創世のアームズ・ディーラー〜現代と異世界を駆け回る貧乏高校生の武器商売奮戦記! 作:大和タケル
死霊の森クエスト。
発注者はギルマスのサリーちゃんで依頼内容はこうだ。
『この森には、なぜか死霊が集まるの。定期的に間引きしないと死霊が外に溢れ出して大変な事になっちゃうよー。皆んな、魔石は安いけど協力してね!♡』
クエスト達成報酬は死霊50体以上で金貨4枚。
死霊のレベルは10前後だが、魔石の買取り価格が一律銅貨10枚でスライムと同じ。はっきり言ってめちゃくちゃ安い。
なぜタケじいはコレを選んだのかな? きっと深い理由があるに違いない。
そう思ってタケじいを見ると、困った顔で何やらブツブツ言っている。
「うーむ、クエスト報酬しか見とらんだ。まさか死霊の魔石がこんなに安いとはのう。失敗したわい」
「おい、失敗かよっ!」
まあ、今さらキャンセルする訳にもいかず、渋々クエストを遂行する事になった。
意を決して恐る恐る死霊の森へ踏み込むと、森の中は生き物の気配が一切無く、あまりの静けさに寒気が走る。
隊列は先頭がオレ、次に鴉隊3羽、最後尾は兎隊3羽の順で進む。なぜか索敵担当の鴉隊がオレの後ろにいるのは納得いかないが、気持ちは分かるので何も言うまい。
オレはバックラーを前に掲げ、用心しながら森の奥へと進んで行った。
しばらくすると、徐々に陽の光が遮られ、だんだん暗くなっていく。更に霧の様な冷気が加わり、森の不気味さが一層際立つ。
ブルルッ。
と、その時、静けさを打ち破って草を掻き分ける音が聞こえてきた。
ガサガサガサーッ!
とっさに音のする方を見ると、ボロをまとった人らしき者が、足を引きずりながら、ゆっくりとこちらへ近付いて来る。
オレ達はその場に立ち止まり、息を呑んで身構える。やがて、その者の全身が露わになると、その顔のおぞましさに驚愕した。
「ひぃぃぃーっ、化け物だあああー!!」
その者は顔の半分が骸骨、もう半分はただれた皮膚で両目に目玉は無く、代わりに赤い光が灯っている。そして、手には欠けた鋼の剣。
おそらく、生前は冒険者だったのだろう。
「創真よ、あれがゾンビじゃ! いや、スケルトンかのう? ムムッ、どっちなんじゃ??」
「どっちでもいいよ! タケじい、早くアドバイスをくれっ」
そう言ってる間にもゾンビが迫り、鋼の剣をゆっくりと振り上げた。
オレはバックラーで防ごうとするが、恐怖で体が動かない。その異常に気付いたタケじいが慌てて叫ぶ。
「創真ぁー、よけるのじゃあああーっ!」
次の瞬間、ゾンビの剣がオレの頭上に振り下ろされた。
ブブゥーン!
自分の頭にゆっくりと落ちてくるゾンビの剣。まるで夢の中の出来事の様に感じられ、どこか自分が自分でない感覚に囚われた。
あれっ、オレはこんな所で死ぬのかな?
と、諦めかけた時だった。
ドォォーンッ!
ヤタがゾンビに体当たりし、剣の軌道が僅かに外れた。しかし、完全には避ける事ができず、オレの首元から鮮血が噴き出した。
プシューッ!
突然の痛みで我に返り、オレは風の剣で反撃に出る。
「こんのおおおーッ!」
ガキィーン、ズバァァーッ!
ゾンビの剣を薙ぎ払い、2撃目で首を刎ね飛ばした。すると、ゾンビに靄がかかり、その跡には透明な魔石が転がっていた。
そして、その魔石を拾おうとした時、オレの首筋に激痛が走る。
「痛うっ、あいたたたぁぁぁー!」
首元から流れ出る大量の血は、左手を伝って地面を真っ赤に染めた。
その様子を見て、タケじいとイナちゃんが慌てて叫ぶ。
「創真、止血するのじゃっ!」
「旦那、死なないでくだせぇー!」
慌ててリュックからタオルを取り出し傷口に当てる。しかし、直ぐにタオルは真っ赤に染まり一向に血が止まらない。
そして、だんだん血の気が失せていく。
ドサッ!
地面に横たわり意識が朦朧とする中で、遠くから再びヤツらの足音が聞こえてきた。
ガサガサ、ガサガサ、ガサガサッ!
周りを警戒しているヤタが緊急を告げる。
「創真、囲まれてるぞっ!」
オレは霞んだ目で辺りを見回した。すると、数十体の死霊がこちらに向かって歩いて来る。中には狼らしき獣の死霊も四足歩行で近付いて来る。
ガサガサ、ガサガサ、ガサガサッ!
ガサガサ、ガサガサ、ガサガサッ!
「くっ!」
オレは残る力を振り絞り立ち上がろうとするが、再び激しい目眩に襲われる。
ドサーッ!
「創真! 旦那! ソーマ様ぁー!」
倒れたオレの周りを鴉隊と兎隊が守ってくれているが、目が霞んでよく見えない。
聞こえてくるのは鴉と兎の悲痛な叫び。そして、迫りくる死霊の足音。
ガサガサ、ガサガサ、ガサガサッ!
ガサガサ、ガサガサ、ガサガサッ!
ガサガサ、ガサガサ、ガサガサッ!
あぁ、これが斬られるという事か……。
かなりヘビーな現実に観念した時だった。
突然、レッドの声が辺り一帯に響き渡る。
「ちょーせん・にんじぃぃーん!」
すると、間近に迫る死霊達の足音が突然止まった。
「えっ、何が起きたんだ?」
瞼を開き霞んだ目で周りを見ると、多くの死霊達が動かなくなっていた。
続けて、ブルーが叫ぶ。
「がーまーのーほぉぉー!!」
すると、首の傷口が徐々に塞がり、霞んだ視界も少しづつクリアになってきた。
「創真よ、間に合って良かったわい」
「タケじい、何が起きたの?」
「すまん、回復魔法が死霊に効くのを忘れておった。ワシも齢じゃのう、カッカッカッ!」
どうやら、レッドとブルーに助けられた様だ。そして、それを指示したのがタケじいなのだが……。
「遅いわっ。もう少しで死ぬ所だったんだぞ、このーもうろくじじぃ!」
「カッカッカッ、それだけ悪態を付けるのであれば、もう大丈夫じゃな」
ブルーのお陰で首の傷口が塞がり、悪態をつけるまで回復したオレに焦った顔のレッドが訴える。
「ソ、ソーマ様、死霊を食い止めるのは、そろそろ限界です。今の内に倒しちゃって下さい」
そろそろ、レッドの魔法が限界の様だ。
オレは再び立ち上がり、硬直している死霊の首をはね飛ばす。
「必殺ッ、延髄斬りぃぃー!」
タケじいが言うには、死霊の弱点は延髄で、首をはね飛ばすのが効率的な倒し方らしい。
オレは恥ずかしげもなく闘魂の必殺技を連呼した。
「延髄斬りッ、延髄斬りッ、延髄斬りぃぃー!」
きっと、頭の血の巡りが減っていたのだと思う。おかげで、周りにいた20体の死霊は全て魔石に変わっていた。
【第74話 迫りくる足音 完】