創世のアームズ・ディーラー〜現代と異世界を駆け回る貧乏高校生の武器商売奮戦記!   作:大和タケル

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第64話 恋バナ

 土曜日9時発のANA鹿児島便の機内で、4年ぶりに会った総子さんは、すっかり大人の女性になっていた。

 

「やっぱり大和創真君よね。元気だった?」

 

「はい、元気です。総子さんこそ、ずいぶんとお綺麗になられましたね?」

 

「やだぁー、創真君ったらっ。しばらく見ない間に、ずいぶんとませた事を言うようになったじゃないのー」

 

「ハハハ、まあ色々ありまして……」

 

「ところで、その下にある物は竹刀入れよねぇ。また、剣道を始めたの?」

 

 オレは中学3年まで、慎吾は高校2年まで、日野市にあった試衛館に通っていた。

 

 しかし、オレ達が高校2年の春、試衛館が新宿へ移転したのを機に、慎吾は試衛館を退会したのだった。

 

 ちなみに、オレの退会理由は家計を助ける為である。

 

「ハハハ、まぁそうです」

 

「だけど、高校総体にはまだ早いわよねぇ。それに鹿児島で大会なんてあったかしら?」

 

「えーと、そう、親戚のおじさんが鹿児島にいるんです。遊びにいくついでに稽古をつけてくれるというもんだから、それで……」

 

「ふーん、そーなんだー」

 

 なーんか気のない返事。絶対に怪しんでいる。なんとか話題を変えないと!

 

「そういう総子さんは、なんで鹿児島へ行くんですか?」

 

「えっ、私? そうねー、わ、私は、りょ、旅行よー! アハハハ……」

 

 総子さんも何か隠している。相変わらず、ウソを付くのが下手な人だ。

 

 剣道の稽古では鬼の様に厳しいのに、竹刀を手放したとたん、どこか抜けたお姉さん。変わってないなあー。

 

 これ以上、お互い詮索するのは止めにして普通の会話に戻ろう。

 

 オレは質問を変えた。

 

「慎吾から聞いたんですが、たしか総子さんは高校の先生をやっているんですよね? やっぱり剣道部の顧問をしてるんですか?」

 

「そ、そうよぉー。じょ、女子剣道部の顧問をしてるのよぉー。皆んな中々強くなっちゃって今年は優勝を狙えると思うわよぉー!」

 

「それは、凄いですねぇ……」

 

 むむむぅ、この話もマズいのかぁ?

 

 今度は、総子さんが話題を変える。

 

「創真君は受験生よねぇ。進学先は決めたの?」

 

「まだ決めてませんが、ある人と同じ大学へ行きたくて、一生懸命勉強しています」

 

 総子さんの顔がほころんだ。

 

「ふぅーん、好きな女の子がいるんだぁ?」

 

「えっ、いや、そのー、いませんよっ!」

 

「相変わらず、創真君はウソが下手ね」

 

 あなたに言われたくありません! と心の中でつぶやいてはみたが、総子さんにはめったに会う事もないだろうし、オレは彼女の事を正直に話した。

 

「香織って言います。同じクラスで、頭が良くって、可愛いくて、オレには勿体ない女の子です」

 

 途中からおノロケになっている事にも気付かずに、香織への想いを素直に語った。

 

「ううーん♡、なんだかキュンキュンしてきちゃったぁー。ガンバるのよ創真君!」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

 オレと総子さんは、いつの間にか恋バナに花を咲かせていた。

 

「それにしても、私の好きな人の妹さんと同じ名前なんて、凄い偶然ねー」

 

「へえー、総子さんにも恋人がいるんですか?」

 

 すると、総子さんの顔が恋する乙女に変わった。

 

「うふっ、恋人だなんてぇー! 一度デートしただけだから、まだなんだけどね、エヘヘ。彼は誠実でね、頭が切れて、おまけにカッコイイのよー! それでね…………」

 

 総子さんの1人舞台が始まり、鹿児島に着くまでの間、延々と恋バナが続いていた。

 

「それじゃー創真君、またねー」

 

「総子さんも旅行を楽しんできて下さい」

 

 鹿児島空港で総子さんと別かれて外へ出ると、そこには南国の世界が広がっていた。

 

 照り付ける太陽で日差しが痛い。東京とは違う南国の空気、群生するヤシの木やソテツ、とても新鮮な感じがする。

 

 南国の景色を眺めながらバスターミナルまで歩き、鹿児島中央駅行きのリムジンバスに乗った。そして、バスに揺られること40分。ついに鹿児島の街に降り立つと、そこには桜島が真正面に迫る大パノラマが広がっていた。

 

「こ、これは……なんて壮大なんだあー!」

 

 オレは桜島の景色に心を奪われた。しかし、今あそこはゴブリンに占領されている。

 

 なんとも複雑な気分だ。

 

 その後、駅前のレストランで昼食を取ると、予約したホテルを探してチェックインをした。

 

 部屋に入ると、ちょうど午後の1時。予定よりも少し早い。

 

 さて、ここからは戦闘モードだ。

 

 ホテルで垂水市へ渡るフェリーの情報を聞くと、かろうじて1時間に1本の発着があるとの事で、オレはタクシーでフェリー乗り場へ向かった。

 

 船着場に着くと、ますます桜島が近くに迫り、歩いて行けるのではないかと錯覚してしまう。

 

 海岸線には、所々に自衛隊が駐屯しており、桜島の監視を続けている様だ。

 

 そういえば、鹿児島中央駅の周りにも自衛隊の軍用車両がチラホラ見えた。

 

 オレはターミナルの中に入り、フェリーのチケットを買おうとして受付のおばあさんに尋ねる。

 

「あのー、垂水市へ行きたいんですが……」

 

「いらっしゃい。そこの自動販売機でチケットを購入しておくれ。しかし、アンタ何しに行くんだい?」

 

 どうやら今は、ほとんど自衛隊しかフェリーを使ってないらしい。当然ながら、桜島行きは全て欠航となっていた。

 

 

【第64話 恋バナ 完】

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