創世のアームズ・ディーラー〜現代と異世界を駆け回る貧乏高校生の武器商売奮戦記!   作:大和タケル

59 / 88
第59話 回復スキルを持つ者

 木曜日出発、異世界討伐2泊3日の旅1日目。

 

 ここは転移の丘。

 

 オレとヤタは地面に座って言い争いをしており、その周りで鴉部隊20羽が事の成り行きを見守っている。

 

「だからぁー、マモシの方が楽だってばあ」

 

「イヤだッ! せっかくレベルが上がったのに、なんで弱っちいマモシなんか狩らにゃならんのだ。アァーン?」

 

「じゃあ何を狩るってのさー?」

 

「そりゃー決まってるぜ、Lv16の魔鳶よっ」

 

「おいおい、せっかくバフスキルのお陰で鴉のレベルが16へ上がったのに、同格の相手だと意味がないじゃないかあー」

 

「フンッ!」

 

 ヤタは話も聞かずにそっぽを向いた。

 

 魔鳶(マトビ)

 

 鴉と同じ雑食でエサの競合相手だ。体格が鴉より一回り大きいため、たびたびエサを横取りされ、鴉達はいつも苦汁を飲まされているとの事だ。

 

 仕返ししたい気持ちは分からなくもないが、レベルが同じでも体格はあちらが上。オレとしては堅実路線でいって欲しいのだが……。

 

「タケじい、笑ってないで何とか言ってくれよー」

 

「カッカッカッ! まぁ良いではないか。一度やらせてみてはどうじゃ?」

 

 タケじいが言うのならと渋々うなずき、上空を我が物顔で滑空している魔鳶を眺める。

 

 ヤタも上空の魔鳶に狙いを定め、いざ先陣を切って飛び立とうとした時、タケじいが呼び止めた。

 

「ヤタよ、魔鳶は多彩なスキルを持っておるゆえ気をつけるんじゃぞ。特にクチバシインパクトには要注意じゃ」

 

「主様、お気遣い感謝します。期待して待ってて下さい」

 

 オレもタケじいに倣って、ヤタを後押しする。

 

「あっ、待って。オレからも報酬を追加するよ。かっぱえびせんの他に、新商品『ヨっちゃん』も付けるから、ガンバってね!」

 

「ヨっちゃん? まぁ期待しておくよ。じゃあな、創真」

 

 心なしか、ヤタの口調が変わった様な……。

 

 やがて全ての鴉部隊が上空へ飛び立つと、しばらくして各所で戦闘が始まった。

 

 オレは転移の丘にある小高い岩に腰掛けて戦況を見守る。

 すると、ちょうど前方にいる鴉部隊が3羽1組になり、大空に漂う鳶に襲い掛かった。

 

 カァー、カァー、カァー!

 

 ピーヒョロロー!

 

 3対1とは、ヤタも考えたもんだと思いきや、3羽ともただ突撃するだけ。連携も何もあったもんじゃない。

 

 案の定、全ての攻撃が躱されると、鳶の必殺技クチバシインパクトが炸裂した。そして、必殺技を食らった1羽がキリモミしながら地上へ落ちていく。

 

 戦闘開始から、あっという間に2対1。このままではきっと負ける。他の鴉部隊も苦戦しており、かなり厳しい状況だ。

 

「これは、かなりマズいぞ」

 

 オレは急いで鴉と鳶を鑑定した。

 

魔鴉 Lv 16(補正)

魔法障壁 Lv1

スキル クチバシ突進、闇魔法(黒霧)

 

魔鳶 Lv 16

魔法障壁 Lv1

スキル クチバシインパクト、シノ爪、番線カッター、ラチェットキック、モンキーパンチ

 

 魔鴉と魔鳶、レベルは同じだがスキルの数で圧倒的に負けている。しかし、バフ補正によって新たに出てきた闇魔法。ここから勝機を見い出せないものか?

