創世のアームズ・ディーラー〜現代と異世界を駆け回る貧乏高校生の武器商売奮戦記!   作:大和タケル

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第76話 ハッピーホーリー

 命からがら死霊の森から脱出したオレ達は、すぐ側の草原で大の字に寝そべって青い空を眺めている。

 

 冷気に包まれた森とは対照的に、暑い日差しがジリジリするが、今のオレ達には心地よい。

 

 疲れた体は休息を求め、側にいるヤタ隊とイナちゃん隊から、いびきが聞こえてくる。

 

 森の出口では、未だにレイスがこちらを見ており、とても不気味だ。

 

 日の当たる安全地帯にいる余裕から、オレはレイスを罵った。

 

「早く森の中へ帰れよっ!」

 

 すると意思が通じたのか、レイスは冷たい目でオレをひと睨みすると、死霊達を引き連れて森の奥へと消えて行った。

 

 初めて直面した死の恐怖。最初は怯え、その後は全身が総毛立ち、最後は限界の身体にあり得ない力が湧き出して死霊の壁を突破した。これが火事場の馬鹿力というものなのだろう。

 

 そう言えば、突破の時にイナちゃんがタケじいの事をスサ何とかと言ってた様な……、まぁいいか。

 

 オレは生きている事のありがたみを噛みしめながら瞼を閉じた。

 

 スースースー………………。

 

・・・・・

 

「創真よ、そろそろ起きるのじゃ」

 

 タケじいの声で目が覚めた。

 

「う、うーん」

 

 どのくらい経ったのだろうか……?

 

 周りを見ると、鴉と兎もタケじいに起こされている。

 

 時計は午後の3時を指しており、そろそろ帰らないと門限に間に合わなくなる。

 オレは疲れた体を起こして小袋に入った死霊の魔石を数え始めた。しかし、何度数えても49個。

 

「はぁぁ〜」

 

 魔石の入った小袋を眺めながら、悔しい顔で溜め息をつくオレの肩を誰かが叩く。

 

「旦那、ダ・ン・ナー」

 

 振り向くと、イナちゃんがニコニコしながら可愛い肉球をオレに見せていた。そして、その肉球の間には透明な死霊の魔石がひとつだけ挟まっている。

 

 これで合計50個、クエスト達成である。

 

 オレは感動のあまり、目をウルウルさせてイナちゃんに抱きついた。

 

「イ、イナちゃぁぁぁーん!」

 

「ダ、ダンナぁぁぁー!」

 

 オレとイナちゃんが抱き合っていると、レッドとブルーも負けじと抱きついてくる。

 

「そ、創真さまぁぁぁー!」

 

 オレは感極まって雄叫びを上げた。

 

「お前達ぃぃぃー、ありがとおおおー!」

 

 いつの間にか、オレは兎の世界に取り込まれていたのだった。

 

 今回の死霊の森クエストは、皆んなのお陰でなんとか達成する事ができた。

 

 オレは鴉隊と兎隊に残りの報酬と感謝の気持ちを伝えて召喚を戻す。

 

「バイバイ、ヤタ、イナちゃん!」

 

「じゃーな、ソーマ!」

 

「ダンナ、お気を付けて!」

 

 1人ぼっちで歩くアグルヒルへの帰り道、タケじいとレイスについて話をする。

 

「なあタケじい、レイスって何者なの?」

 

「うむ、ワシもアンデットの類いは詳しくないが、この世に未練を残して死んだ魔法使いが稀にレイスになるそうじゃ。そして、レイスの好物は良質な魂。創真の体にはワシの魂も入っておるからのぅ。さぞかし美味しそうに見えたんじゃろうなぁ、カッカッカッ!」

 

「そうか、それでオレをしつこく狙ってきたんだな。だけど、ヤツは森から出られないんだよね?」

 

 すると、タケじいがニヤリと笑う。

 

「そうとは限らんぞ。レイスはストーカーの様にしつこいんじゃ。もしかすると、今夜辺り寝室に入って来るやもしれんぞぅ。ほれ、後ろじゃっ!」

 

「わぁぁぁーっ!」

 

