。かと言って、むざむざ見過ごす訳にもいかない。多摩湖の惨劇は、もうこりごりだ。

 

 よし、こっそり鹿児島へ行ってみよう。

 

 オレはタケじいに念話で話す。

 

「タケじい、転移の魔法で鹿児島まで行けないかな?」

 

「うーむ、それは無理じゃ。お主、鹿児島へは行った事が無いじゃろ?」

 

「それなら、一度行けば次からは転移が出来るのか?」

 

「そうじゃのぅ、一旦異世界へ行き、インターバルをおいてから鹿児島へ行く事になるがのぅ」

 

 なるほど、オレのスキルは異世界転移。どこでもドアみたいに同じ世界の転移は出来ない様だ。

 

「分かった、ありがとうタケじい」

 

 今後の方針が決まった。土曜日に鹿児島へ行き下見をする。そして、日曜日は陰からレールガンを護衛する事にしよう。

 

・・・・・

 

 お昼休み。

 

 オレは昼食後に慎吾とだべっていた。

 

「なあ慎吾、日本刀の材料で玉鋼って知ってるか?」

 

「へえー、創真から玉鋼と言う言葉が出てくるとは意外だねぇー」

 

 どうやら、慎吾は玉鋼を知っているらしい。

 

「名前からすると鉄って事は分かるんだけど、それが何なのか知りたいんだ」

 

 慎吾は少し考えてオレを見る。

 

「少々長くなるぞ。ついて来れるか?」

 

 真面目な顔で慎吾の目を見てうなずくと、玉鋼の説明が始まった。

 

「まず鋼という物は、鉄に炭素を少し混ぜて硬くした物なんだ。詳しく言うと、鉄(Fe)100%の物を『純鉄』。これは柔らかくて爪でキズが付く程だ」

 

「純鉄ね!」

 

「次は、鉄に炭素を0.1〜3%を含ませた物を『鋼』と言う。これはものすごく硬くて、世の中のほとんどの構造物、例えばこの学校は鉄筋コンクリートだけど、その鉄筋とかに使われている。学術用語で炭素鋼と言うんだ」

 

「うんうん、炭素を少し混ぜたものが鋼って事ね!」

 

「最後に、鉄に炭素を3%以上含ませた物を『鋳鉄』と言って、そこまで強度を必要としない構造物に使われているんだ。これは溶かして好きな形に加工出来るのが特徴だ。ここまで、良いかぁ?」

 

 サリーちゃんの説明みたいに、また脳みそがお粥になると思ったが結構理解できる。交渉スキルのお陰だろうか?

 

 オレは頷いて続きを促す。

 

「ああ、大丈夫だ」

 

「よし、それで、この鋼なんだが、炭素の微妙な変化で硬さが変わってくる。一般的には1%が一番硬くなるんだが、ここまでは成分の話。次に製造方法の違いによって、更に硬度を上げる事ができるんだ。鍛造と言ってな、刀鍛冶がハンマーで鉄を叩いているのを見た事ないか?」

 

 あぁ分かる、アウレが叩いているのを見た。しかし、どう答えようか? まさか異世界で友達の鍛冶屋が鉄を叩いていましたなんて答えたら、慎吾は驚くだろうなぁー。

 

「ああ、テレビで見た事があるよ」

 

 慎吾はオレが話について来てる事に安心し、よしよしと頷きながら話を続ける。

 

「それでな、鉄の加工は鋳鉄から始めるんだが、それを叩いて不純物を抜く。同時に板を曲げて鉄の層を何枚にも重ねていく。そうする事で硬度以外にも強度、正確には引っ張り強度と言うんだが、硬くて折れない鋼が出来上がるんだ」

 

「まだ玉鋼が出てきて無いんだが……?」

 

 オレが不満げに尋ねると、慎吾が得意げに答えた。

 

「まぁ焦るな、ここからが玉鋼の話だ!」 

 

【第57話 バカ大臣 完】

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