-次の日-
「梢先輩~!」
部員の皆がやってくるまで、1人で部室に居ると、花帆ちゃんが走って入ってきた。
「花帆ちゃん!?びっくりした…」
「夜空先輩…梢先輩は…」
「今は用事で居ないよ…どうしたの泣いてるけど…」
「あたし、全然ダメでした…」
さやかちゃんの配信を見て、あの後、自室に戻って、自分のライブを見てそう思ってしまったのだろう。
ここは助け船を出すとしますか…
「とりあえず、お茶飲みながら話す?」
「はい…」
「じゃ、ちょっとだけ待って」
そう言って、僕はお茶の準備をしつつ、梢にメッセージを送った。
来てくれるかは分からないけど…やるだけはやってみるか
*****
あの後、メッセージを送ったが既読にならなかったので忙しいから見れていないのか…はたまた…
ともあれ、花帆ちゃんの前にお茶を置いて、彼女の話を聞くことにした。
「昨日…さやかちゃんのチャンネルを見た時に、花帆ちゃん自身のライブが気になっちゃったと…」
「はい…それなのにあたし、妹たちにドヤ顔でライブ配信をおススメしちゃったんですよ…友達みんな、ほとんど毎日ライブに来てくれて…あたし、全校生徒の前で一週間ずっとライブしてたんですよ…こんなあたしが…ううう…」
これはかなりやられてしまっている。
「僕には花帆ちゃんのライブはとっても素敵に見えたよ。最初に踊ったライブあるでしょ?」
「はい…」
「あの時に僕は感動しちゃったよ、花帆ちゃんをクラブに誘って良かったって。その後の一週間毎日ライブには驚いたけど…」
「でも…なんかこう…違うんです…先輩方やさやかちゃんとは…」
「隣の家の芝は青い、つまり、他人の持っているものが自分のものよりも良く見える、でもそれは誰にでも当てはまる言葉で、梢もそうだと思うけど、僕も花帆ちゃんの事羨ましいって思う事はあるよ」
「えっ?」
「梢や綴理、さやかちゃんが花帆ちゃんのライブを『魅力的』、そして僕がさっき言った『感動しちゃった』って言葉にはね。お世辞や社交辞令みたいな物はないんだよ。心の中で本当に思った言葉なんだよ」
「うっ、あたしたちのライブ…」
「そんな風にならなくても…」
花帆ちゃんの引き方に苦笑いを浮かべながらも僕は話を続ける。
「もちろん、花帆ちゃんの配信を見てくれてる人もそう」
「…それはどうしてなんでしょうか、だって、あたし、こんなに…」
「分からない?」
「…」
花帆ちゃんは無言で頷いた。
「花帆ちゃんが、心の中からスクールアイドルを楽しんでいるって事が伝わってからなんだよね」
「楽しんでいることが」
「そう、花帆ちゃんみたいにまっすぐな気持ちを持っているのは、全員じゃないから。花帆ちゃんの笑顔、弾む声、心の中から湧き出てくる情熱が見ている人達の心を動かすんだよ、だからね、見てくれる人達は花帆ちゃんに温かい応援をくれるんだよ」
「それはでも」
「花帆ちゃんには花帆ちゃんの魅力があるから気にしないでって言いたい所だけど…納得できないと思うし」
「言いましたよね。先輩は大変な事も多いけど、でも楽しいって」
「うん言ったね」
僕はそう言って、パソコンを持ってきて、スクコネを起動する。
そして、とある動画のコメント欄を花帆ちゃんに見せる。
「花帆ちゃん見て」
そこには花帆ちゃんに対するコメントがあった。
これでも一部のコメント、探せばもっとある
「…こんなに…」
「そう、これでも一部なんだよ。自分が練習、努力して、頑張って、こんな感じで見て貰って、応援して貰えたら素敵だと思わない?努力が伝わったんだって」
「…」
花帆ちゃんの表情はさっきまでの暗い表情とは違い、ちょっとだけど明るくなっているそんな気がした。
「それに、ライブやイベントでみんなを楽しませる以外にも、毎日努力をしている姿を配信するのは、それを見てくれた人の心にきっと、芽生えるものがあると思うんだ」
「スクールアイドルの頑張る姿を見て、自分も頑張りたいって…そっか、だからあたし、さやかちゃんの練習風景が…凄く綺麗だって思って…」
「花帆ちゃん、その表情だと分かった感じかな?」
「はい!分かった気がします!」
「そっか、それなら花帆ちゃんと話せて良かったよ僕も」
「あたし、楽しいだけじゃなくて、すっごくすっごく楽しいライブがしたいんです!その為には、今のままじゃだめなんです!」
「分かった、花帆ちゃんがそう思って貰えるように僕も頑張らないとね」
「お願いします!先輩!」
「それじゃ、明日からは梢のやり方…かぁ…」
「えっ、どうかしたんですか?」
そう言ったタイミングで梢が扉を開けて入ってきた。
「はぁ…はぁ…急いで…きたわ…」
「梢先輩!」
梢先輩が入ってきてそのまま抱き付きに行った花帆ちゃん。
「日野下さん、いきなり抱き着かないで…」
「いいじゃないですか~」
そんな二人のやり取りを微笑ましく見守る僕。
「それで話って言うのは?」
「全部夜空先輩が聞いてくれました」
「そう、どうだった?」
「はい!とっても優しくて親身に聞いてくれました、梢先輩が惹かれた理由も分かる気がします」
「もう//日野下さんったら」
「梢のやり方で良いって花帆ちゃんが言ってたよ」
「そう、日野下さん私のやり方で大丈夫なのかしら?」
「はい!すっごくすっごく楽しいライブがしたいんです!」
「分かったわ。あなたがそこまで言うなら、私に断る理由なんてないわね」
「ただ、先に言っておくけど、私のやり方は大変よ。最初のうちは、楽しいなんて思う余裕はないかもしれないわ」
「そこはちょっと手加減してもらえると嬉しいですけど…でも、大丈夫です!あたし、雨にも風にも負けないような、そんな立派なお花になるつもりですから!」
「なるつもりじゃなくてなるって言って欲しかったんだけど…」
「ああっ、すみません!」
「ふふふ、あらいけない、もうこんな時間だわ」
「一週間のライブ最終日ですね!」
「もう一週間経つのか…花帆ちゃんが一週間ライブをやるって言いだしたのが昨日のように感じる」
「うっ…でもあたし、こんなにダメダメなのにライブを…」
「仕方ないって、誰だって急に上手くなるなんてならないから」
「そうよ、あなたの笑顔は一級品なんだからそれをみんなに見て貰いましょう」
「笑顔はですか…」
「それとも笑顔だけは、かしら?」
梢…やる気を出させるのには良い言い方かもしれない
「あっ、梢先輩酷いです!いつか全部一級品になってみせますからね!」
「ふふふ、ごめんなさい。さ、背筋を伸ばして、行きましょう!」
「はい!」
その後、みんなで中庭へと移動する。
「今日もみんな、来てくれてありがとうね!」次は、もっともっと上手になって、みんなをもーっと楽しませるから!楽しみにしててね!」あたし!誰よりもみんなを楽しませちゃうような『世界で一番のスクールアイドル』になるからねー!」
花帆ちゃん随分と言い切ったなぁ~いや…あれぐらい気持ちがあった方が彼女はもっと花咲くだろう
「花帆さん、すごい…!」
「うん、すごいね」
「もしかしたら、本当になれるかもしれないわね。花帆さんなら、ラブライブ優勝だって」
梢の言葉を聞き、僕は花帆ちゃんの事を見た。
「見ててね!みんな!あたし、頑張るからねー!」