創世のアームズ・ディーラー〜現代と異世界を駆け回る貧乏高校生の武器商売奮戦記! 作:大和タケル
木曜日のお昼休み。オレは慎吾に
「さて、玉鋼の話をする前に、創真は『もののけ姫』を観た事があるか?」
「ああ、ジブリだろ。何回もテレビで見たよ」
「うん、その中で村の女達が木のふいごを踏んでいるシーンを覚えていないか?」
ジブリは大好きだ。中でも、トトロ、ラピュタに次いで3番目に好きなアニメがもののけ姫だ。
えーと、村の女達が出てくるシーン……?
そうだ、アシタカが助けられた要塞の村で、気が強そうな女の人達が交互に木の板を踏んでいる場面。
「ああ、思い出した!」
「それはタタラ踏みと言ってな、砂鉄と木炭を土釜に入れて3日間燃やし続ける為に空気を送っているシーンなんだが、この昔の製鉄技術であるタタラ製鉄でしか玉鋼を作れないんだ」
オレは不安になって聞き返す。
「今はタタラ製鉄をしてないのか?」
「ああ、今は高炉製鉄と言って鉄鋼石から作っているんだ。この作り方は大量生産出来るんだが、不純物が多く入ってしまうので玉鋼は作れない。対して、タタラ製鉄は純度の高い砂鉄に少しづつ炭素を入れていく方法なんだ。だから純度の高い鋼、つまり玉鋼が出来るって訳だ」
ようやく玉鋼が出てきた。オレは続きが気になって慎吾をせかす。
「それで、玉鋼で刀を作ると、どうなるんだ?」
「何層に折り曲げても割れない。多層構造の刀身の出来上がりだ!」
なるほどね、アウレが水晶の映像をを見て唸っていたアレかあー。
「それで、玉鋼はどこで作っているんだ?」
「それがな、日本に1ケ所しか無いんだ。ヤスキハガネって聞いた事ないか?」
「ヤスキ?」
慎吾は、オレが理解不能と見て説明を加える。
「いやぁ、ごめんごめん。ヤスキは島根県にあるんだ。そして、これ以上の事は俺も知らない」
「島根県……かなり遠いなぁ。だけど、どうして慎吾は、こんなにも鉄に詳しいんだ?」
「俺の親父が鉄鋼関係の仕事をしててな、鉄マニアなんだ。それで小さい頃から色々聞かされている内に詳しくなっちまったんだ。他にもレアメタルを使った特殊鋼とかあるんだが……」
キーンコーンカーンコーン。
どうやら時間切れの様だ。慎吾はまだ話したいみたいだが必要な事は聞けた。
あとは具体的にどうやって作っているかだが、ヤスキへ行って実際に見てくる必要があるなぁ。
さて、どうしたものか……?
オレは午後の授業が始まったので、玉鋼の作り方を一度棚上げする事にした。
・・・・・
放課後になり、オレは隠れ家で東雲さんとアイスコーヒーを飲んでいる。
「創真君、こんなに早くありがとう」
「いいえ、こちらこそ毎度ありがとうございます」
そう言って500万円の請求書を、そっと差し出す。すると、東雲さんが不安そうに聞いてきた。
「あと15本だけど、土曜までに何とかなるかな?」
「はい、大丈夫です!」
オレが自信を持って答えると、安心した東雲さんが探るような目つきをする。
「ところで創真君。今日は、いつもと感じが違うわねぇ。堂々として自信にあふれてるというか……、きのう香織ちゃんと何かあったでしょう?」
ギクぅー!
な、何で分かったのー、女の感というヤツかあー?
東雲さんは、あたふたしているオレを見て楽しんでいる様だ。
慌てて弁解しようと口を開けた時、話が突然すり替わった。
「それで、日本刀は役に立ったのかな?」
「は、はい、大いに役立ちました。それで、東雲さんにお願いがあります」
「ふぅーん、何かなぁー?」
思い切って話したオレに、妖しげな眼差しの大人の視線が突き刺さる。
オレは負けずに話を続けた。
「た、玉鋼の作り方を見学したいんです。何か方法がありませんか? できれば、日本刀の作り方も……」
「日本刀の作り方ねぇ……」
しばらく思考を巡らせた東雲さんが、ますます妖艶な笑みを浮かべる。
「創真君は、いつから夏休みなのかな?」
「えーと、来週は期末テストだから、再来週からになります」
すると、東雲さんがノートパソコンを立ち上げて何かを調べ始めた。
カタ、カタ、カタ……。
「うん、これならイケるわね」
再び、東雲さんが小悪魔的な笑みを浮かべる。
「創真君には武器調達50本達成のご褒美をあげましょう! 出雲刀鍛冶見学ツアー3泊4日の旅。チケットは3人分、友達をあと2人連れて行っても良いわよ。但し、1人は香織ちゃんね。でも2人きりはダメよ、私が真壁閣下に叱られてしまいますからねー」
「東雲さーん、楽しんでいませんかぁー?」
「うふっ!♡」
隠れ家での有意義な時間だった。
・・・・・
夕食後、オレは本日2回目の行ってきますを母に告げて、木曜日出発異世界討伐の旅へ出かけた。
今回の目標は鋼の剣をあと11本購入する事。金額にして金貨5枚と銀貨5枚を稼ぐ必要がある。
オレは和倉屋に転移すると、直ぐにギルドへ向かった。
ギルドに着くと最初に伝言板を確認したがメッセージは無く、続けてマップを見るとオーガ虫の特価が無くなっていた。
どうやら、他の冒険者の協力もあってか、オーガ虫は無事に駆除されてしまった様だ。できれば、もう一度だけ美味しい思いをしたかったのだが……。
改めて、マップから鴉部隊と兎部隊に見合うレベルの魔物を探す。
今ではバフスキルのお陰で鴉部隊はLv16、兎部隊はLv8と選択肢はかなり広がった。
今日はあと半日しか無いのでスピードの速い鴉部隊を、明日は兎部隊として日程を立てると、それぞれのターゲットの魔物を決めてオレはギルドを出発した。
【第58話 ジブリと玉鋼 完】