-後日-
「…なにこれは」
「どんぐり、この前のお礼」
「…ええと?」
練習前、綴理がどんぐりを持って、梢に渡していた。
「ちゃんと帽子被ってるやつですねっ。かわいい」
「そう、意外といなくて大変だった。かほとみくにもあげる」
そう言って、綴理は僕と花帆ちゃんにもどんぐりを渡してきた。
「ありがとう綴理」
「うん」
「それで?何のお礼なの?」
「あ、うん、ごめん。待ってね。えっと…ボクは、こずとかほ、みくにはすっごく助けれれたから。助けれたのは、ボクがさやの手に気付かなかったことで。だから、ありがとう」
「…綴理」
「よく、分かりませんけど。でも、さやかちゃんが笑っていたし、綴理先輩とのライブもすっごく素敵だったと思います!だから、良かった!」
「花帆…うん、花帆のおかげ、ありがとう」
「何が出来たか分かりませんけど、ふへへ」
「こず、みくありがとう」
綴理は僕達にそう言って、部室から出ていく。
「変わるものね、あの子がお礼を言うなんて」
「梢先輩?」
「ふふっ。さて、私達も練習を始めましょう!あちらも、大丈夫そうだしね」
「はい!」
「そうだ、梢」
「何かしら?」
「明日、部活には顔を出せないからよろしくね」
「分かったわ」
「えっ?明日、何かあるんですか?」
「うん、知り合いのお手伝いに行くだけだけどね」
僕はそう言い、練習に向かう2人を見送った。
-次の日-
「未来君、来てくれたのね!」
「頼まれた以上は来ますよれいかさん」
「助かるわ~今日は1人?」
「いえ、後から2人来ますよ。先に僕だけ来た感じです」
そう、僕は商店街にやってきていた。
目の前にいるれいかさんのお手伝いだけど
「そうなのね。誰が来るか楽しみだわ」
「期待して貰っていいですよ」
僕はそう言って、れいかさんのお店の中に入り、準備をしに行く。
そして、準備を終わらせて出てくると、綴理とさやかちゃんがやってきていた。
「手伝いに来たよ」
「あらあらあらあら!綴理ちゃん久しぶりー!」
「うん、こっちがさや」
「へ?あ、はい!村野さやかと言います…が」
「うんうん、知ってる知ってる!ちゃあんと配信も見てるもの!」
「ちょっとみんな、綴理ちゃんがさやかちゃんを連れてきたよ!!」
「配信見てくださっているんですか!?」
れいかさんの言葉に、さやかちゃんは嬉しそうだった。
「えっと、何すればいい?」
「そうねえ…綴理ちゃんは久しぶりだからねえ。じゃあさやかちゃんは、お料理とか出来る?」
「うん、美味しい」
「あら良かった、じゃあちょっと中で、未来君とお手伝いして貰おうかしら!」
「未来君…?」
れいかさんに名前を呼ばれて、さやかちゃんが疑問に思ってる所に僕は出る事にした。
「朝早くからお疲れ2人とも」
「夜空先輩!?」
「みく~お疲れ~」
「さやかちゃんの指導係は未来君に任せようかしら」
「れいかさん…ただ面倒くさいだけでしょ…」
「分かっちゃった?」
「ここはれいかさんの方が詳しいんだから、れいかさんが教えたらいいでしょうに」
「れいかさん、ボクは何をすれば?」
「綴理ちゃんはそこに立ってくれているだけで、みんな喜ぶわ」
「うん、分かった、任せて」
「いつものですか…」
「そうそう」
「立っているだけでってどういうーーってちょっとあの!」
「はい、じゃあさやかちゃんはこっちこっち」
まだ言いたげなさやかちゃんはれいかさんによって連行されていく。
「わ、わー!夕霧先輩!夜空先輩…!」
さやかちゃんの声も虚しかった、
「それじゃ、綴理頑張って」
「うん、頑張るよー」
*******
その後、さやかちゃんは色んな所を周ってきて、僕の担当にやってきた。
「ここは未来君に任せた」
「やっぱりこうなるんだ…」
「それじゃ、後はよろしく!」
「…」
元気よく言って去っていくれいかさんの背中を見て、僕は呆れてしまった。
「先輩…?」
「なんでもないよ、それじゃやっていこうか」
「はい!よろしくお願いします!」
さやかちゃんの声と同時に、お客さんがやってきた。
いつも来てくれるおばちゃんだった。
「今日は、未来君がここの担当なんだね」
「そうなんですよ~いつもはあっちなんですけどねぇ、あはは」
「未来君が居るとこっちまで楽しくなるよ」
「ありがとうございます。今日は何にします?」
「おすすめにしようかな」
「今日はですね、マイワシとガスエビがおすすめですよ」
「うん、それ貰おうかな」
「ありがとうございます」
そして、いつものように会計を済ます。
「またいらしてください」
「次いつ来るの?」
「まだ分からないんですよ。僕も忙しかったりするので」
「そっか、スクールアイドルクラブの部長さんだもんね」
「そうなんですよ~色々と大変で…」
「頑張ってね、応援してるよ!」
「はい、ありがとうございます。とは言ってもステージに立つのは僕じゃなくて_」
僕はそう言って、さやかちゃんの手を掴んで
「ちょ!?先輩!?」
「この子達なので、応援してあげてくださいね」
「ええ、もちろんよ。それじゃ、今日もありがとう」
「はい!ありがとうございました!」
僕がそう言うと、おばちゃんは店から去っていく。
「先輩、慣れてるんですね」
「そう?さやかちゃんも慣れたらあれぐらい出来るようになるよ」
「そうですか?所で夕霧先輩は何してるんですか?」
「看板娘みたいだね」
「そういう事じゃなくて…」
「まぁ…最初は僕みたいにやってたんだけど…魚と会話し始めたり、哲学みたいな事を言い出したりして…あーなった」
「あはは…」
「だから、みんなさやかちゃんに期待してると思うよ」
「みんな!?ですか?」
「そう、ここに来てくれる人みんなだよ」
「…私が、皆さんに?」
「…さやかちゃん…?」
さやかちゃんの様子がおかしくなった…
「お客さんは応援してくれる人。それなら私は、何を返す?」
「おーいさやかちゃん返ってきて!」
さやかちゃんの顔の前で手を振るが、さやかちゃんからは何も返事が返ってこない。
「みなさーん!!応援、ありがとうございまーす!」
「あっ…応援って言っちゃった…」
それから、さやかちゃんは呑み込みが早かった。
「うん。これならもう1人でもやっていけるね」
「そうでしょうか…?」
「うんうん、明日は頑張ってね」
「明日…?」
「あれ?聞いてない?綴理とさやかちゃんは2日間って綴理が伝えるって言ってた筈なんだけど…」
「聞いてませんよ!それに、夜空先輩は明日来ないんですか!?」
「うん…元々来ない日だからね」
「そんなぁ…」
悲しむさやかちゃんの声は商店街に静かに消えていくのだった。