創世のアームズ・ディーラー〜現代と異世界を駆け回る貧乏高校生の武器商売奮戦記!   作:大和タケル

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第60話 旅行のお誘い

 イナちゃんが得意げにレッドのスキルを説明する。

 

「創真のダンナ、回復スキル『朝鮮人参』は、半径5メートル以内の味方の体力を20%回復するんだぜぇー。凄いだろう?」

 

「イナちゃん、卑怯だぞっ!」

 

 わめいてはみたものの時既に遅し。赤組が青組を追い越して先に麦畑へ突入する。先を越された青組は、別の麦畑を探してさまよっている。

 

 それを見て、ほくそ笑むヤタとイナちゃん。

 

「創真、勝負あったなぁー!」

 

「ダンナ、観察が大事だぜぇー!」

 

 ヤタがふんぞり返って勝ち誇る。

 イナちゃんも調子に乗っている。

 オレは苦し紛れに質問した。

 

「じゃあ、ブルーはスキルを持って無いのかよ?」

 

「ブルーには、回復スキル『(ガマ)の穂』を付与してやったんだぜぇ」

 

「蒲の穂? それはどんなスキルなの?」

 

 イナちゃんが更に得意げな顔で答える。

 

「ダンナ、回復スキル『蒲の穂』は、味方1人のキズを30%治すんだぜぇー。カッコイイだろう?」

 

 名前は全然カッコよくないが、回復スキルって実はかなり凄くねー? そういえば、スライム戦で腕に火傷を負った時、完治するのに1週間もかかったっけ。

 

 オレはイナちゃんに負け惜しみを吐いた。

 

「次は負けないからなぁー」

 

 結局、赤組が勝利してヨっちゃんとキャロットジュースを差し出す事になった。

 

 キャロットジュースを掲げてイナちゃんが叫ぶ。

 

「みんなー、人参パーティだぜぃ!」

 

 キュー!キュー!キュュー!!

 

 ヨっちゃんを掲げてヤタが叫ぶ。

 

「てめえら、ヨっちゃんパーティだぁー!」

 

 カァー!カァー!カァァー!!

 

 なぜか、鴉部隊もやってきて、転移の丘で大宴会が始まった。

 

 転移の丘に点在する低い石の上に座り、ヤタとイナちゃんが酒を酌み交わしている。そして、どこから持ってきたのか彼らの傍らには蓋の開いた1升樽が置かれていた。

 

「ヤタのダンナ、まっ一杯どうぞ」

 

「イナちゃん、気が利くねー。ワハハハ!」

 

「創真のダンナも、一献どうぞ」

 

 イナちゃんから冷酒の入った木のマスを渡されたオレは、不思議な香りに誘われて一気に飲み干す。

 

 グビッ、グビッ、グビッ、ハァァー!

 

 初めて飲んだ冷酒は意外に美味しかった。

 

「イナちゃん、もう一杯!」

 

 転移の丘の上で、オレと兎と鴉の親睦会がいつまでも続く。やがて西の空が夕日に赤く染まる頃、ようやく宴会が終わった。

 

 今日の戦果は異魔護の魔石が200個。金額にすると金貨4枚。

 

 人参とリアカーの代金を差し引いて、昨日の稼ぎを合わせると、ちょうど目標の金額に到達した。

 

 オレは武器屋で鋼の剣を11本購入すると、和倉屋で露天風呂に浸かり連戦の疲れをゆっくりと癒したのだった。

 

・・・・・

 

 チュン、チュン……。

 

 木曜日出発、異世界討伐2泊3日の旅3日目。

 

 目覚めるとアイズウィンドウが点滅しており、目を擦りながらステータスを開く。

 

「オープン!」

 

大和創真 Lv17 

ジョブ 商人(アームズ・ディーラー)

魔法障壁 Lv1

スキル

1.英雄遺伝子

2.異世界転移

3.交渉術

4.短剣術

5.剣術  必殺技:連撃、切払い、後の先

6.念話術

7.飲酒

8.大食い

9.ボッカ

10.召喚

11.スキルチャージ(初級)

15.雇用 必殺技:ベア

16.……

17.……

 

 うーむ、今回の新しいスキルは無し、残念!

 

 オレは朝食を終えると、鋼の剣10本を抱えて日本へ帰還した。

 

 ガタン。

 

「あら? 創真、お帰りなさい」

 

「ただいまぁ」

 

「朝食が出来てるわよ」

 

「はーい」

 

 母に秘密を話してから3回目の帰還。すでに母の中では日常になってるみたいだ。

 

 オレは本日2度目の朝食を食べて学校へ向かう。

 

「おはよう創真君」

 

「おはよう香織」

 

 いつもの通学路で、オレを待っている香織は今日も可愛い!♡

 

 公園で合流してから学校に着くまでの10分間、あれこれ話をしながら並んで歩く幸せのひと時。

 

 期末テストの事、お父さんの事、昨日の事、そして……。

 

「あのさー、香織は夏休みに、どこかへ旅行に行ったりするのかなぁ~?」

 

 ドキドキしながら、それとなく聞いてみると、予想外の言葉が返ってきた。

 

「毎年ね、家族全員で避暑地へ旅行に行ってたんだけど、今年はゴブリンのせいで、お父さんもお兄さんも忙しくって、それに受験生でしょ。残念ながら、今年の夏は全く予定がないわ。創真君がどこかへ連れてってくれるといいんだけど……なーんて無理よね?」

 

「む、無理じゃ無いんだ」

 

「えっ? うそー! ほんとぉー!?」

 

「ホント!」

 

 香織が満面の笑みを浮かべて抱きついてくる。周りの生徒は顔を赤らめながら、見て見ぬふりをして通り過ぎて行く。

 

 恥ずかしがっているのはオレだけで、香織はお構い無しに聞いてくる。

 

「創真君、本当なのねっ?」

 

「ああ、『出雲刀鍛冶ツアー3泊4日の旅』だ。行くか?」

 

「行く行く、創真君だーい好きぃー!」

 

 今にもキスしてきそうな雰囲気なので、ちょっと香織を落ち着かせる。

 

「香織、周り、周り……」

 

 さすがに周りの視線を感じてか、我に返った香織がオレとの距離を取る。

 

 しかし、2人の手は握られたまま。学校に着くまでの間、オレ達のドキドキ、ワクワクが止まらなかった。

 

 だが、その幸せも教室に入るまで。

 

 カリカリカリ……。

 

 来週から始まる期末テストに向けて、みんな朝からテスト勉強をしている。さすが進学校と言った所だ。

 

 オレ達も浮かれ気分を横に置き、授業が始まるまでテスト勉強に入る。

 

 授業では、先生のテストに出るぞ発言を見逃さず効率的に授業を受ける。

 

 そして、お昼休み。

 

 オレは慎吾とテストの話ではなく、旅行の話をしていた。

 

「創真、ありがとう。持つべきものは友達だなあ。うぐうぐ……」

 

「どういたしまして。慎吾には、いつも世話になってるからな」

 

 慎吾に『出雲刀鍛冶ツアー3泊4日の旅』の話をしたとたん、泣いて大喜びをしたのだった。

 

【第60話 旅行のお誘い 完】

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