 咄嗟に振り向くが当然レイスはおらず、からかわれた事にムッとなる。

 

「フォフォフォ、すまんすまん冗談じゃ」

 

「二度とするなっ!」

 

 そうこうしながらアグルヒルに着くまでの間、タケじいはレイスについて色々と教えてくれた。

 

 タケじいによると、レイスは死霊を操るネクロマンサーで、ゾンビやスケルトンに生き物を殺させ、その魂を喰らうそうだ。

 しかし、滅多な事では姿を見せず、今回は予想外の出来事だったらしい。

 

 長らく歩き、ようやくアグルヒルに着いたのは門が閉まる少し前。満身創痍のオレは宿屋の露天風呂で体を癒やし、夕食バイキングに臨む。

 

 食堂では宿屋の食事係に嫌な顔をされたが、少しでも体力を回復しようと、中央のテーブルに並ぶ料理を片っ端から平らげた。

 

 その後は部屋に戻りベッドで横になっていると、ふと大事な事に気付く。

 

 昨日も今日も殆ど勉強をしていないのだ。しかし、お腹が膨れてもう眠い。それでも、香織と同じ大学へ行くために、ベットから這い出して机に向かった。

 

「よーし、がんばるぞぉぉー!」

 

 カリカリカリ……。

 

 グーグーグー……。

 

 オレは1時間もたたずに眠ってしまった。

 

・・・・・

 

 月曜出発、異世界勉強3泊4日の旅3日目。

 

 チュン、チュン……。

 

「う、うーん」

 

 机で寝ていたせいで身体が重い。視界が点滅しており目眩がする。どこか自分が自分でない感覚に、ドキッとして目が醒めた。

 

 もしかして、レイスに魂を食べられたんじゃ……? 

 

 急いで身体を触り五体満足である事に安心したオレは、タケじいに悪態をついた。

 

「こんな不安になるのは、全部タケじいのせいだーっ」

 

 しかし、タケじいは小僧の戯言を無視してニコニコと話す。

 

「創真よ、昨日は大変な思いをしたでなぁ、大きなレベルアップが見込めるぞえ。早くステータスを見てみるのじゃ」

 

「はいはい、分かりましたよ。ステータス・オープン!」

 

大和創真 Lv19 

ジョブ 商人(アームズ・ディーラー)

魔法障壁 Lv1

スキル

1.英雄遺伝子

2.異世界転移

3.交渉術

4.短剣術

5.剣術  必殺技:連撃、切払い、後の先、延髄斬り

6.念話術

7.飲酒

8.大食い

9.ボッカ

10.召喚

11.スキルチャージ(初級)

15.雇用 必殺技:ベア

16.

17.

18.

19.ホーリー 必殺技:ハッピーホーリー

 

 すると、今最も欲しかったレアスキル『ホーリー』が表示されており、あまりにも嬉しくてオレは声を張り上げた。

 

「ホ、ホ、ホーリーが出たああああー!!」

 

 その内容は以下の通り。

 

『ホーリーとは、白色の光を放ち死霊1体を滅殺する。レベルによって効果が変わる』

 

「タケじい、遂に死霊を倒せる魔法が出てきたよ」

 

「良かったのう。じゃが、お主のレベルでは、まだ倒す事はできん。せいぜい足止めくらいじゃろうな」

 

「えっ、そうなのか? じゃあ、いつになったら倒せるんだよ」

 

「詳しくは知らんが、おそらくレベルが20になったら出来るんではないかのう。そういえば、ホーリーはツクヨミの得意魔法じゃった。ツクヨミなら詳しく教えてくれるんじゃがのう……」

 

 また、タケじいが遠くを見て思い出に浸り始めた。しょうがないので、説明の続きを読み進める。

 

 なになに……。

 

『必殺技:ハッピーホーリーとは、虹色の粒子を放ち広範囲の死霊を滅殺する神聖魔法。但し、1日1回しか使えない」

 

「これは……す、凄いかも!?」

 

 オレは死霊に対抗できる魔法の説明を何度も何度も読み返し、ようやく心の平穏を取り戻したのだった。

 

 

【第76話 ハッピーホーリー 完】

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