あれから数日。沙知先輩の卒業の日がやってきた。
実感があまり湧かないが、それは寂しく思わない為なのか。僕が我慢しているからなのだろうか分からない。
そんな事を思っていると、あっという間に卒業式は終わっていた。
その後、沙知先輩に呼び出されて、呼び出された場所にみんなで向かうと_
そこには、工事が終わって姿を現した建物があった。
「蓮華祭のために、最高のステージを用意したよ!!」
「先輩…そういう次元の話ではないような気が…」
「…つくったの?」
「ああ、一年かけて。せめて、キミたちに何かできることがないかと思って…お詫びの、つもりだったんだけど。今なら堂々と言えるかな。お詫びじゃなくて、後輩へのプレゼントだって」
「プレゼントの枠を超えてますって」
一年かけてって…もう凄いプレゼントを貰ってしまった。
「これが、あたしからキミたちに贈るーー第二音楽堂だ!」
「音楽堂貰っちゃった!?」
「わぁ、お嬢様学校ってスケールが違うや」
「名前はまだないから、どうかな。キミたちで付けてあげてくれないかな」
「待ってください、待ってください。え。これスクールアイドルクラブの所有物にしていいものなんですか!?」
「あっはっは。残念ながら、キミたちだけの所有物にはできないな。でも。音響をはじめとした設備は、スクールアイドルのステージにこれ以上ない仕上がりにしたつもりだ。ここがあればもう…狭いステージで危ないことが起きたりしない」
沙知先輩…本当に…良い先輩。
沙知先輩とめぐはお互いに微笑みあった。
「ああもう、沙知先輩のくせに…!」
「ありがと、沙知先輩」
「…それにしても、花帆」
「は、はい!?」
「最高のステージのお礼に、最高のライブをすると、言ってしまったものね。これは…なかなか気合が入るわね」
「が、頑張るぞぉ……!!」
「…さて、少々取り乱しましたが…蓮華祭ではわたしたちの全力を見せると決まっていましたから。プレッシャーこそあれど、緊張を覚悟に変えることは出来るはずです」
「あとは…あの曲をどうするかなんだけど」
つづがそう言うと、花帆ちゃんが聞いてきた。
「あの、梢センパイ。あたしたちも見せて貰いましたけど、あの曲に何か足りないんですか?」
「そーそー、気になってた」
「あれは、その。沙知先輩に向けて作った曲だから…」
「ちょっと、ラブレターみたいになっちゃってるじゃん…?」
めぐがそう言うと、花帆ちゃんとるりちゃんは顔を見合わせた。
「たぶん、センパイたちにとっての、いちばんのセンパイに向けて作ったからだと思いますけど…」
「気持ちを込めてさ、すっごく悩んで、さちパイセンのために頑張ったからだと思うけどさ…?」
『すっごく良かった(です)よ!!』
「部室にあった音源、聞きました! あたしたちほんっとに感動しちゃったよね!」
「うん!きっと、大事な先輩がいる人なら誰だって分かる、みんなの150点になってるとルリ思うよ!!!」
二人の言葉を聞いたつづはこんな反応を示す。
「ほらあ」
「ほ、ほらあではないでしょう!?」
「綴理だって『そうなのかな』ってなってたじゃん!」
こずとめぐに詰められたつづは、さやかちゃんの方を向く。
「えっと……わたしも、本当に素敵な曲だと思っていましたよ。先輩方がそれぞれ込めた想いが、結集して美しく昇華されて……これ以上ないくらい気持ちのこもったものだと伝わりました」
「ボクは信じてた」
「言葉が軽い…」
「こいつっ…!」
「…はぁ、そうね、分かったわ」
「やろうよ、このまま。150点」
「うん、これはちゃんと、みんなに伝わる150点なんだしね」
「あ、はは…最後までこんな感じで、すみません」
「いやいや。あれがあたしの…1番の後輩たちさ」
沙知先輩はそう言って、僕達の事を見渡すのだった。