創世のアームズ・ディーラー〜現代と異世界を駆け回る貧乏高校生の武器商売奮戦記!   作:大和タケル

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第66話 三社大結界

 オレは丘の上の道路から、レールガン周辺の位置関係を把握して帰路に着いた。

 

 1つ気になるのは高さ10メートルの壁が連なる向こう側。桜島口の少し手前でタクシーを停めたオレは、そびえ立つ壁の側に近づきスキルを使った。

 

「千里眼!」

 

 すると、視界がゆっくり上昇していき、やがて壁を超えると向こうの景色が見えてくる。

 

 昼寝をしているゴブリン、木の実を食べているゴブリン、のどかなものだ。

 

 ひとまず安心してスキルを解除すると、タクシーに戻って車を発進させた。

 

 タクシーは元来た道を進み、検問所をノーチェックで通過する。

 

 どうやら帰りの車は警備の対象外らしい。

 

 しかし、検問所を過ぎた所で、タケじいが車を停めろと言い出した。

 

「桜さん、車を停めてっ」

 

「突然どげんしたんだ? ははーん、戸柱神社だな。大したご利益も無いんだが、ちょっと寄ってくかい?」

 

 検問所のすぐ側にある戸柱神社は、道路の海側に建っている小さな神社だ。

 

 タクシーが神社の狭い敷地に停車し、オレは車から降りて神社の鳥居をくぐる。

 すると、直ぐ目の前に小さな本堂がある全く見ごたえのない寂れた神社だった。

 

 桜さんが車の窓から顔を出して説明をしてくれる。

 

「大和君、この神社はね、桜島が陸続きになる前は島の中にあったんだ。しかし、溶岩で流されちまってなぁ、御神体だけ、ここに移設されたんだよ。まあ、誰も知らねぇ無名の神社さ」

 

 ふぅーん、無名の神社ねぇ……。

 

 なぜタケじいは、ここで停まるように言ったのだろうか?

 

「タケじい、この神社には何かあるの?」

 

「うむ、この社の御神体が小結界なんじゃ。しかし、なぜか弱っておる。おそらく太陽フレアのせいだと思うが、持って後ひと月と言った所かのぅ」

 

 この神社から見える対岸には桜島の半島が突き出ており、ゴブリンが頑張って泳げばこちらまで辿り着ける距離ではある。

 

 それを防いでいるのが、この神社の小結界という事らしい。

 

 もしかしたらと思い、タケじいに冗談混じりで聞いてみる。

 

「タケじい、小結界があるなら大結界もあったりするのかなぁ?」

 

「良い質問じゃ。ツクヨミが1800年前に作った桜島を囲む三社大結界があるぞえ。帰りに寄って行こうかのぅ、カッカッカッ!」

 

「そんな凄い物が帰り道にあるのかーい!」

 

 再びタクシーに乗り込んで垂水港へ向けて車を走らせていると、鹿児島神社の看板が目に止まりタケじいが小さく叫んだ。

 

「あそこじゃ!」

 

「桜さん、鹿児島神社に寄って下さい」

 

「鹿児島神社? ああ、下宮神社の事だな。地元民はそう呼んじょるんだ」

 

 しばらくして、タクシーが下宮神社に到着した。すると、今度は桜さんも車から降りて一緒についてきた。

 

 神社の参道を歩きながら、桜さんが下宮神社について説明をしてくれる。

 

「この神社は桜島の噴火を鎮める為に大昔に作られたんだ。ここ以外にもあと2つ鎮火の神社があってね、1つは鹿児島市にある鹿児島神社。もう1つは霧島市にある鹿児島神宮。そして、この下宮神社の三社を線で結ぶと、ちょうど桜島を囲む二等辺三角形になって、地元民は三社結界と呼んで崇めちょるんだわ。ワシも暫く参拝しちょらんから、今日は一緒に拝ませてもらうぜ」

 

 三社結界、タケじいが言ってた三社大結界の事だ。

 

 桜さんは噴火を鎮める為と言っているが……。

 

「タケじい、本当はどうなの?」

 

「うむ、目的は噴火を鎮める為では無く、強い魔物を桜島から出さない為じゃ」

 

 まあ1800年も経てば、話しは移ろうのだろう。

 

「この大結界も弱っているの?」

 

「ああ、弱っておる。こちらは後半年じゃろう」

 

「何か方法はないの?」

 

「うーむ、お主が結界魔法でも使えれば結界を延命させられるんじゃが……。後は地道にゴブリンを倒して行くしいかないのぅ」

 

 香織パパが言っていた。近い内にゴブリンが1万匹に達すると……。

 

 それに、異世界の魔王は逐次魔物を送り込んでくるんだっけ。結界が破れると収集がつかなくなりそうだが、今は解決策が無い。

 

 オレは桜さんと下宮神社を参拝し、再び垂水港へ向かった。

 

「桜さん、今日は色々ありがとうございました。明日もよろしくお願いします」

 

「おう、明日も同じ所で待っちょるぜ!」

 

 桜さんと別れて鹿児島行きのフェリーに乗り、ホテルに着いたのは夜の6時。オレはシャワーを浴びると、夕食を探しに鹿児島の街へ繰り出した。

 

 さて、どんな美味しい料理にめぐり逢えるのか、とっても楽しみだ。

 

 鹿児島中央駅から繁華街を練り歩くと、よくよく目に止まるのは鹿児島黒豚の看板。

 

 オレは人混みに流されるまま、ある料理屋に飛び込んだ。

 

「いらっしゃーい!」

 

 まずはカウンターに座ってメニューを見る。

 

 うーん、色々あって分からない。

 

 下を向いて悩んでいると、女将さんが話しかけてきた。

 

「お客さん、どっから来たの?」

 

「東京です」

 

「ははーん、マスコミ関係の人だねー。で、何にするね?」

 

「んー、何か鹿児島の美味しい物を食べたいです」

 

「分かったよ。それじゃ、鹿児島グルメコースでよかかい?」

 

「じゃあそれで」

 

 料理を待つ間、オレは広い店内をぐるりと見回す。

 

 お店の名前は『さつま亭』。多くのお客さんがいて雰囲気も良いし期待出来そうだ。

 

 しばらく待つと料理が出てきた。

 

「はい、お待ちどうさま」

 

 最初に出て来たのは『きびなごの刺身』。銀色の縞模様がある青魚が菊の花の形に盛り付けられて美味そう。そして、飲み物は『魔王のロック』。芋焼酎の高級品だ。

 

 オレはきびなごの刺身を口に入れると、魔王のロックで喉に流し込んだ。

 

「うんめぇぇー!」

 

 

【第66話 三社大結界 完】

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