「まったくもう!今度は教室でずっと寝てるんですか。補修で先生に捕まってるんですか。お弁当渡したのに食べるの忘れて倒れてるんですか。カワウソがおなかに乗っちゃって動けないんですか」
とある日、2年生の教室がある廊下を凄い剣幕で歩くさやかちゃんを発見した。
「二年生の廊下も慣れちゃいました、もう珍しいとも思われません!」
「さやかちゃん…お疲れのようだね…」
そんなさやかちゃんに、僕は声をかけた。
「あっ、夜空先輩、聞いてくださいよ!」
「おお…さやかちゃんが怒ってる…」
ここまで怒ってるさやかちゃんは見た事がないな…
一体原因はなんだろうか…
「すみません…ってそうじゃなくて…綴理先輩が時間になっても来ないんですよ!」
「綴理なら、そこでゲリラライブやってるけど…」
綴理とは、同じクラスだから、用事があったり先に行くみたいな事があればここで言う事が暗黙の了解になっていて、今日はゲリラライブをすると聞いたのだが…さやかちゃんは聞いていなかった模様…
「え?私…何も聞いてないんですけど…」
「とりあえず行ってみよ…」
「はい」
そして、さやかちゃんを引き連れて、綴理の近くまで行く。
「…ふぅ…ありがとう。えっとボクはそろそろ…」
綴理はそう言って離れようしたのだが、周りにいる子達にアンコールされてしまい…
「…じゃあ、もう1回だけだよ。時間が…」
「はいはい、通行の邪魔になってるよーゲリラライブは終わり終わり」
偶々なのか沙知先輩がやってきて、強制的にライブは終わった。
「あ」
「ほら、行くとこあるんでしょー?行った行った」
「あ、うん。ありがとう」
「良いってことよ。そらお前ら、悪者はあたし1人だ、かかってこーい!」
そして、沙知先輩が周りの連中に追いかけられる形で去っていった。
そして、人が居なくなった為、僕たち2人の存在に気づいた綴理は声をかけてきた。
「あっ…さやとみく」
「あ…夕霧先輩。えっと、素敵なライブでした」
「ありがとう。嬉しい…ん?あれ?さや怒ってないな…?」
「先輩のダンスは、本当に凄いですね。すっかり私も見入ってしまいました」
「あれ、花帆さん達の曲ですよね。夕霧先輩が踊るとこうなるんだな、って所も含めて感動しました」
「…そっか。そういえば、あの曲だったね」
「そういえばって何ですか、まったくもう。でもおかげでやる気が出てきました!…あれ?そういえば私、なんでここに」
さやかちゃんは、綴理のゲリラライブに気を取られていて、本来の目的を忘れていた。
「綴理…」
「ん?」
「さやかちゃんに連絡の一つくらいはしてあげて」
「そうでした!今何時だと思ってるんですか先輩!練習時間が短くなった分、しっかりと見てくださいね!!」
「やっぱり怒られた!」
「まぁ…そうなるでしょうに…」
僕が呆れてそう言うと、綴理は問いかけてきた。
「そういえば、みく」
「ん?」
「部長会議は?」
「さっき遅れて開始するって連絡来たから、今から行ってくる所だよ」
「そーなんだ~頑張ってね」
「そうそう、梢も何か用事で居ないから今日は花帆ちゃんも見てあげて欲しいんだ」
「うん、分かった。丁度、花帆の事も見たかったんだ」
「それじゃ、お願いね。さやかちゃんもまたね」
「はい!夜空先輩!」
元気よく手を振ってくるさやかちゃんに僕も手を振って返す。
「さや、みくと随分と仲良くなったよね」
「はい!たくさん話して仲良くなりましたので!」
「そっか」
-次の日-
「昨日の部長会議で、今度の学校案内でステージに出て欲しいと言われたんだけど、どうする?」
僕は、昨日で話題に上がった事を梢、綴理に話した。
「そうね、この前は私達がライブをしたから、今度は綴理と村野さんがいいと思うのだけれど」
「うん、僕も同じ意見だけど…どうする綴理?」
