創世のアームズ・ディーラー〜現代と異世界を駆け回る貧乏高校生の武器商売奮戦記!   作:大和タケル

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第65話 下見

 垂水市へ向かうフェリーの中で、オレは甲板に佇み海に浮かぶ桜島を眺めている。

 

 吹き付ける風が心地良い。

 

 時々イルカが水面を跳ね、平時なら観光客の歓声が起こるはずが、今は閑散としており声を上げる者は誰もいない。

 

 フェリーは鴨池港から垂水港まで約40分。料金は本来1000円なのだが、今は利用者が激減したせいで5倍の5000円に値上がりしている。

 

 船内には食堂があり、名物『南海うどん』が食通の興味をそそる。オレはトッピング盛り盛りで南海うどんを食べた。

 

 カツオ出汁が効いたコシのあるうどんは実に美味い。

 

 再び甲板に出ると、垂水港が徐々に近付いてくる。

 

 いよいよ戦場だ!

 

 ドキドキ高鳴る胸を手で押さえ、気を引き締めて船を降りた。

 

 垂水港に降り立って桜島を眺めると、鹿児島の街から見た雄大な景色とは違い、生々しい地肌が見える。

 また、頂上の火口からはドス黒い煙が立ち昇り、その禍々しさは魔王の居城を思わせた。

 

 港の周りには数台の軍用車両が停まっており、船に同乗していた自衛官数人が乗り込んで行く。

 

 オレは軍用車両に混じって待機している1台のタクシーに声をかけた。

 

「すみません、牛根大橋まで行けますか?」

 

「あんた、マスコミの人かい? また、ずいぶんと若いねぇ」

 

 確かに、この様な状況で桜島へ向かうのは自衛隊とマスコミぐらいのものだろう。

 

 オレはタクシーのおやじの勘違いに話しを合わせた。

 

「はい、新人です。先に来ている先輩に下見をしてこいと言われまして……」

 

「そうかぁ、大変だねぇ、まっ乗ってくれや」

 

 後ろのドアが開き後部座席に乗り込むと、タクシーはゆっくり動き出した。

 

「あんちゃんは何処から来たんだい?」

 

「と、東京です」

 

「そうかい、昨日から沢山のマスコミを乗せたなぁ。たぶん、あんたが今日の最後だね。そういえば、桜島口の手前で一般人は立ち入り禁止になってんだが、あんた通行証は持っちょるんかい?」

 

「えっ、通行証がいるんですか?」

 

「そうだよ、通行証がないとレールガンのある牛根大橋までは行けんとよ」

 

 マズい、通行証がいるのか……。

 

 オレが俯いて考え込んでいると、運転手のおやじが顔をニヤニヤさせて話しかけてきた。

 

「あんちゃん、ここに誰かが忘れていった通行証があるんだが10万で買わねぇか?」

 

「買ったあああー!!」

 

 そう言って財布から躊躇なく現金10万円を取り出すと、運転手のおやじは驚いて目を丸くする。

 

「ご、豪快なあんちゃんだなぁ。気に入ったぜ。あんた、明日も来るんじゃろ? 何かあったらワシを呼びな。直ぐに駆けつけてやるぜ」

 

 運転手のおやじから受け取った名刺には名前と携帯番号が書かれていた。

 

 桜 島太郎?

 

 ププッ!

 

 思わず吹き出すと、おやじに怒られた。

 

「笑うなっ、誰も好きでこんな名前に……」

 

 おやじが涙目になったので、オレは素直に謝った。

 

「すみません桜さん、何かお詫びをしたいんですが……」

 

「いいって、いいって、詫びは既に受け取ったからよ」

 

 さっきまでの涙目はどこへやら、おやじは10万円の札束を握りしめて笑っていた。

 

「ところであんた、名前はなんて言うんだい?」

 

「大和創真と言います」

 

「創真君かぁ、良い名前だねぇ、うらやましねぇ〜」

 

 この人、そーとー名前にコンプレックスを持っている様だ。会話には気を付けなければ……。

 

 くだらない名前の話しをしている間に、タクシーは桜島口の検問所に到着した。

 

 桜島口は垂水市から桜島に入ってすぐのT字路。その手前1キロの地点に通行止めの標識が置かれて検問所になっており、数人の自衛官が立っている。

 

 そして、T字路の後ろには高さ10メートルはあろう巨大なコンクリートの壁が、桜島と内陸部を遮る様にそびえ立っていた。まさに、日本の万里の長城と言った所である。

 

「こんちわー、ご苦労様でーす。また、マスコミの方の送迎でーす」

 

「またアンタか。今日は何回目だ? ずいぶんと稼いでいるじゃないか」

 

 どうやら、運転手のおやじは顔パスの様だ。そして、自衛官がこちらを向いて通行証を出せと促す。

 

 オレは胸をドキドキさせながら10万円で買った通行証を差し出した。すると、碌に見もしないで許可が降りる。

 

「行ってヨシ」

 

 おやじは検問所の自衛官に礼を言って、愛想笑いを浮かべながらタクシーを走らせた。

 

 検問所を過ぎると車の前方には巨大なコンクリートの壁が迫り、その後ろにはドス黒い煙を吹き上げる桜島の火口が見える。

 

 その禍々しい桜島を見ていると、オレの心が怯みそうになる。

 

 やがて、タクシーはコンクリートの壁で右へ曲がり、左側にそびえ立つ巨大な壁に沿って国道220号線を真っ直ぐ走った。

 

 ちなみに、壁を左に曲がれば、本来なら桜島の中へ行く道になるのだが、現在は巨大な壁に遮られて行き止まりになっている。

 

 オレは道路の左側に連なるコンクリートの壁を見ながらタケじいに尋ねた。

 

「タケじい、この壁は少し低くないか?」

 

「うーむ、ちと低いのぅ。それよりも結界が弱っておる。なんとかせねば……」

 

「結界ってなに?」

 

「…………」

 

 タケじいが黙ってしまった。

 

 しばらく行くと、タクシーが牛根大橋を渡り始める。そして、ちょうど中間辺りまで来るとコンクリートの壁が無くなり急に見晴らしが良くなった。

 

 やがて橋を渡り終えたタクシーは、レールガンが良く見える場所で停車した。

 

 オレは車から降りて周辺の観察を始める。

 

 まずは、桜島と内陸部を分断する高さ10メートルの万里の長城だが、左は桜島口から、右は牛根大橋中間まで国道220号線に沿って作られている様だ。

 

 また、牛根大橋を渡った道路の下方には港があり、そこにレールガンが設置されている。そして、その勇姿をカメラに収めようと、多くの報道陣が道路脇の歩道に撮影機材を並べて陣取っていた。

 

 対岸を見ると、数匹のゴブリンが水辺で何かしている。

 

 魚でも取っているのだろうか?

 

 そして、ここに設置されたレールガンは奴らに狙いを合わせている様であった。

 

 

【第65話 下見 完】

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