創世のアームズ・ディーラー〜現代と異世界を駆け回る貧乏高校生の武器商売奮戦記!   作:大和タケル

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第82話 それぞれの夜

 期末テスト3日目を終えた放課後の教室で、オレの席の回りには慎吾と香織が集まっていた。

 

「創真、旅行の日程が決まったんだってぇー?」

 

「ああ、8月8日から11日まで。出雲刀鍛冶ツアーに参加できるそうだ」

 

 明日で期末テストも終わり、その後5日学校へ行けば夏休みに突入だ。そして、再来週の8月8日から出雲の地がオレ達を待っている。

 

「嬉しい! 何持っていこうかなぁー?」

 

安来(ヤスキ)! どんな所だろう?」

 

 慎吾も香織も期待に胸を膨らませている。

 

「香織、東雲さんが言うには、無茶苦茶暑いそうだ。冷涼グッズを沢山持っていった方が良いってさ」

 

「確かに。この暑い夏に鉄鋼炉だもんなぁー、作業場は40度を軽く越えると思うぜ」

 

「そ、創真くぅーん」

 

 香織が心配そうな顔で、すがるようにオレを見た。

 

「香織、他の観光客もいるみたいだし心配しなくていいよ。それに、耐えられなくなったら、いつでも外へ出られるんだって」

 

「そ、それなら安心ね」

 

「せっかくの機会だ。俺は最後まで見学するぞぉー」

 

 はしゃいでいる2人を見て、オレは旅行の日程を説明する。

 

「はーい注目ぅー! 今から旅行の日程を発表するぞ。皆んなぁ、準備はいいかぁー?」

 

「あ、あぁ……?」

 

「う、うん……?」

 

 あれっ、なんか反応がおかしいけど……まぁいっかあー。

 

「それじゃあ、1日目は羽田から飛行機で移動しまーす。そして、2日目は安来で玉鋼の見学で、3日目は日本刀見学でーす。最終日は出雲大社を観光するぞぉー。ワーパチパチパチー!」

 

「創真君、なんだか雰囲気が変わったね」

 

「あぁ、俺もそう思う。前はどこか冷めた所があったよなぁ?」

 

「そ、そうかなあー?」

 

 知らない内に、オレは兎の世界に感化されていたのだった。

 

 その後は3人で旅行のあれこれを話しながら最寄り駅まで香織を送り届けると、オレと慎吾は家路に着いた。

 

「創真、誘ってくれてありがとな」

 

「何言ってんだよ。友達じゃないか」

 

「そうだなあ、ハハハハ!」

 

「ところで慎吾、ひとつ相談があるんだ」

 

 慎吾にアウレという人物に玉鋼と日本刀の製作映像を見せる約束をし、その為の機材と解説が必要である事を話す。

 

「オーケー、それくらいお安い御用だ。だけど、そのアウレって外国人だろ。俺の解説が分かるのか?」

 

「アウレは日本語を話せるから大丈夫さ、ハハ……」

 

 まさか自分が慎吾の解説を復唱するとも言えず、適当に誤魔化した。そして、夏休みに入ったら一緒に電気屋さんへ行き、必要機材を見繕ってもらう約束をした。

 

 家に着くと夕方の4時。オレは最終日科目の準備を済ませ、異世界テスト勉強の旅へ出掛けた。

 

♣♣♣♣♣

 

 キィーン、キィィーン、ドッカーン!

 

「ミンミン、そんなに振り回しても当たらないぞっ」

 

「ハァハァハァ、こんのおおおーっ!」

 

 ブゥンッ! ガキィーン! ドッカーン!

 

 夜のGAT訓練場で、ミンミンがバスターソードを使える様にする為、沖田が稽古をつけている。

 

 当然、両者は練習用のレプリカを使っているのだが、ミンミンの怪力は凶器。まともに剣を合わせると吹き飛ばされてしまう。しかし、沖田の見事な剣捌きに、ミンミンは剣の軌道を逸らされて地面にいくつもの大穴をあけていた。

 

 ブゥンッ! ガキィーン! ドッカーン!

 ブゥンッ! ガキィーン! ドッカーン!

 

「クッソー、何で当たらねーんだあああーっ!?」

 

 それを母の心境で見守る山南。

 

「がんばるのよ、ミンミンさん。スピードもパワーも十分、素質はあるの。後は経験さえ積めば、きっと……」

 

・・・・・

 

 チーン、カンパーイ!

 

「浜井君、この温泉は最高だねぇー!」

 

「恐れ入ります。総理に喜んで頂けるとは、光栄の極みでございます」

 

 霧島温泉の宴会場で、岸本総理と浜井防衛大臣、末席には黒原と側近の部下達が席を並べている。

 

「浜井君、明日のレールガン2号機の試射は大丈夫なのかね?」

 

「はい、万事抜かりはございません。1号機同様に上手くやってご覧にいれます」

 

「うむ、期待しているよ。黒原君も頼んだよ」

 

「ハッ、総理の為に全力を尽くします!」

 

「総理、これが上手くいけば、歴代最高支持率90%を越えた総理大臣として、後世に岸本総理の名が残るでしょうな」

 

「そうか、そうか、ワハハハハ!」

 

 岸本総理は豪華な料理を食べながら、美人コンパニオンに芋焼酎の魔王をお酌されて上機嫌であった。

 

・・・・・

 

 ザバァァァァーーーン!

 

 月光が薄っすらと差し込む桜島口の対岸では、水面から顔を出したゴブリンが、岸に立つ大きなゴブリンに何やら報告をしている。

 

「ギギャッ、ギギギギギッ!」

 

 報告を受けた司祭服を纏った灰緑色の大きなゴブリンは、ニヤリと下卑た笑いを浮かべて舌なめずりをした。

 

「グフー、ギヒヒッ!」

 

・・・・・

 

 桜島を中心に、それぞれの者達が、それぞれの思惑を馳せて、しだいに夜は更けていく。

 そして、運命の時は刻一刻と近付いているのであった。

 

 

【第82話 それぞれの夜 完】

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