梢と意見があった為、綴理にそう聞いたのだが
「辞めておくよ」
「本気で言ってるの?」
「えー!?もったいなくないですか…!?」
綴理から返ってきた言葉に、梢と花帆ちゃんがそう返した。
「おはようございます。えっと、何があったんですか?」
タイミングが良いのか悪いのか…さやかちゃんがやってきた。
「そ、それが…」
「おはよう村野さん」
「さやかちゃんおはよう」
そして、話を知らないさやかちゃんにさっきと全く同じ話をした。
「それは、素敵なお話ですが」
「こないだのライブでは梢と花帆ちゃんがしたから、綴理とさやかちゃんがしたいいんじゃないって話をしてたの」
僕がそう言うと、梢は綴理の方を向いて
「綴理、どうしても出ないつもり?貴方のライブが見たい人だってたくさん居るのよ?」
「ボクのライブ……うん、やっぱり、やめとく」
「そんなぁ」
綴理は、出ない方針を変えなかった。
「…夕霧先輩、自主練してきます」
「…ごめん、さや」
「夜空先輩、一緒に来てもらっていいですか?」
「なんで?」
「いいですから」
「え、あ、さやかちゃん!?」
僕は、さやかちゃんに手を握られて、連れて行かれるがままにされる
「梢~後の事は頼んだぁ~」
僕は、梢にそれだけ言って、さやかちゃんに連れて行かれた。
*****
「わん、つー、すりー、ふぉー!わん、つー、すりー、ふぉー!」
「ふぅ…」
あの後、さやかちゃんに連れて行かれると、後から追いかけてきた花帆ちゃんと合流して三人になっていた。
「はい、タオル」
「すみません。花帆さん。花帆さんの練習もあるでしょうに、先輩も連れ出す形になってしまって…」
「いーのいーの!あたしの時だっていっぱいサポートしてもらったし!これでもマネージャーやってたんですよ、あたしは」
「いいって、綴理の事は梢に任せるつもりだったから」
スクールアイドルの事に関しては、梢の方が話がしやすいだろう。
なんで部長をやってるんだろうか僕は
「それにしてもさやかちゃんは見違えるくらいに上手くなったよね」
「うん!さやかちゃんは凄いよ!すっごく上手!」
「そう、ですか?…でも、きっと花帆さんの方がきらめいていましたよ」
「へ?」
「花咲く、が少し分かったきたかもしれません。ライブの時の花帆さんは、本当に輝いていましたから」
「そ、そーかな?それは嬉しいけど、さやかちゃんに比べると出来ない事ばっかりだし、まだぜんぜんだよ!」
「そんなこと…ありませんよ」
「最近停滞気味って言ったじゃないですか。あれは少し正確ではないんです。私はただ、これまでフィギュアの経験を応用していただけで。始める前と今で、なんの変化も成長もしていないんです」
「そうなのかな…?」
花帆ちゃんが言う通り、全くという事はない。
本人は分かっていないだけで、周りからすると多少なりとも感じるものだ。
「はい、そうなんです」
「…さて、もう少し頑張りますか」
「あ、うん…」
「あのさ!さやかちゃん!」
「はい?」
「あたし、さやかちゃんの歌もダンスも。すっごく好きだから!すっごく綺麗だと思ってるから!他の誰がどう思っても、さやかちゃん自身がどう思っても!さやかちゃん見てると、頑張ろうと思えるから!」
「花帆さん…?」
「そ、それだけ!あ、飲み物取ってくるね!」
「花帆さんは本当に、優しい人ですね」
「…花帆ちゃんも良い事を言えるようになったじゃん」
「それで、さやかちゃんは綴理に何か後ろめたさがある感じ?」
「…流石夜空先輩…ですね…」
「…僕はその気持ちを直接、綴理に言ってしまっていいと思うよ。それが違った事だったとしてもね」
すると、綴理がやってきた
「はぁ、はぁ…少しいいかな?」
とあるアニメの聖地巡礼に京都まで日帰り旅行行ってきます。