 

 まずは黒霧の内容を見る。

 

『黒霧とは、相手の視界を黒霧で覆い目眩ましをする』

 

「コレだ!」

 

 オレはヤタに念話を送った。

 

「ヤタ、聞こえるか?」

 

「ああ、創真か。今、苦戦してて長話しは出来ねえぞ」

 

「じゃあ手短かに言うぞ。部下に黒霧を使わせてくれ。続けて3羽同時攻撃だ!」

 

「へえー創真、指示を出すなんて将らしくなってきたじゃねーか。分かったぜ」

 

 そこから、鴉部隊の動きが変わり始める。

 

 まず鴉のリーダーが黒霧を放ち、魔鳶が黒霧に包まれると3羽同時の一斉攻撃。そして、相手が倒れるまで攻撃を繰り返す。やがて魔鳶が力尽き、旋回しながら地面に落ちて鴉部隊が初勝利を収めた。

 

「よしっ!」

 

 オレがガッツポーズをすると、隣でタケじいが微笑んだ。

 

「フォッフォッフォッ! 良きかな良きかな。敵を知って己を知る。たしかぁ、解体新書じゃったかのぉー」

 

「医学かよっ」

 

 今日の戦果は魔鳶が15羽。金額にすると金貨2枚と銀貨4枚。

 そして、鴉達は日頃のうっぷんを晴らせた様で、ヨっちゃんを食べながら盛り上がっている。

 

「創真、このヨっちゃんは絶品だなぁー。見直したぜ!」

 

 ガクッ。

 

「采配よりもヨっちゃんかよ」

 

 オレは愛想笑いを浮かべながら、次回は人気ナンバーワンのウマい棒で、ヤタにギャフンと言わせてやろうと心に誓った。

 

・・・・・

 

 木曜日出発、異世界討伐2泊3日の旅2日目。

 

 ここは昨日と同じ転移の丘。

 

 山と積まれた人参を乗せたリアカーの横で、オレとイナちゃんが向い合って賭け事をしている。そして、その周りを兎部隊の赤組50羽と青組50羽が事の成り行きを見守っている。

 

「だからぁー、今度は青組が勝つってば」

 

「チッチッチ、創真のダンナ、まだまだ見る目が甘いでやすよ。イナちゃんは赤組が勝つと思うんだぜぇー」

 

 オレとイナちゃんが熱い議論を交わしていると、上空で大きな翼の音がした。

 

 バサッ、バサッ、バサーッ!

 

「それじゃー、俺様も赤組に賭けるとするかぁー」

 

 突然、ヤタが飛び入り参加した。

 

「創真、俺様が勝ったらヨっちゃんだあー。リュックの中に、もう1缶有るのを知ってるんだぜ!」

 

「それじゃ、あっしはキャロットジュースでおねげーしやすっ」

 

 どうやら、ヤタとイナちゃんは共同戦線を張った様だ。

 

 ちなみに、オレが勝ったら、ヤタはかっぱえびせんで我慢する。イナちゃんは人参で我慢する。どこまでも子供みたいなヤツらだ。

 

「いいかい、最初に魔石を100個集めたチームの勝ちだ。いくよっ、ヨーイ、スタート!」

 

 今日のターゲットはLV2の異魔護(イマゴ)。スライ厶の次に弱い魔物で、主に麦畑に潜んでいるバッタ、いや異魔護だ。

 

 麦畑までの長い距離、持久力のある青組が先頭を走り、瞬発力自慢の赤組が徐々に離されていく。それにつれて、ヤタとイナちゃんの声援も激しくなっていく。

 

「レッド、負けたら晩飯抜きだぜえー!」

 

「レッド、クチバシ突進されたいかあー!」

 

 2人の隊長の必死さを見て、オレは勝利を確信していた。しかし、それが間違いだったと直ぐに気付く事になる。

 

 考えてみればイナちゃんはレッドの親分、ヤタは千里眼を持っている。それに両者共にくわせ者。何かあるとは思っていたが、まさか兎がこんなに凄いスキルを持っていたなんて!

 

 突然、レッドが雄叫びを上げた。

 

「朝ー鮮ー人ー参ー!」

 

 すると、遅れていた赤組が息を吹き返し、まるで競馬の差し馬の如く一気に青組を追い抜いていく。

 

 ドドドドドドドドドーッ!!

 

 どうやら、これは回復系スキルの様であった。

 

【第59話 回復スキルを持つ者 完】

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。