創世のアームズ・ディーラー〜現代と異世界を駆け回る貧乏高校生の武器商売奮戦記!   作:大和タケル

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第69話 師匠!

「えええっ、師匠?」

 

「えええっ、創真君なのおー!?」

 

 思わず試衛館時代の呼び方が出てくるも、オレ以上に驚いていたのが剣道の師匠、沖田総子さんだった。

 

「師匠、なんでここにぃー?」

 

「それを聞きたいのはこっちよぉー!」

 

 全く話が噛み合わないので、各々一息ついて質問を変える。

 

「その剣はどうしたんですか?」

 

「その剣はどうしたの?」

 

 今度は同じ質問が重なり、ますます噛み合わなくなる。埒が明かないので、互いに深呼吸をして一旦息を整えた。

 

「それじゃ、私から答えるわね」

 

 オレがうなずくと、総子さんが話し始めた。

 

「実は私、GAT隊に入っているの。そして、この剣はGAT隊から支給された特別な剣なのよ。私達はこれを魔剣と呼んでいるわ」

 

「えっ、師匠は高校教師じゃないんですか?」

 

「うん、そうなんだけどね、今は休職中なの」

 

 どうやら、高校を休職してGAT隊に入っている様だ。だけど、なんで1人?

 

「師匠、他の仲間はいないんですか?」

 

「いないわよ。私1人で来たの」

 

「なんでぇー? 危険じゃないですかっ」

 

 総子さんは少し考えてから質問に答えた。

 

「実はね、浜井のバカ大臣がGAT隊に待機命令を出したのよ。たぶん、GATがテレビに出ると、手柄を横取りされると思ったんでしょうね。それに、GAT隊の中に浜井のスパイが潜り込んでいてね、勝手な行動をしないか監視してるのよ」

 

 ハハハ、GAT隊もバカ大臣と呼んでいるんだ。

 

「それじゃ、何で師匠はここに来てるんですか?」

 

「それはねぇ、私は傭兵扱いなの。だから、作戦命令以外は自由に動けるのよ。それで、今の私は風邪をひいて休暇中って事になってるの、うふっ」

 

 小悪魔的な笑みを浮かべる総子さんは、とっても嬉しそうだ。

 

「今度は創真君が答える番よ。でも、ちょっと待ってね。当ててみせるから」

 

 総子さんは顎に手を当てて、何かを閃いたのかポンと手を叩く。

 

「もしかして、創真君はGAT隊に魔剣を流している『謎の武器商人』なんじゃないのかなぁー?」

 

 オレの顔が一瞬強張り、それを総子さんは見逃さなかった。

 

「やっぱりねぇー」

 

「な、なんで分かったんですか?」

 

「それはねぇ、創真君が私の剣を知っているみたいだし、持ってる剣が私のと違うでしょ。それ新商品なの?」

 

 普段は抜けているのに、妙な所で鋭くなる。参ったなあー。

 

 オレは異世界の部分を伏せて、話せる範囲で正直に話す事にした。

 もっとも、真壁室長と東雲さんを通して武器を卸している事くらいだが。

 

 そしてもう一つ、半年後に結界が破れて百鬼夜行(スタンピード)が起こる事。

 

「なんで創真君は、そんな事を知っているの?」

 

 まあ、当然の質問だ。オレは昨日の神社参拝のあと、香織パパに知らせる理由を考えていた。

 

「大昔の古文書に書いてありました。出処は秘密ですが、かなり確度の高い情報です」

 

「まぁー!」

 

 総子さんは、なんだか嬉しそうだ。気のせいかな?

 

「ところで創真君、この話は上司に話しても良いの?」

 

「オレの事以外は話しても良いですよ。謎の武器商人は師匠とオレだけの秘密です」

 

「わ、分かったわ。これは2人だけの秘密ね」

 

 総子さんも女性。秘密という言葉に弱いらしい。まあ、いつかはバレるだろうが、釘を刺すのはこれ位で良いだろう。

 

 お互い理解出来た所で、鹿児島の街へ戻る事になった。すると、総子さんが上目遣いでモジモジしだす。

 

「……あのね、創真君はどうやって帰るのかなぁ?」

 

 この人、帰りの足が無いみたいだ。やっぱりどこか抜けてるー。

 

「師匠、タクシーを待たせてあるんで、一緒に帰りませんか?」

 

 すると、総子さんの顔がほころんだ。

 

「やだー、さすが創真君ね、ありがとう。それと、人前で師匠は恥ずかしいから総子お姉さんと呼びなさい!」

 

 お姉さんは勘弁なので、総子さんで手打ちにしてもらい、オレ達はタクシーへ戻った。

 

「お帰りー、大和く……ややぁ、女連れかい? ハハハ、さすが諜報員だね!」

 

「諜報員?」

 

 総子さんが怪訝な顔でタクシーに乗り込むと、桜さんは車を発進させた。

 

 帰りの道は空いており、スムーズに垂水港へ到着すると桜さんも車から降りてきた。

 

「創真君、今日はとても楽しかったよ。また呼んじょくれ」

 

「はい、こちらこそお世話になりました。桜さん、もしゴブリンが出たら真っ先に逃げて下さいね。そして何かあったら直ぐに連絡を下さい」

 

「分かった。用心するよ」

 

 オレ達は硬い握手を交わして別れたが、桜さんはフェリーが遠く離れるまで、オレ達を見送ってくれた。

 

 時間は既にお昼の2時、オレと総子さんは船の中で南海うどんを食べている。

 

「お代わりぃー!」

「お代わりぃー!」

 

 2人共、かなりお腹が空いていた。

 

 総子さんが魔剣を使うと凄くお腹が空くと言うので、その理由を教えると、総子さんは嬉しそうに3杯目を頼んだ。そして、鴨池港に着くまで、オレと総子さんは今後の情報共有を約束して電話番号を交換した。

 

 やがてフェリーが鴨池港に着くと、総子さんは連泊のホテルへ急いでタクシーを走らせた。なんでも、早くシャワーを浴びたいそうだ。怖い師匠も女性という事か。

 

 そういうオレも早く風呂に入りたい。人目に付かない所から異世界の連泊部屋へ転移すると露天風呂へ直行した。

 

 ザッブーゥーン!

 

「うっひぃぃー、気持ちぃぃー!」

 

 転移したのが日曜日の午後3時、月曜日の朝まで3泊出来る。

 さぁここからは、来週の期末テストに向けて、異世界勉強の旅3泊4日の始まりだぁ!

 

 オレは露天風呂で疲れを癒やすと、さっそくテスト勉強に取り掛かった。

 

 

【第69話 師匠! 完】

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